リー・ペリーといえば、アップセッターズをプロデュースしたスカ、ロック・ステディ時代、或いはブラック・アーク・
スタジオでのブッ飛んだダブが人気であるが、先日、隠れたいい仕事といえる「歌物」に関わった2枚のCDが
リリースされた。
掲載写真左はキャンディー・マッケンジーの「LEE 'SCRATCH' PERRY PRESENTS CANDY McKENZIE」。
77年にブラック・アークで録音されながら、今回のリリースまで表に出ることの無かったアルバム。
コンゴスやアスワドのアルバムでバック・ボーカルを担当していた人だが、これほど素晴らしい歌手だとは
この録音集を聴くまで気にも留めていなかった。
77年という時期のペリー制作のバック・トラックが悪いわけが無いというのは、贔屓の引き倒しである(笑)が
この年は先に書いたコンゴスの「HEART OF THE CONGOS」や、ヘプトーンズの「PARTY TIME」、そして
ジュニア・マーヴィンの、あの「POLICE & THIEVES」を世に送り出しているのである。
キャンディー・マッケンジーの盤が世に出なかった理由が、金銭的なものか御大の気まぐれによるものかは
知る由もないが、ここで聴くことができるトラックはソウルフルでグルーヴ感に満ちている。
そして、何よりキャンディーの歌が素晴らしい。この録音の前にペリーは、マーサ・ヴェレスやスーザン・カドガン
といった女性ボーカル物を手掛けているが、そのどちらよりもこの録音の方が私には素敵に思える。
まさにソウルを感じさせる『DISCO FITS』、ダスティー・スプリングフィールド・カバーの『BREAKFAST IN
BED』といった曲の出来の良さは勿論だが、アルバム中でキャンディー自身が手掛けた曲が数曲あり、
単なる歌手以上の才能を見せているということにも驚かされる。
掲載写真右はジョージ・フェイスの「SUPER EIGHT」。今回の発売はジャマイカ盤仕様で、オリジナルは
ジャケットにレーベル面が印刷されていない、白地にアーティスト名とタイトルが黒文字で書かれたジャケット。
数年前にHIP-Oから、英国アイランド盤で発売された時のタイトル「TO BE A LOVER」とジャケットで
再発されていた。英国盤とジャマイカ盤は曲順も違うので、今回のジャマイカ盤仕様での発売は、その値段の
安さと相俟って歓迎されるのではないだろうか。
実はこれも77年の発売(ステッカーには1976 ALBUMとあるが)。特に評価の高い歌手というわけでもないので、
ペリーの仕事の中では軽視されがちだがここでのトラックも素敵だ。ジョージ・フェイスの歌唱も悪くないし、
何より数曲で聴くことができるコーラスの良さが素晴らしく、クレジットを見るとメディテイションズとダイアモンズ。
成程、納得である。
ポール・アンカの『DIANA』のレゲエ・アレンジなんていうと、笑いの一つも出てきそうだが、これが意外と
悪くないのだ。オージェイスのカバーも良いし、何よりウィルスン・ピケット(『IN THE MIDNIGHT HOUR』)と
リー・ドーシー(『YA YA』)の有名曲をメドレーで繋ぐという技も、ド真中に直球を投げ込む感じで面白い。
今回リリースされた2枚のアルバムは、ペリーのファンは勿論、歌心のあるレゲエを聴きたいという向きにも
最適だと思う。何より、どちらも安価なのが嬉しい。このような再発は大歓迎だ。