■11月23日の上毛新聞に、安中市が1998年に入札したごみ焼却施設をめぐり、談合により不当に価格を吊り上げたとする公正取引委員会の審決を受けて、受注して建設を請負った株式会社タクマ(大阪市北区堂島浜)に対して、損害賠償を求めて提訴する方針を固めたことが報じられました。
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ごみ焼却施設受注のタクマ 談合か 安中市提訴 公取委が排除措置 6億4800万 賠償
安中市原市のごみ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」(1998年完成)を建設したタクマ(兵庫県尼崎市、手島肇社長)が公正取引委員会による談合行為の排除措置を受けた問題で、安中市は11月22日までに、同センター建設の入札で談合の疑いがあるとして、同社に約6億4800万円の損害賠償を求める訴えを起こす方針を固めた。30日開会の市議会11月定例会に、提訴について議決を求める議案を提出する。
問題をめぐっては、タクマを含む大手5社が94~98年に全国のごみ焼却施設の建設工事で談合を繰り返したとして、公取委が2006年、談合を認定する審決を出した。5社は審決取り消しを求めて東京高裁に提訴。高裁は請求を棄却し、最高裁も昨年10月に上告を退けて談合を認定した。
安中市の焼却施設は指名競争入札で行われ、タクマなど大手5社を含む9社が応札した。予定価格は約65億円で、タクマが約64億8600万円で落札。予定価格を下回ったのはタクマともう1社だけで、落札率は99.8%と極めて高かった。
公取委の審決では、大手5社がかかわらなかったごみ焼却施設の平均落札率(94~98年)が89.8%とされ、安中市との差は10ポイント。市は談合がなければ10%安く契約できたとして、落札価格の10%に当たる約6億4800万円を損害賠償額として求めることにした。岡田義弘市長は「市民に対する説明責任を果たすため、提訴する必要があると判断した」と話している。
この問題を巡っては、10月5日に同市の住民11人が市に損害賠償請求するよう勧告することを求め、市監査委員事務局に監査請求書を提出している。
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■これまで岡田市長は、タゴ51億円事件の責任追及と損害賠償請求のため当会が提訴した住民訴訟を始め、最近では安中市フリマ中止をめぐり市広報を私物化してイメージダウンさせられた市民団体が提訴した名誉毀損による損害賠償請求訴訟や、廃棄物処分場をめぐり業者から提訴された処分取消し訴訟など、自分が被告として関与してきた裁判では積極的に応訴してきました。
そして、法廷では原則として弁護士を使わない方針のもとに、ルール無視の無手勝流で、連戦連勝を誇り、無敗神話を築き上げてきました。
その岡田市長が、今回は、なぜか重い腰を上げて、初めて原告として大手企業を相手取って、提訴するつもりのようです。
■実は、この件で、当会は10月12日付で住民監査請求を提出しておりました。ところが企業名や応札金額など幾つかの訂正箇所の指摘を受けたので、あらためて補正したものを安中市監査委員事務局に、10月18日直接提出しました。
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安中市職員措置請求書
安中市長に関する措置請求の要旨
1.対象行為
平成7年(1995年)6月22日に開かれた安中・松井田衛生施設組合(当時)によるゴミ処理施設(日量90トンの焼却炉及び日量20トンの破砕機など)の入札で、税込み総額64億8591万円でタクマが一番札となり、続いて、三機工業64億8797万円、川崎重工67.8億円、日立造船67.9億円、日本鋼管(現在のJFEエンジニアリング)69.4億円、クボタ70.1億円、ユニチカ70.3億円、荏原製作所70.8億円、三菱重工業70.9億円という入札額の順位であった。当時、ストーカ式ゴミ焼却炉の相場は、ゴミ処理量1トン当りせいぜい5000万円といわれており、破砕機10トンのコストが数億円として、およそ50億円強が相場であり、65億円近い受注額は異常に高いので大変驚かされた記憶がある。
その後、タクマをはじめ、日立造船、JFEエンジニアリング、三菱重工業、川崎重工業が、全国各地の衛生施設組合が発注したごみ焼却施設建設の入札において、談合を繰り返した結果、建設価格が高騰し、自治体が多額の損害を受けている問題が浮き彫りにされた。
