栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第58回スプリンターズS回顧~名血・名牝系・名配合、短距離突進で結実

2024-10-01 22:51:33 | 血統予想

中山11RスプリンターズS
◎7.マッドクール
○12.サトノレーヴ
▲9.ムゲン
△3.ウインマーベル
△15.ヴェントヴォーチェ
×13.ルガル
ノリに乗り替わるピューロマジックがどんなレースをするのか。ここがまずポイントになるが、テン乗りで無理から抑え込むのはさすがのヘンタイ騎手でも難しいだろうし、前走セントウルでタメ逃げで捕まってしまったことを思えば、行く気にまかせて北九州記念の再現を狙う、と読むのが最も現実的か。32秒5-34秒5ぐらいの前傾ラップを想定。
となると、ナムラクレア、トウシンマカオ、オオバンブルマイといった1400質のしなやか差しは追走で削られそうだ。高速決着に対応できるピュアスプリンターから入るとなると、まずはマッドクール、サトノレーヴ、ヴェントヴォーチェをピック。ヴェントヴォーチェは外枠が不利だが、オリオールの薄いクロスをもつタートルボウル産駒だから馬群に入らないほうがレースはしやすい。◎はマッドクール。前傾スプリンターズだからこそ、ダンジグのゴリゴリ正攻法に◎。
ビクターザウィナーは高松宮で◎にしたが、いかにもグリーンデザートのパワースプリンターで高速馬場だと狙いは下がる。ムゲンはとにかく配合が素晴らしすぎるので、これだけ人気がないと手を出したくなるのだが、これも1400質の差しには見えるので◎は打てなかった。タワーオブロンドンぐらい斬れれば差し切れるだろう。そりゃそうか。
ウインマーベルは1400ベストで1200だとワンポジ後ろになるので勝ちきれないが、この枠と並びならば今年はイン好位がとれそうだし、もともとインを捌くのは巧い馬だ。1枠2頭が外に出したいだけに、スプリンターズの穴定番=内枠のイン立ち回りを狙うならこれだろう。

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例によってNETKEIBAの全頭血統解説より1~3着を

ルガル
ヴィンテージS(英G2・芝7F)2着Ibn Malikの甥。3代母East of the Moonは仏オークスなどに勝った名牝で、子孫にAlpha CentauriやAlpine Starといった欧G1馬が出る。牝祖はマイルの女王Miesqueで、Kingmamboやラヴズオンリーユーも同牝系。本馬は父がKingmambo系ドゥラメンテなのでMiesque4×4をもつ。短距離馬としてのパワーアップが著しいが、高松宮は後傾ラップで差しに回って味がなかった。もっとパワーごり押しで運びたい。(距離○スピード○底力◎コース◎)



トウシンマカオ
母ユキノマーメイドは優秀な繁殖で、JRAに出走した産駒10頭のうち、ベステンダンクやサンキューなど8頭が勝ち馬となっている。父ビッグアーサーは高松宮記念に勝ったサクラバクシンオー産駒でブトンドールやビッグシーザーなどを輩出。産駒は圧倒的に芝1200での勝ち鞍が多い。本馬もデビュー時より30キロ以上体重が増えて1200に寄ってきたが、今でもベストは1400かも。スペシャルウィークの肌だけに、セントウルのように馬群の外から差すと斬れる。(距離○スピード○底力◎コース○)



ナムラクレア
ナムラムツゴローの3/4妹。3代母Coup de GenieはMachiavellianの全妹の仏2歳女王で、子孫にバゴやファンディーナなど活躍馬多数の名繁殖。父ミッキーアイルはマイルG1を2勝したディープ産駒で、メイケイエールやララクリスティーヌなど牝駒は芝短距離でよく走る。しなやかな走りで1200より1400質なのもメイケイと似ていて、スプリンターズより高松宮の着順が良いのは後傾ラップになりやすいのもあるか。あまり追走せず差しに回れば斬れる。(距離○スピード◎底力◎コース○)



コメント欄に書いたように、パドックで良く見えたのはトウシンマカオ、ウインマーベル、マッドクール、ビクターザウイナー、ムゲン、ルガルで、ルガルは骨折休養明けでもいきなり動けそうな仕上げに見えました

ピューロマジックが前傾ラップで行って、ピュアスプリンターのゾーンのレースをつくるから、ナムラクレアやトウシンマカオのような1400質の差しは苦しいんじゃないか…という読みでいったんですが、ピューロは32.1-35.4でビュンビュン逃げ、それを3番手でうなりながら追いかけたルガルが32.8-34.2の前傾ラップで押し切り、中団イン差しのトウシンマカオがちょうど33.5-33.5で走破し2着、ナムラクレアはその後ろから33.9-33.2の後傾ラップでしなやかに差して3着

「ピューロマジックが速すぎたために、結果的にはそれを無視して、後傾マイペースで追走した馬が昨年や一昨年より多かった」とMahmoudさんが指摘してましたが、たしかにスプリンターズにしては馬群が縦長になって、レースラップは史上最高の前傾なのに、ナムラクレア自身は22年33.5-34.5(5着)、23年33.8-34.4(3着)、24年33.9-33.2(3着)と今年が最も後傾配分で走破していたのは面白い

「もうワンポジ前が理想だった」と武史は悔しがってましたが、芝1200を最も速く走破できるペース配分でナムラクレアを追走させ、身上の斬れ味を最大限に発揮させたのはみごとなテン乗りだったと思います

それでも最後は止まり気味でゴールイン直後にママコチャに差し返されていたのをみると、やっぱりメイケイエールと同じでスプリンターとしてはしなやかすぎる1400質なんやなあと、2着でしたが京都牝馬のゴール前のフォームがメイケイエールの京王杯SCと同じぐらい美しかったのでね

