「血統クリニック」チャンピオンズC再掲

2014-12-07 15:26:08 | 血統クリニック

インカンテーション
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104916/
母オリジナルスピンは2歳時にアーリントンワシントンBCラッシーS(米G3・ダ8F)に勝ちBCジュヴェナイルフィリーズで3着、3歳時にはテストS(米G1・ダ7F)で2着となった活躍馬。Machiavellian×Polish Precedentだから真っ当なマイラー血統で、母母Time CharterはHyperion5×4・5(その母Centroconがハイハット≒Aureole2×3)を持ちキングジョージや英オークスなどに勝った女傑。MachiavellianはNative Dancer3×4だから、Time Charterから見て緊張→緩和→緊張のリズムになっていること、Time CharterのHyperionクロスが1/4異系になっていること、この2点において配合も素晴らしいと褒められるレベルで、インカンのきょうだいもみんな走っているのが納得の好配合の名繁殖だ。
父シニスターミニスターは3歳時にG1ブルーグラスSを圧勝してケンタッキーダービーでは5人気の支持を受けたが16着に大敗、以後は裏街道を歩み1人気を裏切りつづけた。配合は父父A.P.IndyがBold Ruler4×3、父Old Triesteは強いクロスなし、母Sweet MinisterはHail to Reason4×4だから緊張と緩和のリズムはOK、シニスターミニスター自身はPoker≒Illustrious(Round TableとNasrullah)5×4やSecretariat≒ボールドラッド(ボルキロ)4×5などA.P.Indyの血脈構成を地味にニアリークロスしていて、A.P.Indy以外にあまり強力な血を持たないので素直にA.P.Indyらしさを伝える種牡馬だ。産駒はダブルスター、ダンシングミッシー、リーゼントブルースと東京ダートでの活躍が目立つのはA.P.Indy系らしいが、Pulpit~Tapitのラインのような才気ばったスピードはなく、インカンの場合はそこを早熟マイラーだった母から補っている。インカン自身はMr.Prospector5×3にA.P.IndyとPast Example(Polish Precedentの母)を通じるBold Ruler+Princequillo+War Admiral+La Troienneの組み合わせのクロスとなり(Seattle Slew≒Past Example4×4とも表記できる)、父がアウトで母がNative Dancer4・5×5だから緊張と緩和のリズムも実に正調。
Seattle Slew系らしい長手の体躯を活かしたストライド走法で、新潟ダ1800m[3.0.0.0]中京ダ1800m[2.0.1.0](3着は出遅れ)、比較的箱の大きなコースの中距離ではほぼパーフェクトと言っていい実績を残してきた。みやこSは外枠だったこともあり思ったほど行けずに中団の外、そこから外目を回って差し切ったわけだが、前崩れの展開が功を奏したともいえるし外を回ることであまりストライドロスなく脚を伸ばせたともいえるだろう。とはいえここへきて馬も本格化しているし、8戦連続でコンビを組む大野もすっかり手の内に入れてきて「何でもできる馬になった」と自信を持って晴れ舞台に挑んでくる。血統・体型・走法からみて中京1800mはベスト。

ローマンレジェンド
http://db.netkeiba.com/horse/2008102944/
ミラクルレジェンドの3/4弟で、母パーソナルレジェンドはターンバックジアラームH(米G3・ダ9F)とステージドアベティH(米G3・ダ8.5F)勝ち馬で、パーソナルエンスンS(米G1・ダ10F)2着もある活躍馬。その父Awesome AgainはBCクラシック勝ち馬。パーソナルレジェンドはNorthern Dancer4×3、Raise a Native5×5、Spring Run≒Tom Fool5×6、繁殖として大成功をおさめるのが納得というほどの配合には見えないが、父母相似配合で自身や父のダート中距離の高性能を産駒に確実に伝えているのだろう。ローマンレジェンドの場合はNijinsky≒Storm Bird4×3にBuckpasser5×6にQuill≒Neriad(Princequillo×Count Fleet)5×5とマルゼンスキーの主要血脈をクロスしていて、マルゼンスキーとパーソナルレジェンドのダート中距離のパワーを増幅した配合と言っていい。
スペシャルウィーク産駒らしい長手の体型で、ベストパフォーマンスは12年東京大賞典だろうが、インパクトとしては12年ジュライSをあげたい。6馬身ちぎって良馬場で1.49.4のレコード、東海Sが13年1.51.0、14年1.50.4、良の中京1800mダを1分49秒台で走破したのは後にも先にもこの馬だけ。2着トウショウフリーク(アンタレス2着)の走破タイムが1.50.4だから例年の東海Sレベルでは駆けているわけで、これをちぎり捨てたパフォーマンスは掛け値なしにG1級といえる。やはりこの馬のベストコースは東京と中京の1800~2100mだろう。それだけに休み明けで58を背負って小回り1700mの高速決着で、クリノスターオーの4角先頭の勝ちパターンをねじ伏せるように捲り差したエルムSには驚かされた。さすがは藤原英厩舎、ここで立て直してきたかという高パフォーマンスで、あれはエスポワールシチーに競り勝った12年エルムの再現と言っていいレベルで、全盛期の力を取り戻したとするならば、ここは生涯最高パフォーマンスまで期待できる。

