↑渋川市小野子字裸岩の国有林地内の現場に設置されている工事内容を表示する看板。あたかも関東森林管理局が発注者であるかのような記載となっている。↑
■海なし県の群馬県ですが、第二次大戦前から豊富な水力発電の電気を利用した製錬事業者が操業しています。大同特殊鋼渋川工場(1937年操業開始、関東電気製錬㈱から1938年に関東製鋼㈱に社名変更、1964年の関東製鋼(株)と大同製鋼(株)の合併により大同特殊鋼㈱渋川工場となる)と、東邦亜鉛安中製錬所(1937年操業開始、日本亜鉛製錬㈱から1941年に東邦亜鉛㈱に社名変更)です。奇しくも日中戦争勃発の1937年に操業を開始し、鉄と非鉄材料の分野で戦後も事業を拡大し、副産物として大量の有害スラグを排出し、県内各地に不法投棄を続けてきたこと、政治力を駆使して行政に影響力を行使し、スラグ問題を矮小化してきてことなど、ブラックな話題として共通性の多い両事業者です。
さて、そのうち製鋼業を営む大同特殊鋼渋川工場では、年間2万5千トンのフッ素や六価クロムを含む鉄鋼スラグを副産物として排出していますが、その多くが公共工事の路盤材として堂々と不法投棄されてきました。その実態について、当会はこれまで継続して問題提起をしてきました。しかし、国も群馬県も渋川市をはじめとする県内自治体も、当会の指摘に対して極めて及び腰で、しかも不法行為を隠ぺいする姿勢を取り続けてきたことは、すでに報告してきたとおりです。
そうした中で、当会の渋川支部を通じて、久しぶりに大同スラグに関する情報提供が寄せられました。その内容たるや、国有林に有害スラグが投棄してあるにもかかわらず、国有林の管理責任者である国の機関の林野庁は、事の重大性に関心を示さず、有害スラグを撤去すべきところ、工法も含めて対策工事を原因者である大同特殊鋼㈱に丸投げして、自らはオブザーバー役として傍観者的に参加しているという、これまで行政の体たらくを十分認識してきた当会にとっても、俄かに信じられないような驚くべき情報提供でした。現地情報については当会渋川支部のブログ記事をご覧ください。
〇2023年08月17日:【レポート】夏休み恒例スラグ調査①↓
http://blog.livedoor.jp/lytton_cyousadan/archives/40595576.html
当会では、このとんでもない情報に接して、正式に文書にして、国に報告するとともに、直ちに是正措置を求める必要を痛感し、「上申書」として次の文書を作成し、令和5年7月11日(火)午前11時半に、前橋市岩神町の林野庁関東森林管理局を訪れました。
*****7/11林野庁関東森林管理局あて上申書*****
令和5年7月11日
〒371-8508群馬県前橋市岩神町4-16-25
関東森林管理局
森林整備部森林整備課 御中
電話:027-210-1155(代表)
写し:〒100-8952東京都千代田区霞が関1-2-1
林野庁 森林整備部整備課⇒国有林野部業務課 御中
電話:03-3502-8111(代表)
〒371-0801 群馬県前橋市文京町1丁目15番10号
市民オンブズマン群馬 代表 小川 賢
TEL: 090-5302-8312(代表・小川)
FAX: 027-224-6624(事務局)
上申書(群馬県渋川市の国有林地内におけるスラグ対策工事についての上申)
拝啓 日々益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
弊団体は、行政およびその関連機関を外部から監視し、当該機関による権限の不当な行使ないしは不行使による一般国民への権利利益侵害、並びに税金を原資とした公的資金の濫費について、調査および救済の勧告を図る活動をしている民間団体です。その活動方法としては、行政事件に関わる住民監査請求や住民訴訟にまで及ぶことがあり、そのための情報の入手手段としては、住民等からの情報提供のほか、行政への公開質問や情報開示請求等を活用しております。
さて、群馬県渋川市小野子字裸岩の国有林地内におけるスラグ対策工事について、下記に示す問題が指摘されます。そのため、直ちに中止して、スラグ撤去を行う工事を、関東森林局が発注者となって適切に実施するよう、何卒、ご検討の程、宜しくお願い申し上げます。
なお、ご検討結果について、お手数をおかけして恐縮ですが、7月28日(金)までに文書で上記連絡先FAX(027-224-6624)あてにお送りいただけますと幸いです。
記
1 工事の内容
本件工事は次の工事関係者によって施工されるスラグ対策工事です。(資料1参照)
・オブザーバー 関東森林管理局森林整備部森林整備課
・発注者 大同特殊鋼株式会社
・受注者 国土防災技術株式会社
本件工事が目的としているスラグ対策は、スラグを撤去せずに存置し、その上に下層路盤工としてクラッシャーランC-40、上層路盤工として粒度調整砕石M-40を敷き込み、表層工に密粒度アスコン(アスファルト)を施す工事のようです。スラグ撤去費が工事別数量内訳書に見られないことから、スラグにアスファルトでフタをする工事と考えられます。(資料2参照)
2 上申事項
本件工事は以下に示す理由から、いったん中止し、関東森林管理局が発注する工事としてスラグを撤去する工事に切り替えるよう求めます。
【理由その①】関東森林管理局が行う工事ではないこと。
地方財政法には次の規定があります。
*****
(国がその全部又は一部を負担する建設事業に要する経費)
第十条の二 地方公共団体が国民経済に適合するように総合的に樹立された計画に従つて実施しなければならない法律又は政令で定める土木その他の建設事業に要する次に掲げる経費については、国が、その経費の全部又は一部を負担する。
一 道路、河川、砂防、海岸、港湾等に係る重要な土木施設の新設及び改良に要する経費
二 林地、林道、漁港等に係る重要な農林水産業施設の新設及び改良に要する経費
二の二 地すべり防止工事及びぼた山崩壊防止工事に要する経費
三 重要な都市計画事業に要する経費
四 公営住宅の建設に要する経費
五 児童福祉施設その他社会福祉施設の建設に要する経費
六 土地改良及び開拓に要する経費
*****
国有林の林道工事については、国が建設工事をやらなければなりません、それを関東森林管理局がオブザーバーとはどんな工事なのでしょうか?
