即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

もしも羽生さんよりも数倍強いコンピュータソフトができたら

2014年06月02日 22時34分22秒 | 将棋
また電王戦の話の続きです。
今年の電王戦についての記事はこちら。
<作戦間違い@電王戦>
<その2>
<その3>
<その4>
<その5>
<その6>
<その7>
<その8>

以下、勝手な妄想の“もしも”シリーズです。

〇年後、その頃電王戦はどうなっているかわからないけど、コンピュータソフトはどんどん目覚ましい進化を遂げ、トップ棋士が束になってかかってもかなわないほどの実力になっていた。
そして、そんなソフトが安価で手に入るようになって、我々将棋ファンのスマホにも簡単にインストールできるような時代になっていた。

さて、現在、H生名人とM内挑戦者の名人戦の対局が行われています。

大盤解説会の解説はF井九段。

局面はいよいよ終盤にかかろうかという勝負所に差し掛かっている。

F井九段の自虐ネタも含めた楽しいトークが続いています。

聞き手のF田女流初段が、『この後の展開はどうなりそうですか?
F井先生は現局面、どっち持ちですか?』などと聞く。

『そうですねえ。
ここからは先手の攻めがしばらくは続くでしょうけど、やはり玉型の差が大きいとみるので、後手優勢なんでしょうか。
さきほど控室でもそういう見方だという情報もありましたし、先手は辛いですかね?』

ここで一番前に座っていたベテランファンが、
『3三に銀を打ったら先手がいいんじゃないですか?』

F井九段、ちょっと考えて、
『あー、そうですね。その手は有効ですかね。
あれ?それいいかもしれませんね。
全然気づきませんでしたけど、そんな手もありましたか。
で、こうやってこうしてこうなると、
そうですね、先手勝勢な感じですね。。。。』

しばし手が進んで、
F井九段、
『これでもう先手の勝ちは動きませんね。
詰みを読み切ってる感じですか。
後手はもう手の打ちようがないです。』

後ろの方の若いファンから、
『後手玉が1四に早逃げしたら詰まないと思いますけど。』

F井九段、
『あっ、1四ですか、、、、、
ここで早逃げするんですか、、、
うーん、それ成り立ちますかね?』

若いファン、
『こう来たらこっち行けばいいし、ここで飛車打たれても桂合いすれば大丈夫ですし。』

F井九段、表情が曇りがちになって、
『えーと。。。
確かにそうですね。
今日は上級者の方が多いですね。(笑)
対局者にしかわからない難解な局面だと思っていましたが、そういう読み筋は気が付きませんでした。
今日はもう解説、要らないんじゃないですか。
すっかり自信なくなりましたよ。』
かなり深刻な表情になり、口数も少なくなってきました。

生徒の方がスマホで正解手順をしっかり把握している状況では、さすがのF井九段でも先生役は勤めにくい。
どんどんタジタジとなって、いつもの楽しい解説会の様相はどこかにいってしまいました。

一方、名人戦ニコ生中継の解説は切れ味鋭いギャグを飛ばしまくるT川七段です。
H生さん、M内さんとは奨励会の同期とのこと。

『同期は同期なんですけどね、この二人とはラベルが違います。
読みが高度過ぎて、私なんかついていけません。』

聞き手のN村M子女流初段もあきれる中、終盤に差し掛かる局面について、いくつかの予想する手順を紹介していく。

ニコ生の画面には視聴者から寄せられたコメントが何か言う度にどんどん流れる。

『それはありえない。』
『こう指すべき。』
『わかってないなあ。』
『ここは角を打ったら勝ちなのに。』
『気がつかないみたいだよね。』
などと、スマホのソフトを駆使しつつだろうけど、あまりにも鋭すぎる読み筋が表示される。

勝手に答え合わせをしてしまっているファンからの嵐のようなコメントに、
T川七段は、
『中盤の難所、ヒマラヤ山脈かと思っていたら、もう読み切っているんですか。
もう予想はヨソウ。
放っとけーキ。』

何とかギャグは続いているけど、もはや指し手の解説はできなくなっている。

すべてはソフトが、いや、一般将棋ファンがお見通し。

どっちが勝つのか。
どういう手が予想されるのか、という楽しみも味わえないまま、どんどん正解手がバラされていって、あっけなく詰みまでが提示されてしまう。

解説者とファンがうんうんもがいて苦しんで最善手を予想したりひねり出したりする必要はまるでない。
考える楽しみが奪われる。
正解主義。

タイトル保持者だろうがA級棋士だろうが、何人集まったってソフトの足元にも及ばない。

全く盛り上がらない観る将棋ファン。

僕らファンがちょっとスマホいじるだけで、プロ棋士よりも数倍深い読みができちゃうのであれば、解説するというのは酷だし、誰もやらないはず。

プロ棋士が真剣に戦っているそばから、
ニコ生でもtwitterでも、
『ソフトがこう言ってるから、もう詰みじゃん。』
『何を時間かけて考えてるんだろ?まだわからないのかな?』
とコメントが飛び交ってしまう。
これじゃ対局者だってやってられない。

人智では及ばない局面。
プライドがズタズタにされる。
すべて明らかにされる。丸裸にされてしまう。

そんな日が決して来ないことを願ってやみません。
マジでよろしくお願いします
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棋王就位式

2014年05月29日 23時37分41秒 | 将棋
毎年参加させていただいてますが、今年もまたたいがーさんと一緒に先日行ってきました。

2009
2010
2011
2012
2013年
一応撮った写真を貼り付けます。




 

この方が文藝春秋の西さんです。


 


これが↓就位式の連盟のレポートです。
僕の撮った写真よりもはるかにいいし、挨拶の内容も出ています。
第39期棋王就位式の模様

名人戦前夜祭のように人混みで歩けないような状況でもなく、たいがーさんと一緒に渡辺棋王ともゆっくりお話しすることできました。
『おめでとうございます!』と近づいて行ったら、我々のことをちゃんと覚えていてくれたことにまずびっくり。
競馬の話、サッカーの話、ちょっとだけ将棋の話も含め、かなり長いことカジュアルにお話しさせてもらい、最後にたいがーさんと代わる代わるツーショット写真撮らせてもらいました。

