田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

サード・パーソン(Third Person)

2014年07月04日 08時01分31秒 | 日記

 「クラッシュ」「告発のとき」のポール・ハギスが監督・脚本を務め、リーアム・ニーソン、エイドリアン・ブロディ、ミラ・クニスら豪華キャストで描いたミステリードラマ。パリ、ローマ、ニューヨークと離れた場所で織りなされる3組の男女の物語が交錯し、やがて驚きの真相にたどり着く。パリのホテルにこもり、最新作を執筆していたピュリッツァー賞作家のマイケルは、野心的な作家志望の女性アンナと不倫関係にあったが、アンナにもまた秘密の恋人がいた。ローマのバーで出会ったエキゾチックな女性に心を奪われたアメリカ人ビジネスマンのスコットは、彼女の娘が密輸業者に誘拐されたと聞き、女性を助けようと決意する。ニューヨークに暮らす元女優のジュリアは、息子の親権をめぐって元夫と係争中。裁判費用を稼ぐため、女優時代に利用していた高級ホテルでメイドとして働き始めるたジュリアは、弁護士の助言に従い、裁判所からの心証をよくするために精神科医の鑑定を受けることになるが……。(映画.comより)

 

 

 この監督の「クラッシュ」を見た時の衝撃は忘れられません。脚本作の「ミリオンダラーベイビー」よりもずっと心に残り、「この監督の作品は必ず見たい」と思ったものでした。

今作「サード・パーソン」も、非常によく練られた物語で、見応えのあるものでした。個人的には「クラッシュ」のほうが印象に残りましたが、それは単にあちらの方が先だったから衝撃が大きかっただけかもしれません。

今回の主役はリーアム・ニーソン扮するピューリッツァ賞受賞作家。パリの高級ホテルにこもって執筆中の彼はしかし、スランプです。そして彼には、親子ほど年の離れた不倫相手(オリビア・ワイルド)がいて、彼女にもまた翻弄されています。このへんだけ見ると、なんか情けない男です。

そして並行して進むのが、ニューヨークを舞台に、元夫婦のジェームズ・フランコとミラ・クニスが繰り広げる親権争いのお話と、ローマを舞台にした、一種の産業スパイであるエイドリアン・ブロディとロマの女を巡る話です。

これらの話は、それぞれ独立した話としても充分成り立つ内容で、細かいことを気にせず見ていると、それぞれそんな話なのかなぁ・・・と思いながら見てしまいます。

しかし、時々登場人物たちがふいに重なることがあるのです。例えば、すれ違うとか。そんな時「あ~、今はホテルのメイドとして働くミラ・クニスは、リーアムとオリビアが泊まっているホテルで働いているのか」などと納得してしまうのですが、ダメなんですね、それでは。

なぜなら、彼らは別の都市にいるはずだからです。構成がややこしい。こんな入り組んだことする必要、あったのかな(笑)。

そして、彼らには共通点があることが浮かび上がって来ます。みな、過去に子供を失ってしまった経験があるか、失いかけたか、あるいは今失いかけてるか。

そこで、一つの見方として、それぞれが、主人公リーアム(過去に電話に気を取られているうちに、息子をプールで溺死させたことがある)が”三人称”で書いている物語の主人公なんじゃないか、と考えてみたりします。

つまり、ニューヨークの元夫婦は、妻のミスで息子を失いかけた。それが原因で離婚し親権裁判をしているけれど、これはどんな形であれ、子供には生きていて欲しかった、という願望。そして、ローマのエイドリアンも過去に目を離した隙に娘を失ってしまったけれど、その贖罪か、ギャングから娘を取り戻そうとしているロマの美女にどんどんのめり込んでいってしまう。それが原因で、エイドリアンの人生は根本から変わってしまったけれど、それに対する後悔はない・・・。そして、さらに言うと、愛人であるオリビアも他人には言えない秘密の愛を持っていた。

そんなことを言いだすと、どこまでが本の内容なのか、あるいは存在するのはリーアムと出版社の人くらいで他の人はすべて存在しないのか、いや、話の内容からして、オリビアは存在するはずなのか。じゃ、リーアムの妻キム・ベイシンガーはどうなのか?「そこにいるの?」という意味深なセリフや「watch me」(こちらは子供が発する)というセリフが何度も出て来ることからも、いないはずの人物が見えていたシーンがあったのかもしれません。

どの話も、ともかく展開してゆきます。ハッピーエンドかどうかは別として。

私は、矛盾する点に気付かずに、3つの話が並行しているつもりで普通に見てたので、あとであり得ないことに気が付いて愕然としました。もっと「比喩かも」と構えて見てれば、いろんなことに気が付いたのかもしれません。バカな私。

ただ、テーマが悲しすぎたので、子供が「見ててね」と言ったらしっかり見てあげよう、などと、監督が意図したかどうかわからないような感想を持ってしまいました。

一つ、同じ女性として共感したのは、最後の方でオリビアがその罪深い愛(リーアムとの愛ではなく)に取り乱してしまうところ。本当なら非難されても仕方がないそれに、リーアムがしっかり受け止めてなだめるところ。こういうところに大人の男の魅力を感じますね(って、ネタバレしてないと何言ってるかわからないと思います。すみません)。

ともかく、一筋縄ではいかない映画です。これからご覧になられる方は、よ~く構えてね(笑)。

 

コメント
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