コパノリッキー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010106548/
サンライズペガサスなどが出るアリーウィンにさかのぼる牝系に、トニービン(Hyperion5×3・5)、ティンバーカントリー(Swaps4×3)とHyperionが強い種牡馬が配されて、そこにゴールドアリュールが配されたコパノリッキーは、母系にMr.ProspectorとRobertoとIn Realityが入る」というエスポワールシチーやオーロマイスターやランウェイワルツと同じゴルア砂黄金配合となった。Her Honor=Countess Fleetの全姉妹クロス6×6という隠し味もある。
栗毛ということもあってゴールドアリュールとティンバーカントリーを足して割ったような馬体に見えるが、トモのつくりなどは母系のRoberto+Alydar的で小回りの機動力も十分、ただサンデー系×ミスプロ系らしいしなやかさもある体質でゴリゴリの力馬というわけではなく、JBCとフェブラリー勝ちを見てもわりと軽いダートのほうがパフォーマンスは上がるほうだ。何よりもFall Aspen、トニービン、Nureyevから受けたHyperionの血は、4角先頭でこそ最大限に活きるというべきで、逃げても逃げなくても直線では"抜かせない強さ"を発揮できるような形に持ち込みたいところ。この配合ならば来年更に強くなる可能性も十分ある。

ワンダーアキュート
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006106794/
父カリズマティックは北米二冠馬でSecretariat≒Sir Gaylord3×3(Weekend Surprise≒Drone2×2と言ってもよい)にBold Ruler4×4とクロスがうるさく、一方母ワンダーヘリテージはRibotやPrince Roseなど全体にアウトサイダー血脈が強くクロスがNasrullah=Malindi5・6×4、3代母Grand TaniaはHeliopolis3×4を持つ。この緊張→緩和のリズムの絶妙さで生み出された一流馬というべきで、一方でPleasant Tapの母はナスキロラトロの組み合わせだからWeekend Surprise≒Never Knock3×3のニアリークロスになってもいる。
8歳の今年もG1ばかりを4戦して[1.0.2.1]は立派としか言いようがない。父よりも胴も脚も長くナスキロ柔い体質でストライドで走るダート馬だから、中京は初コースだがおそらく合っているだろう。フェブラリーは毎年少し忙しいというレースぶりで、2000mは安定しているが今年の帝王賞はスローの上がりの競馬だった。1800mのJCダートは3年連続2着だから、ベストはこの距離かもしれない。もう上がり目はないのはたしかだが、直線の長い1800mというのは舞台としては最高だろう。

グレープブランデー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103069/
マルカベンチャーの甥でアウトクラトールのイトコ。マンカフェ産駒としては伸びのある体型で脚も長く、このあたりはLaw Society≒Pleasant Colonyのニアリークロス(RibotとDetermine≒Flower Bowlとナスキロ)の影響ではないかとみている。その体型を活かしたストライドで走るので、13年の東海S→フェブラリーS連勝を見てのとおり直線の長いコース向きの脚質。武蔵野Sでは58キロを背負ってスタートから気合いを付けられて先行、直線追われてもそれほど反応はなかったがジリジリ伸びて3着、復活のキッカケは掴んだ。マイラーというよりは中距離馬だから中京1800mはおそらくベスト条件。ここは怖い。

