結局、われわれは自分を「一人」だとおもいこみすぎたのである。きっとこれこそが「近代」が中世の魔術に代わって平均的市民のためにつくりあげた魔術というものだった。これは、私と同い年で、コーネル大学で数学を専攻していたモリス・バーマンが試みに「世界の再魔術化」(reenchantment)とよんだことである。(1995年筑摩書房/松岡正剛『フラジャイル』より)
時代はすでに次のステージに突入して、再魔術化の再脱魔術化、すなわち「一人」の解体あるいは縮減化による「資源化」が進行している。
「資源化」の目的は、全域化したマーケット・メカニズムの展開に対する貢献である。
有形無形のマーケット・プライスを刻印された各資源は、変動する相場のもとで市場相関物としての日常を生きている。
主観的な独立自尊のマインドの有無とは別に、そのまなざしは汎神的な市場のフィルター(色メガネ)を経由し、相互規定的に資源化された現実を追認し合い、市場適応的な生存を強化し合うことになっている。
こうした現実の住み心地は、ポジションや志向する価値によってさまざまに分岐するが、生存のオプションの寡少という点だけをみても、貧困の社会と言うことができる。そして、この貧困は極貧へ向けて加速しているように見える。
時代はすでに次のステージに突入して、再魔術化の再脱魔術化、すなわち「一人」の解体あるいは縮減化による「資源化」が進行している。
「資源化」の目的は、全域化したマーケット・メカニズムの展開に対する貢献である。
有形無形のマーケット・プライスを刻印された各資源は、変動する相場のもとで市場相関物としての日常を生きている。
主観的な独立自尊のマインドの有無とは別に、そのまなざしは汎神的な市場のフィルター(色メガネ)を経由し、相互規定的に資源化された現実を追認し合い、市場適応的な生存を強化し合うことになっている。
こうした現実の住み心地は、ポジションや志向する価値によってさまざまに分岐するが、生存のオプションの寡少という点だけをみても、貧困の社会と言うことができる。そして、この貧困は極貧へ向けて加速しているように見える。
「記録されたそのとほりのけしきで」
そこに描かれたものが美しいと思えるのは、最初に目撃したまなざしが、瞬間に迸ったものを描き出しながら、自らの素性を伏せながら、人に対して存在しないように存在したからだろうか。
それは客観を構成せず、
明示されたシグナルをもたない、
存在と非在のあわいに明滅する淡い光の、
刹那に放電した虚数空間のきらめきに殉じるように、
それ以上の言及を禁じ、
再帰するまなざしの回路を封じ、
世俗とっては異端とさえいえる流儀と、
そこにだけ許された秘蹟の作法に従っているようにみえた。
「イツモシヅカニワラッテヰル」かどうかはわからないけれど、
いつも「第四次延長」のどこかへ姿を隠すように、
それはあたかも、
「ジブンヲカンジョウニ入レズニ」、
まなざしを、人が、自分自身のものと感じることができるために、おのれの気配や介入の痕跡を消して、決して名乗り出ないかのようだった。
(引用/『宮沢賢治詩集』草野心平編)
そこに描かれたものが美しいと思えるのは、最初に目撃したまなざしが、瞬間に迸ったものを描き出しながら、自らの素性を伏せながら、人に対して存在しないように存在したからだろうか。
それは客観を構成せず、
明示されたシグナルをもたない、
存在と非在のあわいに明滅する淡い光の、
刹那に放電した虚数空間のきらめきに殉じるように、