渡辺棋王の謝辞です。(連盟HP)
「今期の棋王戦は三浦弘行九段を挑戦者に迎えての五番勝負でしたが、第一局から大熱戦で、3連勝という結果は意外でした。先月30代になりましたが、20代は将棋の知識やタイトル戦の経験を積み重ねる10年でした。30歳からの10年間は、培ってきたことを使って結果を出していかなければならないと思っています。今回の棋王就位の扇子には「一意攻苦」という言葉を書きました。心身を苦しめて努力をするという意味なのですが、自分自身もこの言葉を肝に銘じ、今後も頑張っていきたいです。まずは来年の棋王戦で三連覇を目指したいです。今回の棋王戦五番勝負は第1局新潟から始まり、金沢、宇奈月と日本海側を転戦しましたが、どの場所でもご当地の美味しいものを頂いて、対局も万全の体制で臨め、このような結果を残すことができました。これからも良い将棋を指したいと思います。」

つい最近30歳になったということから、これからの30代の活躍に対する強い覚悟が感じられました。
20代までに積み重ねてきたいろいろな経験を生かして、これからの30代はしっかり結果を出して行く、と。
そして、電王戦におけるコンピュータの進化ということも触れられていました。(戦う意思なのかな?そうじゃないと思うけど。)

そして、来賓祝辞を述べられた文春の西さんともお話しすることができました。
この『勝負心』の担当の編集者の方です。
勝負心 (文春新書 950)
クリエーター情報なし
文藝春秋


文藝春秋の西泰志様(連盟HPより)
「私は、渡辺棋王の「勝負心」の本を担当させていただきました。本作りの過程で一番感銘を受けたのは、渡辺棋王の言葉に対する姿勢です。渡辺棋王は謙虚に話をされ、無駄な言葉、派手な言葉を決して使われません。当初、こんなシンプルな言葉ばかりで本になるのかと少し心配になりました。しかし、どんな些細な言葉でもきちんと納得した上で、大事に言葉を使われる姿勢に引き込まれていきました。
「勝負心」の中で、渡辺棋王が「棋士としての自分のピークは何歳くらいだろうか。しかし結局、今の自分がこの先の自分を決めるのだ。今、悔いが残らないように一生懸命やっていれば、勝てなくなった時に、将棋に執着しないですむかもしれない。逆に余力のある30代を送ってしまうと、40代になって成績が落ちた時、自分はまだやれると錯覚してしまうかもしれない。だからこれから迎える30代はとにかく全力を尽くそうと思う。」と書いています。決して派手な言葉ではありませんが、シンプルで力強い言葉です。これから30代の渡辺さんが、この言葉通りのご活躍をされ、さらなる飛躍を遂げられることを信じております。」


西さんは文春社内で、将棋を全く知らないという理由でこの本の担当を任されたそうです。
将棋をあまり知らない人にも読んでもらおうという戦略であるなら、妙手ですよね。
お話しした時も上記の挨拶で話されていた渡辺棋王の言葉の重みについて語っていました。
『普通の言葉ばかりなのだけど、彼が話すと、そこに強い意志があるんですよ。』
西さんもそんなにおしゃべりな方ではないのだけれど、この言葉がズシンと響きました。
渡辺棋王は、あまり表面的なお愛想のようなことは言わないですよね。
切れ味が鋭かったり、ストレートだったりもするけど、確かに言葉に意志が籠ってる。
真剣に何かについて語る時、言葉=意志ということになってしまってる。
適当にごまかしたり、装ったりすることはできなくて、率直な意志がそのまま発する言葉に変わる。

さすが何度も話し合って、この本を作り上げた西さんの分析は鋭いです。
再度、この本を読み返してみようと思いました。

最後にお土産の扇子。渡辺二冠の30代に託した力強い言葉が印象的です。

渡辺棋王、本当におめでとうございました
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羽生さんの力、羽生世代の力

2014年05月22日 22時10分32秒 | 将棋
今期の名人戦について、下記のように書いてきましたが、本当に壮絶な戦いを見せてもらいました。
覇権を賭けた、己の人格を賭けた将棋の醍醐味満載の番勝負でした。

絶対に負けられない戦い
名人戦第一局
名人戦第三局
待ってました、羽生名人!

今朝の朝日の記事です。
羽生「四冠」、独走態勢へ 将棋名人戦七番勝負・第4局2日目
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 将棋界の先頭を走り続けてきた羽生善治三冠(43)が三たび、名人に返り咲いた。3度の名人復位は史上初。圧巻の4連勝で、3年連続で敗れていたライバル・森内俊之名人(43)からトップの座を奪い返した。40代になって初めて四冠に復帰し、独走態勢に入ろうとしている。

 「自分なりに今までと違う将棋を指そうと思って臨んだ。毎局変化の多い将棋で、苦心した。勝因はよく分からない。終わったばかりなので実感もまだない」

 羽生は険しい表情を崩さずシリーズを振り返った。

 一度タイトルを失った者が再び栄冠をつかむのは難しい。しかも名人戦は、トップ10人が総当たりで戦うA級順位戦で優勝しなければ挑戦できない。中原誠十六世名人(66)や谷川浩司九段(52)、森内が2度復位したが、三たび復位を果たした棋士はいなかった。

 「羽生さんの名人位に対する強い思いを感じた」。第3局の副立会人で羽生、森内と同期生の豊川孝弘七段(47)は振り返る。

 羽生が初めて名人を奪取してからちょうど20年。この間、羽生は14回出場して8回、名人になった。

 森内が初めて羽生を破って名人になったのは2004年。以後10年で7回名人位を獲得。しかも昨年は竜王を合わせ二冠となり、さらに充実していた。

 今期開幕前、羽生は森内に1勝4敗と完敗した昨年の結果について自ら触れ、「今年は盛り上がるように私自身が頑張らなくてはいけない。気持ちを新たに臨む」と決意を語っていた。

 「3年連続苦杯をなめてきた。当然今期にかける思いは強かったのだろう。かなり気合が入っていた」。羽生、森内と同世代で、第4局の立会人を務めた佐藤康光九段(44)は話す。今期、羽生は激しい変化もいとわず、早い段階から厳しく踏み込む積極的な姿勢を貫き、勝利をつかんだ。

 これで羽生は4年ぶりの四冠に復帰。森内、渡辺明二冠(30)と分け合うタイトル数は羽生4、渡辺2、森内1と差が広がった。「羽生さんの独走を許さないためにも、私を含む他の棋士たちは正念場を迎えた」と渡辺二冠は言う。

 「羽生時代」の再来を強烈に印象づける新名人の誕生劇だった。
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この記事の中の渡辺明二冠の言葉。
「羽生さんの独走を許さないためにも、私を含む他の棋士たちは正念場を迎えた」
圧倒的な強さを見せて四冠になり、すっかり独走イメージですね。
羽生さん対他の棋士の構図。
うーん、正念場ですか。

昨日のNHKのNEWS WEBでも中村太地キャスターも同じようなことを言っていたけど、羽生さんの行方を他の棋士たちはどのように阻んでいくのだろうか?