2.違法・不当の理由
そのため、公正取引委員会は平成11年(1999年)8月、安中・松井田衛生施設組合の案件を含む地方公共団体が発注するごみ処理施設建設の入札において、談合行為を繰り返していたとして、当該5社に排除勧告を行った。その後、この5社は、談合行為の排除措置を命じた、公正取引委員会の審決取り消しを求めて提訴したが、最高裁判所が平成21年(2009年)10月6日、5社の上告を棄却した。この結果、談合を認定した公正取引委員会の審決が確定した。
3.回復不能な損害額の発生
この最高裁の上告棄却によって、談合行為の認定が確定したことを受けて、安中市長は、直ちに損害額の算定をしたうえで、株式会社タクマに対して、速やかに損害賠償の支払いを請求しなければならない。請求額の目安としては、当時の落札率を計算し、公正取引委員会審決で示された、談合行為を繰り返していたタクマほか4社以外の業者が受注した平均落札率89.76%(要確認)との差が損害金であると断定し得るので、それを損害額として算出することが可能である。こうした手続きを踏まえ、もし、安中市からの損害賠償の支払い請求に対して、株式会社タクマが支払いを拒否した場合には、速やかに訴訟における法理を構築したうえで、訴訟を視野に入れた対応をとらなければならない。
4.監査委員に求める措置
以上のように、既に安中市に回復困難な損害が発生しているので、監査委員が以下の勧告をすることを求める。
「市長は、談合によって高値につり上げられた、工事費に使われた市民の血税を、きちんと取り戻すよう万全の手段を講じなければならない」
請求者
住所 安中市野殿980番地
職業 会社員(自署)
氏名 小川 賢(自署) 印
地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。
平成22年(2010年)10月12日
安中市監査委員あて
事実証明書:別紙のとおり
【別紙】事実証明書
・公取委の審決
・[別紙1]審査官の主張に係る5者が受注予定者を決定した工事一覧
・[別紙2]審査官の首長に係る査第107号証・1枚目の後に発注された工事の積み上げ状況
・[別紙3]ストーカ炉の建設工事一覧(平成6年度から平成10年度)
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■補正した職員措置請求書=住民監査請求書は、直ちに受理され、同日付で安中市監査委員から受理通知が発行されました。あわせて、10月27日(金)午後3時30分から、市役所監査委員室で、本件住民監査請求についての陳述と、追加の証拠があれば提出するように、案内通知が、10月20日(金)に届きました。
27日当日は、ぜひ陳述したかったのですが、どうしても仕事の関係で時間がとれず、当日の朝、書面による陳述書を監査委員事務局に提出しました。
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平成22年10月27日
安中市監査委員
安藤忠善様
中里 稔様
請求人 小川 賢
住民監査請求に係る陳述
この度は、平成22年10月12日付けで提出した住民監査請求書を同10月20日に受理賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、平成22年10月18日付け安監発第15444号で、貴殿らから「住民監査請求に係る陳述及び証拠の提出」について書面で通知をいただきました。私は陳述の意志がありますが、地方自治法第242条第6項による陳述の指定日である10月27日(水)午後3時30分は、どうしても仕事の都合がつかず、指定場所である安中市役所に出頭することができません。そのため、ここに書面にて陳述を行うことをご容赦賜わりたくお願い申し上げます。
私は、市民オンブズマン群馬の代表を平成15年からやっておりますが、談合問題については、犯罪であり、巨大な税金の無駄遣いだとして、市民オンブズマン群馬が所属する全国市民オンブズマン連絡会議においても、積極的に住民訴訟を奨励し、各地で談合が発覚した自治体発注の公共工事に対して、数多くの住民訴訟を起こし、多額の税金を自治体に返却させてきました。
ご案内のとおり、今回、私が提出した住民監査請求は、ゴミ焼却施設をめぐる談合問題に関連した事案であります。