それ以上の言及を禁じ、
再帰するまなざしの回路を封じ、
世俗とっては異端とさえいえる流儀と、
そこにだけ許された秘蹟の作法に従っているようにみえた。
「イツモシヅカニワラッテヰル」かどうかはわからないけれど、
いつも「第四次延長」のどこかへ姿を隠すように、
それはあたかも、
「ジブンヲカンジョウニ入レズニ」、
まなざしを、人が、自分自身のものと感じることができるために、おのれの気配や介入の痕跡を消して、決して名乗り出ないかのようだった。
(引用/『宮沢賢治詩集』草野心平編)
Ⅰ
みえない腕に抱かれ
またひとり
おんなが名前を呼ばれ
呻吟の海を渡り
コスモスの闇を抜ける
誘引は心臓深く染みわたり
始源の温もりが肉を焦がし
清らかな光が凝集し
儚い視覚を洗い
そのまなざしの子宮に
太古の祭礼が屹立する
むせびに震え
涙がこぼれ
悲しみが流れ
無限の闇に氾濫する
永遠の律動に騎乗し
遠く近く
熱く冷たく
未知の分娩を幻視して
祭礼は遥かに駆け上り
夢に濡れた夜に
精霊たちの白熱が貫通する
轟音となった細胞の共振は
緊縛されたセルフを道連れに
陶酔の極北へ加速した
昇天の熱が涙を溶かし
かなしみを埋めた辺境に
せつない嗚咽が木霊し
太古と永遠を結ぶさざ波が
孤独のひだを洗い
小さな死が唇を重ねる
彼岸をめがけ
喪神の祭壇に踊る
可憐な宇宙の巫女たち
酷薄な刻印をうがたれた
コスモスの生け贄なのか
儚いまなざしの内側を照らす
祝福の閃光なのか
幻想の涙に濡れ
無限の闇が身震いした
Ⅱ
永遠をつむぐ祭礼が
忘却の愛撫につき添われ
遥かな時間の流れにそって
孤独な気圏の小径を過ぎていく
小さな心臓を捧げた陶酔に
何度もわかれの挨拶を交わし
いつか夜の果てに辿りついたとき
巫女たちは戻る者なのか
みえない戒律にうながされ
惑星のせつない歌謡に
滅びていく者なのか
それとも悲しみの向こう側へ
抜けて行く者なのか
巫女たちの祭礼は
しきたりに導かれるように
遠い足音を響かせながら
数百億の夜を過ぎていった
みえない腕に抱かれ
またひとり
おんなが名前を呼ばれ
呻吟の海を渡り
コスモスの闇を抜ける
誘引は心臓深く染みわたり
始源の温もりが肉を焦がし
清らかな光が凝集し
儚い視覚を洗い
そのまなざしの子宮に
太古の祭礼が屹立する
むせびに震え
涙がこぼれ
悲しみが流れ
無限の闇に氾濫する
永遠の律動に騎乗し
遠く近く
熱く冷たく
未知の分娩を幻視して
祭礼は遥かに駆け上り
夢に濡れた夜に
精霊たちの白熱が貫通する
轟音となった細胞の共振は
緊縛されたセルフを道連れに
陶酔の極北へ加速した
昇天の熱が涙を溶かし
かなしみを埋めた辺境に
せつない嗚咽が木霊し
太古と永遠を結ぶさざ波が
孤独のひだを洗い
小さな死が唇を重ねる
彼岸をめがけ
喪神の祭壇に踊る
可憐な宇宙の巫女たち
酷薄な刻印をうがたれた
コスモスの生け贄なのか
儚いまなざしの内側を照らす
祝福の閃光なのか
幻想の涙に濡れ
無限の闇が身震いした
Ⅱ
永遠をつむぐ祭礼が
忘却の愛撫につき添われ
遥かな時間の流れにそって
孤独な気圏の小径を過ぎていく
小さな心臓を捧げた陶酔に
何度もわかれの挨拶を交わし
いつか夜の果てに辿りついたとき
巫女たちは戻る者なのか
みえない戒律にうながされ
惑星のせつない歌謡に
滅びていく者なのか
それとも悲しみの向こう側へ
抜けて行く者なのか
巫女たちの祭礼は
しきたりに導かれるように
遠い足音を響かせながら
数百億の夜を過ぎていった