■当会が東吾妻町萩生地区の圃場整備事業で、農道に大同のフッ素・六価クロム入り有毒生スラグが敷砂利として投棄されていた現場をはじめて2014年6月1日に確認して以来、4年7カ月が経過しました。「臭いものに蓋をしないでほしい」と農道舗装工事施工主体である吾妻農業所長に電話で懇願したにもかかわらず、その直後、有害スラグを撤去せずに舗装工事が行われたため、住民監査請求を2015年1月30日に提出しました。しかし、棄却されたため、2015年4月30日に住民訴訟を提起しました。以来ほぼ3年が経過しようとしていた2018年3月16日(金)午後1時10分に前橋地裁21号法廷で開かれた判決言渡弁論において、裁判長の「主文 原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」という発声が法廷に響き渡りました。この判決を確定させてしまうと、さまざまな方面で収拾のつかない事態が発生し、我が国の土木建設業界のみならず、生活及び営農環境面に甚大な影響を及ぼしかねないため、当会は2018年3月26日(月)に、前橋地裁で控訴手続きをとり、その後、舞台を東京高裁第22民事部424号法廷に移し、同8月15日(水)午後2時に第1回口頭弁論、10月31日(水)午後2時に第2回口頭弁論が東京高裁第22民事部424号法廷で開かれました。次回、2019年1月9日(水)午前10時半からの第3回口頭弁論が迫る中、12月17日に被控訴人から控訴審第1準備書面が届いたので、急遽内容を吟味し、反論をまとめ控訴人準備書面(2)として12月25日に東京地裁と被控訴人訴訟代理人宛てに郵送で提出しました。
一審敗訴以降のこの件に関する情報は、次の当会のブログ記事を参照ください。
○2018年3月27日:大同スラグ裁判・・・3月16日に前橋地裁が言渡した判決を不服としてオンブズマンが3月27日に控訴状提出!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2604.html
○2018年5月15日:大同スラグ裁判・・・3月16日の前橋地裁での敗訴判決を受けて、東京高裁に控訴理由書を提出!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2640.html
○2018年5月26日:大同スラグ裁判・・・控訴審の第1回口頭弁論が8月15日に東京高裁で開廷が決定!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2648.html
○2018年8月3日:大同スラグ控訴審…8月15日の第1回口頭弁論が迫り、被控訴人群馬県から控訴答弁書が到来!(前編)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2714.html
○2018年8月3日:大同スラグ控訴審…8月15日の第1回口頭弁論が迫り、被控訴人群馬県から控訴答弁書が到来!(後編)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2715.html
○2018年10月3日:大同スラグ控訴審…10月31日の第2回口頭弁論に向けて控訴人準備書面(1)を提出!(前編)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2768.html
○2018年10月3日:大同スラグ控訴審…10月31日の第2回口頭弁論に向けて控訴人準備書面(1)を提出!(後編)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2768.html
○2018年10月31日:大同スラグ控訴審…10月31日に開かれた第2回口頭弁論で次回結審が決定!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2798.html
○2018年12月18日:大同スラグ控訴審…1月9日の第3回口頭弁論が迫り被控訴人群馬県から控訴審第1準備書面が到来!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2845.html
■今回、控訴人として当会が反論した内容は次の通りです。
*****送付書兼受領書*****PDF ⇒ 20181225_soufusho_ken_zuryosho.pdf
〒371-0026
前橋市大手町3丁目4番16号
被控訴人訴訟代理人
弁護士 関 夕 三 郎 殿
TEL:027-235-2040
平成30年12月25日
〒379-0114
群馬県安中市野殿980番地
控訴人 小川 賢
TEL 090-5302-8312(小川携帯)
FAX 027-224-6624(市民オンブズマン群馬事務局鈴木気付)
送 付 書
事件の表示 : 東京高裁 平成30年(行コ)第139号
当 事 者 : 控 訴 人 小川 賢
被控訴人 群 馬 県
次回期日 : 平成31年1月9日(水)10時30分(第3回弁論)(←当会注:これは10時が正しい)
下記書類を送付致します。
1 控訴人控訴準備書面(2) 1通
2 証拠説明書(甲92~100) 1通
3 甲号証(92~100) 各1通
以 上
--------------------切らずにこのままでお送り下さい--------------------
受 領 書
上記書類、本日受領致しました。
平成30年 月 日
被控訴人 群 馬 県
被控訴人訴訟代理人
弁護士
東京高等裁判所第22民事部二に係(神山書記官殿)御中:FAX03-3580-4885
小川賢あて(市民オンブズマン群馬事務局長:鈴木庸気付) :FAX027-224-6624
*****控訴人準備書面(2)*****PDF ⇒ 20181225_kousonin_junbishomen_no.2.pdf
平成30年(行コ)第139号 住民訴訟控訴事件
控 訴 人 小川賢
被控訴人 群馬県
平成30年12月25日
東京高等裁判所第22民事部 御中
控訴人 小川 賢 印
控訴人準備書面(2)
頭書事件について、10月31日の口頭弁論における裁判所の訴訟指揮に基づき、被控訴人から反論の補充として12月14日付(同17日控訴人へ送達)で提出された控訴審第1準備書面を踏まえて、次のとおり陳述する。
第1 それでもなお、スラグを撤去しなければならない理由
1 控訴人は、控訴人準備書面(1)において、8月15日の口頭弁論における裁判所の訴訟指揮に基づき、「スラグを撤去しなければならない理由」を説明した。「撤去しなければならない理由」について、誤解を恐れず簡単に要約すれば、「廃棄物処理法の目的である土壌や地下水などの生活環境を保全するため」である。そのことは被控訴人の群馬県も承知している。
なぜならば、被控訴人は、大同特殊鋼と佐藤建設工業が共同でスラグ混合砕石を製造していた場所に、廃棄物の看板が掲げさせ注意喚起を行い、後に正式に廃棄物認定を公表したり、スラグ混合砕石を製造していた場所のスラグ及び直下の汚染土壌を撤去させたりした事実が厳然として存在しているからである。
2 新たな理由による撤去事例
平成30年8月、群馬県県土整備部が所管する高崎渋川線バイパスに投棄されていたスラグについて、工事を施工した建設会社に修補工事が請求された。これは、道路工事を行う際に工事請負契約が群馬県と工事請負者の間で締結されるが、群馬県内の工事請負契約が工事請負約款に基づいて締結されることによる修補工事である(甲第92号証)
具体的には、その工事請負契約約款第41条第1項「発注者は、工事目的物に瑕疵があるときは、受注者に対して相当の期間を定めてその瑕疵を請求し、又は修補に代え、若しくは修補とともに損害の賠償を請求することができる」とする瑕疵担保責任の規定が適用されて修補工事が請求された(甲第92号証3-2頁)。瑕疵の内容は「保護路肩の施工において、土壌汚染対策法に定める基準値を超過した建設資材を使用している。」となっている(甲第92号証3-3頁)。
被控訴人群馬県においては、建設工事において「土壌汚染対策法に定める基準値を超過した建設資材を使用」した場合、工事の目的物に瑕疵がある状態と認識し、受注者に対して修補を請求するとする考え方をもっていることが分かる。
工事請負契約約款に基づいて農道工事の請負契約が発注者と受注者との間で締結されるのは吾妻農業事務所の農道工事の場合も同様であるはずである。であるならば、控訴人がスラグ混合砕石を製造していた場所に鉱さいという分類の廃棄物の看板が掲げられたことを吾妻農業事務所に伝えた時点で、被控訴人は工事目的物の瑕疵の修補を請求するかどうかの検討のため、環境部局に助言を求めたり、本件農道整備工事に使用されたスラグを調査したりすべきであったのに、被控訴人はそれを怠った。環境部局に助言を求めることは、被控訴準備書面(1)9で被控訴人が説明している事である。
群馬県で行われる建設工事で、準拠すべきマニュアルたる群馬県土木工事標準仕様書(甲第91号証)は、群馬県が発注する工事に係る、契約の適正な履行の確保を図るためのものであると定めているが、被控訴人は 群馬土木工事標準仕様書に反し契約の適正な履行の確保を怠り、強引に臭いものに蓋をするため、本件農道舗装工事を強行した。控訴人準備書面(1)で述べたように被控訴人は、本件農道に使用されたスラグを環境分析調査するべきであったのに懈怠したため、環境部局に助言を求めなかった懈怠と合わせ、違法な支出により群馬県に損害を与えた。