平成11年8月13日に公正取引委員会は、ゴミ焼却炉メーカー大手5社(日立造船株式会社、JFEエンジニアリング〈日本鋼管〉株式会社、株式会社タクマ、三菱重工業株式会社)に対して、自治体のストーカ式焼却炉建設に際し、長年にわたり入札談合を行っており、独占禁止法に違反するとして排除勧告文を出しました。その要旨は「大手5社は、遅くとも平成6年4月から平成10年9月まで行っていた、受注予定者を受注させるようにしていた行為を、それ以降は行っていないことを確認すること。この期間に行われた87件の入札のうち少なくとも60件は不正談合が行われており、総額270億円の課徴金の納付を命じる。」というものです。
これら大手5社は、地方自治体関係者、ゴミ処理基本計画などを委託しているコンサルタント会社、建設計画に影響力のある政治家や地元の有力者等からより詳細な情報を把握していました。談合の手順は、まず大手5社間で受注予定者を決定します。価格は受注予定者が決め、受注予定者以外はその価格で受注できるように協力し、ときには協力の代償として、アウトサイダー(荏原、クボタなど16社)にも受注させるというものです。
これはまさに独占禁止法第2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に反していますが、大手5社は、この勧告を受け入れず異議申し立てをしました。
このため、公正取引委員会は再審査をしましたが、その結果、平成18年6月28日に、審決文を出しました。それによると、平成6年4月から平成10年9月17日までの4年間5か月余の間に、地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注した全連続式及び準連続式ストーカ炉の工事件数は87件(発注金額は約1兆1031億円)であるが、この内5社が受注した件数は66件(約9601億円)で、談合が成功した工事は60件で、その中に、安中・松井田衛生施設組合(当時)のゴミ処理施設(日量90トンの焼却炉及び日量20トンの破砕機)工事が含まれていました。
審決書ではさらに、「平成10年9月17日から平成16年7月31日までの発注件数54件、発注金額6,863億円のうち、大手5社の受注率は7割と依然として高い受注実績を有しており、勧告以降も大手5社に談合行為を改める対応が見られない。」「大手5社は、昭和54年12月13日、他のプラントメーカー2社とともに、公正取引委員会から警告を受けている。このとき、今後行わないとの確認書を提出した。にもかかわらず、本件違反に及んだものである。以上の諸事情からすれば、大手5社が同様の行為を行うおそれがあると認められる。大手5社の間には強固な強調的関係が確立しており、競争秩序が十分に回復していないことを示すものと認められる。」と指摘しました。
大手5社は、この審決も受け入れず、東京高裁に上告しましたが、東京高裁も平成20年9月26日、大手5社の「審決取り消しの訴え」を棄却しました。
大手5社は、さらに最高裁に上告していましたが、平成21年10月6日付で「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない」とする最高裁判決が出されました。
これを契機に、全国各地でゴミ焼却施設の談合問題で住民訴訟が活発化しました。オンブズマンの査定では、入札談合により平均で落札額の約20%程度が損害として認められるとしています。実際の住民訴訟では10%前後の損害賠償請求が提起されることが多いようです。
これらの談合が蔓延してきた背景には、地方自治体の談合に対する極めて甘い体質があると言われています。全国のオンブズマンや住民の努力によって、最高裁での勝訴判決は平成22年1月末時点で、8件(勝訴率88%)にのぼり、東京都4工場中3工場での和解(約75億3770万円)や高裁段階での賠償金額を合わせると246億円を下らない賠償金が談合メーカーに課せられています。ゴミ焼却炉談合事件という、談合犯罪企業集団との闘いで住民側が勝利し、談合という犯罪を許さない住民の意思が示されています。
本来、このような入札談合問題による自治体への損害の回復は、自治体が自ら率先して行わなくてはなりません。事実、積極的に大手5社に対して談合で不当に吊りあげられた落札額の返還を求めて、支払い請求を出す自治体が続出しています。
