栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

フジキセキ死亡

2015-12-28 15:43:10 | 配合論

りろんちさんのブログでミアンダーの話を読んでて思い出したのは、日高大洋牧場に務めてたときにミアンダー牝系の繁殖がいて、私が辞めた後に南関東の活躍馬が出たりしたんですが、当時は近親に目ぼしいブラックタイプはいなかった

あるとき昼休み中に馬主さんが馬を見にやってきて、ひとまず私とYの若手二人が寮から駆けつけて馬出して見せてたんですが

「これ種なんや?」
「モガミです」
「モガミか…母系は?」
「シラオキの牝系ですね。シスタートウショウの近親です」

こんな感じで即答できるような繁殖ならよかったんですが、とにかく近親にブラックタイプが皆無なので答えに窮していると、Yが蚊の鳴くような声で

「ミ、ミアンダー…」
「はあ?ミアンダー?」
「ミアンダーの牝系です」
(そ、それただの基礎牝馬やん…)

馬主さんは「ほうか…」とそれ以上突っ込んできませんでした(^ ^;)

--------

サンデーサイレンスの初年度産駒は、フジキセキが朝日杯を勝ち、ジェニュインが皐月賞を勝ち、ダンスパートナーがオークスを勝ち、タヤスツヨシがダービーを勝つという、これ一つとっても、私が生きてる間にこんな種牡馬はもう出ないでしょうね~

このサンデー初年度産駒の中でもフジキセキは別格の扱いを受けていて、それは4戦4勝という戦績はもちろん勝ち方にもファンタジーがいっぱいで、もみじSではタヤスツヨシを相手にせず、朝日杯で競り勝ったスキーキャプテンは次走きさらぎ楽勝、そして弥生賞で子供扱いしたホッカイルソーは皐月④ダービー④菊③と三冠オール好走

しかもサンデー産駒ながら決して斬れに頼ったレースぶりではなく、朝日杯が5-3-3、弥生賞が2-2-2-1、マイルのHペースでも泥が飛ぶ重馬場でも先行して横綱相撲でねじ伏せにかかるのが圧巻で、角田晃一は強い馬を横綱相撲で強く勝たせる乗り役でした

このサンデー産駒の中でも異彩を放つ野性味は母父Le Fabuleux譲りで、だから種牡馬としてもRed God×Wild RiskのBlushing Groomのようなオールラウンドな名種牡馬になるんじゃないかと思ってたんですが、思った以上に短距離に寄った産駒を出したのはご存知のとおり
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1992109618/

フジキセキの配合は父サンデーサイレンスも母ミルレーサーも強いクロスを持たず、自身もRoyal Charger≒Nasrullah5×6ぐらいで、いわば緩和×緩和=緩和と言っていい配合で、だから母がネヴァービート3×2のダイタクリーヴァとか、母がNorthern Dancer3×4のエイジアンウインズとか、クロスがうるさい牝馬との配合が成功しました

祖父母4頭でみると、HaloがBlue Larkspur4×4とPharos≒Pharamond5・5×3とMumtaz Begum≒Mahmoud5×3、Marston's MillがWar Relic≒Eight Thirty4・4×4で、残りのWishing WellとLe Fabuleuxはアウト

だから産駒の代ではHaloとMarston's MillがONになりやすく、フジキセキのスプリンターはKnown Factやウォーニングなんかと通じる、In Reality的なスプリンター体型をしていることが多かった

 ┌○
 │└Fairy Gold
Man o'War
││┌Rock Sand
│└△
War Relic
│ ┌Rock Sand
│┌Friar Rock
││└Fairy Gold
└△
 │ ┌Commando
 │┌○
 └△

 ┌Friar Rock
┌○
Eight Thirty
│  ┌Commando
│ ┌○
│┌○
└△
 │┌Man o'War
 └△

Deputy Ministerとのダート黄金配合は、Deputy Ministerが持つBunty Lawless5×3、Ladder≒Parade Girl6×4・5がWar Relic≒Eight Thirty≒Good Exampleのトリプルニアリークロスで継続されることで、In RealityとDeputy Ministerのパワーが伝わりやすいというのが根拠(War RelicとEight ThirtyとGood ExampleとLadderを比較してみましょう)

Wild Risk
Le Fabuleux
└△
 └△
  └Sans Tares

Wild Risk
Worden
Sans Tares

サダムパテック(Le Fabuleux≒Worden3×8)、ドリームパスポート(Le Fabuleux≒Worden3×5)、タマモ○○○プレイ(Le Fabuleux≒Worden3×5)などはLe FabuleuxにWordenを合わせていて、伝わりにくいフジキセキのLe FabuleuxらしさをONにすることに成功したといえます

