すると、雲もなく研きあげられたやうな群青の空から、
まつ白な雪が、さぎの毛のやうに、いちめんに落ちてきました。
それは下の平原の雪や、ビール色の日光、茶いろのひのきでできあがつた、
しづかな奇麗な日曜日を、一そう美しくしたのです。
(宮沢賢治「水仙月の四日」)
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まなざしを、ひとが、わがものと感じることができるかのように
「ジブンヲカンジョウニ入レズニ」
おのれの気配や介入の痕跡を消し、素性を伏せ
「第四次延長」のどこかへ姿を隠すようにしながら
刹那に放電する虚数空間のきらめきに殉じるように
「記録されたそのとほりのけしきで」
「イツモシヅカニワラッテヰル」かどうかはわからない
ただその所在を告げる務めを果たすかのように
存在と非在のあわいに瞬く光にまみれ
世俗には異端に等しい無償のたわむれにおいて
ただ受け取るものの側に委ねるように
再帰するまなざしの回路を封じ、それ以上の言及を禁じ
ひとり、仮構された非人称の作法に従っているようにみえた