第2 被控訴人第1準備書面に対する反論
1 「第2 他県の類似事例」の「1 岐阜市の不法投棄事件」について
(1)被控訴人はこのことについて、「当該事案は,標高約60メートルから標高約140メートルにかけての広い範囲にわたり,膨大な量の産業廃棄物が山積みにされた事案のようであり(甲87•17頁),本件とは事案を異にする。」と述べているが、控訴人は次の(2)と(3)の通り反論する。
(2)被控訴人は、「広範囲」と「山積み」という表面的な事象をとらえて、「本件とは事案を異にする」と控訴人の主張を最後まで読んでいただけていないようである。しかし「広範囲」か否か「山積み」か否かといった差異はあるが、「岐阜市の不法投棄事件」と本件萩生川西地区のスラグ投棄事件とは、土壌と接する方法により廃棄物が投棄されている点で同様の事案である。
「岐阜市の不法投棄事件」では、環境省の行政処分の指針に基づき慎重に廃棄物対策を考えていることから、同じく環境省の行政処分の指針から技術的指導を仰ぐ被控訴人群馬県も同様に考えるべきであることから控訴人は例示した。
岐阜市では膨大な量の産業廃棄物が投棄されていたが、土壌汚染を極一部しか起こしていなかったことから、原則として原因者に措置命令等を発出すべきだとしながら、岐阜市においては行政が代わりに廃棄物対策をする際に被覆をおこなった。
群馬県の大同スラグ事件においては、大同スラグを混合していた場所のスラグや土壌を撤去する指示を発出していたことや、土壌汚染の可能性が指摘されていることから、原因者等に対してスラグを撤去する措置命令他を発出し、萩生川西地区のスラグを撤去しなければならなかった。
本件農道整備工事においては、工事を行った南波建設(株)やスラグを投棄した(株)佐藤建設工業は元気に営業を続けており、請負契約に基づく瑕疵担保責任の追及(甲92号証)や措置命令(法第19条の5)など様々な方法によりスラグを撤去させるべきであるが、吾妻農業事務所長の懈怠によりスラグ投棄者の責任を追及することができたにもかかわらず、被覆を行っており間違った対策が実施されたと言わざるを得ない。
(3)被控訴人にはせめて、控訴人の主張を最後まで読むという姿勢を、我々住民に対して示してほしい。それなのに、住民の生活環境・営農環境に対して重大な脅威となるこの事件の本質を、「山積」かどうかでしか、スラグを撤去する理由を読み解こうとしていない。被控訴人のこのような行政として恥ずべき不真面目な態度は、残念でならないし、極めて遺憾である。
2 「第2 他県の類似事例」の「2 4都道府県にわたるフェロシルト事件」について
(1)被控訴人はこのことについて、「当該事案は,有害物質を含むフェロシルト(廃硫酸等から精製する赤土のような形状•外観の固形物。甲88•3頁参照)が造成地の盛り土等に用いられた事案で あるが,これが雨によって河川に流れ出て河川が真っ赤に染まり,地域住民から苦情が出るなどの事情が認められたというのであり(甲88・6頁),本件とは事案を異にする。」と述べているが、控訴人は次の(2)と(3)の通り反論する。
(2)被控訴人の主張する「造成地の盛り土等に用いられた事案であるが,これが雨によって河川に流れ出て河川が真っ赤に染まり,地域住民から苦情が出るなどの事情」の指摘は、フェロシルト事件が、世の中の明るみにでるきっかけを説明しているにすぎない。
河川が真っ赤に染まった原因を調査した結果が盛り土等に用いられた有害物質を含むフェロシルトだったのであり、その盛り土材が土壌と接する方法により使用された点で、本件農道整備工事のスラグ投棄事件と類似している。
広く4都道府県にわたりスラグ撤去の措置命令が発出されたり、自主回収が実施されたりしたが、その基本的な対応としては、河川が実際に汚染されているという事象だけに留まらず、土壌を汚染するおそれがあるということだけで、汚染を生活環境に及ぼすおそれがあるフェロシルトを撤去する措置命令が発出されているのである。
このようにまともな対策をとった4都道府県に倣って、群馬県においても土壌を汚染するおそれがある大同スラグを撤去する措置命令等を発出できないわけがない。被控訴人は大同特殊鋼と佐藤建設工業が共同でスラグ混合砕石を製造していた場所ではスラグを撤去させる改善を指示したのに、農村地帯にスラグが投棄された農道では、薄い舗装を施しただけで、有害な大同スラグはいまだに集落の中に残置されたままとなっており、農業用かんがい水や下層土壌への汚染の脅威を招いているのである。
(3)ここでも被控訴人の反論は、萩生川西地区の大同スラグ不法投棄事案とフェロシルト事件との態様が、「完全に一致しているかどうか」にしか焦点が当てられていない。控訴人の主張をきちんと読んでいただけない被控訴人の行政としてあるまじき不遜な態度は非常に遺憾であり、残念でならない。
3 「第3 控訴答弁書に対する反論」について
(1)被控訴人は次のとおり;
「1 はじめに
控訴人の主張のうち,反論が必要と思われるのは,以下の2点と思われる。
①『鉄鋼スラグに関する連絡会議』は,建設関係部門のみで構成されており(乙31,甲90),環境部局が関与していないから,会議としての公正性・適格性に欠け,引いては,同会議で確認された対応方針(乙31添付の議題1『鉄鋼スラグを含む材料の対応方針(案)』)は不当な内容である(控訴人準備書面(1)・36ないし39頁)。
②独立行政法人水資源機構は渋川工場スラグを撤去したのであり(甲63),それ以外にも,国土交通省は八ッ場ダム関連工事で使用された鉄鋼スラグを撤去しており,民間も基本的には大同特殊鋼株式会社によって撤去が行われており,それらと本件農道は同様に扱われるべきである(控訴人準備書面(1)・30頁)。
以下,順に反論する。
2 ①について
まず,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』が設置された時期は,規約(甲90)の施行日を設置日とみれば,平成26年11月26日である。これは,最初の立入検査から約10か月後である。
その構成員は,控訴人が指摘するとおり,群馬県,渋川市及び国土交通省関東地方整備局の各建設部門であり,群馬県の環境部局は加わっていなかった(甲90の別紙-1)。これは,「鉄鋼スラグに関する連絡会議」は,公共工事の実施主体が情報を共有し,対応を検討するための場として設けられたものだったことによる(乙34)。
そして,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』は,会議設置から約1年後である平成27年11月13日,同日開催の第3回会議において,基本方針を確認した(乙31)。」
と述べているが、控訴人は次の(2)の通り反論する。
(2)公共工事の実施主体が情報を共有し、取るべき対応とは、文字通り公共工事建設にかかわる情報とその対応である。「鉄鋼スラグに関する連絡会議」においては公共工事に使われてしまったスラグに係る事後的な情報共有とその対応である。具体的には工事受注者と取り交わした工事契約の適正な履行の確保を図ること等についての対応であると考えられる(甲91号証)。これを裏付けるように平成30年になって新たに発覚した群馬県県土整備部が整備を進める高崎渋川線バイパスにスラグが投棄された事件では、工事契約に基づき工事の瑕疵に関わる修補工事が請求された(甲92号証)。
片や平成26年にスラグ混合砕石が製造された場所に注意喚起のため廃棄物の看板が掲げられ、平成27年9月11日に正式に廃棄物認定された大同スラグは、工事受注契約の取り決め等とは別の、廃棄物処理法の目的たる生活環境の保全の観点(法第1条)から撤去の措置命令等の対策を取らなければならない事象であり、工事契約の適正な履行等の観点からの対策ではない。
「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が出した対応方針はスラグの撤去のみならず、被覆という対応方針である。被覆という対応方針は土壌汚染対策法上の対策であり、専門的知識を有する環境部局により検討されるべき対策である。
(3)被控訴人は、続いて次のとおり;
「(2) 他方,群馬県の環境部局は,渋川工場スラグの問題が発覚した後,平成26年1月から2月にかけて,大同特殊鋼株式会社渋川工場等に立入検査を実施し,所要の調査を行った後,最初の立入検査から約1年8か月後の平成27年9月11日,一連の調査結果を公表した(甲57)。そして,その中で,「判明した使用箇所はすべて県がリスト化し,今後も継続して,地下水の常時監視の中で,環境への影響について監視を行っていく。」との方針を示している(同3項)。)
と述べているが、控訴人は次の(4)の通り反論する。
