フィッシャーマンという言葉は日本語にすれば、漁師とか釣り人という意味であるが
私がこの言葉を初めて知ったのは18歳の時である。
大学に入学して間が無い、まだ少し肌寒い4月半ば頃だったろうか。服装に頓着しない
私にクラスのある男が声をかけてきた。「そのフィッシャーマン・セーター、ええ感じやな。
自分、結構オシャレか?。」な、なんなんだこの唐突な会話は。
私は肌寒いから適当なセーターを着ていただけなので、何のことだか話の意図が
見えず、「さよか、ほな。」と言ってその場を去った。
それでもフィッシャーマン・セーターという耳慣れない言葉は記憶に残った。
そこで、調べてみるとどうも、アイビー(死語ですな)に人気のセーターだったようで、
私が着ていたスタジャンのイメージと相まってそういう話をふってきたのだろう。
これはいかん、何せ心は一本気なロックンローラーなのだから。
で、私は慌てて前から欲しかった濃い茶色のジャケットと白いシャツを買いにいった。
お手本はストーンズの『START ME UP』のPVでのキース・リチャーズさん。(笑)
似合うかどうかはさておき、一本気なロックンローラー(笑)の自尊心は回復したのであった。
その後、スカジャンを買ってしまい、何だかわけがわからなくなってしまった(笑)のだが
四国の田舎に帰ってスカジャンを着ていると「おおっ」と羨ましがられたのであった。
昔のヤンキー気質が抜けていない同級生に褒められても嬉しくないので、フィッシャーマン・
セーターと共に破棄しようとしたところ、スカジャンは意外なところで引き取り手があった。
妹だったのだけど。(笑)男物の青と銀のスカジャン(背中には鷲の刺繍)を着るような女とは
つきあいたくないものだ。(笑)
おっと、くだらない前置きが長くなった。
掲載写真は06年に出たコンゴス&フレンズのアルバム「FISHERMAN STYLE」。
レゲエ特有の用語にリディムという言葉がある。一般的にはリズムと呼ばれる言葉と
ほぼ同義であるが、レゲエでは格好いいリディムを使いまわすことが当たり前である。
好きなリディムを使ったトラックを集めるという遊びを楽しむことができる大らかさも
レゲエの魅力の一つであろう。
このアルバムはコンゴスの名盤「HEART OF THE CONGOS」の1曲目に配された
『FISHERMAN』のリディムを使って24組のミュージシャンが様々な解釈で同曲を
演奏する企画盤。
コンゴスのオリジナルの編集バージョンで幕を開け、ビッグ・ユース、ホレス・アンディー、
マックス・ロメオ、フレディー・マクレガー、Uロイ、ディリンジャー、グレゴリー・アイザックスら
大物が大挙参加しているところが、この企画の価値を大きなものにする。
スムースな歌唱を聴かせる者がいれば、速射砲のようなトースティングでたたみかける
者もいて、元を正せば同じ曲なのに、ここまでバラエティーに富んだものになるのかという
驚きがある。とどめはアップセッターズのダブで、これがまた格好良い。
レゲエという音楽の懐の深さを知るには、もってこいの1枚である。