ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/03/26 歌舞伎座千穐楽の元禄忠臣蔵⑤「仙石屋敷」

2009-04-04 23:58:27 | 観劇

さて仁左衛門初役の内蔵助はどんな感じだろうか?
【元禄忠臣蔵 「仙石屋敷(せんごくやしき)」】(二幕)
あらすじと配役は公式サイトより引用加筆。
本懐を遂げた大石内蔵助(仁左衛門)は、吉田忠左衛門(彌十郎)、磯貝十郎左衛門(染五郎)に口上書を持たせて幕府大目付の仙石伯耆守の役宅へ向かわせる。用人の桑名武右衛門(錦吾)を経て口上書が渡った仙石伯耆守(梅玉)が現れ、忠左衛門たちに仇討ちの仔細を尋ねる。聞き取り書きを携えて幕閣にこれを知らすべく登城。
その日の夜、内蔵助を始めとした赤穂浪士46人が泉岳寺から仙石屋敷に身柄を移され、伯耆守や鈴木源五右衛門(由次郎)の尋問に答えていく。やがて浪士たちは諸家へお預けとなり、伯耆守は内蔵助の働きを褒め称えて、これを見送る。
文中にない主な配役は以下の通り。
堀部弥兵衛=家橘 武林唯七=右之助
間十次郎=高麗蔵 堀部安兵衛=市蔵
富森助右衛門=男女蔵 大高源吾=亀鶴
大石主税=巳之助

梅玉の仙石伯耆守は赤穂浪士たちが本懐を遂げたと聞くと実に嬉しそうだ。口上にあらわれた二人への尋問も温かい共感の気持ちにあふれている。
仙石伯耆守役宅の大書院に勢揃いした義士たちの揃いの火事場装束も袖のところが「仮名手本忠臣蔵」で御馴染みの雁木模様ではなく、ただの幅広の白い布をぬいつけたシンプルなもの。史実ではある程度の申し合わせで揃えて準備したようだが、ここまで揃いの衣裳ではなかったという。さらに刃傷を起こした浅野内匠頭長矩の祖父の内匠頭長直が奉書火消しで火消しの上手として有名だったらしく、浅野の義士=火事場装束というのは実にイメージにぴったりだったらしい。とにかくこの勢揃いは見ていて実に圧巻で目を見晴らされる。

そしてなぜ46人かというと寺坂吉右衛門を三好の浅野本家に討入りの次第を知らせるために旅立たせたから。何で読んだか忘れてしまったが、武士ではない足軽を一緒に幕府の処断を仰ぐわけにはいかなかったということらしい。大体、討入りの義士たちは赤穂藩の上級武士は内蔵助だけで残りは藩主の顔も見る資格のない下級武士だったという。上級武士は蓄えもあったろうし他に身の振る先もいろいろあったということだ。その下級武士たちが仇討ちをしたということに大きな意味がありそうだ。

仙石伯耆守は浪士たちの処分には十分な評定を続けることになり、とりあえず四家にお預けになる旨を内蔵助に伝えた後、あらためて討入りまでの経過と詳細を尋ねていく場面が眼目だ。
300有余名の家臣のうち討入りの人数がこれだけになった理由を尋ねると主君の最後の直後であれば大多数が加わったであろうが、年月と共に一人抜け二人抜け・・・・・・「これが人間の姿というもの」と語るが、私などはこの人数までまとまって決行できただけでも現代ではあり得ないすごいことだと思ってしまう。

徒党を組んでという批判に対して「謀ったわけではない」というあたりの論理はちょっと理解しにくいが、天下の法を憚って武装しなかったことや抵抗されてやむを得ずに斬った場合も止めを刺していないと返すあたりはなるほどなぁと納得。
本来仇ではない吉良上野介を討ったことが誤りだという指摘に対し、自らの命だけでなく一国一城を投げ打ってでも吉良を討とうとしてかなわなかった主君の「鬱憤」を晴らすためのものと主張。このあたりの考え方は、まさに観劇前に読んでおいた丸谷才一の『忠臣蔵とは何か』のおかげですっと理解できた。

千穐楽でもあり、仁左衛門の台詞には情感がこもり、汗か涙かぐしょぐしょになった顔に万感がこもっているのを見、その言葉を聞く浪士たちも同じ思いに声を上げ身体を揺すっているのを見るとこちらの胸までつまってくる。

いよいよ迎えがきて、親子兄弟などは別々の家に預けられるため、内蔵助・主税父子の別れの際に形は大きくても年端がゆかぬゆえ最後に見苦しい様をみせまいかと父は心配し、子は健気に応え、安兵衛や源吾が請合う場面も見応えのあるドラマになっていた。主税がただ一人紫色の衣裳で若く美しく健気に命を散らしていくという散る花のような風情を巳之助が立ち上らせていたのが嬉しかった。

内蔵助の台詞を聞かせる眼目の「仙石屋敷」を、いま一番台詞回しを聴かせる仁左衛門で観る事ができたのは幸せだと思う。
今回の「元禄忠臣蔵」のポスターやチラシの仁左衛門内蔵助を携帯でアップで撮影。

参考→ウィキペディアの「忠臣蔵」の項はこちら

3/20歌舞伎座の元禄忠臣蔵①「江戸城の刃傷」
3/20歌舞伎座の元禄忠臣蔵②「最後の大評定」
3/20歌舞伎座の元禄忠臣蔵③「御浜御殿綱豊卿」
3/26歌舞伎座千穐楽の元禄忠臣蔵④「南部坂雪の別れ」


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