(4)甲57号証は「大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について」となっており、その中で第3項は「3 鉄鋼スラグの使用箇所の解明及び環境への影響調査」となっており文字通り「廃棄物処理法に基づく調査結果の中で今後も、「鉄鋼スラグの使用箇所の解明」を今後も進め、その解明ごとに「環境への影響調査」を行うと表明している。これは措置命令などの廃棄物処理法上の廃棄物対策ではなく、「廃棄物処理法に基づく調査」を今後も継続して進めると表明しているのである。
(5)被控訴人はまた、次のとおり;
「(3) ここで,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』が基本方針を確認したのは,上述のとおり平成27年11月13日であったが(乙31),これは,群馬県の環境部局が 上述の方針を公表した平成27年9月11日(甲57)から約2か月後であった。
そして,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』が確認した基本方針は,群馬県の環境部局が公表した方針に反するものではなかった。」
と主張するが、控訴人は次の(6)の通り反論する。
(6)群馬県環境部局は、「廃棄物処理法に基づく調査」を今後も継続する、具体的には「判明した使用箇所はすべて県がリスト化し,今後も継続して,地下水の常時監視の中で,環境への影響について監視を行っていく。」と調査を継続すると方針を公表しているにすぎない、調査継続の方針を「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が助言として取り入れることと、廃棄物に認定されたスラグの法に基づいた適正処理をすることとは別問題である。
(7)被控訴人の次の;
「なお,群馬県の環境部局は,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』から対応方針について相談を受けたが,事柄の性質上,個別の状況に応じて助言すべきものであるため,環境部局として統一的な方針は示さなかった(乙34)。」
との主張に対して、控訴人は次の(7)の通り反論する。
(8)群馬県の環境部局は、『大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃物処理法に基づく調査結果について』を公表し、スラグを正式に廃棄物に認定すること、加えて調査を継続していくことを表明している(甲57号証)。この公表と措置命令(法第19条の5)などの今後取るべき廃棄物処理法に基づいた対策は別である。他方、工事実施主体の工事受注契約の適正な履行の観点から『鉄鋼スラグに関する連絡会議』から対応方針について相談を受けたが、廃棄物認定や調査の継続を決定している段階で統一的な方針を示さなかった状況を乙34号証は示している。
ちなみに乙34号証のなかで岩瀬・廃棄物リサイクル課長は「環境森林部としては、スラグの含有量や溶出量が使用されている場所により異なるので、統一的な方針を示していない。個々の場所について、公共工事実施主体に対して、生活環境面から助言している」と発言しているが、この発言は前後二つに分けて考えると分かりやすい。
前段の「環境森林部としては、スラグの含有量や溶出量が使用されている場所により異なるので、統一的な方針を示していない。」はスラグの含有量や溶出量に言及し、廃棄物処理法で準用すべき土壌汚染対策法上の環境基準に触れていることから、スラグの廃棄物処理法上の対応方針についてであると思われ、しかも統一的な方針を未だ示せない状況であるとの発言であると推測できる。しかしスラグを廃棄物認定する際(甲57号証)に廃棄物リサイクル課がスラグを土壌と接する方法で使用した場合の土壌汚染のおそれを認定したことから(甲57号証(7))、また法が生活環境の保全について「おそれ」で対策を検討できることから、もはや使用されている場所ごとに検討を加える必要がなく、この岩瀬課長の発言は誤りであると考えられる。
後段の「個々の場所について、公共工事実施主体に対して、生活環境面から助言している」とは今後も継続して行う環境調査の結果を、生活環境面から助言していることを表しているに過ぎない。
(9)被控訴人は;
「(4) 以上から,「鉄鋼スラグに関する連絡会議」は,その構成員に環境部局が加わっていなかったが,会議の設置目的に照らしてそのこと自体が会議の公正性・適格性を失わせるものではなく、また、同会議が平成27年11月13日に確認した対応方針は,群馬県の環境部局が方針を公表してから約2か月後に確認しており, その内容は上記方針に反しないものであるから,何ら不当なところはない。」
と主張するが、控訴人は次の(10)の通り反論する。
(10)「鉄鋼スラグに関する連絡会議」の会議設置目的は、「連絡会議は、大同特殊鋼(株)渋川工場から出荷された鉄鋼スラグに関して、国、県及び関係市町村の各公共工事事業者が、相互に情報共有等を図り、連携した対応等を行うことを目的とする。」(乙31,甲90)となっており、環境部局が加わっていないことが会議の公正性・適格性を失わせるものではないと主張されても、控訴人としては困る。
控訴人は、「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が廃棄物処理法上の対策を検討するべき者ではない、と主張しているのであり、せめて群馬県の環境部局を会議に参加させれば違う意見も出てくるであろうと考えたが、被控訴人には伝わらず残念でならない。
控訴人は、ここに改めて「「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が、専門的知識を有する環境部局でないことから、廃棄物に認定されたスラグの廃棄物処理法上の対策について全く無力であり、意味のない無効な組織であることを主張する。
スラグ対策は、群馬県環境部局が主導して対策しなければならない。
(11)加えて乙34号証についてもう一つ指摘しておきたい。
岩瀬廃棄物・リサイクル課長が「廃棄物処理法では、生活環境保全上支障がある場合は、撤去等を命じることができるが、今までの調査結果によると、そのようなものはない。ただし、スラグが地上に露出している状態で使用されている箇所があり、常時立ち入ることで経口摂取による健康影響への懸念がある。スラグは土壌ではないが、『土壌汚染対策法』に含有量を超える土壌がある場合のルールがあるので、それをスラグに用いて箇所ごとに対応を助言している。」と発言しているが、この発言は次の点で
誤っていると言わざるを得ない。
ア 廃棄物処理法上の生活環境保全上の支障箇所は無いとの発言であるが、廃棄物認定では土壌と接する方法によりスラグを使用すると土壌を汚染するおそれに言及しており(甲第57号証)、土壌は生活環境であることから(環境基本法第16条)、スラグにより土壌という生活環境の保全上の支障をきたすことになる。よって、上記の発言は誤りである。群馬県議会での同課長の答弁は口頭であることから、即座に答えた際の誤りであろうと考えられる。
イ 「スラグは土壌ではない」との発言であるが、スラグは廃棄物である(甲第57号証)。
ウ 廃棄物であるスラグについて、『「土壌汚染対策法」に含有量を超える土壌がある場合のルールがあるので、それをスラグに用いて箇所ごとに対応を助言している。』との発言であるが、廃棄物は土壌汚染対策法ではなく廃棄物処理法により箇所ごとではなく、統一的な対応を考えなければならない。
岩瀬課長の発言は、群馬県議会における口頭での答弁であることを鑑みれば、即座に答えた際の誤りであるか、或いは、工事実施主体である県土整備部を頂点とする群馬県庁内の部署間相互の力関係によって生ずる、いわゆる「忖度」に由来するものであろうと考えられる。
(12)被控訴人は;
「3②について
独立行政法人水資源機構については,平成26年3月に実施した路盤に使用されていた渋川工場スラグの調査(8か所)では,8か所でふっ素の含有量と溶出量が いずれも基準値を超過し,3か所で六価クロムの溶出量が基準値を超過するという結果であったが,同じ時期に実施した土壌調査(3か所)では環境基準値以下の結果が得られ),水質試験でも基準値を超えることはなかったので(乙35の2•2頁), 客観的に撤去が不可欠な状況とまでは言えなかったが,農業用水•水道用水の水源 に近く,水道事業者等からの強い撤去要望があったことから,撤去が行われたものであり(乙35の1),本件とは事情が異なる。」
と主張するが、控訴人は次の(13)の通り反論する。
(13)被控訴人が「客観的に撤去が不可欠な状況とまでは言えなかった」と主張しているが、この被控訴人が使う日本語の醜さはいったいどうしたことであろうか?およそ公務員の使う言葉とは思えない。
被控訴人の主張は「客観的に撤去が不可欠な状況」なのか、限りなく「客観的に撤去が不可欠な状況」に近い状況なのか、「客観的に撤去が不可欠」とは異なるのか、よく分からないし、その根拠も示されていない。
乙35の2・2頁には、鉄鋼スラグがその含有するフッ素や六価クロムについて土壌環境基準値を超過している状況が示されており、生活環境である土壌や地下水を汚染させる恐れを示していることから、法の生活環境を保全する目的を全うするため「客観的に撤去が不可欠な状況」であることを示しているのは明らかである。