ニホンピロアワーズ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007100191/
フジキセキと同じMarston's Mill~Milan Millにさかのぼる牝系。膝が極端にかぶってるのと繋ぎが立っているのと体質が硬めなのでダート向きに出たが、ホワイトマズル×アドマイヤベガ(母父トニービン)×Theatricalだから前で受けてハイインロー的スタミナで粘る脚質に完成したのは順当。4角先頭のときは[3.2.1.0]、4角2番手のときは[3.5.2.3]、4角5番手以降のときは[0.0.2.4]。東海Sが横綱相撲で完勝だったし、Nureyev的な胴長体型だから中京コースは合っている。コパノリッキーやクリノスターオーに早めに並びかけるぐらいの競馬ができれば面白いが。

クリソライト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104098/
母クリソプレーズは東京のJCダートを勝ったアロンダイトの全妹にあたり、そこにゴールドアリュールだからこれも筋金入りのダート血統といえる。配合はNureyev≒Sadler's Wells3×4・5、ShoshannaとRivermanとSeattle Slewを通じるナスキロラトロの継続クロス。Nureyevのクロスはシルクフォーチュンと同じ。
エルコンドルパサーは母父に入っても牡には持続力、牝には機動力を伝えるし、脚長でナスキロ柔いストライドで走るので、距離は1800mより2000mがベターでコースは小回りより大回りがベターだと書いてきた。大井2000mのJDD圧勝がベストパフォだろうが、JBCも好位からジワジワ伸びてほぼ完全復調といえるところまできただけに、直線の長い中京なら見せ場はあるだろう。2000mなら◎まで打てたが、連下の一頭という評価。

ナムラビクター
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102179/
ナムラコクオー、マイネルヤマト、ヘイセイクラウド(東海ゴールドC)の甥。母母ケイジョイナーはHyperion4・5×7・7で、そこにエンドスウィープ、ゼンノロブロイと米血主体の種牡馬が配されて「3/4米,1/4欧」の配合形になった。自身はMr.Prospector4×4で、母はNorthern Dancer4×3。Mr.Prospectorをクロスするゼンノロブロイ牡駒はトレイルブレイザー、ハートビートソング、コスモロビンなど長いところを得意とする馬が多いが、本馬も2000m以上[3.1.0.1]と距離延長を苦にしない。サドンソー(ノーザンテーストの全弟)やフォーティナイナーのパワーが強いようで掻き込んで走るので、アンタレスS(9-10-8-2)や仁川S(4-4-3-2)のようにパワーで捲りきるのが勝ちパターンで、そこは小牧さんとの呼吸もピッタリ。パワーで捲りやすい阪神ダートが[3.1.1.0]でベストだろう。中京ダ1800mは1000万下で圧勝があるが、ストライドで走る馬がパフォーマンスを上げてくるぶん優位に立てるコースではないか。

ホッコータルマエ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100921/
母母アンフォイルドの産駒にTCK女王盃3着のコスモプリズムがいる。母父Cherokee RunはBCスプリント勝ち馬でRed God≒Drone3×3、Nasrullah≒Royal Charger4×4・4・6、また母系の奥にBold Rulerも入るので、母の米血スピードで自在に先行したり捲ったり機動力が抜群で、その機動力を武器に昨年は小回りの交流重賞を勝ちまくった。一方でトライマイベストの母Sex AppealはBusanda≒Mr.Busher2×3、Cherokee RunはBetter Self≒Blue Eyed Momo4×4、UnbridledはBetter Selfの娘Aspidistraの4×4だから、「War AdmiralとLa Troienne」の組み合わせのパワーも強く受けている。曲飛は母父や母母に入るBull Lea譲りだろう。
父よりはマイラー寄りの体型で体質は少しラトロ硬く脚捌きはRed God≒Drone的に無駄がなく、スッと好位に付けて3~4角馬ナリで進出して直線半ばまでの加速で決めてしまう…というのが勝ちパターン。だから2ターンで直線が長い東京マイルでは乗り方が難しいのではとフェブラリーの血クリでは書いたが、1000m通過60秒6の超スローとなり、直線400mのダッシュ勝負をピッチで加速して抜け出して2着に頑張った。距離は1800mがベストだろう。中京も直線が長いのでフェブラリーのような上がりの競馬になってほしいところだが、1800mなら勝負どころで動いてくる連中が何頭かいるだけにそんな競馬にはならないだろう。

