「鹿岳」(1015メートル)は群馬県西部、下仁田町と南牧村の境にある。国道254で下仁田町に入ると正面にラクダのコブ状に突き出した奇妙な形をした岩峰が目に入る。昔、岩の上から鹿を追い落とす狩猟をしたので名がついているという。私の所有するガイド本には、登った印がついているが、殆ど記憶が無い。上部は鎖や木製のハシゴ、ロープが連続するスリルがあり、山頂の大展望を加え快適な山歩きだった。
南牧村の下高原集落に登山口がある。Aさんとその友人2人に私を加えた4人でスタート。西上州の山らしく、いきなり植林された杉林の急登を上がる。珍しく念入りに手入れがされた杉林。材木に詳しいKさんの解説をうかがいながら歩く。急登が続くが、大して息も切れず、最後尾を歩く。何しろ、皆さんがジャンダルム、大キレットなどアルプスの難所をこなしてきた山のベテラン。“近隣日帰り登山”がメインの私が気後れするのも仕方が無い。
杉、檜の林を抜け、広葉樹の林になると鹿岳の岩峰が目に飛び込んでくる。“こんなところを登れるの?”と言う感じ。南峰(一ノ岳)の南側の岩壁は垂直に200メートル近いという。ここを登るわけではないが、圧倒される。岩場の取り付きに木製のハシゴとロープ。歩き出すと恐怖感は消えた。鎖場をいくつか越えると本峰(二ノ岳)と南峰への鞍部。細いヤセ尾根を左に分け、先に本峰へ。岩だらけのところを鎖とロープに頼って登ったが、意外と余裕があった。山頂部は360度の大展望が広がっていた。
鞍部に戻り南峰へ。南側の大岩壁と比べ、北側から登ると思ったより簡単に山頂。西、南側に展望が広がる。一段下がった場所に展望の良い岩の台地があり、昼の休憩をゆっくりとった。
帰路は鞍部に戻り、四ツ又山方面につながる道を降りる。落ち葉の急斜面、岩壁の基部に沿った細い道をロープ伝いに下る。ここに来てようやく、山歩きを始めた頃に登った記憶が少し蘇ってきた。紅葉は終わりかけていたが、気持ちの良い急な下りの尾根沿いをマメガタ峠まで。ここで一服入れ、大久保集落に下った。