J.A.シーザーの未発表音源を集めたボックス「J.A.シーザー伝奇音楽集 鬼火 天井桟敷音楽作品集
VOL.2」がリリースされた。08年にリリースされた前回と同じように4方向に開く特殊な装丁の箱に
5枚のCDが収納されている。前回はたった1枚しか残されていない幻のLPを再現するという目玉が
あったが、今回も負けず劣らずの内容である。
今回の音源はシーザー所有の1100本のリールから選りすぐられたライブだけあって、聴き処多数である。
私はどちらかというと、天井桟敷という劇団の為の音楽というより、いちロック・ミュージシャンとしての
シーザーの音楽を面白く思っているので、熱心なシーザーのファンの方とは面白がるところが
違うかもしれない。
例えばそれは組曲形式のものでなく、個々の楽曲の迫力で迫るパターンの方が好きということなのだが
それは私のシーザー初体験が、アルバム「国境巡礼歌」という天井桟敷の名前を冠しないシーザー個人の
リサイタルを収録したライブ盤だったことにもよるだろうし、プログレが苦手なせいもあろう。(笑)
今回のディスクでいうとディスク1とディスク4をよく聴いている。で、私の中では『母恋しやサンゴ礁』『越後
つついし親不知』といった楽曲が、巷に溢れる所謂「ヒット曲」と同じような位置付けで頭の中に刷りこまれ、
それらが演奏されると、ストーンズのコンサートで『SHATTERED』や『BROWN SUGAR』が演奏されるのと
同様に盛り上がってしまうのだ。(笑)
だから、私のような演劇にも芝居にも大した理解の無い聴き手は、シーザーなんかに手をだしては
いけないのだろうが、余り爽快と言えず、しかし日本人の奥底に眠る暗部を探り出すような歌詞と
メロディーの魅力に抗えず、こうして聴き続けているというわけだ。
日本的なメロディーを西洋の産物であるロックのフォーマットに上手く潜り込ませた好例というと、
寺内タケシとブルージーンズの『壇之浦』、村八分の『むらさき』、マジカル・パワー・マコの『南国の娘』
なんていう曲が思い浮かぶのだが、それらと並べても遜色無い楽曲を多く収録した、強力な破壊力で迫る
今回の5枚組には圧倒されっぱなしである。
一部の店やHPでの購入だと未発表音源を40分ほど収録したCDが特典で付いてきて、私もそれを
入手した。因みに特典CDに収録された全7曲中3曲は、02年に白夜書房から出た「J.A.シーザーの世界」に
添付されたCD収録音源と同じもの。それでも、残り4曲は貴重な物だし、そう思うと先の本に付けられた
CDはもっと貴重なように思えてきた。
先に書いたが、今回の箱を編むために精査したシーザー所有のリールは1100本。
音質の劣化の厳しいものもあるだろうが、また4年後に箱が出ることを期待して・・・。