田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

ムーンライト(Moonlight)

2017年04月24日 08時07分53秒 | 日記

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 マイアミを舞台に自分の居場所とアイデンティティを模索する少年の成長を、少年期、ティーンエイジャー期、成人期の3つの時代構成で描き、第89回アカデミー賞で作品賞ほか、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞したヒューマンドラマ。マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「リトル(チビ)」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ。やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。そんな中、ある事件が起こり……。母親ポーラ役に「007」シリーズのナオミ・ハリス、麻薬ディーラーのフアン役にテレビドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のマハーシャラ・アリ。プロデューサーとしてアカデミー賞受賞作「それでも夜は明ける」も手がけたブラッド・ピットが製作総指揮。本作が長編2作目となるバリー・ジェンキンスがメガホンをとった。(映画.comより)

 

 

 

 静かな映画でしたね。とても話題になってるし「黒人でゲイの人が主人公」なんて、いらぬ知恵までついてたものだから、構えて見てしまいました。でもこれは、予備知識がないほうが楽しめたかも。見る前の話ですが、私ポスターにも驚いていました。このブルーのポスターが、3人の男性をミックスしたものだなんて、言われるまで気がつかなかったのです。なんてよくできたポスターでしょう!よーく見ると、なるほど右端はひげ面だったりするのです。

陽光まぶしいマイアミ。明るいイメージが強い場所ですが、黒人タウンが存在します。主人公のシャロンも、黒人でヤク中の母親と二人暮らし。母は、悪い人ではないのでしょうが、完全なるヤク中で、お金をせびる・子供の前でも男を連れ込む・育児放棄する・・・まるで「チョコレートドーナツ」の母親のようです。しかしながら、女一人、教養もなくお金もなければ、他に生きるすべがないのもわかる気がします。それでも、子供は災難です。せっかく普通に生まれてるのに(語弊があればごめんなさい。なんの障がいもなく、ということです。母親はまずここに感謝するべきなのに)、小柄だったシャロンは学校でもいじめられ、行く場所もありません。友人は、少し優しくしてくれるケヴィンだけ。そんな中、いじめっ子から逃げて隠れていたところを近所のおじさんに見つかり、家に連れ帰って貰います。このおじさんが、助演男優賞を獲得したマハーシャラ・アリですね。アリは、シャロンを不憫に思い、妻と二人で何かと世話を焼いてくれるようになります。本当にお父さんのようで、心を許していたシャロンですが、アリはヤクの売人で、母も彼から買っていることがわかり、大きなショックを受けます。

 場面は変わって、高校生になっているシャロン。相変わらずいじめられています。アリおじさんは亡くなっています。母親のヤク中はますますひどく、手がつけられなくなっています。そんな中、唯一の友人だったケヴィンも悪友(いじめっ子)にそそのかされ、逆らえずにシャロンを傷つけてしまいます。いじめている子は、幼少期から同じ奴です。とうとう抑えられなくなったシャロンは、そいつをぶちのめしてしまい、逮捕されます。

 次の場面は、青年期。あんなに小さくていじめられっ子だったシャロンが、ムキムキマッチョな青年になって、あろうことかヤクの売人。口数が少なく、おとなしいのは相変わらずで、施設に収容された母親と時々連絡を取りながらも、一人で暮らしています。そんな中、忘れられない友人ケヴィンから連絡が入ります。今はダイナーで料理人をしているとのこと。「よかったら訪ねて来いよ」との電話に、意を決して訪ねてゆくシャロン。社交的だったケヴィンは気づかなかったかもしれませんが、シャロンはたった一人、ケヴィンを愛していたのです。「おまえに限って・・・」と、ヤクの売人をしていることに驚くケヴィン。しかしながら、シャロンの真剣な感情に気づくことになるのです。

描かれている状況は悲惨です。救いようがないくらい。でも、それでも人は人を愛し、その気持ちを偽ることはできないのだ、ということが描かれます。ナオミ・ハリス演じるヤク中のどうしようもない母親も、シャロンには「私のようなクズになってはダメ。しっかり生きて」と、訴えます。「この施設は私に合ってるの」と、心配しないよう付け加えて。希望のあるお話でしたが、一方で救われないことも。いや、でもきっと母は、シャロンのような聡明な息子を持てたことが幸せだったのでしょう。たとえ、自分は壊れてゆくしかなくても。

心して見て下さい。

コメント
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