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──竹田青嗣『新・哲学入門』2022年
人間精神(つまり人間的自由)の本質についてのヘーゲルの洞察は、
なぜ人間世界が宗教や哲学や芸術を維持し続けてきたかについて、
その根本の理由をよく示唆する。
思春期から青年期において典型的に形成される「自己ロマン」「自己理想」は、
「善き自己」たろうとする自己配慮から現われるが、その結晶化は、人をして、
理想像と現実(あるいは自己自身)との間の乖離と矛盾を意識に抱かせる。
われわれはここに、宗教的形而上学者やロマン的哲学者が表現しつづけた、
神と人間、自然と理性、理性と感性、有限と無限性といった
対立項の「合一」の理念の根拠を見ることができる。
またこの矛盾の意識のうちに、「イデア」「唯一者」「至上存在」「絶対者」
「存在の真理」といった超越的本体の諸観念の源泉を、
つまり矛盾の完全な克服の可能性についての諸観念の根拠を見ることができる。
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