(14)被控訴人は「また,八ッ場ダム関連工事については,群馬県の所管ではないため,渋川工場スラグが撤去された場所を特定するには至らなかったが,渋川工場スラグが使用された場所の中には水没予定地が含まれていたとのことであり(乙36),路盤材として使用された本件とはやはり事情が異なる。」と主張するが、控訴人は次の(15)の通り反論する。
(15)水没予定地が含まれていたことと、路盤材として使用された本件とはどう事情が異なるのだろうか?「鉄鋼スラグに関する連絡会議」は、八ッ場ダム関連工事も含めて、“スラグを使用してしまった国と県と渋川市による公共工事の工事契約の適正履行等の観点からの情報共有とその対策”がその設置目的であることを鑑みれば、当然に群馬県が路盤材として使用されたことと本件の関連性が不明などと主張すること自体、「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が、形ばかりの組織であった事を被控訴人が認めることになり、被控訴人の主張には矛盾が生じるため、被控訴人の主張は失当である。
水没予定地のスラグは、本件スラグと同様大同特殊鋼渋川工場スラグであると被控訴人は主張しており、同予定地には同渋川工場からスラグが運搬され、使用されたという状況が説明されている。路盤材としてなのか、それ以外のスラグの不法投棄としてなのか、その使用目的が何かはわからないが、スラグが土壌と接する方法により使用されている状況という点では、本件と事情は同様である。
被控訴人の主張は全体に説明不足で理解に苦しむが、大同特殊鋼由来のスラグは、土壌と接する方法で使用すると周辺や下層の土壌をフッ素で汚染し、やがては地下水を汚染すると説明がなされている(甲57号証(2))。
また水資源機構の調査結果から、場所によっては、六価クロムも検出されていることが確認されている。水没予定地においてもこの状況は同様であり、水没予定地ではダム湖の水圧がかかって土壌に水が浸みこむことから、更に土壌汚染や地下水汚染が進むことが容易に想像され得る。
水没予定地は、ダムの完成後、湛水されてしまうと、もはやスラグの存在を確認することや、調査することが容易にできなくなる。そうなると、土中、かつ水中にあるスラグから汚染された水がダム湖の水や地下水にどのように染み出してくるか分からなくなる。乙36号証では、国土交通省が撤去後に安全確認をすることが記述されている。逆に言えば、撤去しない限り、安全でないことが明示されているのである。
(16)最後に被控訴人は「被控訴人は乙31号証の一定の方針に、『他の自治体・及び民間も基本的にこれに添って対応しており』と控訴人準備書面(1)4(4)において、『鉄鋼スラグに関する連絡会議』の対応方針(案)に皆が沿っている」と主張しているが、国の機関である水資源機構のみならず、「鉄鋼スラグに関する連絡会議」のメンバーである当の国土交通省も、県内自治体の渋川市でさえも、スラグを撤去・片づけている。
また民間の場合は、基本的に大同特殊鋼(株)により撤去・片づけが行われている(甲第93号証~甲第100号証)。
被控訴人の主張は事実と異なっており信用できない。
以上
*****証拠説明書*****PDF ⇒ 20181225_shouko_setumeisho_kou_no.92100.pdf
平成30年(行コ)第139号 住民訴訟控訴事件
控 訴 人 小川賢
被控訴人 群馬県
平成30年12月25日
東京高等裁判所第22民事部 御中
証拠説明書(甲92~100)
控訴人 小 川 賢 ㊞
●号証:甲92の1
PDF ⇒ kou_no.921_20181030_kaiji_tuuchi.jpg
○標目:公文書部分開示決定通知書
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年10月29日
○作成者:被控訴人(県土整備部)
○立証趣旨:被控訴人が平成23年度に公共工事(高渋バイパス舗装新設工事)で岡田工務店と佐藤工務店(実質は岡田工務店)が実施した資材(スラグ)に鉛・ヒ素が入っていたとして撤去されたため、事実関係を確認すべく開示請求をしたところ被控訴人が部分開示をした事実。
●号証:甲92の2
PDF ⇒ kou_no.922_2018103103_kasitanpo_kouji_seikyuu_bunsho_20180727.pdf
○標目:工事目的物の瑕疵に係る修補工事の請求について
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年7月27日
○作成者:被控訴人(高崎土木事務所)
○立証趣旨:被控訴人が施工業者の岡田工務店と佐藤工務店に対して、瑕疵の内容を示し、有害物質を含む建築資材(スラグ)を撤去するよう修補を請求した事実。
●号証:甲92の3
PDF ⇒ kou_no.9231_20181031091_okada_koumuten_sekou_keikakusho_p0107.pdf
kou_no.9232_20181031092_okada_koumuten_sekou_keikakusho_p0814.pdf
kou_no.9233_20181031093_okada_koumuten_sekou_keikakusho_p1518.pdf
○標目:施工計画書(前半を抜粋)
○原本・写しの別;写し
○作成年月日:平成30年8月20日頃
○作成者:岡田工務店
○立証趣旨:被控訴人の請求により、撤去されたスラグが、産業廃棄物として、最終処分場に持ち込まれ、その証として産業廃棄物のマニフェストが提出されることを示す事実。
●号証:甲93
PDF ⇒ kou_no.93_aganoharamachi_niyoru_slu_tekkyo_nituite.pdf
○標目:長野原町による大同特殊鋼(株)の鉄鋼スラグ後含む砕石を使用した工事箇所について
○原本・写しの別:写し
○作成年月日;平成30年5月13日
○作成者:長野原町
○立証趣旨:長野原町の参考資料の中で、国土交通省が、大沢地区代替地や上湯原代替地などの八ッ場ダム建設工事に関連した工事で使用されたスラグを撤去している。この代替地は、水没住民の移転予定地であり、スラグは水没しないのに撤去された。
●号証:甲94
PDF ⇒ kou_no.941_gunma_kengikai_no_situgi_from_yanba_asitanokai.pdf
kou_no.942_gunma_kengikai_no_situgi_from_yanba_asitanokai.pdf
○標目:2017年12月の群馬県議会産経土木委員会の鉄鋼スラグが残されていることについての質疑の様子
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年1月28日
○作成者:八ッ場あしたの会
○立証趣旨;2/7頁に、国土交通省が建設を進める八ッ場ダム建設工事に伴う、川原湯地区水没住民の移転代替地(打越代替地)の鉄鋼スラグが搬入業者により撤去されている事実。このスラグは水没予定ではない。また天然石とスラグを混合したスラグ混合砕石は土壌まで汚染していた。
●号証:甲95
PDF ⇒ kou_no.951_sibukawashi_no_slug_tekkyo.pdf
kou_no.952_sibukawashi_no_slug_tekkyo.pdf
○標目:渋川市の市道1-5590号線スラグ対策工事の見積参考資料。
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年9月10日
○作成者:渋川市
○立証趣旨:平成30年9月10日に、渋川市が市道のスラグを撤去する工事を入札した事実。この場所は渋川市が将来にわたり管理できる市道であり、鉄鋼スラグ連絡会議が出した(案)乙31と異なっている。10/15頁に建設廃棄物の有無が明示され、スラグ路盤材が直下の汚染土壌と共に撤去され、近くに廃棄物処分場がたくさんある中、遠く富山県にまでスラグを運搬している事実。
●号証:甲96
PDF ⇒ kou_no.96_joubu_kokudo...
○標目:国土交通省・上武道路環境対策その1工事の様子
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月22日
○作成者:原告
○立証趣旨:甲79号証9頁に示されているH25上武道路田口改良工事により投棄されたスラグを上武道路環境対策その1工事という名称で国土交通省が撤去した様子。この場所は国が将来にわたり管理できる国道であり、鉄鋼スラグ連絡会議が出した(案)乙31と異なっている。
●号証:甲97の1
PDF ⇒ kou_no.971_20181127_qu...
○標目:弊質問状に対するご回答について(お願い)
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年11月27日
○作成者:控訴人
○立証趣旨:民間工事に使用されたスラグが撤去された事実を確認するために、スラグを駐車場に投棄された醤油メーカーに対して、その後撤去したのかどうか、事実関係を質問して回答を求めたこと。
●号証:甲97の2
PDF ⇒ kou_no.972_20181208_re...
