旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

菜園の昼下がり

2011年09月23日 21時43分25秒 | Weblog
菜園を耕していると妙な日本語で話しかけられた。こちらがしゃべっていることをうまく理解できないらしい。もどかしそうに眼と身ぶりで懸命に何かを伝えようとしている。すぐに、日本語をうまく話せない中国人(残留孤児かも知れない。)であることが解った。

臆面もなく「ぼく、にほん、じゅうにねんよ。」(この日本語だけは通じた。)というので、公民館の日本語教室でボランティア講師をやっている。教室で日本語の勉強をしたらどうかと伝えようとした。ところが、公民館の意味が解らない、教室の意味が解らない、ボランティアの意味が解らない、勉強の意味が解らない。匙を投げるしかなかった。

それでも片言の日本語で話しかけてくる度量だけはもっている。しきりに何の種を蒔こうとしているのかを聞いているらしい。どうせ解りゃしないだろうと、ぞんざいに「白菜と大根」と応えたら、「ほー、ダイコンとハクサイか、ぼくもダイコンとハクサイつくるよ。」と、ようやくまともな会話になった。

ひょっとしたら話になるかと思って、身ぶり手ぶりも加えて「里芋と薩摩芋の生育が好いだろ。」と自慢してみた。人懐こそうな顔でニコニコ笑いながら、たまに眉を曇らせる。おそらくは私の話を理解しようと頭を巡らせてはいるに違いな。が、こっちが言っていることを把握できないようだ。

バジルが良く育っている。葉を摘み取って食べてみるように促した。「ひでえ、まずい。」と唸ったので、「トマトわかるか。」「わかる。」、「チーズわかるか。」「わからん。」。「バジル、トマト、一緒に焼く、美味いね。」と言うと、小首をかしげ困惑したような表情で、「にほんご、むずかしい。よお、わからんよ。」と呟きながら自分の菜園に返って行った。