絶妙の「オケ捌き」のフェドセーエフ
旧デイリークラシカルミュージック時代(1996.12.06 - )からN響を聴き続けているが、フェドセーエフは(N響から期待されるレパートリーが「ロシア物」に限られているが)極めて高い融合点を有している両者。「中期のチャイコフスキー」がフェドセーエフの心の中のテーマと感じるが、交響曲第4番も幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」もピアノ協奏曲第1番も見事に捌いていた。その手腕には感謝するばかりだ。
ピアニッシモ方向が無限かのように広大に広がる フェドセーエフ指揮N響のチャイコフスキー
フェドセーエフ は、作曲家に拠って表現を変える。ボロディンの「草原の雄大な風景」、ショスタコーヴィチの「裏表のあるユーモア」、アンコールのハチャトリアンの「バレエのリズムの強調の面白さ」など、各作曲家のチャームポイントをしっかり押さえた表現。その中で、チャイコフスキーでは「ピアニッシモの繊細な響き」が高い緊張感を産み、「短調作品の明暗の濃さ」を強調して映えさせる。
ピアノ協奏曲でのベレゾフスキーの「伴奏ぶり」は圧巻。スコアを読み切り、多くの指揮者が「被せてしまう」フレーズが全く被さらずピアノの音が浮き上がって聴こえる。ピアノと響きが重複しないトロンボーンなどは自由に大きめに吹かせているのだが、ピアノと響きが重なる弦楽器と木管楽器は抑制する。何と弾き易いことか!
現在、N響を定期的に振る指揮者で、デュトワ指揮を超す演奏を続けているのは、フェドセーエフ と ルイージ。ルイージが読響常任指揮者になる気配だが、フェドセーエフ はN響で1人もいなくなってしまった「名誉指揮者」に1日も早く就任して欲しい次第である。