栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第68回安田記念回顧~今年も31秒台決戦、Storm Catが突き抜ける

2018-06-04 10:56:07 | 血統予想

東京11R 安田記念
◎1.スワーヴリチャード
○15.サングレーザー
△9.レッドファルクス
△10.モズアスコット
昨今のマイルG1は中距離馬が格で勝ちきるシーンも多い。スワーヴリチャードはバンドワゴンの下で、母母キャリアコレクションはBCJフィリーズ2着。ハーツクライでもマイルの高速戦の対応力はリスグラシューよりも高いだろうし、東京コースに替わるプラスがとにかく大きいから、中団ぐらいから差し切れるとみた。東京芝は相変わらず凄い時計が出ているので、31秒ソコソコの高速決着とみると1400m寄りのスピードがある5枠2頭に食指が伸びる。

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ダービーにつづいて安田記念も出走全馬の血統解説をNETKEIBAのG1特集で書いていますが(1~5着馬のぶんだけ末尾に再掲してます)、これ入稿締め切りがレースの10日前ぐらいなので、一週前登録で出走可能な18頭を見定めて解説を書いてるんですよね

で、19番目のモズアスコットを除外して入稿したら、「安土を勝ったら連闘する可能性が高いので、これの解説も追加でお願いします」と編集部から連絡が

そんなもんたぶん勝つやんか…と先に書いておいたんですが、出遅れて大外一気もまさかの惜敗で、う~むボツになってしまったと思ったら、週明けに編集部から「やっぱりモズの原稿ください」

ルメールを確保しているという情報は入ってたし、はは~ん…ということは何かやめるんやな、と思ってたら藤沢厩舎が3頭引っ込めてきました

もともと連闘上等の矢作厩舎、そして今の高速馬場なら1分31秒台の決着は必至で、昨年の安田回顧で書いたようにStorm Catの血はマイルの高速決戦で滅法強いですから、お膳立ては着々と整ってきた

私はルメールはマイラーズCのようにフワッと先行するんじゃないかと思ってましたが、内のスワーヴとペルシアンを見るポジションでジックリ運んで直線もスワーヴの直後、そこでミルコが外のサトノに併せにいったために、進路がポッカリ開いたところを真っすぐ突き抜けてきました

スワーヴリチャードはピラミマの仔なので、ピラミマってホワイトマズル付けてもバンドワゴンですからね、その母キャリアコレクション(BCJフィリーズ2着)はNasrullahだらけの早熟マイラーで、ザックリ言うとリーチザクラウンのような大箱マイルのスピードを伝える繁殖です

だからたとえばリスグラシューよりも高速マイル戦の対応力は高いと思ってましたが、スタートが決まったとはいえこのペースを好位でうなってるとは、追走できすぎたぶん最後苦しくなった感もありました

この馬はシュヴァルグランのように距離が長ければ長いほどいいというタイプでもないと思うし、パンとした今なら、ベストパフォーマンスを叩き出すのはジャスタウェイ同様秋の天皇賞かもしれません

サトノアレスは血統解説でも書いたように、手先の俊敏さだけでサササッと走るので瞬時の加速は目を見張るものがあり、いつも残り400mぐらいでは突き抜けそうなのにゴール前では重心が高くて終わってみれば2着3着、というレースが続いています

この一瞬のサササッにミルコも騙されてしまったわけですが、京王杯にしても上がり3Fの数字では優っているけどゴール前の勢いは1,2着馬のほうがいいんですよね

アエロリットはこのペースを3番手追走からあと1Fで先頭、強い2着でしたが、ヴィクトリアマイルのレースラップが46.8-45.5で安田記念が45.5-45.8

フォーティナイナーとかステラマドリッドみたいなA級米血はワンペースでパワーでゴリ押ししてこそで、そういう土壌でチャンピオンを輩出し血を遺してきたわけで、これはいつも書くようにテイエムジンソクにも言えることでね

逆にヴィクトリアマイルよりパフォーマンスを落としたのがリスグラシューで、この馬については東京新聞杯を完勝したときも「ピュアマイラーではないので1600mのレースだとスローのほうがいい」と書いてきましたが、「この時計では厳しい」とユタカのコメント