特に伸び盛りの若手棋士たちはこの羽生さんの将棋、戦いぶりを見て、何を感じ、これからどう戦いを挑んでいくのでしょうか?

昨日の記事で書いた《羽生さんと多く指す人ほどどんどん強くなるって図式》の話。
羽生世代の強さを見ても本当にそう思えてしまう。
あんな凄まじい戦いを経験したら、負けた森内さんだってきっと強くなってるに決まってる。
羽生さんと何度も大きな舞台で戦ったことそのものが財産になる。
そのことに勝る将棋の上達法はない。

羽生さんがこれからも強くなり続けていくのであれば、昔からの仲間の羽生世代も同じように強くなっていくのでしょうし、そうであれば、いつ、誰が、どうその厚い壁を打ち破って天下を取る日がくるのでしょうか?

本当にそうであれば、どんどん二極分化が進んでいくはず。
羽生さんと戦えない、羽生さんと同じ空気を吸えない棋士たちはどんどん沈んでいき、羽生さんとあいまみえる棋士たちはどんどん進化していく。
羽生さんとの対局そのものが大きな価値。

その経験値が血となり肉となり、年齢に関係なく、ますます将棋が好きになり、将棋の深さにはまっていくのでしょう。

そうなるとやはり大きな経験値を持つ羽生世代が年齢など関係なく若手など置いてけぼりにしてどんどん強くなっていっちゃうのではないのでしょうか?

羽生世代の記事はたくさん書いてますが、<まわるまわるよ時代はまわる>という記事の中で、羽生世代とタイトル戦の関係を取り上げてます。
下記、羽生世代は赤字です。

2011年度
名人戦 羽生名人  森内挑戦者
棋聖戦 羽生棋聖  深浦挑戦者
王位戦 広瀬王位  羽生挑戦者
王座戦 羽生王座  渡辺挑戦者
竜王戦 渡辺竜王  丸山挑戦者
王将戦 久保王将  佐藤挑戦者
棋王戦 久保棋王  郷田挑戦者

2012年度
名人戦 森内名人  羽生挑戦者
棋聖戦 羽生棋聖  中村挑戦者
王位戦 羽生王位  藤井挑戦者
王座戦 渡辺王座  羽生挑戦者
竜王戦 渡辺竜王  丸山挑戦者
王将戦 佐藤王将  渡辺挑戦者
棋王戦 郷田棋王  渡辺挑戦者

2013年度
名人戦 森内名人  羽生挑戦者
棋聖戦 羽生棋聖  渡辺挑戦者
王位戦 羽生王位  行方挑戦者
王座戦 羽生王座  中村挑戦者
竜王戦 渡辺竜王  森内挑戦者
王将戦 渡辺王将  羽生挑戦者
棋王戦 渡辺棋王  三浦挑戦者

2014年度
名人戦 森内名人  羽生挑戦者
棋聖戦 羽生棋聖  森内挑戦者
王位戦 羽生王位  ?挑戦者
王座戦 羽生王座  ?挑戦者
竜王戦 森内竜王  ?挑戦者

なんというこの羽生世代登場比率!!
今年の棋王戦で羽生世代連続出場記録が途絶えたけど、すごい活躍ぶりじゃないですか。
ほぼ四年の間で、羽生世代なしのタイトル戦はたったの1回!しかないってことですよ。
今度の王将戦以降だってまだまだ続いていく可能性がある、
強力な羽生世代が6人ほどいるのだろうけど、普通はありえない状況としか言えないです。
昨日の記事で取り上げた過去の名人の名前を見ても21年のうちの20年は羽生世代で占めている。
40代の中盤に差し掛かろうとしてる羽生世代が束になってこれだけ頑張っていると言うのに、他の世代、若い棋士たちはどうしちゃったんだ、と誰が見ても思える状況です。
わかっていてもどうにもならない状況なのだろうけど、もっともっと頑張ってほしいです。

さて、上記の記事で、今回の羽生さんについての豊川七段、佐藤九段の言葉があります。

「羽生さんの名人位に対する強い思いを感じた」

「羽生は激しい変化もいとわず、早い段階から厳しく踏み込む積極的な姿勢を貫き、勝利をつかんだ。」

本当にそうでしたね。
先週の将棋フォーカス、そして昨日のBSにも出てましたが、横浜Fマリノスの波戸康広さんが出ていて、サッカーと将棋の関係性についてしゃべってました。

話は一気に変わるけど、目の前に迫ったブラジルワールドカップ。

ザックジャパンの戦い方の基本もこれですね。
絶対に負けないと言う強い思いと、積極的に攻めの姿勢を貫くこと。

羽生さんを見習って、ぜひ頑張ってほしいです
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待ってました、羽生名人!

2014年05月22日 01時00分04秒 | 将棋
羽生三冠、4連勝で名人位奪取 4年ぶり通算8期目

羽生さん!おめでとうございます!
最後は手が震えてました。

名人戦の舞台においては何度出てきてもその分厚い壁に打ちのめされ続けていた森内名人に対して、何と4連勝での奪還です。

途中はちょっとやばそうな感じで、やっぱりストレートにはいかないよなあ、とか思っていたのだけど、そんな弱気なことを思うのは本人以外で、絶対に勝ってやるという執念を最後まで研ぎ澄ませて出し切ったのでしょうね。

以前、絶対に負けられない戦いという記事に書いたように、今回は絶対に負けられない戦いだったはず。
何としても獲る、という気迫の勝利だと思うし、その強い思いがきちんと盤上の指し手に凝縮されたということなのでしょう。
気迫が空回りしたり、逆にプレッシャーになったりするのが世の常なのだけど、こういう風にできるところが羽生さんらしいです。
いや、いかにも羽生さんだからこその今回の名人戦の戦いぶりだったと思います。

それにしてもこの強さは尋常じゃないです。
このままいくとタイトル3つはしっかり防衛し、是が非でも獲りたい竜王位も獲って念願の永世七冠も手にする可能性は高いのではと思えてしまう。
いや、そうなれば、あとの渡辺二冠のふたつにも襲い掛かってほぼ20年ぶりの七冠返り咲きもあるかもしれないとの期待が膨らんでしまいます。

