ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「アフガンとの約束―中村哲」(参)

2011-07-17 | 参照

(中村哲×澤地久枝『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る/アフガンとの約束』2010年岩波)より

二〇〇二年十二月、容態変化。息子は死の二週間前まで精神状態は正常で、父の顔を見ると「お帰りなさい!」と明るく目を輝かせた。ついに痛みがはじまって、日頃は我慢強い子が七転八倒した。……十二月二十七日夕刻、昏睡状態に。深夜、呼吸停止、心臓停止。「脳ヘルニアによる延髄圧迫・脳死」と往診の医師立会いで判断した。
「享年十歳、親に似ず優しい聡明な子であった」「翌朝、庭を眺めると、冬枯れの木立の中に一本、小春日の陽光を浴び、輝くような青葉の肉桂の樹が屹立している。死んだ子と同じ樹齢で、生れた頃、野鳥が運んで自生したものらしい。常々、『お前と同じ歳だ』と言ってきたのを思い出して、初めて涙があふれてきた」「バカたれが。親より先に逝く不孝者があるか。見とれ、おまえの弔いはわしが命がけでやる。あの世で待っとれ」(中村哲『医者、用水路を拓く』07年石風社)

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