しかし、問題は多額の税金を投入する事業において、談合による損失に極めて鈍感であり、構造的な談合を容認する姿勢をとる自治体がまだたくさんあるのも事実です。公正取引委員会からの度重なる立ち入り検査、警告、排除勧告、審決等の情報がありながら、債権管理の責務を果たさず、損害賠償請求を行うこともなく、裁判の推移を見守るだけという傍観者的姿勢を、安中市だけはぜひとらないでもらいたいと思います。
また、安中市のその他の契約においても談合が行われていないかを再検討し、談合を許さない毅然とした自治体行政が行われるよう要望します。
安中市の場合は、そうでなくても、15年前に発覚した安中市土地開発公社をめぐる巨額詐欺横領事件が発生しており、いまでも元職員に杜撰な融資をした群馬銀行に対して、安中市・公社は103年ローンを払い続けており、その残高は依然として19億円を超えています。そのため、この事件は財政面でも安中市政に今でも影を落としており、住民へのさまざまなサービスが停滞して、他の自治体に比べて後進的な面があることは否めません。
そこで勝訴の確立の高いこのゴミ焼却施設建設に関する入札談合問題に対して、市長自ら積極的に訴訟指揮を念頭に、損害賠償交渉に取り組むよう、監査委員に置かれては、市長に対して強く勧告をするようお願い申し上げます。
以上
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■冒頭の上毛新聞の記事によれば、安中市は、いきなり提訴に向けた対応をとるようですが、既に㈱タクマに対して賠償額支払請求をして拒否されたのかもしれません。
また、記事によれば、落札額の1割を損害賠償相当額として請求する予定となっていますが、当会の試算では、住民監査請求書にも書いたとおり10億円程度が賠償相当と考えています。なぜならば、安中市のごみ焼却施設の入札では、予定価格と言うものが設定されていなかったからです。したがって、落札率の数値も算出できません。上毛新聞のいう落札率99.8%の根拠が確認できないためです。
いずれにしましても、住民監査請求の結果は、60日以内に当会に通知されることになりますので、12月定例市議会の討議結を踏まえた議決結果について、12月10日頃までには何らかの通知があるものと見られます。
当会としては、安中市が腰の引けた対応をしないように、今後の岡田市長の訴訟指揮の様子をしっかり監視してゆく所存です。
【ひらく会情報部】
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ごみ焼却施設受注のタクマ 談合か 安中市提訴 公取委が排除措置 6億4800万 賠償
安中市原市のごみ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」(1998年完成)を建設したタクマ(兵庫県尼崎市、手島肇社長)が公正取引委員会による談合行為の排除措置を受けた問題で、安中市は11月22日までに、同センター建設の入札で談合の疑いがあるとして、同社に約6億4800万円の損害賠償を求める訴えを起こす方針を固めた。30日開会の市議会11月定例会に、提訴について議決を求める議案を提出する。
問題をめぐっては、タクマを含む大手5社が94~98年に全国のごみ焼却施設の建設工事で談合を繰り返したとして、公取委が2006年、談合を認定する審決を出した。5社は審決取り消しを求めて東京高裁に提訴。高裁は請求を棄却し、最高裁も昨年10月に上告を退けて談合を認定した。
安中市の焼却施設は指名競争入札で行われ、タクマなど大手5社を含む9社が応札した。予定価格は約65億円で、タクマが約64億8600万円で落札。予定価格を下回ったのはタクマともう1社だけで、落札率は99.8%と極めて高かった。
公取委の審決では、大手5社がかかわらなかったごみ焼却施設の平均落札率(94~98年)が89.8%とされ、安中市との差は10ポイント。市は談合がなければ10%安く契約できたとして、落札価格の10%に当たる約6億4800万円を損害賠償額として求めることにした。岡田義弘市長は「市民に対する説明責任を果たすため、提訴する必要があると判断した」と話している。
この問題を巡っては、10月5日に同市の住民11人が市に損害賠償請求するよう勧告することを求め、市監査委員事務局に監査請求書を提出している。