そのほかの法律もあろうかと思いますが、コンプライアンスの観点から、法令を遵守していただく意味からも、ぜひ関東森林管理局が発注者となって責任ある工事を適切に実施していただきますよう強く要請します。
もちろん大同特殊鋼株式会社が投棄したスラグの撤去費用について大同特殊鋼株式会社に費用負担を求めることについて、当会は異議を挟むものではありません。
【理由その②】有害物質を含む大同スラグは撤去し適切に処理しなければならないこと。
大同特殊鋼株式会社が投棄したスラグは、環境基準を超える六価クロムやフッ素が含まれており、群馬県が違法有害廃棄物に認定しています。(資料3参照)
この有害スラグを管理できる場所は廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第7条第1項第14号ハの管理型最終処分場のみです。国有林は私設の産業廃棄物処分場ではないので、スラグを撤去して管理型最終処分場で管理しなければならないはずです。
【理由その③】スラグによる住民の生活環境への汚染リスクを排除すること。
スラグが投棄されている渋川市小野子字裸岩の現場のすぐ下流に渋川市の水道で使用する貯水池があります。有害スラグが残置されたままですと、渋川市民が将来の水質汚染を心配し続けなければなりません。どうか、渋川市民の安全・安心な生活環境を保全できるよう、ご配慮ください。
3 関連(参考)資料等
以下の関連資料を参考までに添付します。
資料1:国有林地内「木の間林道地先作業道」設計鑑
資料2:国有林地内「木の間林道地先作業道」設計書(抜粋)
資料3:群馬県のスラグ廃棄物認定
敬具
=====関連資料=====
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■あらかじめアポイントを取り、当日、森林整備部森林整備課の森川真紀・課長補佐ほか2名の計3名と面談し、上申書を提出しました。そのうえで、発注者を大同ではなく国にあらため、有害なフッ素入りスラグを残置するのではなく、きちんと撤去し、高世代に環境リスクを残さないように配慮するように申し入れました。
そして、国交省の高崎河川国道事務所の場合、国がスラグの撤去のための工事を毎年度計画的に発注していること、負担はすべて大同に転嫁していることも説明しました。さらに、上記の文書で指定した期限である7月28日(金)までに文書で回答するように強く申し入れました。
そのあと当会は、別件で東京地裁に行って訴状を提出した後、隣の農林省のある合同庁舎を訪れ、窓口で「林道整備の担当部署である『森林整備部整備課』の担当者に面談したい」と申し入れました。すると窓口の女性があちこちあたったところ、国有林地内の林道は、「国有林野部の業務課」が担当部署であることが判明し、農林省の北館814室に行くよう告げられてゲートパスを渡されました。
そのパスを、農林省入口のゲートチェックにかざして中に入り、左手の奥をさらに右手に入り、突き当たりを2階に階段で上り、渡り廊下を通って北館の最上階の8階までエレベータで行きました。ようやくたどり着くと、林野庁国有林野部業務課の澤井孝仁・課長補佐(路網整備班担当)(電話03-6744-2325)と加藤正治・森林土木専門官が応対に出てきました。
そこで、午前中前橋の関東森林管理局を訪れ手渡しした上申書の写しを手渡し、同じく説明を彼らにしました。そして、大同スラグによる群馬県内各所において官民事業で大量に有害物質として違法な使われ方をしている実態を伝えました。果たして、どの程度身に染みたのかわかりませんが、いちおう一生懸命メモをとっていました。
■その後、7月27日(木)午後7時37分に関東森林管理局の森林整備部森林整備課の森川課長補佐から当会代表あてに電話で「明日7月28日が回答期限となっているが、局内での稟議に時間がかかっており、明日までに回答することが難しい。局内の手続きが完了したら、回答するようにしたい」という趣旨の連絡がありました。
しかし、現時点ではまだ当会への回答の時期について、関東森林管理局から何も連絡が来ておりません。このまま、うやむやにするつもりなのか、それともどのようなかたちで回答すべきか迷っているのか、もう少し様子を見たいと思います。
■なお、上述のとおり、大同スラグが上武国道に大量に不法投棄されてきた件についても、当会は一貫して追及してきました。こちらのほうも先日、国交省関東地方整備局高崎河川国道事務所に上申書を提出したところ、「文書での回答ではなく口頭での回答にしてほしい」として、 同事務所で担当課長から口頭で説明されたことがあります。
いずれにしても、大同スラグの不法投棄を助長してきた行政、とりわけ群馬県と渋川市への不信感は当会として根強いものがありますが、国についても、同様なのか、それとも、きちんとコンプライアンスに則った対応をしてくるのか、注目したいと思います。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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