どこまでいくのか43歳!
もうちょっとしたらアラフィフに近づこうというのに、どこまで進化し続けるのか。

この図を見ていると、21年間の間で羽生世代以外は谷川九段の1期のみ。
あとは全部羽生世代じゃないですか。

もうじき始まる棋聖戦に出てくる森内さんもこのままではすませないぞ、と思ってくるだろうし、羽生さんと多く指す人ほどどんどん強くなるって図式なのではないだろうか。

ますます羽生さんの将棋、羽生さんの戦い方、羽生さんの考え方などが楽しみになってきました。
天才とか、最強とか、どんな言葉を使っても、羽生さんという棋士にはどんどんあてはまらないように思えてくる。

あー、いいものみせてもらってとっても幸せな夜です。

羽生さん、本当におめでとうございました
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作戦間違い@電王戦・その8

2014年05月11日 18時17分42秒 | 将棋
GWも終わって、さわやかで天気のいい毎日だというのに、まだこのネタ続けてます。
よっぽど好きなのね。
我ながらしつこい性格だこと。

今年の電王戦についての記事はこちら。
<作戦間違い@電王戦>
<その2>
<その3>
<その4>
<その5>
<その6>
<その7>

要は人類対コンピュータという異様な異種格闘技の雰囲気を盛り上げてやっていて、そういうのが好きな人ももちろんいるのだろうけど、僕にとってはどうにも筋が悪い、というか、大局観に欠ける味の悪い手という直感が拭いきれないでいます。

もうどうやっても勝ち目は薄いので、次回以降は(えっ、まだ続けるつもり?)盤駒を用意するとか、複数で相談するとか、いろんな趣向でハンディをつけていい勝負に持ち込もうとするのかもしれないけど、僕はどうも食指が動かないというか、名人戦も含め、人間同士の方がよっぽどワクワクする今日この頃です。
(すみません、批判めいてる書き方ですが、僕にとってはそう思えるだけで、新たなファンの発掘、開拓などなどかなりのメリットがあるのはよくわかっていますし、単純に同じことを来年も続けるという一手は指さないのだろうと踏んでます。)

さて、連盟プロデューサーとして縦横無尽に活躍する遠山五段の記事、第3回電王戦総括 コンピュータとの共存共栄と今後の電王戦について。いろんな角度から電王戦を検証、総括しています。
一部を引用させてもらいます。
----------------------------------------
将棋の内容は、完敗と完勝が1つずつ、接戦が3つでした。
接戦となった3局は、長いねじり合いの末、コンピュータの粘り強さに屈しました。

<中略>

ソフトの実力はすごいところに来ている、それがハッキリしました。

イベントとしては、トラブルもあって途中は不安も抱きましたが、第4・5局の視聴者数や世間の反応を見ると、将棋の世界を知らない人まで巻き込んだビッグイベントに育っているようです。
第2回に続き、「ファンに喜んでもらえるかどうか?」という観点では勝ったと思います。

プロ棋士vsコンピュータという構図は、最初の頃に比べて人々の感じ方が変わってきていると感じています。
コンピュータの強さが認められたことで、対決だけではなく対局者(開発者含む)の物語、そしてその周辺の諸々にも注目が集まっています。
プロが負けるのは驚くけど、今はコンピュータに勝てる分野なんてほとんど無いし、棋士の人生に興味があるし、電王手くん面白いね、という感じが生まれているかと。
そこで個人的には今までの形にとらわれず、今後は真剣勝負とエンタメをよりうまく共存させて楽しめるものを提供するのがいいと思います。
将棋ファン、ニコ生ファン、そして将棋を知らない人にも楽しんでもらえるよう、より高めていくことができるはずです。

コンピュータとの戦いにはどこかで区切りをつけるべきと主張する人も多くいます。
ソフトが「プロの中位以上」になった以上、プロのトップと戦っても勝つ可能性は十分あります。
人間側のトップが一度でも負ければ、チェスの歴史に則ると、将棋もコンピュータに越えられたということで決着、終わりになりそうです。
でも将棋界にとって決着をつけることに意味があるのでしょうか。
「共存共栄」を目指すなら無理に決着を付ける必要はないと思います。

将棋はもっと一般社会に出ていきたい、出ていくべきものです。
ここ最近、棋士がメディアに取り上げられる機会が増えています(怒り新党の豊川七段は最高でした!)。
いい波が来ていることは疑う余地がなく、その波に乗れるのか、将棋界としても勝負所です。

将棋というものが一般に広く知られ、より発展した日本文化となっていくことを私は強く望んでいます。
将棋を愛する全ての人(今まで応援いただいている全てのスポンサー含む)にとって、それは素晴らしい未来だと確信しています。
電王戦はその一助となりつつあります。今後はより人間とコンピュータが手を取り合い、「共存共栄」しながら素晴らしい未来へ向かいたいです。
-----------------------------------

「ファンに喜んでもらえるかどうか?」という観点。
遠山五段は勝ったと思いますとの意見。
トータル的に言えば、新たなファンが増えた、今まで将棋に興味のなかった人が興味を持つきっかけとなった、という意味で、(実際の数値的にはわかりませんが)大きな成果があったのだと思います。

ただ、周りの声を聞いても、僕のようなひねくれもののオールドファンが少なからずいることも確かです。
(とは言え、なんだかんだ言っても全然興味もなく無視しているわけではなく、ちゃんとニコ生見て、盤面を見守りながら、手に汗握って人間を応援したりもしています。)

ただ、敢えて苦言を呈するなら、会場の過剰な演出が僕にはどうにもTOO MUCHに思えてしまいます。
将棋の品格とか、長い歴史ある伝統文化の側面との不協和音を感じてしまうのです。

将棋はもっと今の時代に合うものになっていかなければいけない。
時代とともに将棋は変化していくべきである。
ネット社会の中で将棋はさらに強く生き残っていかなければいけない。

確かにその通りです。

時代に合わせて変わるべきこと。
どんな時代になろうと変わってはいけないこと。

そこをしっかりブレずに見極めていけばいいことです。

遠山五段の言ってる《将棋はもっと一般社会に出ていきたい、出ていくべきものです。》というのは本当にそう思います。

故米長前会長の号令のもと、危機感を持って一丸となって普及に力を入れた作戦が本当に実ってきています。
すべてのプロ棋士や連盟職員など関係者の皆様の意識や生活があの頃と一変したのではと思います。
これだけあちこちでたくさんのイベントがあり、大会があり、教室があり、それがことごとくネットやメディアを通じて発信されている。

