ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/02/26 国立劇場2月文楽千穐楽①「河庄」で住太夫を初体験

2006-03-04 14:56:23 | 観劇
前の記事で「お能デビュー」について書いたが、先に「文楽デビュー」を昨年9月国立劇場小劇場でさせていただいていた(感想アップさぼってて恐縮)。
正月2日のTV「新春桧舞台」で住太夫の「壺坂観音霊験記」ですっかり太夫の義太夫に惚れた私は早速ナマ住太夫の義太夫を体験しに9月に引き続いてyukariさんにお誘いいただき、国立劇場2月文楽公演に行ってきた。

私は今回、第一部からの通しは見送り、第二部と第三部に絞らせていただいた。第一部のみ観劇のけろちゃんさんと合間にお会いできてよかった。小劇場のロビーは椅子が多くていいのだけれどなかなか合間は早く入れないのね。第二部と第三部の合間にもyukariさんにブロガーさんにご紹介いただいた。ららさん、桜ん姫さん初めまして。これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
順番は逆になるが、まずは第三部から感想を書く。

『天網島時雨炬燵(てんのあみじましぐれのこたつ)』
北新地河庄の段/天満紙屋内の段/道行名残の橋尽くし
感想をまぜながらお話をたどる・・・。
紙屋治兵衛は舅のための借金を隠すために始めた茶屋遊びで知り合った遊女小春と真剣に惚れあってしまい心中まで誓い合った仲。
女房との仲も悪いとは思えないし、2人の子どももいる父親が10代の遊女にここまで入れ込むのってなんだろう。16歳だった小春はよほど遊女らしからぬ娘で新鮮な驚き→同情→愛情というパターンだったのではないだろうか。そして3年も深い仲...。金もなくその女を見請けできずに他の男にとられるくらいなら心中してしまおうという思いつめている。
夫の命を救いたくて女房おさんは小春に手紙を書いて愛想尽かしを頼む。おさんに義理立てした小春が治兵衛と別れるための相談を茶屋の「河庄」で侍客にしていたところに♪「魂抜けてとぼとぼうかうか」♪と治兵衛が小春に会いにやってきて立ち聞きして逆上...。このへん、可愛さ余って憎さ百倍的な暴力沙汰。ドメスティックバイオレンスだ。つまり本当の意味で大人じゃないのね。そのへんが可愛らしいっていう描き方なのだが、これは現代では通用しなさそうな設定だな。今思いついた!治兵衛って精神的には子どもっぽい部分がかなりあるので大人の女である妻よりも小娘だった小春に共鳴したんだ、きっと!!

侍客は実は兄の孫右衛門で小春に別れてやってくれと頼みにきていたのだが、小春の真意を先に知るが黙っている。毎月とりかわしていた起請の束を返還しあうのが別れの儀式というのが面白い習慣だと思うが、女は正妻への義理で何も言わず、男はガキ丸出しの恨みモード。
ここの場だけを昨年歌舞伎座で鴈治郎最後の「河庄」として観たのだが、いまひとつ感情移入できなかった。雀右衛門丈の代役で翫雀の小春だったためと、この場面だけだとドラマ性が楽しめなかったせいだと思う。

天満紙屋内の段で外題になっている炬燵でうたたねしながら泣きぬれている治兵衛。小春が太兵衛に身請けされるという話から小春の自害のおそれを感じとった女房おさんは夫に真相を話して命を救うために身請けしてくるように頼むという、これまた女の義理立ての世界。舅が婿に腹をたてて娘を実家に取り戻しにくるが、これも大芝居。後から娘と孫娘は出家させたから心置きなく小春を身請けしてきてほしいということに。婿への義理だてを通す舅。ホント義理が重たい世界だったのね。身請けを嫌って小春が出奔して転がりこんできたところで舅の真意も明らかになるのだが、尼姿の娘の白い着物に書いてあるというのだからすごい状態。
小春をとりもどしにやってきた太兵衛をひょんなことで殺してしまい、これで勢いづいて心中決行へ。本人たちさえ納得すれば死ぬ必要はないのに、妻子を犠牲にしたことを背負いながら生きていたくはなかったのだろう。

最後の道行き場面は、大夫5人三味線(胡弓入ったのこっちの心中だったっけ?)で盛り上がって幕。女を刀で刺し殺した後『曽根崎心中』とは違って女のしごきで男は首をくくって死ぬのであった。だから心中モノ2本続いても最後まで飽きなかったのだった。って変かしら、私。

紙屋治兵衛の人形を遣う予定だった吉田玉男が休演で代りに桐竹勘十郎。このところいつも予定に入っていてやはり休演が続く。ちゃんと見ておきたいのだけど...。女の人形遣いは紀の国屋小春が吉田和生で、心中コンビは若手コンビ。私には十分堪能できるのだけれど、やはり玉男さんだと違うのだろうなあ。治兵衛女房のおさんを吉田簑助。何年か前に半身麻痺するような病気をされたとは思えないほど自在に遣っている。治兵衛の兄役で吉田玉女。NHKの文楽入門の今年の講師?でおなじみさんなのだが、本当に生真面目そうな方で生真面目な役なのでぴったりだった。
そして義太夫の方は何組かの太夫と三味線のコンビでつないでいくのだが、やはり圧巻の大夫は竹本住大夫。ひとりで何人もの台詞も演じわけていくのだがその表現力が豊かなこと!圧倒的な声量とはっきりとききとれる口跡とメリハリのきかせ方が確かに今の日本のNO.1の大夫だなと思い知らされる。息のつめ方と間のとり方が絶妙だ。次に千歳大夫、私たちと同世代らしいのだが口跡のよさといい声量といい私は気に入った。また大熱演で顔の表情も豊かでその表情をみていても面白かった。あとは呂勢大夫がよかった(二枚目でも声量がない人は私の好みではないのでございます)。三味線もやはり太棹の方が好きなので、観劇後何日も太棹の音が頭の中をグルグルしていた。

写真は今回の公演の筋書の表紙。600円だからか背表紙がないので書棚に並べると見つけにくいのが難だが、床本が付いてくるのは有難い。
②「曽根崎心中」の感想はこちら


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2 コメント

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TB失敗~ (かしまし娘)
2006-03-06 09:32:52
まいど!

こちらは何度やってもTBダメでした~。



「バリバリかしまし娘~まいど!」で、「天網島時雨炬燵」と「心中天網島」はどー違うの?って、

密かに盛り上がっているので、覗いてみて下さい(^O^)



歌舞伎より文楽に、マイッチングまちこ先生~!!
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私も参加します~ (ぴかちゅう)
2006-03-07 00:16:32


文楽2回目だっていうのにズーズーしいのですが、私も下記のかしまし娘さんのところに参加させていただきました。

http://blog.goo.ne.jp/mkta5245/e/b541b9ec98b8489e3cf4aca50c7e755d

私のブログにも書いたのですが、治兵衛って精神的には子どもっぽい部分がかなりあるので大人の女である妻よりも小娘だった小春に共鳴したんですよ、きっと!そして本人たちさえ納得すれば死ぬ必要はないのに、妻子を犠牲にしたことを背負いながら生きていたくはなかった=不倫して一緒になったカップルなら当然背負っていくべき重荷を背負う事ができない、子どもの恋愛の末の心中決行!って勝手に読み込んじゃったんですけど、いかがでしょうか~?

天網島時雨炬燵」と「心中天網島」はどー違うの?ってあたりも勉強になりました。ありがとうございます。奥が深いな~。

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