18世紀フランスを舞台に、望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像を描く女性画家の鮮烈な恋を描き、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィアパルム賞を受賞したラブストーリー。画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から娘エロイーズの見合いのための肖像画を依頼され、孤島に建つ屋敷を訪れる。エロイーズは結婚を嫌がっているため、マリアンヌは正体を隠して彼女に近づき密かに肖像画を完成させるが、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを批判されてしまう。描き直すと決めたマリアンヌに、エロイーズは意外にもモデルになると申し出る。キャンパスをはさんで見つめ合い、美しい島をともに散策し、音楽や文学について語り合ううちに、激しい恋に落ちていく2人だったが……。「水の中のつぼみ」のセリーヌ・シアマが監督・脚本を手がけ、エロイーズを「午後8時の訪問者」のアデル・エネル、マリアンヌを「不実な女と官能詩人」のノエミ・メルランが演じた。(映画.comより)
<2021年2月7日鑑賞>
美しい、美しすぎる。個性こそ違えど、美女二人の主演。画家はこっそり肖像画を描くため、彼女(お嬢様)を凝視する。カメラも、これでもかと被写体に近づき、じっと美しい女性たちを映し続ける。もちろん、彼女たちは行動し、生活しているから、ただ顔を映しているわけではないが、肌のアラさえはっきり見えるかと思うほど、近づいて静止する。でも、美しい彼女たちは、肌も美しく、毛穴さえ見えない。若い女性はおしなべて皆美しいが、監督はそのなかでも選りすぐったに違いない。
主人公は裕福な貴族ゆえ、館も瀟洒でお手伝いさんも常駐しています。この女の子も、またかわいい。小柄で、お嬢様のような華やかさには欠けますが、ここに年輩の女中を持ってこなかったのも、わざとかと。
話の途中、3人で「オルフェ」の感想を論じるところがあるのですが、約束を守れず振り向いてしまったオルフェに対し、お手伝いさんは「言いつけを守らなかった方が悪い。決して振り返らないと約束したのだから、守るべき」と言い、お嬢様は「妻との思い出を振り返りたかったのかも」と言う。
女性画家(父親が画家)は、多分結婚はしないと言い、お嬢様は「選べる人がうらやましい」と言う。貴族のお嬢様は、会ったこともない他国の貴族との結婚を強いられるのですから。
お手伝いさんの女性が妊娠してしまい、産めないからと堕胎に出掛けるシーンも。相手の男については一切触れられず、女性二人が同行します。堕胎を行うベッドに赤ちゃんや幼い子供が乗っていたり、そこにお手伝いさんを招き入れる女性が少女だったり、心を締め付けられる演出も。
結ばれないとわかっていた、一生に一度の恋。でも「人は一度でも本気で愛された経験があれば、生きて行ける」・・・どこかで読んだ、そんな言葉を思い出したのでした。そんなお話をこんなにも美しい映画に昇華させた監督の才能に脱帽です。これからも注目してゆきたい。