僕ら将棋ファンはどれだけ恵まれているのだろうか。
理事の方々、そして、遠山五段もそうだし、ねこまどもがんばっているし、関係者の皆さんは、どうしたらもっと将棋の価値や楽しさを広く上手に伝えられるかと真剣に悩んで考えているのだと思います。

《いい波が来ていることは疑う余地がなく、その波に乗れるのか、将棋界としても勝負所です。》
あの頃と違って、解説会に行っても若い女性がいっぱいいるし、若い人たちや子供たちの関心や浸透度は目を見張るものがあります。
棋界一丸となっての努力の賜物だと心から敬意を表します。

外に出ていくこと、新たなファン層を開拓すること、新たなスポンサーへのアプローチ、などなど、戦略的に普及活動をしていくことは本当に大事なことです。

しかしことを焦ると作戦間違いもありえるし、しっかりした大局観を持って慎重に一手一手進めていくべきだと思います。

反面教師の例としてすぐに思い出すのは、前に何度も書いた<バレーボール中継のこと>

国際的なバレーボールの大会だというのに、必ずアイドルが出てきて歌ったり踊ったり、ルールも何も知らないのにキャアキャア声援したりするあのおぞましい光景。
その競技の真の面白さ、醍醐味を伝えようとするよりも、視聴者を真っ向から子ども扱いしてしまうテレビ局の暴挙。
そしてどこの局でやるのでも皆判で押したようにジャニーズなどのアイドルを起用して試合の品格を落としているというのはバッカじゃないの?!と思ってあきれかえっていました。

最近、バレーボール業界の人に聞いたのだけど、結局のところあの作戦は失敗だった、と言ってました。
アイドルの追っかけやファンたちは会場にも大挙押しかけてキャアキャア騒いだのだけど、結局歌や踊りを見るだけで、バレーボールファンになる人はほとんどいなかったというオチ。
こんな悪手を何年も続けたのだけど、結局はバレーボールファンとしてはちっとも根付かなかったというお粗末。

ぜひともこんなことにならないようにお願いします。
いろんなターゲットがいるので難しいけれど、将棋の健全な発展、伝承のために、今の時代に合うやり方を取り入れつつも、一番大切にしなければいけない部分を見誤らないでほしいです。

より発展した日本文化としての明るい未来へ向けての将棋のブランディング戦略、期待しています。
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名人戦第三局

2014年05月10日 15時22分04秒 | 将棋
名人戦 羽生棋聖が3連勝で返り咲きに王手

名人戦第一局の記事を書いてから、人間同士の戦いについては書けませんでしたが、おととい、昨日と行われた名人戦第三局、見事な羽生さんの指し回し、これで三連勝になりました。

将棋の内容については英さん<第72期名人戦 第3局 羽生3連勝>をご覧ください。

相変わらずずっと緊迫感の漂う神経をすり減らすこの二人の戦いですが、羽生さんの絶対に負けられない気合いが強く漲っていて、終始危なげなかったような印象もあります。
前にも書きましたが、過去3年、ずっと苦渋を飲まされた経験から、ここで負けるわけにいかない、今回負けてしまったらもう名人戦における格付けが済んでしまうという危機感があるに違いありません。
4年連続挑戦していずれも失敗、森内名人にはどうやっても歯が立たない、仮に挑戦権を得たところでもうどうにもならないかもしれない、ということになると、羽生さんの長い将棋人生における初めての挫折、ということにもなりかねません。

そんな読みもあり、傍で見ている我々にはいつもとは違う静かな闘志をどことなく感じてしまうのだけど、あの羽生さんにとってはそこまで追い込まれているわけでもなく、そこまで意識するわけでもなく、淡々と目の前の一局に集中、といういつもの姿勢で名人戦に向き合っているのでしょう。

森内名人も精彩に欠けるわけでもなく、疑問手を指すわけでもなく、いつもながら重い腰で粘り強い対応をしているのだけど、羽生さんが一切の隙を見せることなく、精密に丁寧に読み込んだ微差を細かく積み上げるような指し手に次第に翻弄されていった。

最後の最後まで一手のミスも許されない緊迫した戦い。
一触即発につながる危険な綱渡りを続ける二人のギリギリの応酬。

やっぱり人が好きです。人間同士の将棋は面白いです。
二人の歩いてきた道筋。
この七番勝負にかける意気込み。
お互いに小学生の頃から相手に対して引きずってきた思いや感情が、将棋の真理を極めていく情熱の中でも見え隠れしていく。
真理を極めるための心理戦。

封じ手の銀を上がった手はどうだったのか。
△4五歩の仕掛けはどうだったのだろう。
いきなり角を打ち込んで取った香を▲5八に据えた手はどうだったのだろうか。
▲4四桂の構想は本当に難しかったのだろうか?
お互いに相手に攻めさせるべく手を渡すような指し手の応酬は正しかったのか。

終盤は気を抜けない展開がずっと続き、連盟の大盤解説会に行こうかな、とも一瞬思ったのだけど、木村八段、矢内女流五段の人気コンビゆえ、立ち見との情報も入ったので中止。
大内九段の新橋駅前という別の候補手も有力に思えたのだけど、結局はひふみんのニコ生と藤井九段のBS放送で楽しむ事にしました。
二人の表情、性格、心理、今までに紡がれてきたたくさんの物語。
そんなバックグラウンドも含めて真剣勝負の行方を楽しむ。
そんなハイテンションだったこの二日間。
あらためて将棋は楽しいものだ、観る将棋はエキサイティングだ、と実感しました。

これで羽生さんが王手。
羽生名人・羽生四冠が目の前に迫っています。

さて、次の第四局は地元千葉県の成田です。
久々の現地観戦に向け、これからスケジュール調整して行こうと思ってます。
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作戦間違い@電王戦・その7

2014年05月02日 19時47分14秒 | 将棋
いろいろバタバタしていて時間経ってしまいました。
もう5月だし、世間はGWですね。
あの人この人もすごく忙しいみたいだし、おまけに腰痛やら風邪やらでとてもブログ更新する余裕がないのかと思ってたら、更新してないのは腰痛でも風邪でもない僕だけみたいです。

電王戦もいろいろ話題を振りまいたけど、終わってもうずいぶん経つし、残り香の話題も消えそうというのに想定外の展開でまだ続けてます。(そんなにこのネタ好きなのか?)