○標目:上記の質問状に対する回答書
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月7日
○作成者:ヤマキ株式会社
○立証趣旨:民間である醤油メーカーの駐車場に路盤材としてスラグが投棄されたため、原因者の費用負担でスラグを撤去させた事実。
●号証:甲98
PDF ⇒ kou_no.98_sibukawashi_minka_slug_tekkyo.pdf
○標目:庭に投棄されたスラグが撤去されたことを証する押印済み書面
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月20日
○作成者:高橋宗彦
○立証趣旨:群馬県渋川市石原の民家の庭に投棄されていたスラグが撤去され事実を民家の住民が証する書面。被控訴人は鉄鋼スラグ連絡会議の方針(乙31)に「民間も基本的にこれに添ってスラグは被覆対応しており」などと主張しているが、民間工事においてもスラグは撤去されている事実。
●号証:甲99
PDF ⇒ kou_no.99_daido_tokushukou_chushajo_no_slug_tekkyo.pdf
○標目:民間工事に使用されたスラグが撤去された事例。
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月24日
○作成者:控訴人
○立証趣旨:大同特殊鋼(株)渋川工場の通勤用駐車場のスラグ撤去の様子。被控訴人は鉄鋼スラグ連絡会議の方針(乙31)に「民間も基本的にこれに添って対応しており」などと主張しているが、大同特殊鋼(株)自身が真っ先に自身の利用駐車場のスラグを撤去している。
●号証:甲100
PDF ⇒ kou_no.100_ishihara_kodoukyo_no_slug_tekkyo.pdf
○標目:国道17号石原跨道橋の高架下のスラグを撤去している様子
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月24日
○作成者:控訴人
○立証趣旨:国土交通省が管理している高架下に投棄されたスラグを人知れず、大同特殊鋼に撤去させている事例。被控訴人は「鉄鋼スラグ連絡会議の方針(乙31)に添って対応しており」などと主張しているが、将来にわたり管理できる道路において被覆ではなく撤去が行われており、鉄鋼スラグ連絡会議の対応方針などに従っているのは被控訴人の群馬県だけ、という事実。
以上
**********
■来年1月9日の第3回口頭弁論で裁判長は本件を結審させる予定であることを既に表明しています。今回、群馬県の滅茶苦茶な主張に対して、最後にもう一度反論をしたためてみました。当会として、証拠=甲号証がちょうど100号となりました。
平成最後となる新年早々に東京高裁で開かれる第3回口頭弁論で予定通り結審した場合、おそらく判決は年度末の3月末になる可能性が高いと思われます。
果たして、平成の時代の終わりと共に、群馬県の県土を覆うスラグの有害な汚染物質の撤去に向けた裁判所の裁定が下されるのか、それとも、新しい元号のもと、さらに上級審で争うことになるのか、平成の時代が大詰めを迎えるなか、新年1月9日(水)午前10時30分、注目の大同スラグ訴訟の控訴審第3回口頭弁論は東京高裁424号法廷で開かれます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
一審敗訴以降のこの件に関する情報は、次の当会のブログ記事を参照ください。
○2018年3月27日:大同スラグ裁判・・・3月16日に前橋地裁が言渡した判決を不服としてオンブズマンが3月27日に控訴状提出!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2604.html
○2018年5月15日:大同スラグ裁判・・・3月16日の前橋地裁での敗訴判決を受けて、東京高裁に控訴理由書を提出!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2640.html
○2018年5月26日:大同スラグ裁判・・・控訴審の第1回口頭弁論が8月15日に東京高裁で開廷が決定!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2648.html
○2018年8月3日:大同スラグ控訴審…8月15日の第1回口頭弁論が迫り、被控訴人群馬県から控訴答弁書が到来!(前編)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2714.html
○2018年8月3日:大同スラグ控訴審…8月15日の第1回口頭弁論が迫り、被控訴人群馬県から控訴答弁書が到来!(後編)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2715.html
○2018年10月3日:大同スラグ控訴審…10月31日の第2回口頭弁論に向けて控訴人準備書面(1)を提出!(前編)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2768.html
○2018年10月3日:大同スラグ控訴審…10月31日の第2回口頭弁論に向けて控訴人準備書面(1)を提出!(後編)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2768.html
○2018年10月31日:大同スラグ控訴審…10月31日に開かれた第2回口頭弁論で次回結審が決定!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2798.html
○2018年12月18日:大同スラグ控訴審…1月9日の第3回口頭弁論が迫り被控訴人群馬県から控訴審第1準備書面が到来!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2845.html
■今回、控訴人として当会が反論した内容は次の通りです。
*****送付書兼受領書*****PDF ⇒ 20181225_soufusho_ken_zuryosho.pdf
〒371-0026
前橋市大手町3丁目4番16号
被控訴人訴訟代理人
弁護士 関 夕 三 郎 殿
TEL:027-235-2040
平成30年12月25日
〒379-0114
群馬県安中市野殿980番地
控訴人 小川 賢
TEL 090-5302-8312(小川携帯)
FAX 027-224-6624(市民オンブズマン群馬事務局鈴木気付)
送 付 書
事件の表示 : 東京高裁 平成30年(行コ)第139号
当 事 者 : 控 訴 人 小川 賢
被控訴人 群 馬 県
次回期日 : 平成31年1月9日(水)10時30分(第3回弁論)(←当会注:これは10時が正しい)
下記書類を送付致します。
1 控訴人控訴準備書面(2) 1通
2 証拠説明書(甲92~100) 1通
3 甲号証(92~100) 各1通
以 上
--------------------切らずにこのままでお送り下さい--------------------
受 領 書
上記書類、本日受領致しました。
平成30年 月 日
被控訴人 群 馬 県
被控訴人訴訟代理人
弁護士
東京高等裁判所第22民事部二に係(神山書記官殿)御中:FAX03-3580-4885
小川賢あて(市民オンブズマン群馬事務局長:鈴木庸気付) :FAX027-224-6624
*****控訴人準備書面(2)*****PDF ⇒ 20181225_kousonin_junbishomen_no.2.pdf
平成30年(行コ)第139号 住民訴訟控訴事件
控 訴 人 小川賢
被控訴人 群馬県
平成30年12月25日
東京高等裁判所第22民事部 御中
控訴人 小川 賢 印
控訴人準備書面(2)
頭書事件について、10月31日の口頭弁論における裁判所の訴訟指揮に基づき、被控訴人から反論の補充として12月14日付(同17日控訴人へ送達)で提出された控訴審第1準備書面を踏まえて、次のとおり陳述する。
第1 それでもなお、スラグを撤去しなければならない理由
1 控訴人は、控訴人準備書面(1)において、8月15日の口頭弁論における裁判所の訴訟指揮に基づき、「スラグを撤去しなければならない理由」を説明した。「撤去しなければならない理由」について、誤解を恐れず簡単に要約すれば、「廃棄物処理法の目的である土壌や地下水などの生活環境を保全するため」である。そのことは被控訴人の群馬県も承知している。
なぜならば、被控訴人は、大同特殊鋼と佐藤建設工業が共同でスラグ混合砕石を製造していた場所に、廃棄物の看板が掲げさせ注意喚起を行い、後に正式に廃棄物認定を公表したり、スラグ混合砕石を製造していた場所のスラグ及び直下の汚染土壌を撤去させたりした事実が厳然として存在しているからである。
2 新たな理由による撤去事例
平成30年8月、群馬県県土整備部が所管する高崎渋川線バイパスに投棄されていたスラグについて、工事を施工した建設会社に修補工事が請求された。これは、道路工事を行う際に工事請負契約が群馬県と工事請負者の間で締結されるが、群馬県内の工事請負契約が工事請負約款に基づいて締結されることによる修補工事である(甲第92号証)
具体的には、その工事請負契約約款第41条第1項「発注者は、工事目的物に瑕疵があるときは、受注者に対して相当の期間を定めてその瑕疵を請求し、又は修補に代え、若しくは修補とともに損害の賠償を請求することができる」とする瑕疵担保責任の規定が適用されて修補工事が請求された(甲第92号証3-2頁)。瑕疵の内容は「保護路肩の施工において、土壌汚染対策法に定める基準値を超過した建設資材を使用している。」となっている(甲第92号証3-3頁)。
被控訴人群馬県においては、建設工事において「土壌汚染対策法に定める基準値を超過した建設資材を使用」した場合、工事の目的物に瑕疵がある状態と認識し、受注者に対して修補を請求するとする考え方をもっていることが分かる。
工事請負契約約款に基づいて農道工事の請負契約が発注者と受注者との間で締結されるのは吾妻農業事務所の農道工事の場合も同様であるはずである。であるならば、控訴人がスラグ混合砕石を製造していた場所に鉱さいという分類の廃棄物の看板が掲げられたことを吾妻農業事務所に伝えた時点で、被控訴人は工事目的物の瑕疵の修補を請求するかどうかの検討のため、環境部局に助言を求めたり、本件農道整備工事に使用されたスラグを調査したりすべきであったのに、被控訴人はそれを怠った。環境部局に助言を求めることは、被控訴準備書面(1)9で被控訴人が説明している事である。