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■これまで岡田市長は、タゴ51億円事件の責任追及と損害賠償請求のため当会が提訴した住民訴訟を始め、最近では安中市フリマ中止をめぐり市広報を私物化してイメージダウンさせられた市民団体が提訴した名誉毀損による損害賠償請求訴訟や、廃棄物処分場をめぐり業者から提訴された処分取消し訴訟など、自分が被告として関与してきた裁判では積極的に応訴してきました。
そして、法廷では原則として弁護士を使わない方針のもとに、ルール無視の無手勝流で、連戦連勝を誇り、無敗神話を築き上げてきました。
その岡田市長が、今回は、なぜか重い腰を上げて、初めて原告として大手企業を相手取って、提訴するつもりのようです。
■実は、この件で、当会は10月12日付で住民監査請求を提出しておりました。ところが企業名や応札金額など幾つかの訂正箇所の指摘を受けたので、あらためて補正したものを安中市監査委員事務局に、10月18日直接提出しました。
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安中市職員措置請求書
安中市長に関する措置請求の要旨
1.対象行為
平成7年(1995年)6月22日に開かれた安中・松井田衛生施設組合(当時)によるゴミ処理施設(日量90トンの焼却炉及び日量20トンの破砕機など)の入札で、税込み総額64億8591万円でタクマが一番札となり、続いて、三機工業64億8797万円、川崎重工67.8億円、日立造船67.9億円、日本鋼管(現在のJFEエンジニアリング)69.4億円、クボタ70.1億円、ユニチカ70.3億円、荏原製作所70.8億円、三菱重工業70.9億円という入札額の順位であった。当時、ストーカ式ゴミ焼却炉の相場は、ゴミ処理量1トン当りせいぜい5000万円といわれており、破砕機10トンのコストが数億円として、およそ50億円強が相場であり、65億円近い受注額は異常に高いので大変驚かされた記憶がある。
その後、タクマをはじめ、日立造船、JFEエンジニアリング、三菱重工業、川崎重工業が、全国各地の衛生施設組合が発注したごみ焼却施設建設の入札において、談合を繰り返した結果、建設価格が高騰し、自治体が多額の損害を受けている問題が浮き彫りにされた。
2.違法・不当の理由
そのため、公正取引委員会は平成11年(1999年)8月、安中・松井田衛生施設組合の案件を含む地方公共団体が発注するごみ処理施設建設の入札において、談合行為を繰り返していたとして、当該5社に排除勧告を行った。その後、この5社は、談合行為の排除措置を命じた、公正取引委員会の審決取り消しを求めて提訴したが、最高裁判所が平成21年(2009年)10月6日、5社の上告を棄却した。この結果、談合を認定した公正取引委員会の審決が確定した。
3.回復不能な損害額の発生
この最高裁の上告棄却によって、談合行為の認定が確定したことを受けて、安中市長は、直ちに損害額の算定をしたうえで、株式会社タクマに対して、速やかに損害賠償の支払いを請求しなければならない。請求額の目安としては、当時の落札率を計算し、公正取引委員会審決で示された、談合行為を繰り返していたタクマほか4社以外の業者が受注した平均落札率89.76%(要確認)との差が損害金であると断定し得るので、それを損害額として算出することが可能である。こうした手続きを踏まえ、もし、安中市からの損害賠償の支払い請求に対して、株式会社タクマが支払いを拒否した場合には、速やかに訴訟における法理を構築したうえで、訴訟を視野に入れた対応をとらなければならない。
4.監査委員に求める措置
以上のように、既に安中市に回復困難な損害が発生しているので、監査委員が以下の勧告をすることを求める。
「市長は、談合によって高値につり上げられた、工事費に使われた市民の血税を、きちんと取り戻すよう万全の手段を講じなければならない」
請求者
住所 安中市野殿980番地
職業 会社員(自署)
氏名 小川 賢(自署) 印
地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。
平成22年(2010年)10月12日
安中市監査委員あて
事実証明書:別紙のとおり
【別紙】事実証明書
・公取委の審決
・[別紙1]審査官の主張に係る5者が受注予定者を決定した工事一覧
・[別紙2]審査官の首長に係る査第107号証・1枚目の後に発注された工事の積み上げ状況
・[別紙3]ストーカ炉の建設工事一覧(平成6年度から平成10年度)