今年の電王戦についてのもやもやを書いた記事はこちら。
<作戦間違い@電王戦>
<その2>
<その3>
<その4>
<その5>
<その6>

全然まとまりもないし、煮詰まっちゃってるし、堂々巡りしているし、読み返すとひどいのだけど、初めての方も含め、いろんな方からコメントいただきました。
すっかり遅くなってしまいましたが、先ほどレスさせてもらいました。
これに懲りずにまたよろしくお願いします。

さて、その後の関連記事もいろいろ。

英さんは続々と更新。
電王戦雑感 その4「羽生将棋とコンピュータ将棋の類似点」
電王戦雑感 その5「コンピュータ将棋の傾向と対策」
電王戦雑感 その6「電王戦のシステムなど」
電王戦雑感 その7「棋力」【終】

九鬼さんも取り上げていましたが、山本一成さんのブログから、
コンピュータとラッダイト運動
続・コンピュータとラッダイト運動

さらに開発者同士の対談。
共に電王戦出場、世界最強の“同僚”――コンピュータ将棋ソフト開発者 一丸貴則さん・山本一成さん(前編)
(後編)

片上理事
電王戦終わる

そしていろいろな総括記事。
電王戦は“終わった”のか? 単純な「勝ち負け」を超えたその先の勝負へ

第3回将棋電王戦全5局を総括。「1勝4敗」の意味するものとは?

将棋の電王戦 現役タイトル保持者が出ぬ一因に新聞社の存在

羽生善治三冠 人間がCOMに負けると1996年に予想していた

コンピュータが将棋を完全解明したら? 羽生善治三冠の回答

まあ、面白おかしくも含め、人類対コンピュータ、将棋の本質、科学技術の本質論まで飛び交っています。

そう、とてもじゃないけど短期的には処理できそうもないので、しっかりした総括とか、まとめの記事はもう書けそうにありません。
今後このネタに関してはひとつの僕の長期的レギュラー“もやもや”テーマとして、頭の中で転がしていければと思っています。

こんな本も徐々に読んでいこうと思っています。
2045年問題 コンピュータが人類を超える日 (廣済堂新書)
クリエーター情報なし
廣済堂出版


機械との競争
クリエーター情報なし
日経BP社


コンピュータの読みの特徴とか、そっちよりもこういうテーマがとても興味深いです。

棋界と機械の奇怪な競争ですね。

人間は何を、どの部分を機械にまかせるのか?
どこまで機械をあてにするのか?
機械はどんどん優秀になり任せられる範囲も増えてくるけど、じゃ、人間は何をするのか?
人間しかできない、機械には絶対にできないこととは何なのか?
人間って何なのか?
何のために生きてるのか?

機械がどんどん進化してきたからすっかり競争するようになってしまったけど、もともと機械は人間が作り出したものじゃなかったのか?
いつから機械の方が大きな顔するようになったのか?
人間が楽しようとしてどんどん任せていって、油断してるうちに、ウサギとカメみたいになったのじゃないのか?

どれだけ進化して人間を越えていったところで、要は上手に使うことじゃないのか?
使いきれなくなったり、暴走したりするようになったら何のために作ったのかわかりゃしない。
人間が機械に使われるようになる日が来るのかもしれない。

Under Control。
制御不能になってはいけないと思う。
科学技術の進化も、人間がきちんとコントロールしながら進めていかないと、知らないうちに人工知能に制御されるようになるかもしれない。

お金だってそう。
人間が、あった方がいい、良かれと思って作り出したものなのに、いつのまにかお金のために人間たちが這いずり回っているこの風景。

どんどん話は大きくなっていってしまう。

機械と人間がうまく付き合うにはどうすればいいのか。
機械均等。

デジタル化とアナログの部分。
そのバランス。

羽生世代が強いのも、そのバランスのせい。

『コンピュータとどう付き合っていくか?が、21世紀の人類の大きなテーマ、とは川上会長の言葉ですが、コンピュータ将棋とどう向き合うか、プロ棋士以上に、考えるべき人々はいません。』

片上理事が頼もしくこう語ってくれています。

話はあっちこっち行ってしまったけど、今回の僕らの危惧を払拭するような明るい未来へ向けての次の一手を、連盟はしっかり指してくれると信じています。
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作戦間違い@電王戦・その6

2014年04月24日 14時16分35秒 | 将棋
電王戦、いろいろありましたが、順当な結果で終わったようです。
テレビでも新聞でもかなり話題にもなり、これをきっかけに新たに将棋に興味を持つ人もかなり増えたと思うし、覚悟を持って出場した棋士の方々もおしなべて、いい経験になった、新たな気づきがあり間違いなく自分の成長につながったというような感想を述べています。
そういう意味ではそこを目論んでいた連盟理事会もかなり満足しているのではと思っています。

さて、今年の電王戦についていろいろもやもやを書いた記事はこちら。
<作戦間違い@電王戦>
<その2>
<その3>
<その4>
<その5>
上記の記事には九鬼さんはじめいろいろなご意見のコメントもいただきました。(九鬼さん、まだ一つのコメントにレスできてなくてすみません。)

今回の電王戦の総括という意味ではいろいろ下記のような記事が出ています。
遠山五段第3回電王戦総括 コンピュータとの共存共栄と今後の電王戦について
shogitygooさん将棋における人間とコンピュータ雑感Ⅲ
そして、
将棋電王戦と「機械的失業」と棋譜の著作権
いろいろな見方があり考えさせられますね。

そんな中で昔からのブログ仲間だからというわけではないけれど、やはり共感してしまうのはこの二人の記事。
ssayさんの記事、<・・・もう、やめたら?(完)>
---------------------------------------------------
プロ棋士の中には、今回出場した棋士たちよりも、更に強い棋士もいる。
しかし、その更に強い棋士がコンピューターに挑んでいったとしても、
コンピューターは更に上の強さを我々に見せてくれるに過ぎないであろう。
その底知れぬ強さを目撃してみたいと思わなくもない。
しかし、それをやってしまうと、ぼくのような人間は心に大きな傷を負うであろう。
-------------------------------------------------

そして英さん<電王戦雑感 その1「最高峰の将棋じゃなくなること」「研究でのソフト使用について」><その2「対局規定の整備の必要性」「電王戦仕掛人の思惑」><その3「コンピュータ将棋の特徴」><その4「羽生将棋とコンピュータ将棋の類似点」>と続々と記事を書かれてドワンゴ川上会長の意見に対してこう言ってます。
**************************
「役割」「意義」「義務」という言葉を使っていますが、棋士がコンピュータに立ち向かい、苦しみ、敗れ去る様を見世物にするという意思を感じます。
***************************