群馬県で行われる建設工事で、準拠すべきマニュアルたる群馬県土木工事標準仕様書(甲第91号証)は、群馬県が発注する工事に係る、契約の適正な履行の確保を図るためのものであると定めているが、被控訴人は 群馬土木工事標準仕様書に反し契約の適正な履行の確保を怠り、強引に臭いものに蓋をするため、本件農道舗装工事を強行した。控訴人準備書面(1)で述べたように被控訴人は、本件農道に使用されたスラグを環境分析調査するべきであったのに懈怠したため、環境部局に助言を求めなかった懈怠と合わせ、違法な支出により群馬県に損害を与えた。
第2 被控訴人第1準備書面に対する反論
1 「第2 他県の類似事例」の「1 岐阜市の不法投棄事件」について
(1)被控訴人はこのことについて、「当該事案は,標高約60メートルから標高約140メートルにかけての広い範囲にわたり,膨大な量の産業廃棄物が山積みにされた事案のようであり(甲87•17頁),本件とは事案を異にする。」と述べているが、控訴人は次の(2)と(3)の通り反論する。
(2)被控訴人は、「広範囲」と「山積み」という表面的な事象をとらえて、「本件とは事案を異にする」と控訴人の主張を最後まで読んでいただけていないようである。しかし「広範囲」か否か「山積み」か否かといった差異はあるが、「岐阜市の不法投棄事件」と本件萩生川西地区のスラグ投棄事件とは、土壌と接する方法により廃棄物が投棄されている点で同様の事案である。
「岐阜市の不法投棄事件」では、環境省の行政処分の指針に基づき慎重に廃棄物対策を考えていることから、同じく環境省の行政処分の指針から技術的指導を仰ぐ被控訴人群馬県も同様に考えるべきであることから控訴人は例示した。
岐阜市では膨大な量の産業廃棄物が投棄されていたが、土壌汚染を極一部しか起こしていなかったことから、原則として原因者に措置命令等を発出すべきだとしながら、岐阜市においては行政が代わりに廃棄物対策をする際に被覆をおこなった。
群馬県の大同スラグ事件においては、大同スラグを混合していた場所のスラグや土壌を撤去する指示を発出していたことや、土壌汚染の可能性が指摘されていることから、原因者等に対してスラグを撤去する措置命令他を発出し、萩生川西地区のスラグを撤去しなければならなかった。
本件農道整備工事においては、工事を行った南波建設(株)やスラグを投棄した(株)佐藤建設工業は元気に営業を続けており、請負契約に基づく瑕疵担保責任の追及(甲92号証)や措置命令(法第19条の5)など様々な方法によりスラグを撤去させるべきであるが、吾妻農業事務所長の懈怠によりスラグ投棄者の責任を追及することができたにもかかわらず、被覆を行っており間違った対策が実施されたと言わざるを得ない。
(3)被控訴人にはせめて、控訴人の主張を最後まで読むという姿勢を、我々住民に対して示してほしい。それなのに、住民の生活環境・営農環境に対して重大な脅威となるこの事件の本質を、「山積」かどうかでしか、スラグを撤去する理由を読み解こうとしていない。被控訴人のこのような行政として恥ずべき不真面目な態度は、残念でならないし、極めて遺憾である。
2 「第2 他県の類似事例」の「2 4都道府県にわたるフェロシルト事件」について
(1)被控訴人はこのことについて、「当該事案は,有害物質を含むフェロシルト(廃硫酸等から精製する赤土のような形状•外観の固形物。甲88•3頁参照)が造成地の盛り土等に用いられた事案で あるが,これが雨によって河川に流れ出て河川が真っ赤に染まり,地域住民から苦情が出るなどの事情が認められたというのであり(甲88・6頁),本件とは事案を異にする。」と述べているが、控訴人は次の(2)と(3)の通り反論する。
(2)被控訴人の主張する「造成地の盛り土等に用いられた事案であるが,これが雨によって河川に流れ出て河川が真っ赤に染まり,地域住民から苦情が出るなどの事情」の指摘は、フェロシルト事件が、世の中の明るみにでるきっかけを説明しているにすぎない。
河川が真っ赤に染まった原因を調査した結果が盛り土等に用いられた有害物質を含むフェロシルトだったのであり、その盛り土材が土壌と接する方法により使用された点で、本件農道整備工事のスラグ投棄事件と類似している。
広く4都道府県にわたりスラグ撤去の措置命令が発出されたり、自主回収が実施されたりしたが、その基本的な対応としては、河川が実際に汚染されているという事象だけに留まらず、土壌を汚染するおそれがあるということだけで、汚染を生活環境に及ぼすおそれがあるフェロシルトを撤去する措置命令が発出されているのである。
このようにまともな対策をとった4都道府県に倣って、群馬県においても土壌を汚染するおそれがある大同スラグを撤去する措置命令等を発出できないわけがない。被控訴人は大同特殊鋼と佐藤建設工業が共同でスラグ混合砕石を製造していた場所ではスラグを撤去させる改善を指示したのに、農村地帯にスラグが投棄された農道では、薄い舗装を施しただけで、有害な大同スラグはいまだに集落の中に残置されたままとなっており、農業用かんがい水や下層土壌への汚染の脅威を招いているのである。
(3)ここでも被控訴人の反論は、萩生川西地区の大同スラグ不法投棄事案とフェロシルト事件との態様が、「完全に一致しているかどうか」にしか焦点が当てられていない。控訴人の主張をきちんと読んでいただけない被控訴人の行政としてあるまじき不遜な態度は非常に遺憾であり、残念でならない。
3 「第3 控訴答弁書に対する反論」について
(1)被控訴人は次のとおり;
「1 はじめに
控訴人の主張のうち,反論が必要と思われるのは,以下の2点と思われる。
①『鉄鋼スラグに関する連絡会議』は,建設関係部門のみで構成されており(乙31,甲90),環境部局が関与していないから,会議としての公正性・適格性に欠け,引いては,同会議で確認された対応方針(乙31添付の議題1『鉄鋼スラグを含む材料の対応方針(案)』)は不当な内容である(控訴人準備書面(1)・36ないし39頁)。
②独立行政法人水資源機構は渋川工場スラグを撤去したのであり(甲63),それ以外にも,国土交通省は八ッ場ダム関連工事で使用された鉄鋼スラグを撤去しており,民間も基本的には大同特殊鋼株式会社によって撤去が行われており,それらと本件農道は同様に扱われるべきである(控訴人準備書面(1)・30頁)。
以下,順に反論する。
2 ①について
まず,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』が設置された時期は,規約(甲90)の施行日を設置日とみれば,平成26年11月26日である。これは,最初の立入検査から約10か月後である。
その構成員は,控訴人が指摘するとおり,群馬県,渋川市及び国土交通省関東地方整備局の各建設部門であり,群馬県の環境部局は加わっていなかった(甲90の別紙-1)。これは,「鉄鋼スラグに関する連絡会議」は,公共工事の実施主体が情報を共有し,対応を検討するための場として設けられたものだったことによる(乙34)。
そして,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』は,会議設置から約1年後である平成27年11月13日,同日開催の第3回会議において,基本方針を確認した(乙31)。」
と述べているが、控訴人は次の(2)の通り反論する。
(2)公共工事の実施主体が情報を共有し、取るべき対応とは、文字通り公共工事建設にかかわる情報とその対応である。「鉄鋼スラグに関する連絡会議」においては公共工事に使われてしまったスラグに係る事後的な情報共有とその対応である。具体的には工事受注者と取り交わした工事契約の適正な履行の確保を図ること等についての対応であると考えられる(甲91号証)。これを裏付けるように平成30年になって新たに発覚した群馬県県土整備部が整備を進める高崎渋川線バイパスにスラグが投棄された事件では、工事契約に基づき工事の瑕疵に関わる修補工事が請求された(甲92号証)。
片や平成26年にスラグ混合砕石が製造された場所に注意喚起のため廃棄物の看板が掲げられ、平成27年9月11日に正式に廃棄物認定された大同スラグは、工事受注契約の取り決め等とは別の、廃棄物処理法の目的たる生活環境の保全の観点(法第1条)から撤去の措置命令等の対策を取らなければならない事象であり、工事契約の適正な履行等の観点からの対策ではない。
「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が出した対応方針はスラグの撤去のみならず、被覆という対応方針である。被覆という対応方針は土壌汚染対策法上の対策であり、専門的知識を有する環境部局により検討されるべき対策である。
(3)被控訴人は、続いて次のとおり;
「(2) 他方,群馬県の環境部局は,渋川工場スラグの問題が発覚した後,平成26年1月から2月にかけて,大同特殊鋼株式会社渋川工場等に立入検査を実施し,所要の調査を行った後,最初の立入検査から約1年8か月後の平成27年9月11日,一連の調査結果を公表した(甲57)。そして,その中で,「判明した使用箇所はすべて県がリスト化し,今後も継続して,地下水の常時監視の中で,環境への影響について監視を行っていく。」との方針を示している(同3項)。)
と述べているが、控訴人は次の(4)の通り反論する。
(4)甲57号証は「大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について」となっており、その中で第3項は「3 鉄鋼スラグの使用箇所の解明及び環境への影響調査」となっており文字通り「廃棄物処理法に基づく調査結果の中で今後も、「鉄鋼スラグの使用箇所の解明」を今後も進め、その解明ごとに「環境への影響調査」を行うと表明している。これは措置命令などの廃棄物処理法上の廃棄物対策ではなく、「廃棄物処理法に基づく調査」を今後も継続して進めると表明しているのである。
(5)被控訴人はまた、次のとおり;
「(3) ここで,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』が基本方針を確認したのは,上述のとおり平成27年11月13日であったが(乙31),これは,群馬県の環境部局が 上述の方針を公表した平成27年9月11日(甲57)から約2か月後であった。
