*
オマエは一度だけ問うてみたかった
ただし、いちどきりでたくさんだ
結論は出ている、すでに
うんざりだ、けれど
きっちりと刻んでおく
なぜか
ほんとうに問うべきは
相手ではない
問うべきは関係のコードだ
クソをクソと判定する根拠
その拠点が明かされなければならない
答えを出すのはオマエしかいない
そのことを刻んでおくために
*
厚顔で恥知らずの世界よ
その暑苦しい身振り手振りよ
愛しいものを求め
別れに嗚咽し
崩壊を怖れながら
みずから壊れていく
自由を求めて隷属し
隷属を拒んで支配に加担する
儀礼のコードに従って
殺戮と蹂躙を繰り返すものよ
冷酷で綺麗好きの
お節介で役立たずの
人でなしの呪われた
たらふくエサを喰らい
残忍に血を啜り
丸々と貪りつづけるクソの山よ
准じる格率はどこからきて
最後に目指すものは一体何だ
クソ真面目に食い尽くしたら
また新しい獲物を探し出して
何度でも勝どきを上げるのか
*
「ありえない」
信仰するそれがありえない
語るべきなにもない
心臓を開いてみせるべきなにものも存在しない
オマエは問われたらそう答えるだろう
しかし依怙地な応答の作法がクソをひり出すこともある
最も信じないニンゲンが
最も上手に操作する
おのれの決定をだれにも見せず
おのれの決定をだれかの決定に見せかけ
おのれの導く負債の一切をだれかに委ねる
このカラクリの図式は人間の自然史に組み込まれている
そうして階梯を下るほど信仰は狂信の強度を増す
おのれの決定をおのれの内部に聞くことのない
上を見上げて忖度するニンゲンは弱くて強いぞ
だれかの決定を待つものの折り目正しい狂気の貢献が
あらゆる酸鼻な現実の裏側に張り付いている
悲しくむごたらしい光景のすべての起源は
いまなおここにおぞましく稼動中だ
*
現実を貶められながら
託宣を下す力のもとに蝟集するとき
ニンゲンの辿る道は供犠へとつながっている
供犠する者される者は
オマエなのかオマエ以外の誰かなのか
「すべてよ散れ」
信仰を拒むその身ぶりにおいて
オマエが遺棄し守りたかったものは何と何か
ほんとうはそう言いたかったかもしれないオマエは
この世の掟をどんなふうに受け入れたのか
「一切よさようなら」
本当はそう願ったかもしれないオマエは
じぶんが最後に望んだものを
どんなふうにじぶんに示すことができたのか
*
答えられない問いを投げている間に
季節は冷たく遠く通り過ぎて
もうさよならさえ云うつもりがないと囁いた
考えていることがやっとカタチになって
みんなに伝えることができる
オマエがそう信じたいころ
オマエは逝ってしまった亡霊たちと
廃墟の街で遊ぶことになるかもしれない
それは最悪の不幸かもしれなかった
もっと語ることがあると信じたとき
時間はすでにセルフを確定し
涸れた涙が未来を覆っている
それは現在から遠くない場所で出会う
どこかで見覚えのある
ありふれた風景かもしれなかった
ひとつの音楽
ひとつの律動で
季節を語ることはできなかったから
メロディが過剰だったとき
なにかが消えるように思えたのは
オマエのひ弱で歪んだ感情だったのかもしれない
オマエは魂に異形の化粧を施し
ひとつの感情 ひとつの冗談に集まった仲間たちに
風景の力学について語りたいと考えたのか
それとも小さな斧をもって
勝ち目のない戦へ歩み出したいと考えていたのか
「遠くへ逝ってしまったものとは何か」
「もう引き返せないこの場所とはどこか」
悲しく色づけられたこころだけが鮮明で
オマエはもう歩き出すしかなにもなかった
生誕の祝福か生誕の宣告か
オマエに決定を迫った問いが消えていく
問いは別のものに向けなくてならない
そのことを忘れそうになったとき
オマエは涜神の歌を口ずさみながら
死んでいった無数の悲鳴や愛や憎しみに
何度でも会いに行かなくてはならなかった