そして、僕のその5の記事に対して将棋ペンクラブログ@shogipenclublogさんがtwitterでこんなレスをくれました。
+++++++++++++++++++++++++
コンピュータやシステムは人間のための道具・手段であるわけで、それを目的と取り違えているからこのような考えになるのでしょうね。 川上会長は。
+++++++++++++++++++++++++


いろいろな意見を踏まえて、

『ほんと、このままでいいの?
連盟さん、今ここでしっかり考えて未来のために想像力を働かせていろいろ手を打っておかないと、知らないよ、大丈夫なの?
僕ら将棋ファンを悲しい気持ちにさせないでよね、お願いだから。』


少なくても僕はこんな気持ちなわけですよ。

いろんな難しいこと、手を打たなければならないことはすでにちゃんと考えているから心配は要らないですよ、と言われればそれまでで、心配性過ぎるオヤジの戯言なわけです。
ま、要は早めにそう言ってもらって僕らを安心させてほしいわけですね。

さて、電王戦の今後の展開。(ほんとにまだ5年10年続けるの?)

(空想(妄想))
羽生さんが誰もいない後楽園ホールのリングに設置された特別対局場で、真剣に電王手くんと向き合っている。
いつものように工夫してひねり出す羽生さんの指し手がすべてかわされ見透かされ、いいようにあしらわれてしまう。
苦悶の表情を浮かべていたものの、あまりの実力差に立ち向かうすべもなく、あきれたような物憂げな表情に変わっていく。

今まで出場した棋士の方々の、強い相手に立ち向かいたいという気持ちはよくわかるけど、多分3年後では手も足も出なくなるのだと思う。
まだ何とか棋士が勝てるのはせいぜいここ1,2年だから、今のうちに強い棋士を登場させて人類とコンピュータの戦いを歴史に残しておこうというのはとてつもなくむなしいし、棋士に対する思いやりやリスペクトがないと言わざるを得ない。
(棋士を愛するファンに対する愛情や感謝の意も含め)

棋士がどうしても進んでやりたいというのであればまだ仕方ないし、歴史の瞬間も見たいというファンもいるのだろうけど、その足跡を残したところでそこに何の意味があるのかわからない。
強い棋士と対戦することでコンピュータの開発のヒントが増えるだけのような気もしてしまう。

将棋がどんどん丸裸にされていく。
日々の人間の研究の苦しみや努力が意味をなさなくなっていく。
ヒントをくれるだけでなく、その楽しみや苦しみの道程をコンピュータがどんどん奪っていってしまう。

プロが対局の場で、また、研究会で、寄ってたかって研究した結果の手がそれなの?
そんなのダメに決まってるじゃん、アホやなあ、人類なんて偉そうな顔してなんぼのもんじゃい、とコンピュータにさらっと言われてしまうことになっていく。

考えれば考えるほど、コンピュータソフトの進化は何のため、誰のため?と思ってしまう。
プロ棋士に勝つため?
より強いソフトを作るため?
より強いソフトを開発することで人工知能や科学技術の進化に貢献するため?

将棋をこよなく愛する僕たち人間が、より将棋を楽しめるようにコンピュータを使いこなしていくというのがまっとうな形ではないのだろうか?
もちろん科学の技術開発そのものを否定したり疑問視したりするわけではないのだけれど、大局観や理念もなく技術開発を進めていくと制御不能になったり、管理できなくなることが起こりはしないのだろうか?

人類対コンピュータ!と格闘技のような話題性ばかりが目立ってしまって、本来のこういう議論がないがしろにされているように思う。
そんな大げさな話じゃないとも思うのだけど、まだまだもやもやしています。(続くかどうか不明)
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作戦間違い@電王戦・その5

2014年04月11日 23時18分27秒 | 将棋
電王戦について<作戦間違い@電王戦><その2><その3><その4>と書いてきました。
なかなかもやもやは消えないので今日はその5です。

まずはその3にいただいた九鬼さんのコメントです。
九鬼さん、お忙しいのにありがとうございました。
*****************************************************
つきあい方次第(続き)

nanaponさんは、プロ棋士より強いコンピューター将棋の出現がプロ棋戦に与える悪影響を心配していらっしゃいます。今回の記事ではその理由を3つ上げていて、1つ目はコンピューターによる「正解手」が示されることで、観戦しているファンが白けてしまう危険でした。これについては、前回のコメントである程度書きましたので、もう繰り返さないことにします。

2つ目はカンニング対策問題ですが、記事の書き方ではちょっと分かりにくいですが、nanaponさんとしてはカンニングが実際に起きるかどうか(もちろんそれも重要ですが)よりも、カンニングの可能性があるというだけでファンは白けてしまう、少なくともその危険があるのにプロ棋士の方々は危機感がないようである、とおっしゃりたかったのかなと思いました。確かに、この点は将来何らかの対策が必要な気がします。

3つ目は観戦記の問題ですが、nanaponさんとしてはプロより強いコンピューターの分析が導入されることで、観戦記がプロ棋士達の研究内容のネタばらしになってしまい、対局が「正解」発表会みたいになっちゃう(=ファンは白ける)ことを危惧していらっしゃるのかなと思いました。これはどうなんでしょうね? ライブ観戦の場面では、コンピューターの手が横に示されても、私は白けずに楽しめる(今の楽しみ方とは違ってしまうかもしれないけど)と思いますが、観戦記の問題はあまり考えたことがありませんでした。チェスの方でどうなっているか、知りたいところです。

という訳で、私は生来楽観的な性質だから本件についてもnanaponさんより楽観的なだけで、実は大した根拠があるわけじゃないのがよく分かりました。困った奴です。

いずれにしましても、「付き合い方次第」というnanaponさんのご意見には賛成です。建設的な付き合い方を模索していくのは重要ですよね。ただ、「付き合い方」の問題の前に「受け止め方」の問題があって、nanaponさんは違うと分かりましたが、多くの旧来のファンはまだプロ棋士(というか羽生先生)がコンピューターに打ち負かされるシーンを心のどこかで受け入れられないでいるんじゃないか、そう感じています。この点については、プロ棋士達自身の方が意外ととっくに覚悟はできているのかもしれません。紆余曲折はあっても、電王戦が将棋ファンにとって有意義な「学習」の時間になるといいのですが。そのためには、nanaponさんが指摘していらっしゃるように、演出過剰などの問題点について再検討しなくてはいけないでしょうね。
******************************************************