ワイドバッハ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106697/
アストニシメント系エベレストにさかのぼる名牝系だが代々目立った活躍馬は出ていない分枝で、そこにDanzig×Bold Rulerのアジュディケーティング、Mr.Prospector×Caerleon(の全妹)のスキャンと立て続けにマイルのスピードが重ねられて生まれたダートのマイラー。武蔵野の鮮やかな大外一気は展開がハマったというよりも1600mがベストなのだという解釈をしたい。Northern Dancerとナスキロのクロスで父を脚長にしたようなマイラーで、直線長いコースは合っているが1800mは少し長いかも。ここも追い込みでくるのだろうがスロー希望だろう。

グランドシチー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103864/
3代母タケフブキはオークス馬でAvena=Harina=プリメロ4×4・5。母レディクラシックはHail to Reason3×3、Flower Bowl≒Swaps4×4。自身はキンカメ×ブライアンズタイムだからハタノヴァンクールと同じ砂黄金配合で、Gold Digger≒Bramalea4×4とGraustark6×4のクロス。二世代にわたってブライアンズタイムの血脈構成を増幅し、ボトムラインにはオークス馬のプリメロの全きょうだいクロスだから、ハタノヴァンクールを更にスタミナ寄りにした配合と言っていい。ズブいがバテずに確実に追い込んでくるダートのステイヤーで、当コースでは東海S2着の実績があるが、1800mよりは2000mのほうが狙いやすい馬ではある。

クリノスターオー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010100855/
3代母Question N Answerはクルーピアレディー(ジェニュインの母)の妹で父も同じBold Ruler系。そこにGold Alert、ジェイドロバリーとダート向きのミスプロ系がかけられて、全兄アドマイヤベガよりも力馬っぽい産駒を出すアドマイヤボスがかけられた。その配合のイメージどおりジェニュインを力馬にしたようなタイプで、体質が硬いのでストライドは伸びないがTom Fool無駄ない捌きで機動力はなかなかのもの。
シリウスでナムラビクターに捲りきられたのを差し返したのには驚かされたが、まだ揉まれ弱いところはありそうで、小回り1800mを揉まれず先行し流れ込むのが必勝パターン。シリウスはスローだったので2000mもこなしたとみるべきか。ここは距離はベストだが、中京の長い直線が割り引き。

サンビスタ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009103532/
母ホワイトカーニバルはフェアリーS(芝1200m)勝ち馬で、その母イエローブルームは現フィリーズレビュー2着。母がAlycidon6×5で、自身はMr.ProspectorとNorthern DancerとFlower Bowl≒Your HostとTom Foolのクロスだからスプリングマンボの名血をいじった配合にはなっている。脚捌きはTom Fool的に無駄がなく、「父中距離×母マイラー」の配合形だから小回りコース向きの機動力もあり、いわゆるダ1800mの捲り脚質。ここは男馬の一線級相手に機動力だけでは通用しないだろう。

ベストウォーリア
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010110127/
父Majestic WarriorはホープフルS(米G1・ダ7F)勝ち馬。A.P.Indy系×Gone West系でMr.ProspectorとSecretariatのクロスだからダートをストライドで走るマイラーで、東京と中京の1400~1600mではほとんどのレースで◎か○を打ってきたが、JBCではスローで先行したものの直線では反応なく後退、2000mは明らかに長かったが、あの淡泊な止まり方をみると1800mでも印は回しにくい。

カゼノコ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011102128/
母タフネススターはカブトヤマ記念に勝ち愛知杯やマーメイドSや新潟大賞典で2着、ラグビーボール×リードワンダーというのは「Grey SovereignとPrince Bio」の組み合わせ特有のフレンチな斬れ味がある配合で、この斬れ味を武器にローカル重賞を追い込む個性派だった。ちなみにタフネススターにはクッキーキティという全妹がおり、この全姉妹とアグネスデジタルとの配合はシャドークロス、トップキングダム、モンドクラッセ、タフネスデジタルと中央出走5頭全てが勝ち上がっておりなかなかのニックス。
スローで逃げたアスカノロマンをアッサリ差し切ったのだからダートでの決め手は3歳トップクラスで、あの斬れ味は母譲りと言っていいだろう。JBCは後方から上がり34秒台で追い込んでも前とは2秒以上離されており、あれはレースに参加していなかったと言われても仕方ない騎乗でノーカンでいい。とはいえ、JDDにしてもフィールザスマートと僅差の叩き合いだから、古馬混合G1で通用するだけのパフォーマンスはまだ見せていないというべきだろう。
※現時点では除外対象です