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■補正した職員措置請求書=住民監査請求書は、直ちに受理され、同日付で安中市監査委員から受理通知が発行されました。あわせて、10月27日(金)午後3時30分から、市役所監査委員室で、本件住民監査請求についての陳述と、追加の証拠があれば提出するように、案内通知が、10月20日(金)に届きました。
27日当日は、ぜひ陳述したかったのですが、どうしても仕事の関係で時間がとれず、当日の朝、書面による陳述書を監査委員事務局に提出しました。
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平成22年10月27日
安中市監査委員
安藤忠善様
中里 稔様
請求人 小川 賢
住民監査請求に係る陳述
この度は、平成22年10月12日付けで提出した住民監査請求書を同10月20日に受理賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、平成22年10月18日付け安監発第15444号で、貴殿らから「住民監査請求に係る陳述及び証拠の提出」について書面で通知をいただきました。私は陳述の意志がありますが、地方自治法第242条第6項による陳述の指定日である10月27日(水)午後3時30分は、どうしても仕事の都合がつかず、指定場所である安中市役所に出頭することができません。そのため、ここに書面にて陳述を行うことをご容赦賜わりたくお願い申し上げます。
私は、市民オンブズマン群馬の代表を平成15年からやっておりますが、談合問題については、犯罪であり、巨大な税金の無駄遣いだとして、市民オンブズマン群馬が所属する全国市民オンブズマン連絡会議においても、積極的に住民訴訟を奨励し、各地で談合が発覚した自治体発注の公共工事に対して、数多くの住民訴訟を起こし、多額の税金を自治体に返却させてきました。
ご案内のとおり、今回、私が提出した住民監査請求は、ゴミ焼却施設をめぐる談合問題に関連した事案であります。
平成11年8月13日に公正取引委員会は、ゴミ焼却炉メーカー大手5社(日立造船株式会社、JFEエンジニアリング〈日本鋼管〉株式会社、株式会社タクマ、三菱重工業株式会社)に対して、自治体のストーカ式焼却炉建設に際し、長年にわたり入札談合を行っており、独占禁止法に違反するとして排除勧告文を出しました。その要旨は「大手5社は、遅くとも平成6年4月から平成10年9月まで行っていた、受注予定者を受注させるようにしていた行為を、それ以降は行っていないことを確認すること。この期間に行われた87件の入札のうち少なくとも60件は不正談合が行われており、総額270億円の課徴金の納付を命じる。」というものです。
これら大手5社は、地方自治体関係者、ゴミ処理基本計画などを委託しているコンサルタント会社、建設計画に影響力のある政治家や地元の有力者等からより詳細な情報を把握していました。談合の手順は、まず大手5社間で受注予定者を決定します。価格は受注予定者が決め、受注予定者以外はその価格で受注できるように協力し、ときには協力の代償として、アウトサイダー(荏原、クボタなど16社)にも受注させるというものです。
これはまさに独占禁止法第2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に反していますが、大手5社は、この勧告を受け入れず異議申し立てをしました。
このため、公正取引委員会は再審査をしましたが、その結果、平成18年6月28日に、審決文を出しました。それによると、平成6年4月から平成10年9月17日までの4年間5か月余の間に、地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注した全連続式及び準連続式ストーカ炉の工事件数は87件(発注金額は約1兆1031億円)であるが、この内5社が受注した件数は66件(約9601億円)で、談合が成功した工事は60件で、その中に、安中・松井田衛生施設組合(当時)のゴミ処理施設(日量90トンの焼却炉及び日量20トンの破砕機)工事が含まれていました。
審決書ではさらに、「平成10年9月17日から平成16年7月31日までの発注件数54件、発注金額6,863億円のうち、大手5社の受注率は7割と依然として高い受注実績を有しており、勧告以降も大手5社に談合行為を改める対応が見られない。」「大手5社は、昭和54年12月13日、他のプラントメーカー2社とともに、公正取引委員会から警告を受けている。このとき、今後行わないとの確認書を提出した。にもかかわらず、本件違反に及んだものである。以上の諸事情からすれば、大手5社が同様の行為を行うおそれがあると認められる。大手5社の間には強固な強調的関係が確立しており、競争秩序が十分に回復していないことを示すものと認められる。」と指摘しました。
