ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「創発の原郷」(参)

2010-07-24 | 参照

(安冨歩『複雑さを生きる―柔らかな制御―』06年岩波書店)より

「複雑に相互作用して運動するネットワークのひとつの結節点を軸としてさまざまな精神が生成するが、その精神の一種として人間の意識があり、それは最初から他の精神と接続関係にある。」

「世界に広がるさまざまな精神の織り成す生態系のひとつのレベルとして人間の意識はある。
「わたくし」の内と外を跨ぐ円環は他者にかかわる同様の円環と接続しており、広大なネットワークを形成する。このような観点からしても、「わたくしといふ現象」は「有機交流電灯の ひとつの青い照明」(宮沢賢治)というにふさわしい。」

「われわれの身体を舞台として、皮膚を跨ぐサイクルと、皮膚の内側で閉じるサイクルが複雑に相互作用している。すべてのサイクルは差異を変換して情報を生み出している。この情報の相互作用のなかから「意味」が生成する。
この「意味」が「知識」であり、生成の過程が「暗黙に知ること」(tacit knowing)である。
「意味」が生成する以前に、皮膚を跨ぐサイクルのなかでは差異の変換が起きており、情報が生じている。
言い換えれば、明示的知識が形成する前に、われわれの身体をめぐるサイクルに宿る精神は、すでに情報を「知って」いるのである。」

(「共生的価値創出」:コーチと選手/飼育係とイルカ)
「双方向にコミュニケートするなかで、ひとつの複雑なシステムが構築され、そのなかでコーチングという現象が立ち現われるような力学が構成されることで実現される。……コミュニケーションの構成するコンテキストのなかで、単純なコマンドが意味を持つ形で立ち現われることで、操作可能性が見えるのである。……
飼育係とイルカの信頼関係を前提として、上位のコンテキストに到達することで、イルカは新しい動きを獲得した。これと同じ結びつきがコーチと選手の間に形成されたときのみ、指導は可能になる。
……メソッドの強要は選手の動きをぎこちなくする。そうではなく、両者がすでに持っているものを繋ぎ合わせ、そこにひとつのコミュニケーションの運動を創り出し、新しい動きを生み出していく……動的な過程が動き出すような接続関係……。」

「近代的個人主義が村落共同体を破壊したのではない。市場だけが人間を疎外するのではない。共同体も家族も人間を疎外する。問題は「紐帯」があるかないかではない。人々が相互に学習過程を開いた形で、コミュニケーションを形成できるかどうかである。」

「人々を苦しめ、社会を崩壊させるのは、学習過程の停止である。われわれが立ち向かわなければならない敵は、市場でも個人主義でもなく、ハラスメントの悪魔である。」





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『闇の列車 光の旅/Sin Nombre』 (参)

2010-07-02 | 参照
*2008年・キャリー・ジョージ・フクナガ監督作品
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