見えるもの見えないもの
聴きとれるもの聴きとれないもの
望むかたち望まないかたち
どこにもクリアな境界を引くことはできない
見たいもの見たくないもの
感じたいもの感じたくないもの
忘れたくないもの忘れたいもの
固有のフォーカスに映る世界
映し出せない世界
ただ想定する以外にない
チューニングがおよばない
受信不可の生の波形
限界を告げる声が聞こえるとき
フォーカスを補正するように
情動がさまざまに動いていく
ひとつの、選ばれ、生きられる遠近法
固有のコンポジション、世界のランドスケープ
静止画として描きだされる世界
それだけではない
レンズを動かす、たったそれだけのことで
意味と価値の構成が変化することがある
ゴミかシミに見えたものが文字であることがわかる
怒った背中から回り込むと笑った顔に出会うことがある
近づきすぎると星は見えなくなる
遠ざかりすぎると視界から消える
まなざしのフォーカスは、ときどき、しばしば、つねに
そんなことさえ忘れていることがある