大手5社は、この審決も受け入れず、東京高裁に上告しましたが、東京高裁も平成20年9月26日、大手5社の「審決取り消しの訴え」を棄却しました。
大手5社は、さらに最高裁に上告していましたが、平成21年10月6日付で「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない」とする最高裁判決が出されました。
これを契機に、全国各地でゴミ焼却施設の談合問題で住民訴訟が活発化しました。オンブズマンの査定では、入札談合により平均で落札額の約20%程度が損害として認められるとしています。実際の住民訴訟では10%前後の損害賠償請求が提起されることが多いようです。
これらの談合が蔓延してきた背景には、地方自治体の談合に対する極めて甘い体質があると言われています。全国のオンブズマンや住民の努力によって、最高裁での勝訴判決は平成22年1月末時点で、8件(勝訴率88%)にのぼり、東京都4工場中3工場での和解(約75億3770万円)や高裁段階での賠償金額を合わせると246億円を下らない賠償金が談合メーカーに課せられています。ゴミ焼却炉談合事件という、談合犯罪企業集団との闘いで住民側が勝利し、談合という犯罪を許さない住民の意思が示されています。
本来、このような入札談合問題による自治体への損害の回復は、自治体が自ら率先して行わなくてはなりません。事実、積極的に大手5社に対して談合で不当に吊りあげられた落札額の返還を求めて、支払い請求を出す自治体が続出しています。
しかし、問題は多額の税金を投入する事業において、談合による損失に極めて鈍感であり、構造的な談合を容認する姿勢をとる自治体がまだたくさんあるのも事実です。公正取引委員会からの度重なる立ち入り検査、警告、排除勧告、審決等の情報がありながら、債権管理の責務を果たさず、損害賠償請求を行うこともなく、裁判の推移を見守るだけという傍観者的姿勢を、安中市だけはぜひとらないでもらいたいと思います。
また、安中市のその他の契約においても談合が行われていないかを再検討し、談合を許さない毅然とした自治体行政が行われるよう要望します。
安中市の場合は、そうでなくても、15年前に発覚した安中市土地開発公社をめぐる巨額詐欺横領事件が発生しており、いまでも元職員に杜撰な融資をした群馬銀行に対して、安中市・公社は103年ローンを払い続けており、その残高は依然として19億円を超えています。そのため、この事件は財政面でも安中市政に今でも影を落としており、住民へのさまざまなサービスが停滞して、他の自治体に比べて後進的な面があることは否めません。
そこで勝訴の確立の高いこのゴミ焼却施設建設に関する入札談合問題に対して、市長自ら積極的に訴訟指揮を念頭に、損害賠償交渉に取り組むよう、監査委員に置かれては、市長に対して強く勧告をするようお願い申し上げます。
以上
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■冒頭の上毛新聞の記事によれば、安中市は、いきなり提訴に向けた対応をとるようですが、既に㈱タクマに対して賠償額支払請求をして拒否されたのかもしれません。
また、記事によれば、落札額の1割を損害賠償相当額として請求する予定となっていますが、当会の試算では、住民監査請求書にも書いたとおり10億円程度が賠償相当と考えています。なぜならば、安中市のごみ焼却施設の入札では、予定価格と言うものが設定されていなかったからです。したがって、落札率の数値も算出できません。上毛新聞のいう落札率99.8%の根拠が確認できないためです。
いずれにしましても、住民監査請求の結果は、60日以内に当会に通知されることになりますので、12月定例市議会の討議結を踏まえた議決結果について、12月10日頃までには何らかの通知があるものと見られます。
当会としては、安中市が腰の引けた対応をしないように、今後の岡田市長の訴訟指揮の様子をしっかり監視してゆく所存です。
【ひらく会情報部】
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