短距離のキンシャサノキセキ、芝マイルのダノンシャンティ、ダートのカネヒキリと多彩な後継も出て、“サンデーサイレンス系のBlushing Groom”と呼ぶにふさわしい枝の拡がりをみせています…合掌

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12/26,27の血統屋コンテンツ推奨馬の結果速報

2015-12-28 14:27:30 | POG

■『ディープインパクト好配合リスト(2015)』で栗山求が推奨したサトノキングダム(牡2歳)が日曜中山4Rの新馬戦(芝1600m)を勝ちました。

◎サトノキングダム(牡・母ダリシア)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2013105535/
ケンタッキーダービー(米G1・ダ10F)とドバイワールドC(首G1・AW2000m)を制したAnimal Kingdomの半弟。母はアメリカで誕生したあとドイツに渡り、シュパルカッセンフィナンツグルッペ賞(独G3・芝2000m)を制した。日本における産駒はこれまで3頭がデビューし、勝ち上がりは1頭だけだが、「ディープインパクト×Acatenango」は相性がよく、ワールドエース、エックスマーク、ペルレンケッテなどコンスタントに活躍馬が誕生している。2代母の父はダンシングブレーヴ。父と相性のいい血で、Alzao≒ダンシングブレーヴ3×3はスマートレイアー、アヴニールマルシェ、サトノルパンなどと同様のパターン。Animal KingdomはLyphard4×4だったのでここを強化する配合は好ましい。芝2000~2400m向き。

■『ディープインパクト好配合リスト(2015)』で栗山求が推奨したジークカイザー(牡2歳)が日曜阪神5Rの新馬戦(芝1800m)を勝ちました。

○ジークカイザー(牡・母ヒルダズパッション)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2013106021/
キャロットクラブで募集価格1億2000万円。母ヒルダズパッションはバレリーナS(米G1・ダ7F)など5重賞を制し、ガルフストリームパークのダート7ハロンのトラックレコード(1分20秒45)を樹立した。ディープインパクト産駒のAlzao≒El Pradoのクロス(3×3)はサンプルが少ないとはいえいまのところ成功例はなく、母が持つNureyev≒Sadler's Wells4×3も決して素軽くはない。しかし、母は抜群のスピード誇った名牝だけに、これらがスピードを支える重厚さとして機能するようなら期待がかけられる。ミッキーアイルのような先行力のある快速タイプだろう。仮にパワーが全面に出た場合はダートでやれそうだ。

■土曜阪神7R500万下サトノダイヤモンド(ディープ・望田&栗山)

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サトノダイヤモンドは好発から好位に控えると、途中13秒台に落ちても折り合いピタリ、とにかく道中無駄なことを一切せず、内回りのコーナリングもスムーズで、ルメールが満を持して追い出すと速やかに反応し、新馬戦と同じく超優等生な競馬で楽々と抜け出してしまいました

脚長で体質が柔らかいので数完歩のピッチでビュンと最高速度に乗る感じではないんですが、それでもアッという間に後続を離してしまうのは恐れ入った

私はPOG向きの速攻系マイラーとみて推奨したんですが、思った以上に体型に伸びがあって、これは母系に入るBuckpasserの影響が強いかなと

ヴィルシーナ(Halo3×4・5)なんかもウチパクがゴリゴリ気合い入れてハナにいっても、手綱を緩めると即座にペースダウンをはかるような操縦性の高さがあって、そういうところもサトノダイヤモンドの長所の一つじゃないかと

Haloのクロスというのは、体型よりも走法遺伝率が高いというか、あの軽くて無駄のない脚捌きを伝える確率が高いと思います

しかしバティスティーニとかブラックスピネルとかナムラシングンとかシャドウアプローチとか、そりゃ大物ではないけれどなかなか走る馬やなあ~、オープンでも見どころあるやろうなあ~という馬たちを、次元の違う“ハッとする脚”でぶっこ抜くクラシック候補がボチボチ明らかになってきました

