ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

2007 believing&unbelieving 13

2007-04-25 |  conversation
「一種の無常観?」
「行く川の流れは絶えずして」
「もののあわれ的な世界観の自己適用」
「いつの時代にもある月並みな作法だね」
「本当はそれ自体規範的なものじゃない」
「審美的なものかな」
「ルサンチマンや不遇感の単なるリアクションということもある」
「俗塵の息苦しさが最後に引き抜くジョーカー」
「ジャパネスクな観照的態度とも自讃されている」
「大和心」
「独特の洗練された表現形式もある」
「それは究極的にはボトムがないということへの気づきかもしれない」
「気づきがあっても、世界が変化するわけではない」
「変化はしないけど意味性が変わる」
「意味が変わるとして、問題はどんな行為がそこに接続されるかだね」
「気づきがどう世界の色合いを変えるのか」
「現実の振舞いはさまざまに分岐する」
「コンビニエントな諦念として機能することもあるね」
「世俗的なコードや道徳の乗り越えツールにも使える」
「ご都合主義的に、逸脱や犯罪を正当化できるかもしれない」
「いきなり超越項へジャンプするという可能性もある」
「究極のパンツね」
「しかし、そこから利他的である必然性はない」
「利己的になる必然性もない」
「現世否定でも現世肯定でもある必然性もない」
「融通無碍」
「結果的にいろいろなものと結託できるということか」
「たとえば、ゼニがすべてという公然たるパフォーマンスもある」
「偽善が幅をきかせるようにみえる世界では、むしろ潔いとされることもある」
「しかしアウトプットが何に帰結するかは一義的には決められない」
「能動的ニヒリズムの実践という矜持もあったりする」
「一回こっきりの人生」
「死んだらお仕舞いよ」
「一場の夢」
「ただ旨いものはたらふく食っておこう」
「カラスの勝手でしょ」
「月並みだね」
「月並みだけど、ビジネス上の推進力として機能することもある」
「一方には隠遁生活といったものもある」
「しかし、ギンギラギンの現世の重力は強力だ」
「ギンギラギンでさりげなく」
「おいしい生活は一杯ある」
「くだらないものもふんだんにある」
「ほしいものがほしい、とか」
「結局はあちこちめぐりめぐって現世に着地するというのが定番かな」
「無常観はそこには行使されない」
「そこまで徹底して行使されることは奇跡的なことかもしれない」
「そして現実一本で事態は推移していく」
「その外は存在しないかのように振る舞うことが、ゲームへの参加資格になっている」
「お約束だね」
「もののあわれや無常観への対抗としての文明ゲームともいえる」
「神亡き後の対処戦略か」
「神サマがいても同時並行可能だ」
「でも亡くなったという近代の診断は確定している」
「クリーンアップされたノッペラボウの現世をいかに生きるか」
「そのためにさらにシステムは増強されてきた」
「外部抹消を前提に、すべてはマーケットへと収れんしていく?」
「総がかりの大伽藍の建築が進行している」
「バベルの塔ですか」
「理屈からいえば、マーケットを否認すれば何も残らないことになっている」
「結局、無常は腹の足しにならない」
「まさに」
「外はない」
「それ以外想定しようにも想定できない」
「近代化という名の壮大なプロジェクトね」
「だけど外部は必ず浮上する」
「ロジカルに浮上する」
「ただ、リアルワールドそのものが宗教ともいえる」
「ニンゲンは本来宗教的存在でしょ」
「それは消せないね」
「というより本質的には宗教というものが手当てされてきた」
「何に?」
「ニンゲンの営みが分泌するもののあわれ的なものに」
「世界が分泌するのではなくて?」
「順番からいえばニンゲンの営みが先にある」
「自然界に宗教があったわけじゃない」
「後にも先にもね」
「いわば脳ミソの内燃機関でもある?」
「みずからそうであらぬところのものへの志向」
「世界表象のゼロ記号的なメカニズム」
「内属する空とか無とかね」
「それが宗教と呼ばれるものの根っ子にあるわけか」
「振り払おうにも振り払えない」
「それを何かで埋めようとする営為が、否が応でも神々を分泌する」
「自然の圧倒的な脅威もあった」
「豊かな恵みも与えてくれた」
「内なる煩悩もある」
「内なる自然」
「つまり内なる外部ね」
「それが導く悲惨や不幸も腐るほどあった」
「そこから味わえるエロスも一杯あった」
「まさに苦は楽のタネ、楽は苦のタネ」
「なるほど」
「その全体を説明するのに現世のロジックだけでは追いつかないからあの世が想定された」
「それでスッキリするわけか」
「ただ、サイドエフェクトとしての不幸や惨劇はあまりにも過剰だった」
「そこからの自由を志向したとき、もう一度ゼロ記号への帰還が目指されたりしたわけか」
「ごく例外的にいえばね」
「プリミティブな時代はちがったでしょ」
「人馬一体的に人と自然と神々による包摂が、自己完結的にコスモスを作っていた」
「しかし、ある時点からあるエリアでは神格のビルドアップが目指された」
「人類的なプロジェクトXへの発進」
「どんな部族も例外なく宗教プロジェクトを推進してきた」
「歴史多発的にね」
「コンセプトのちがうプロジェクト同士の激突も起きた」
