記述のスペースをつねに空けておく
ただしくは最終解の完全棄却
思考においても、ふるまいにおいても
「最終解」から逆算して出力される経路の切断
視線は変更されなければならない
最終解。絶対の決済項、真善美──
価値の極相として示される究極の解答群
カミガミとして疎外され屹立する表象群
人間を規定し存在を確定させる超越項群
これらすべてをこちらから照らし返す
照らし返してその支配力を無力化する
ただ一つの始原の場所
人間的生成の原郷へ帰還して捉えかえす
明らかにすべき条件がある
最終解を求める人間的欲望の本質、見合った世界図式
構築される関係世界、社会体の痛切性、そのからくり
*
悲劇のリフレーン──吹きすさぶ嵐は止むことがない
専制・差別・抑圧・搾取・収奪・拷問・殺戮・蹂躙のアラカルト
すべては最後の答え、承認と正当性をみずからに与える
一切の権能をゆるす〝最終解〟の独占から導かれる
*
ふたつの法──
悲劇は日常に引かれた〝戦線〟を根として生育して〝法〟を蝕んでいく
法のほころび、法の破れ、法の決壊、最終形としての無法
すなわち「自然の法」への回帰
人間の法が包摂できない限界線がある
、
個と個、集団と集団、国家と国家
関係のゲームがあつらえる「主人と奴隷」図式
戦線の痛切性、関係の絶対性がみちびく悲劇のリフレーン
自然の法=力の論理、現実論理の全面展開
最終決着を導く「自然の法」が顕在化するまえにやるべきことはある
自然の法(無法)はつねに人間
淘汰の原理にしたがう無法としての自然の法
自然がつねに用意しているシンプル解
「自然の法はだれも裁かない」
審判者、裁き罰する者のいない自然状態
生き延びる手段はフリー(自由)に選択される
生存、死の回避という絶対命題にしたがうかぎり
手段を選ばない敵のせん滅、殺戮の自由、すなわち〝自然権〟
「人間の法」が生きているかぎり
「自然の法」は眠りについている
眠りについているあいだに捉えておくべきことがある
「人間の法」の下において〝戦線〟はつねに生きられ、新たに生成する
すべての戦線を消去することはできない
消すことができないことを戦線のたえざる生成
その生育を捕捉し抑え包摂する条件をさがす
第一には、「人間の法」そのものが変わること。その包摂性の拡張
自明な確定記述としての「人間の法」ではない
最終解を棄却してみずから成長する法としての「人間の法」
戦線の生成と生育に先行して包摂力を拡張するように
書き換え可能性に開かれた〝未決性〟において成長変化する「人間の法」
第二に、そのことの共通了解と書き換え可能性に開かれた意志
すなわち〝最終解〟の完全棄却