そうそう、今週はNETIKEIBA「重賞の見どころ」はお休みで、年明けは1/6更新(シンザン記念とフェアリーS)からとなります

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第60回有馬記念回顧~名優は去り、新たな主役が

2015-12-28 00:39:11 | 血統予想

中山10R 有馬記念
◎12.リアファル
○15.ゴールドシップ
▲13.ルージュバック
△4.ラブリーデイ
△5.アドマイヤデウス
×6.アルバート
×7.ゴールドアクター
リアファルはクリソライトやマリアライトの3/4弟でアロンダイトの甥。パワーとスタミナを誇る牝系だ。サドラーズウェルズの影響が強い伸びのある体型で、母はボールドリーズン≒ネヴァーベンドの3/4同血クロス5×3を持ち、この影響で肩が立っていて前肢が伸びる走りではない。だから「京都の高速馬場だと鋭さ負けの心配がある」と菊の予想では書いたが、インのポケットで仕掛けが少し遅れたためにその心配が現実のものとなってしまった。急坂小回りの長丁場はパワーとスタミナを最大限に活かせる条件。ルメールが前走と同じ轍を踏むとは思えないし、「内枠は嫌だった」とコメントしているのも、上がり4Fのロンスパ戦に持ち込みたいという思惑が見え隠れする。ゴールドシップはロンスパ戦は望むところ。追い切りの動きに明らかに復調が見てとれるルージュバックは中山内回り向きとは言い難いが、気楽に大外一気でもまとめて面倒見れる斬れ味がある。好位にラブリーデイとゴールドアクターがいれば直線インにスペースはできるだろうから、内枠から4頭ヒモで拾っておく。

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引退レースで堂々の1人気に支持されたゴールドシップは、それに応えるべく一頭だけ1000m標識から猛然とスパートして先団に並びかけて観衆を沸かせ、しかも最後まで止まってはおらず前の馬たちと同じ脚色では上がっていて、「どや!このロンスパでG1を6つも勝ってきたんじゃい!」という、最後までゴールドシップらしいレースを貫いて8番目にゴール板を駆け抜けました

勝っても負けても、圧勝してもズッコケても、走るたびにそのパーソナリティが話題になる、みんなが「私のゴールドシップ論」をあーだこーだと語り合う、こんな存在は唯一無二で、最強馬かどうかはともかく最強のエンターティナ―だったことは疑いないし、競馬歴何十年のオッサンの心が震えるようなレースを見せてくれたのも間違いない

この希代の名優の最後の舞台にて、主役の座を奪い取ったのはその名もゴールドアクター、父スクリーンヒーローにちなんだ名を授けられた4歳牡馬でした

これでスクリーンヒーローは僅か3世代の産駒から、しかも決してトップクラスの肌馬を集めているとはいえない状況下で、世界のマイル王モーリスと有馬記念馬ゴールドアクターを輩出したことになります

グラスワンダーとダイナアクトレスがうなりながらマイルを走っているようなモーリスと、グラスワンダーとAlyshebaが長距離をジワリと抜け出すようなゴールドアクター、配合パターンもキャラも全く異なるチャンピオンを2頭出したというのがまた素晴らしい

ミアンダーにさかのぼる牝系にセダンやトサミドリのスタミナが重ねられ、そこにPharos=Fairway5・5・5×5・6のマナード、Native Dancer4×4のキョウワアリシバ、そしてNorthern DancerとHail to Reason4×4のスクリーンヒーローと配されて、「緊張と緩和」のリズム的にはモーリスより好きな配合ですね
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105266/

ゴールドアクターのレースぶりには、母父キョウワアリシバの父Alysheba、Alydarの代表産駒でBCクラシックやKダービーなどに勝った北米年度代表馬の影響が強く感じられます

このAlyshebaを母系に持つ馬をTARGETで検索してみると、賞金上位はエアエミネム(デインヒル×Alysheba、オールカマー、神戸新聞杯、菊花賞3着)、ウイングランツ(ダンスインザダーク×Alysheba、ダイヤモンドS、目黒記念2着)、アラバンサ(El Gran Senor×Alysheba、ステイヤーズS2着、函館記念3着)、ベンチャーナイン(エイシンサンディ×コマンダーインチーフ×Alysheba、京成杯2着、ステイヤーズとダイヤモンド4着)

急坂と洋芝と内回りに強いのはAlydarらしいのですが、Alydarよりももっと重厚にジワリと捲り上げるような、もっと長距離のスタミナに寄っているというイメージの血なんですね

キョウワアリシバは通算19戦5勝、ベストパフォーマンスは京都内2000mで田原成貴が3-3-2-2とジワリと捲った朝日CC3着で、Aureole6×5のマイシンザンの大外捲りが決まったレース
https://www.youtube.com/watch?v=TAIwXtUmfiA