そして,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』が確認した基本方針は,群馬県の環境部局が公表した方針に反するものではなかった。」
と主張するが、控訴人は次の(6)の通り反論する。
(6)群馬県環境部局は、「廃棄物処理法に基づく調査」を今後も継続する、具体的には「判明した使用箇所はすべて県がリスト化し,今後も継続して,地下水の常時監視の中で,環境への影響について監視を行っていく。」と調査を継続すると方針を公表しているにすぎない、調査継続の方針を「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が助言として取り入れることと、廃棄物に認定されたスラグの法に基づいた適正処理をすることとは別問題である。
(7)被控訴人の次の;
「なお,群馬県の環境部局は,『鉄鋼スラグに関する連絡会議』から対応方針について相談を受けたが,事柄の性質上,個別の状況に応じて助言すべきものであるため,環境部局として統一的な方針は示さなかった(乙34)。」
との主張に対して、控訴人は次の(7)の通り反論する。
(8)群馬県の環境部局は、『大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃物処理法に基づく調査結果について』を公表し、スラグを正式に廃棄物に認定すること、加えて調査を継続していくことを表明している(甲57号証)。この公表と措置命令(法第19条の5)などの今後取るべき廃棄物処理法に基づいた対策は別である。他方、工事実施主体の工事受注契約の適正な履行の観点から『鉄鋼スラグに関する連絡会議』から対応方針について相談を受けたが、廃棄物認定や調査の継続を決定している段階で統一的な方針を示さなかった状況を乙34号証は示している。
ちなみに乙34号証のなかで岩瀬・廃棄物リサイクル課長は「環境森林部としては、スラグの含有量や溶出量が使用されている場所により異なるので、統一的な方針を示していない。個々の場所について、公共工事実施主体に対して、生活環境面から助言している」と発言しているが、この発言は前後二つに分けて考えると分かりやすい。
前段の「環境森林部としては、スラグの含有量や溶出量が使用されている場所により異なるので、統一的な方針を示していない。」はスラグの含有量や溶出量に言及し、廃棄物処理法で準用すべき土壌汚染対策法上の環境基準に触れていることから、スラグの廃棄物処理法上の対応方針についてであると思われ、しかも統一的な方針を未だ示せない状況であるとの発言であると推測できる。しかしスラグを廃棄物認定する際(甲57号証)に廃棄物リサイクル課がスラグを土壌と接する方法で使用した場合の土壌汚染のおそれを認定したことから(甲57号証(7))、また法が生活環境の保全について「おそれ」で対策を検討できることから、もはや使用されている場所ごとに検討を加える必要がなく、この岩瀬課長の発言は誤りであると考えられる。
後段の「個々の場所について、公共工事実施主体に対して、生活環境面から助言している」とは今後も継続して行う環境調査の結果を、生活環境面から助言していることを表しているに過ぎない。
(9)被控訴人は;
「(4) 以上から,「鉄鋼スラグに関する連絡会議」は,その構成員に環境部局が加わっていなかったが,会議の設置目的に照らしてそのこと自体が会議の公正性・適格性を失わせるものではなく、また、同会議が平成27年11月13日に確認した対応方針は,群馬県の環境部局が方針を公表してから約2か月後に確認しており, その内容は上記方針に反しないものであるから,何ら不当なところはない。」
と主張するが、控訴人は次の(10)の通り反論する。
(10)「鉄鋼スラグに関する連絡会議」の会議設置目的は、「連絡会議は、大同特殊鋼(株)渋川工場から出荷された鉄鋼スラグに関して、国、県及び関係市町村の各公共工事事業者が、相互に情報共有等を図り、連携した対応等を行うことを目的とする。」(乙31,甲90)となっており、環境部局が加わっていないことが会議の公正性・適格性を失わせるものではないと主張されても、控訴人としては困る。
控訴人は、「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が廃棄物処理法上の対策を検討するべき者ではない、と主張しているのであり、せめて群馬県の環境部局を会議に参加させれば違う意見も出てくるであろうと考えたが、被控訴人には伝わらず残念でならない。
控訴人は、ここに改めて「「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が、専門的知識を有する環境部局でないことから、廃棄物に認定されたスラグの廃棄物処理法上の対策について全く無力であり、意味のない無効な組織であることを主張する。
スラグ対策は、群馬県環境部局が主導して対策しなければならない。
(11)加えて乙34号証についてもう一つ指摘しておきたい。
岩瀬廃棄物・リサイクル課長が「廃棄物処理法では、生活環境保全上支障がある場合は、撤去等を命じることができるが、今までの調査結果によると、そのようなものはない。ただし、スラグが地上に露出している状態で使用されている箇所があり、常時立ち入ることで経口摂取による健康影響への懸念がある。スラグは土壌ではないが、『土壌汚染対策法』に含有量を超える土壌がある場合のルールがあるので、それをスラグに用いて箇所ごとに対応を助言している。」と発言しているが、この発言は次の点で
誤っていると言わざるを得ない。
ア 廃棄物処理法上の生活環境保全上の支障箇所は無いとの発言であるが、廃棄物認定では土壌と接する方法によりスラグを使用すると土壌を汚染するおそれに言及しており(甲第57号証)、土壌は生活環境であることから(環境基本法第16条)、スラグにより土壌という生活環境の保全上の支障をきたすことになる。よって、上記の発言は誤りである。群馬県議会での同課長の答弁は口頭であることから、即座に答えた際の誤りであろうと考えられる。
イ 「スラグは土壌ではない」との発言であるが、スラグは廃棄物である(甲第57号証)。
ウ 廃棄物であるスラグについて、『「土壌汚染対策法」に含有量を超える土壌がある場合のルールがあるので、それをスラグに用いて箇所ごとに対応を助言している。』との発言であるが、廃棄物は土壌汚染対策法ではなく廃棄物処理法により箇所ごとではなく、統一的な対応を考えなければならない。
岩瀬課長の発言は、群馬県議会における口頭での答弁であることを鑑みれば、即座に答えた際の誤りであるか、或いは、工事実施主体である県土整備部を頂点とする群馬県庁内の部署間相互の力関係によって生ずる、いわゆる「忖度」に由来するものであろうと考えられる。
(12)被控訴人は;
「3②について
独立行政法人水資源機構については,平成26年3月に実施した路盤に使用されていた渋川工場スラグの調査(8か所)では,8か所でふっ素の含有量と溶出量が いずれも基準値を超過し,3か所で六価クロムの溶出量が基準値を超過するという結果であったが,同じ時期に実施した土壌調査(3か所)では環境基準値以下の結果が得られ),水質試験でも基準値を超えることはなかったので(乙35の2•2頁), 客観的に撤去が不可欠な状況とまでは言えなかったが,農業用水•水道用水の水源 に近く,水道事業者等からの強い撤去要望があったことから,撤去が行われたものであり(乙35の1),本件とは事情が異なる。」
と主張するが、控訴人は次の(13)の通り反論する。
(13)被控訴人が「客観的に撤去が不可欠な状況とまでは言えなかった」と主張しているが、この被控訴人が使う日本語の醜さはいったいどうしたことであろうか?およそ公務員の使う言葉とは思えない。
被控訴人の主張は「客観的に撤去が不可欠な状況」なのか、限りなく「客観的に撤去が不可欠な状況」に近い状況なのか、「客観的に撤去が不可欠」とは異なるのか、よく分からないし、その根拠も示されていない。
乙35の2・2頁には、鉄鋼スラグがその含有するフッ素や六価クロムについて土壌環境基準値を超過している状況が示されており、生活環境である土壌や地下水を汚染させる恐れを示していることから、法の生活環境を保全する目的を全うするため「客観的に撤去が不可欠な状況」であることを示しているのは明らかである。
(14)被控訴人は「また,八ッ場ダム関連工事については,群馬県の所管ではないため,渋川工場スラグが撤去された場所を特定するには至らなかったが,渋川工場スラグが使用された場所の中には水没予定地が含まれていたとのことであり(乙36),路盤材として使用された本件とはやはり事情が異なる。」と主張するが、控訴人は次の(15)の通り反論する。
(15)水没予定地が含まれていたことと、路盤材として使用された本件とはどう事情が異なるのだろうか?「鉄鋼スラグに関する連絡会議」は、八ッ場ダム関連工事も含めて、“スラグを使用してしまった国と県と渋川市による公共工事の工事契約の適正履行等の観点からの情報共有とその対策”がその設置目的であることを鑑みれば、当然に群馬県が路盤材として使用されたことと本件の関連性が不明などと主張すること自体、「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が、形ばかりの組織であった事を被控訴人が認めることになり、被控訴人の主張には矛盾が生じるため、被控訴人の主張は失当である。
水没予定地のスラグは、本件スラグと同様大同特殊鋼渋川工場スラグであると被控訴人は主張しており、同予定地には同渋川工場からスラグが運搬され、使用されたという状況が説明されている。路盤材としてなのか、それ以外のスラグの不法投棄としてなのか、その使用目的が何かはわからないが、スラグが土壌と接する方法により使用されている状況という点では、本件と事情は同様である。
被控訴人の主張は全体に説明不足で理解に苦しむが、大同特殊鋼由来のスラグは、土壌と接する方法で使用すると周辺や下層の土壌をフッ素で汚染し、やがては地下水を汚染すると説明がなされている(甲57号証(2))。
また水資源機構の調査結果から、場所によっては、六価クロムも検出されていることが確認されている。水没予定地においてもこの状況は同様であり、水没予定地ではダム湖の水圧がかかって土壌に水が浸みこむことから、更に土壌汚染や地下水汚染が進むことが容易に想像され得る。