《外国馬》
インペラティヴImperative
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010190004/
チャーチルダウンズH(米G2・ダ7F)に勝ったBattle Wonの半弟で、父BernardiniはA.P.Indyの代表産駒の一頭で北米二冠馬。母父Caller I.D.はPhone Trick産駒らしいスピード馬でサラトガスペシャルS(米G2・ダ6F)などに勝った。
自身はチャールズタウンクラシック(米G2・ダ9F)など20戦3勝、G1パシフィッククラシックSでShared Beliefに5馬身離された3着がある程度で、G1レベルのレースでは通用していない。「父中距離×母父スプリンター」の組み合わせで、Bold Ruler5・6・6×5・6、好走パターンは概ね先行捲りで、どちらかというと小回りに向いたタイプか。中京ダートで買いたくなる典型的なA.P.Indyとはちょっとタイプが違うように思える。

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エルコンドルパサー産駒が連覇し(アロンダイト、ヴァーミリアン)、母母父Seattle Slewのシーキングザダイヤが2年連続2着したように、東京2100mで行われていたときのJCダートは、東京1600mのフェブラリー同様、Seattle Slewの血を引く馬が強いレースだった。
そしてテスタマッタ、サクセスブロッケン、カジノドライヴなどフェブラリーは相変わらずSeattle Slewが強いのだが、一方で阪神1800mに移ってからのJCダートはSeattle Slew持ちが壊滅状態である、ということは折に触れて書いてきた。
だから今年からチャンピオンズCと名を変えて中京1800mで行われることが発表されたときは、すでに中京ダと東京ダのロケーションが似ていて好走するタイプも似ていることも判明していただけに、これは7年ぶりぐらいにJCダートにおけるSeattle Slew持ちの復権があるのではないか、というような展望も何度か書いてきた。
インカンテーションとローマンレジェンドで2週間前ぐらいからずっと悩んでいて、今でも悩んでいるが、コパノリッキー、ベルシャザール、ニホンピロアワーズ、トランセンド、エスポワールシチー、ヴァーミリアン、ダート中距離の頂点を極めた馬たちは、みんなHyperionについて一家言ある配合をしている。
最後の決め手は「母系に入るHyperion」。ダートの頂上決戦だからこそ、血統屋としてはHyperionに拘るべきではないのか、というところで◎は決まった。

◎インカンテーション
○ローマンレジェンド
▲コパノリッキー
☆ワンダーアキュート
△グレープブランデー

先のスプリンターズSではお手馬スノードラゴンで会心の追い込みを決めた大野だが、トランスワープの重賞2勝も主戦の彼の手綱によるもので、完全無欠の何拍子も揃ったチャンピオンは回ってこないけれど、特定の条件下においては大きなところでも通用するスペシャリストの長所と短所を理解し、チャンスが巡ってきたならばその長所を最大限に引き出すことができる乗り役、というような評価は定着してきた感があるし、これはアラサー中堅騎手のあるべき姿の一つといえるだろう。
インカンテーションとは8戦連続でコンビを組み、コーナーに癖のない新潟と京都では好走、トリッキーな阪神と中山では苦戦、小回り札幌ではローマンレジェンドとクリノスターオーに完敗。
酸いも甘いも噛み分けながら両者の絆は着実に深まり、みやこSではこれまでのイメージを一新する中団差しを決めて、「何でもできる馬になった」と勝利インタビューで胸を張った。
インカンテーションの母オリジナルスピンの血統表において、1/4異系として燦然と輝くのがTime CharterのHyperion5×4・5、もっといえばHyperionとBleinheim(=His Grace)とDark RonaldとPretty Pollyの組み合わせクロス。
直線の叩き合いですべてを出し尽くすようなレースになればなるほど、このHyperion的な凝縮が、底力の塊が信用に足る。
「Seattle Slewだから」ではなく「Hyperionだから」、大野が手塩にかけて育て開花させたHyperionだからこそ信用に足るのだ。


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