トウシンマカオは京王杯や高松宮が馬群を割りきれずに消化不良という負け方で、スペシャルウィーク肌らしい気質なのだろうとみていたので、この内枠は難しいと思ったしインベタで差してくるとは驚きでした

ルガル32.8-34.2、トウシンマカオ33.5-33.5、ナムラクレア33.9-33.2、芝1200を67秒で走破する方法は決して一つではなく、個性や資質に合ったペース配分で走破した馬たちが上位を占め、前傾ラップで追走したパワースプリンターが勝ったのです

ママコチャはクロフネの夏女で、昨年のスプリンターズは最高気温29.9℃で快勝、今年は少し涼しくて25.1℃、そのせいか前走ほど抜群の出来には見えなかったような…セントウルのときはパドックはママコチャが一番良いと(予想は無印なのに)書いたほどでね
※ちなみにママコチャの全成績に当日の最高気温をメモしたものを載せておきます



ルガルの3代母East of the Moonは仏オークスや仏1000ギニーなどに勝った名牝で、スーパー名牝Miesqueの娘でKingmamboの半妹という名血で、当然のごとく繁殖としても成功し、子孫にAlpha CentauriやAlpine StarといったG1馬が出ています

母アタブはSadler's Wells≒Nureyevの3/4同血クロス3×4、ルガル自身はMiesque4×4とNureyev≒Sadler's Wells5×4・5

いつも書くように、キングカメハメハ系の配合において有力な全きょうだいクロスや3/4同血クロスを狙うのならば、Nureyev≒Sadler's Wellsのラインが第一手で、トライマイベスト=El Gran Senorのラインが第二手

タイトルホルダーはNureyev≒Sadler's Wells5×4、サートゥルナーリアはNureyev≒Sadler's Wells5×3、パンサラッサはNureyev≒Sadler's Wells5×3、アーモンドアイはトライマイベスト≒ロッタレース5×2、リバティアイランドはトライマイベスト=El Gran Senor5×4、これだけ列挙すれば十分でしょう

「新種牡馬ドゥラメンテもNureyev≒Sadler's Wellsの3/4同血クロスがまずは第一手だろう」と種牡馬辞典(2020年版)で書きましたが、それにしても実質3世代の産駒が1200~3200までの芝G1をあらかた制し、ダートG1も手中におさめ、オールラウンドな大活躍はまさにキングカメハメハそのもの

打点の高さではキンカメを上回るほどで、ドゥラメンテがまだ存命ならば…の世界線を描かずにはいられませんが、名血名牝系名配合の後継が出たのは喜ばしいかぎり

ルガルの短距離の突進力は、Private Accountの圧倒的なパワーで一つ説明できますが、母父New ApproachもGalileo産駒の英ダービー馬ですが短距離5戦5勝の2歳チャンピオンでもあり、短距離~マイルのスピードをよく伝えている血です

New Approach産駒のDawn Approachが7連勝で英2000ギニーを制した後、ミオスタチン遺伝子型CCであると公表し、英ダービーに挑戦して惨敗したのが当時話題になりましたが、私の調べたところではNew Approachを母父にもつ馬はModern Games、Rosallion、Mawj、Earthlight、Live in the Dream、Scorthy Champ、ルガルの7頭が計15RのG1を勝っていて、うち14Rは1600以下で、2000以上のG1勝ちはありませんでした

日本の重賞を勝った母父New Approachもルガルとバスラットレオンとデュープロセスの3頭だし、海外のデータをみてもGレース勝ち35のうち24が1600以下なんですよね



New Approachの半兄シンコウフォレスト(父Green Desert)は高松宮記念に勝ちアイルランドで種牡馬になりましたが、母父Ahonooraは5FのG2スプリントチャンピオンシップに勝った遅咲きのスプリンターで、スプリンター種牡馬として成功したAcclamationの母父でもあり、どうもこのAhonooraがCC的スプリントをよく伝えていると考えられるのです

ちなみにタゲでAhonooraのクロスをもつ馬を抽出し距離別成績を出してみたのですが、以下のようにやはり1200に勝ち鞍が集中しており、しかもこのデータは活躍馬筆頭のマッドクール(Ahonoora4×3)はあえて除外して出したものです

●Ahonooraクロス馬の距離別成績(筆頭のマッドクールは除く)


母父サドラー系のドゥラメンテ産駒という字面からはタイトルホルダーのような重厚中長距離型をイメージしてしまいますが、キングカメハメハ×Storm Catは短距離王ロードカナロアが出た組み合わせだし、Miesque4×4もパワーを増す方向に作用しがちで、そこにAhonooraやPrivate Accountの突進力が加わって1200を突進しているのがルガルなのだと、今日のパワースプリンター然とした勝ちっぷりを見て確信した次第です

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「一口好配合ピック」ライオンから計5頭ピック

2024-10-01 15:16:17 | 共有クラブ

おかげさまで今期も好評をいただいております「一口馬主好配合馬ピックアップ」ですが、本日サラブレッドクラブライオンから栗山が2頭、望田が3頭、計5頭ピックしました

現在キャロット(24)、シルク(17)、ジーワン(17)、東サラ(13)、ユニオン(7)、ウイン(6)、DMM(5)、ライオン(5)、グリーン(4)、ラフィアン(3)、ターファイト(2)、YGG(2)からピックしています

「一口馬主好配合馬ピックアップ(2024~2025)」がスタート
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/45ec6c6634cd3a48c26a5bf34c3a7758

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