水没予定地は、ダムの完成後、湛水されてしまうと、もはやスラグの存在を確認することや、調査することが容易にできなくなる。そうなると、土中、かつ水中にあるスラグから汚染された水がダム湖の水や地下水にどのように染み出してくるか分からなくなる。乙36号証では、国土交通省が撤去後に安全確認をすることが記述されている。逆に言えば、撤去しない限り、安全でないことが明示されているのである。
(16)最後に被控訴人は「被控訴人は乙31号証の一定の方針に、『他の自治体・及び民間も基本的にこれに添って対応しており』と控訴人準備書面(1)4(4)において、『鉄鋼スラグに関する連絡会議』の対応方針(案)に皆が沿っている」と主張しているが、国の機関である水資源機構のみならず、「鉄鋼スラグに関する連絡会議」のメンバーである当の国土交通省も、県内自治体の渋川市でさえも、スラグを撤去・片づけている。
また民間の場合は、基本的に大同特殊鋼(株)により撤去・片づけが行われている(甲第93号証~甲第100号証)。
被控訴人の主張は事実と異なっており信用できない。
以上
*****証拠説明書*****PDF ⇒ 20181225_shouko_setumeisho_kou_no.92100.pdf
平成30年(行コ)第139号 住民訴訟控訴事件
控 訴 人 小川賢
被控訴人 群馬県
平成30年12月25日
東京高等裁判所第22民事部 御中
証拠説明書(甲92~100)
控訴人 小 川 賢 ㊞
●号証:甲92の1
PDF ⇒ kou_no.921_20181030_kaiji_tuuchi.jpg
○標目:公文書部分開示決定通知書
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年10月29日
○作成者:被控訴人(県土整備部)
○立証趣旨:被控訴人が平成23年度に公共工事(高渋バイパス舗装新設工事)で岡田工務店と佐藤工務店(実質は岡田工務店)が実施した資材(スラグ)に鉛・ヒ素が入っていたとして撤去されたため、事実関係を確認すべく開示請求をしたところ被控訴人が部分開示をした事実。
●号証:甲92の2
PDF ⇒ kou_no.922_2018103103_kasitanpo_kouji_seikyuu_bunsho_20180727.pdf
○標目:工事目的物の瑕疵に係る修補工事の請求について
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年7月27日
○作成者:被控訴人(高崎土木事務所)
○立証趣旨:被控訴人が施工業者の岡田工務店と佐藤工務店に対して、瑕疵の内容を示し、有害物質を含む建築資材(スラグ)を撤去するよう修補を請求した事実。
●号証:甲92の3
PDF ⇒ kou_no.9231_20181031091_okada_koumuten_sekou_keikakusho_p0107.pdf
kou_no.9232_20181031092_okada_koumuten_sekou_keikakusho_p0814.pdf
kou_no.9233_20181031093_okada_koumuten_sekou_keikakusho_p1518.pdf
○標目:施工計画書(前半を抜粋)
○原本・写しの別;写し
○作成年月日:平成30年8月20日頃
○作成者:岡田工務店
○立証趣旨:被控訴人の請求により、撤去されたスラグが、産業廃棄物として、最終処分場に持ち込まれ、その証として産業廃棄物のマニフェストが提出されることを示す事実。
●号証:甲93
PDF ⇒ kou_no.93_aganoharamachi_niyoru_slu_tekkyo_nituite.pdf
○標目:長野原町による大同特殊鋼(株)の鉄鋼スラグ後含む砕石を使用した工事箇所について
○原本・写しの別:写し
○作成年月日;平成30年5月13日
○作成者:長野原町
○立証趣旨:長野原町の参考資料の中で、国土交通省が、大沢地区代替地や上湯原代替地などの八ッ場ダム建設工事に関連した工事で使用されたスラグを撤去している。この代替地は、水没住民の移転予定地であり、スラグは水没しないのに撤去された。
●号証:甲94
PDF ⇒ kou_no.941_gunma_kengikai_no_situgi_from_yanba_asitanokai.pdf
kou_no.942_gunma_kengikai_no_situgi_from_yanba_asitanokai.pdf
○標目:2017年12月の群馬県議会産経土木委員会の鉄鋼スラグが残されていることについての質疑の様子
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年1月28日
○作成者:八ッ場あしたの会
○立証趣旨;2/7頁に、国土交通省が建設を進める八ッ場ダム建設工事に伴う、川原湯地区水没住民の移転代替地(打越代替地)の鉄鋼スラグが搬入業者により撤去されている事実。このスラグは水没予定ではない。また天然石とスラグを混合したスラグ混合砕石は土壌まで汚染していた。
●号証:甲95
PDF ⇒ kou_no.951_sibukawashi_no_slug_tekkyo.pdf
kou_no.952_sibukawashi_no_slug_tekkyo.pdf
○標目:渋川市の市道1-5590号線スラグ対策工事の見積参考資料。
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年9月10日
○作成者:渋川市
○立証趣旨:平成30年9月10日に、渋川市が市道のスラグを撤去する工事を入札した事実。この場所は渋川市が将来にわたり管理できる市道であり、鉄鋼スラグ連絡会議が出した(案)乙31と異なっている。10/15頁に建設廃棄物の有無が明示され、スラグ路盤材が直下の汚染土壌と共に撤去され、近くに廃棄物処分場がたくさんある中、遠く富山県にまでスラグを運搬している事実。
●号証:甲96
PDF ⇒ kou_no.96_joubu_kokudo...
○標目:国土交通省・上武道路環境対策その1工事の様子
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月22日
○作成者:原告
○立証趣旨:甲79号証9頁に示されているH25上武道路田口改良工事により投棄されたスラグを上武道路環境対策その1工事という名称で国土交通省が撤去した様子。この場所は国が将来にわたり管理できる国道であり、鉄鋼スラグ連絡会議が出した(案)乙31と異なっている。
●号証:甲97の1
PDF ⇒ kou_no.971_20181127_qu...
○標目:弊質問状に対するご回答について(お願い)
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年11月27日
○作成者:控訴人
○立証趣旨:民間工事に使用されたスラグが撤去された事実を確認するために、スラグを駐車場に投棄された醤油メーカーに対して、その後撤去したのかどうか、事実関係を質問して回答を求めたこと。
●号証:甲97の2
PDF ⇒ kou_no.972_20181208_re...
○標目:上記の質問状に対する回答書
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月7日
○作成者:ヤマキ株式会社
○立証趣旨:民間である醤油メーカーの駐車場に路盤材としてスラグが投棄されたため、原因者の費用負担でスラグを撤去させた事実。
●号証:甲98
PDF ⇒ kou_no.98_sibukawashi_minka_slug_tekkyo.pdf
○標目:庭に投棄されたスラグが撤去されたことを証する押印済み書面
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月20日
○作成者:高橋宗彦
○立証趣旨:群馬県渋川市石原の民家の庭に投棄されていたスラグが撤去され事実を民家の住民が証する書面。被控訴人は鉄鋼スラグ連絡会議の方針(乙31)に「民間も基本的にこれに添ってスラグは被覆対応しており」などと主張しているが、民間工事においてもスラグは撤去されている事実。
●号証:甲99
PDF ⇒ kou_no.99_daido_tokushukou_chushajo_no_slug_tekkyo.pdf
○標目:民間工事に使用されたスラグが撤去された事例。
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月24日
○作成者:控訴人
○立証趣旨:大同特殊鋼(株)渋川工場の通勤用駐車場のスラグ撤去の様子。被控訴人は鉄鋼スラグ連絡会議の方針(乙31)に「民間も基本的にこれに添って対応しており」などと主張しているが、大同特殊鋼(株)自身が真っ先に自身の利用駐車場のスラグを撤去している。
●号証:甲100
PDF ⇒ kou_no.100_ishihara_kodoukyo_no_slug_tekkyo.pdf
○標目:国道17号石原跨道橋の高架下のスラグを撤去している様子
○原本・写しの別:写し
○作成年月日:平成30年12月24日
○作成者:控訴人
○立証趣旨:国土交通省が管理している高架下に投棄されたスラグを人知れず、大同特殊鋼に撤去させている事例。被控訴人は「鉄鋼スラグ連絡会議の方針(乙31)に添って対応しており」などと主張しているが、将来にわたり管理できる道路において被覆ではなく撤去が行われており、鉄鋼スラグ連絡会議の対応方針などに従っているのは被控訴人の群馬県だけ、という事実。
以上
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■来年1月9日の第3回口頭弁論で裁判長は本件を結審させる予定であることを既に表明しています。今回、群馬県の滅茶苦茶な主張に対して、最後にもう一度反論をしたためてみました。当会として、証拠=甲号証がちょうど100号となりました。
平成最後となる新年早々に東京高裁で開かれる第3回口頭弁論で予定通り結審した場合、おそらく判決は年度末の3月末になる可能性が高いと思われます。
果たして、平成の時代の終わりと共に、群馬県の県土を覆うスラグの有害な汚染物質の撤去に向けた裁判所の裁定が下されるのか、それとも、新しい元号のもと、さらに上級審で争うことになるのか、平成の時代が大詰めを迎えるなか、新年1月9日(水)午前10時30分、注目の大同スラグ訴訟の控訴審第3回口頭弁論は東京高裁424号法廷で開かれます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】