田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(覇王別姫 )

2023年08月10日 17時43分19秒 | 日記

映画世界旅行、中国編/さらば、わが愛/覇王別姫(1993) | 大切な時間♫

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映画『さらば、わが愛/覇王別姫』 (ネタバレ感想文 )私はこれほど壮絶で痛切で美しい映画を他に知らない。|ペペチー

 2人の京劇俳優の波乱に満ちた生きざまを描き、中国語映画として初めてカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した一大叙事詩。京劇の古典「覇王別姫」を演じる2人の京劇役者の愛憎と人生を、国民党政権下の1925年から、文化大革命時代を経た70年代末までの50年にわたる中国の動乱の歴史とともに描いた。デビュー作「黄色い大地」で注目され、本作の成功によって中国第5世代を代表する監督となったチェン・カイコーがメガホンをとった。

1925年の北京。遊女である母に捨てられ、京劇の養成所に入れられた小豆子。いじめられる彼を弟のようにかばい、つらく厳しい修行の中で常に強い助けとなる石頭。やがて成長した2人は京劇界の大スターとなっていくが……。

時代に翻弄されながらも愛を貫こうとする女形の程蝶衣(チェン・ディエイー)をレスリー・チャンが演じ、恋敵の高級娼婦役でコン・リーが出演した。製作から30周年、レスリー・チャンの没後20年の節目となる2023年に、4K版が公開。(映画.comより)

 

 

<2023年7月30日 劇場鑑賞>

 これだけの名作ですから、若い頃に一度見ています。今回、4Kで見る機会を得て、本当によかった。若い頃は、ただ「レスリー・チャンがきれい」とか、地位ある人の少年に対するセクハラを見て「わっ」と思ったり、そんな通り一遍の反応しか感じることができませんでした。もちろん、名作に感嘆しましたが、そのバックグラウンドなど、よく理解せずに見てたんだなぁということを今回痛感しました。

 アホなこと書いてごめんなさいなんですが、まず気づいたのが「覇王別姫」が、”四面楚歌”の熟語の元になった場面を表していたということ。アホ過ぎる気づき、すみません。つまり、覇王は楚王であり、項羽であるということ。「項羽と劉邦」なんて本、読んで感動したし、映画も見たのに、この映画とリンクしてなかった。ちなみに「項羽と劉邦」にもコン・リー出てましたね。劉邦の妻役で。そして、若い頃からの疑問「なぜ楚王は、母国の歌を聞いて負けを悟ったのか。母国語が聴けるということは、勝ち進んでいると解さないのか」ということをもう一度考えるきっかけになりました。これは京劇で表されているわけではないのですが、漢の国から聞こえる楚の歌に、「わが民が寝返った」と思ったのだそうですね。まぁ”勝ち進んだ”と思える状況ではなかったということなんでしょうね。よくわからないけれど、私なら「やった~。我が軍が勝ち進んでる」と思ってしまうかもしれません(笑)。

 ともかく、四面楚歌な状態に、周りの家来たちをすべて解放し、愛妻虞姫にも帰るように諭したのに、虞姫は最後まで覇王(楚王)と残って最終的に自害した、という劇。虞姫役だったレスリーが、本当に覇王に恋してしまったゆえに生じる愛憎を描いた話だったのは、記憶通り。しかし、ふたりの長い人生、バックグラウンドは劇的に変化してゆきます。遊女である母親に捨てられ、6本あった指を気持ち悪がられたために、出刃包丁で切り落として売り飛ばされる冒頭から、厳しすぎる修行生活、そしてやがて舞台デビューをする頃は「今回の招待客は、西太后に仕えた宦官だ。本格的な舞台もご覧になられてきた人だ」の発言が。なるほど西太后の時代なのか、と思っていると、時代は進み、やがて「盧溝橋事件」の表示。ここから日中戦争へと突入してゆきます。街を闊歩する日本軍。しかし、舞台俳優なるもの、舞台を見に来てくれる人に対しては、誰だろうと誠実に演じなければなりません。そこはプロですから。偉そうに振舞う日本軍相手であってもです。しかし、日本軍の中にも、京劇をよく理解する将校もいました。ここは反日な描き方ではなく、事実と思われることを淡々と描いていたように思います。

 やがて日本軍は撤退し、中国は中華民国と共産党が反目し合うようになります。元々の政府(中華民国)の軍は日本軍を追い散らした実績もあってか傍若無人です。覇王(チャン・フォンイー)は「日本軍でもそんなことしなかった。どうか、やめてください」と懇願するも「なにぃ!我々が日本軍よりあさましいとでもいうのか!」と大暴れ。覇王、逮捕に至ります。この時は、妻のコン・リーとレスリーの尽力で彼は解放されますが、荒れる世の中と相まって、彼らの関係もギクシャクします。

 その後、中華民国は国を追われ台湾へ。全土を牛耳った共産党は、圧政を敷き、やがて文化大革命に突入。日本の赤狩りのように、何でもなかったことが「反共だ」とか言われて罰せられるようになります。吐くまで拷問を受けたり、さらし者にされたり。わが身の保身に走った覇王は、他二人(妻とレスリー)を傷つけてしまいます。

 そして一番冒頭のシーンに戻ります。何もかも失い、少し年老いた覇王と虞姫(チャン・フォンイーとレスリー・チャン)が最後の舞台にやって来ます。そして最後の演技を見せながら、レスリーは、自分の人生の最期も演じてしまうのです。

 若い頃見た時も、コン・リーのしゃしゃり出ように閉口した記憶があるのですが、今回もそう感じました。常に夫のやることに口出しし、さぁという時に必ず現れて自分の想い通りに進めてしまう。夫がなにか行動を起こそうとするときに引っ張って止めてしまう。彼女がいなかったら、主演二人の関係も随分違ったものになっただろうな、と思いました。当時から「他にすることがないのかな。なんでいつもいるんだろう」と思っていましたが、でもやっぱりその時代、女は真っ当に働く道もなく、夫を操って保身を図るしか生きる道はなかったのでしょうね。仕事でもあれば、自分の世界が持てたのかもしれませんが。

 今回、いろいろ感じることもあり、本当に「一度見たから」などと思わずに見てよかった、と思いました。大変勉強になりました。あの頃のレスリーをもう一度見れてよかった。しかし、私の勘違いかもしれませんが、写真2枚目のシーン、刀を構えて涙を流し、覇王に「もういい」と言われるシーン、ありましたか?覇王のセリフは他の場面と勘違いしているかもしれませんが、この写真のシーン。一番のハイライトなので、そんなはずはないと思うのですが、でも、なかったように思います。私の勘違いでしょうか。

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