九鬼さんって緻密だし、きちんとものごとを整理して考える方ですね。
今までの流れだと、九鬼さんが楽観的で僕が悲観的な図式になってますが、僕の方こそおおざっぱでいい加減で勝手に思ったことほざいてるだけですよ。
そして何をどう言ったか、それが誰にどんな影響を与えたかとか、さらに突っ込んで掘り下げる前に忘れちゃってるんですよね。
すいません、情けないオジサンで。

どちらにしても九鬼さんも賛同してくれたように今後の付き合い方をどうしていくかだと思っています。
底辺拡大とか、棋士にとっての刺激や研究と言う意味では当然メリットもあるのだと思いますし、短絡的にこれ以上ソフトの開発を進めるべきではないというのも極論だと思います。
結局、どうやったって人間が決めることだし、まずは連盟が中心になって将棋のさらなる発展というテーマの中で3年後、5年後の将棋とコンピュータのあるべき姿を考えていくことだと思います。
ここ1年でソフトはかなり進化しているわけだし、この先どんどんトップ棋士を繰り出していけばいいというものでもないと思いますし、電王戦をどうしていくかと言うことにとどまらず、大局観に基づく正確な読みと判断力をもって両者の健全な発展のための最善手を早めに決断すべきだと思っています。

先日の名人戦第一局前夜祭でも棋士の方とお話させてもらいましたが、本当に皆腰も低いし魅力的な方々が多いです。
そんな棋士の方が皆かなりの覚悟を持って電王戦に出て来てくれています。

電王戦の開催について言えば、敬愛する棋士の方に対してあのトイレの場所(特に小田原城!)は筋が悪いどころでなく、完全に悪手だと思います。(いまだにあのシーン(和服の森下九段がかなりの敗勢で時間も無くなった終盤に、外に出て階段を下りてとぼとぼとトイレに行く様。)が悪夢のように思い出されます。)
あのトイレの場所を容認した形での会場設定というのは、イベンターとしては完全に失格。
あきれます。
プロ棋士に対するリスペクトが全くないと言わざるを得ません。
トイレを犠牲にしてまでも、あの会場設営をした意味は、話題性を盛り上げて新たなファン層を開拓することに特化したということなんでしょうか。
違和感を感じてしまう我々のような従来の将棋ファンはこの際どうでもいいんですよね。

どう見ても作戦間違いとしか思えないので、ちょっとしたことでも電王戦のスタンス自体につべこべ言いたくなってしまいます。
ドワンゴ側、コンピュータ側は、棋士に対するリスペクトとか将棋の伝統文化の側面など一切関係ないのかもしれません。
人間が勝つか、コンピュータが勝つか、という底の浅い異種格闘技イベントであるならばそんな場所に僕らの愛するプロ棋士の方々を引っ張り出さないでほしいのです。

いや、勝手な意見ですみません。つべこべ言いたくなる年頃です。
あー、もう何も言いません。お願いなのでバランスよくうまくやってください。

ということでもうおしまいにしようと思ったら、先ほど前回の記事(その4)に九鬼さんからコメントいただきました。
山本一成さん「コンピュータとラッダイト運動」という記事についてです。
この話もいろいろ考えさせられ長くなってしまうのでまた次回にします。
それとssayさんも先ほどまた書いてますね。<・・・もう、やめたら?(その3)>、そして<(その4)>

どちらにしてもいよいよ明日が今回の電王戦最終局。
屋敷九段の登場です。
さあ、どんな結末になって、全国の将棋ファンがどのように受け止め、今後の電王戦はどうなっていくのでしょうか。
そして将棋とコンピュータの関係はこの先一体どのようになっていくのでしょうか?
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名人戦第一局

2014年04月11日 15時30分49秒 | 将棋
今年も桜の季節が来て、待ちに待った名人戦が始まりました。

先日<絶対に負けられない戦い>という記事でも書きましたが、ここは羽生挑戦者が何としてもどうにかしないといけない局面だと思います。
大山・升田、そして中原・米長、という夫婦よりも密度の濃い長年の宿敵同士、その伝説を越える熱戦を心から楽しみにしたいと思います。


さて、このところ毎年のように行ってる名人戦前夜祭。
今年も椿山荘に行ってきました。
こんな空の下、いよいよ名人戦の幕開けです。

桜は大分散ってしまったけど、相変わらず素敵な場所です。





こんなすごい人混み。熱気むんむんです。


主催者その他偉い方々のご挨拶を聞いてます。最初はこんなでしたが。。。

徐々に・・・。





二人とも自然で素敵な笑顔ですね。
乾杯はこの人。


 
そして両対局者のご挨拶。
  
いい雰囲気です。

そして棋界のアイドル登場で盛り上がります。


久々にいろいろな方々とお話もでき、頭の中も名人戦モードになったところでいよいよ今期の戦いが開幕しました。

既報のように後手の羽生三冠が森内名人に178手で先勝しました。 

ssayさん英さんも早速書かれてますが、ssayさんをして『将棋ファンでよかった。』と言わしめた手に汗握る熱戦でした。

相掛りから、飛車角交換、前例のない力戦型に。
2枚の自陣飛車対2枚の自陣角。
見たことのないような不思議な盤面。

集中力がここまで続くのかという、
緻密かつ先の構想を踏まえた羽生三冠の工夫に満ちた攻めが続く。
しかし森内名人は一手一手しっかりした受けでうまくかわしつつどこまで行っても決定的な優勢を築かせない。
このまま凌いでいけば自然と勝機が巡ってくるはず、という自信に満ちた指しまわしを続ける。
劣勢を認めざるを得ない、とか、諦めるような雰囲気がいつまでたっても漂ってこない。
この執念というか、森内名人の底力は半端なもんじゃない。
負けてその強さを示したとも言える名勝負だったと思う。

やはり人間同士はいいなあ。(って何が言いたいの?(笑))
トップ棋士同士ならでは、あの二人だからこその気迫のこもった展開。
二人の創り出す新鮮かつ熱さに満ちた熱戦をどんだけ長いことハラハラドキドキさせてもらったことか。
ssayさんに先に言われてしまったけど、本当に将棋ファンでいてよかったと思わせてくれる一局でした。

こんな戦いがまだまだ見られるのかと思うと桜は散ってもワクワクする春はまだまだ続きます。
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