サングレーザーは「Sir Gaylord的前輪駆動なので下りで惰性をつけられる京都外マイルがベストコース」とマイラーズCで◎にしましたが、ベストコースではないぶん、今日はモズアスコットに雪辱を許したというべきかと

パドックでの出来はペルシアンナイトが一番だろうと書いておきましたが、直線で満足に追えるスペースがなく不完全燃焼のままゴール

マイルCSは稍重で1.33.8、今日は1.31.7で走破したんですが、ハービンジャー産駒ですから31秒台決戦ではマイルCSのようにはいかないんじゃないかという読みで、ちなみにミルコは事あるごとに「1800がベスト」と言ってます





モズアスコットの配合のキーは、Miswaki4×3にStorm Catを絡めることで、Hopespringseternal≒Terlinguaの「ナスキロ+Tom Fool」の組み合わせをニアリークロスしている点にあり(Tom FoolとFirst Roseはニアリー)、Frankelの血統表の中で最も日本向きの柔軽いスピードがこのHopespringseternalであり、ソウルスターリングにしても母母がMill Reef(ナスキロ)とTom Foolの組み合わせなのです

モズアスコットのナスキロ柔いストライドは明らかに大箱向きで、そしてこういうナスキロ柔いストライドで走る馬に乗って大箱を差させたら、本命馬を目標に差させたら、フレンチの鉄人が今もナンバーワンだった

このあたりの血統の話は下記エントリも参照ください

2018年最初は、Storm CatとFirst Rose≒Tom Fool≒Spring Runの話
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/4e1a38d2a4a084fe02894360523af490

第67回安田記念回顧~31秒台決戦、母父Storm Catが混戦に断
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/d6e63822581c55d98feb7763bfa9256e


アエロリット
ミッキーアイルのイトコ。3代母ステラマドリッドからはラッキーライラックなどが出る。テイエムジンソクとは父クロフネと牝系マイジュリエットが同じ。先行ゴリ押し脚質の活躍馬が出る北米A級牝系だ。アエロにしてもラッキーにしてもジンソクにしても、前走は好位で少し丁寧に乗りすぎてしまった部分はあったか。東京でもNHKマイルのように荒っぽく乗ってしまったほうが持ち味が活きるのでは。

サトノアレス
サトノフェラーリやサトノヒーローの全弟で、Storm Catやロイヤルアカデミーが出るCrimson Saintの牝系。ディープ×デインヒルはフィエロと同じ。フィエロと似たマイラーだが、こちらのほうが少し脚質が軽いというか、軽さ俊敏さに頼った差し方をする。京王杯では直線目につく鋭さで差のない3着。あれでゴール前でもうひと脚使えれば、もうひと沈みあればG1でも圏内だが。

サングレーザー
母母ウィッチフルシンキングはパッカーアップS(米G2・芝9F)勝ち馬で、産駒にメーデイアやロフティーエイムがいる。パワーと粘りに長けた牝系といえるが、本馬は父がディープインパクトでSir Gaylordのクロスを持つので、しなやかなストライドで斬れるタイプに出た。前の駆動がいいので、京都外マイルがベストコースで東京マイルはセカンドべスト。前走で高速決着にも自信を持って挑む。

スワーヴリチャード
バンドワゴンの下で、母母キャリアコレクションはBCJフィリーズ2着。母父Unbridled's Songはトーホウジャッカルやダノンプラチナの母父。大阪杯はペースが緩んだところで押し上げて持続力でねじ伏せたが、マイルのG1では差す形になるだろう。ハーツクライ産駒は芝1600mのG1で[1-3-2-22]、唯一の勝ちはジャスタウェイの不良馬場の安田記念。距離不足を格とコース適性で補いたいが、昨今のマイルG1は中距離馬が格で勝ちきるシーンも多い。

モズアスコット
母Indiaは米G2コティリオンBCH勝ち。イトコには北米G1勝ち馬To Honor and Serveなどがいる。母父ヘネシーは日本で成功しているStorm Cat系でミスエルテの母母父でもあり、本馬とミスエルテは父フランケルも同じで全体の配合パターンも似ている。母方のナスキロ柔さで走る大箱向きマイラーで、距離は1400mがベストだろうが、マイラーズCのようにジワリと先行できればマイルG1でも面白い。

コメント (10)
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