ゴールドアクターは東京でも長丁場の持続戦なら好位でねじ伏せる競馬で勝つのですが、昨夏の札幌2600でうなりながら抜け出す脚がかなりAlysheba的で、京都の菊花賞では鋭さ負けして3着というのがまたエアエミネムなんかとかぶるなあ…と思って見てました

1987年ケンタッキーダービー(4角捲って先頭に並びかけ、直線躓いた後抜け出してくるのがAlysheba)
https://www.youtube.com/watch?v=Zf3D2wK_-2Y

引っかかる馬ではないのでハナを切らんばかりの勢いで出していって、2角ではミルコにイン3を譲らず死守、そのまま4角まできて、グラスワンダーのように凄いパワーで一気に抜け出す脚はないけれど、先行馬を見ながらジワジワと進出

「乗りやすい馬だし、いい枠を引いたので思い切って乗ります」と語っていた吉田隼人はこれが嬉しいG1初勝利、ゴールドアクターとは3歳夏の札幌からコンビを組みつづけて[6-0-1-0]、菊花賞3着後も手綱を任されつづけてきたお手馬での勝利ですから、喜びもひとしおでしょう

初めての中山内回りでこんなにも理想的に乗れたのは、こんなにもAlyshebaらしく乗れたのは、ジョッキー吉田隼人がゴールドアクターという馬を誰よりも深く理解していたからに他なりません

ノリの逃げならばスローだろうと読む人は多かったでしょうが、枠順抽選のときにルメールは「リアファルはスタミナがあるのが長所」「内枠は嫌だった」とコメントしていて、それは「スタミナは一番だと信じて乗るので、菊のようにポケットに入ってスパートが遅れるのだけは避けたい」というメッセージに受け取れました

だからゴルシが動いてペースアップしたときに一頭だけズルズル後退していくのが信じられず、外から交わされたときに嫌気がさしてしまったんじゃないかと思ったんですが、スタート後にルメールはもう異変を感じていたようで、最初のホームストレッチでも馬の脚元を何度も確認するシーンが見られます

終わってみればリアファル以外の先行馬が全て残っているだけに、無事なら勝ち負けだったんじゃないか…とは言っちゃいけない

いずれにしても、私はSadler's Wellsが表現された急坂長丁場向きの中長距離馬だと思っているし、有馬記念はベストパフォーマンスを出せる舞台の一つだと今でも思ってるので、リアファルがカムバックしてそれを証明する日が来るのを待つしかないし、待つのみです

サウンズオブアースは行きたがるのをなだめて好位、リアファルの直後を取ってしめしめと機をうかがってましたが、リアファルが急激に下がってきたときに避けるロスがあっての惜しいクビ差2着

この馬についてはデビュー当時からずっと同じことを書いてますが、ネオユニヴァース×Dixieland Bandだからデルタブルースやアクシオンやフミノイマージンのようにパワーと粘りに長けた血統なのに、Secretariatのナスキロ柔さも強くてネオユニ産駒とは思えないしなやかストライドで走るのです

だから京都外回りでも中山内回りでも斬れ勝負でも機動力勝負でも同じぐらい好走するんですが、一方で強敵相手でも突き抜けてしまうようなスイートスポットがないという、そこが2着の多さにつながっているように思いますね

有馬記念も菊花賞も京都大賞典も神戸新聞杯も京都新聞杯も惜敗というのもなかなか凄い戦績で、前走JCはインベタ馬場で外を回るロスがあって5着、この先もっとパワーに寄ってくるのか、Dixieland BandのHyperionがもっと発現してくるのか、買いどころは常に難しいですがオモロイ馬です(・∀・)

ラブリーデイは連戦の疲れがなかったとは言えないだろうし、直線は進路を探しながらというところもありましたが、ゴール板をすぎてからアドマイヤデウスやトーセンレーヴにも交わされていたのは、やっぱり2400m超では2000mほどの瞬発力は使えず、京都大賞典ぐらい超スローで上がり特化でないと…という注文はつくのでしょう

有馬の回顧に取りかかろうとしたら引退式の中継がはじまり、最後のカーテンコールでも「ここらでちょっと盛り上げたろか~」とばかりにゴネはじめて、最後まで人間の思いどおりにならないゴルシを、みんなが笑顔で温かく見守ってたのがよかった(・∀・)

思いどおりにならないのが競馬の醍醐味やないかとよく思うんですが、だからゴールドシップを語ることは競馬の醍醐味を語ることでもあり、だからみんなゴールドシップについて熱く語り合ったんじゃないかと、夕暮れに白く浮かび上がるシルエットを見ながらそんなことも考えてました

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