HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

空気が曲がった日

2017-02-26 18:45:19 | 日本のロック・ポップス

掲載写真は渚にての9枚目のアルバム「星も知らない」。実に清々しいジャケットである。
はて、これは何の星なのだろう。名前を特化する必要なんてないのだろうけど。

東の空に輝く明けの明星だろうか。明けの明星が輝くころ、西の空に一つの光となって
帰っていった傷だらけの勇者に思いを馳せ続ける私であるので、この星は明けの明星だと
勝手に思っている。それに・・・。明け方に見える星は、夜の出来事を知らないのだから。

見開きジャケットのリアは前作「遠泳」のフロント・ジャケットを容易に想起させる。
夜を泳ぎ切った後に向かえる夜明けはきっと美しいはずだ。

およそ駄作の無い渚にてのアルバム群であるが、これも当たり前のように傑作。
何がどうとかこうとか、具体的に思い起こそうとすればするほど、具体的であればあるほど
その行為が間抜けに思える。それくらい素敵だ。

「渚にて」は「泣」いている。悲しいからではない。笑顔は嬉しい時か自虐的な時にしか
つくれないが、悲しくても嬉しくても涙は出るし泣けることはできる。

「渚にて」は「潤」っている。リズムもメロディーも瑞々しく、そこにのる歌詞も十分な
クオリティーで聴き手を「満」たす。贅沢なまでにすべてを備えている。

「渚にて」は「濡」れている。柴山伸二の歌を聴いて感じ入らない女性は不幸かもしれないし
竹田雅子の歌を聴いて感じ入らない男性も不幸かもしれない。守るものがあろうと
抱えているものが大きかろうと、それらを凌駕し世間的に言うところの正しい判断を
狂わせる刹那の魅力が「渚にて」にはある。その迷いこそが美しいと時に思うことがある。

自分でも書いていて何だかよくわからなくなってきた。(笑)
「渚にて」を聴くとき、私は日本に生まれてよかったと思う。
一人でも多くの人にこの幸福感が行きわたりますように。

コメント (2)
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