「ビルドアップを目指せば、そこから甚大な破綻や代償も顕在化する」
「こりごりだということも起きた」
「だから別様の対処法も模索された」
「さしあたり文明化プロジェクトということになるのかな」
「現世一本で勝負するということか」
「現世利益的なもので腹が膨れれば、宗教プロジェクトは出番がない」
「だけど膨れることはありえないから屋上屋が重ねられることになる」
「ゼロに駆動されながら、ゼロを埋めようという究極のマッチポンプか」
「実際にはすべてそれに尽きるかもしれない」
「正しくはプロジェクト・ゼロ」
「それがニンゲンの歴史か」
「単純にいえば人類の壮大なパンツをめぐる歴史ね」
「自己完結できないように出来ているからパンツは要る」
「ゼロの現前に対するニンゲンの応答が、宗教という形式で表現されたわけか」
「同時に機能的にはそれが文明化という形式をとったということかな」
「ゼロへの気づきがニンゲンの思考を発動したともいえるね」
「インド人のゼロ発見が数学発展を起爆させたようにね」
「ゼロ記号がなければニンゲンは思考できない」
「虚数的にニンゲンの生のリビドーは発動されるわけか」
「しかし、いまや宗教は胡散臭さの代表にされてもいる」
「この国ではね」
「リアル・ワールドの動かし難さがあるとしても、それは一つのプロジェクトだという了解があるかないか」
「その了解があるかないかが決定的だ」
「一つの試行ね」
「だけどイノチがかかっている」
「ただし試行でしかない」
「にもかかわらずイノチがかかっている」
「無限に循環するけど、どっちが本当ということもないね」
「そこに分岐点があるわけだ」
「彼我の認識のちがいがね」
「面倒だけど相反するものの両義的認知があるかどうか」
「そうした構造は子供じゃわからない」
「子供はどっちか決め手ほしい」
「我慢できないし、機微がわからないから思考が洗練されない」
「もののあわれをモチーフにした表現は腐るほどあるけどね」
「わびさび」
「枯山水」
「いろはにほへと」
「独自の表現形式を洗練させてきたけれども、現実の振舞いとは無関連化しているということか」
「だから子供だらけのように見える」
「そう思う」
「どういうこと」
「この国は子供の王国にみえる」
「子供には失礼かもしれない」
「恥もなくビューティフルランドとのたまう阿呆がトップにいる」
「薄々気づいている子もいる」
「この国の表現の伝統に照らしたら、最初に落とされるレベルだね」
「ただ、メディアの前はチャイルドシートだらけでしょ」
「そのレベルにピッタリとはまる」
「いやメディア世界がそうなっているだけで、画角の外には一人前の大人たちもいる」
「万人に向かって自分のツラを晒す恥ずかしさを知っている人もいるということか」
「マーケティングは狙いやすい子供だけしか相手にしない」
「メディア的には感情の表出が優先されている」
「作為的な井戸端空間があちこちに出来上がっている」
「煽りと感情の表出合戦がパブリックな空間全域を埋め尽くしているようにみえる」
「ちょっと奥さん聞いたぁ的な話法やキャラが耳目を集める」
「大袈裟に驚いてみせなければいけない」
「ボソボソゆっくり話すヤツは使えない」
「使えるけど突っ込んでやる必要がある」
「カマトト・ゲームね」
「あらぁ」
「ちょっと、ちょっと」
「いけないんだぁ」
「あっぱれ」
「なりきりゲームか」
「サルの軍団的なギャラリー演出もある」
「いいとも!」
「それはそれでバカバカしくて楽しい」
「バカバカしいのはいいけどさ」
「最高の議決機関でも同じ現象が起こっている」
「まったく同じ」
「場のノリがすべてに優先される」
「国全体が井戸端的なカマトト空間になっているのか」
「それを承知でやっております」
「たとえばビジネスといえば格好よさげだけど、本質的にはカマトト・ゲームのバージョンでしょ」
「たとえば?」
「誤解を招いたことをお詫びします」
「誤解じゃねえだろ」
「はい、本当は誤解じゃありません」
「誤解じゃなくて、ワタシが阿呆で悪党で、みなさんは正解で、ですのでお詫び申し上げます」
「それが正しい言い方だ」
「成熟を迂回するための代替物もあふれている」
「どんな形で?」
「めくらまし的な快楽装置群の巨大な連合がある」
「それ自体は問題ないでしょ」
「ない。その一つ一つにはね」
「ジェットコースター的歓楽マシンや感情垂れ流し兼吸収装置はたくさんある」
「それらが単独では純然たるエンタの仕掛けだとしても、群としては別の作用を始める」
「結果として、子供でありつづけるためのワンダーランドが全域を覆うということかな」
「眩惑に満ちためくらまし空間ね」
「メディアではその場の思いつき的な社会正義もまぶされる」
「ワタクシが時代の理性の代表ですというキャラがギャラをどかんと貰う」
「わたしが良識を代表しております」
「その実態はひどいものだけど、舞台裏にはカメラは入らない」
「誰もが知っているけど、誰もが知らないことになっている」
「建て前としての公正中立正義その他もろもの金看板がある一方、そこには十九世紀的労働収奪によって下支えする下部構造もちゃっかり機能している」
「貴族と奴隷の古代的世界とも言える」
「もっとひどいかもしれない」
「そして、じつはビューティフルランドは誰一人として信じてはいない」
「誰もが信じるかもしれないと誰もが信じたふりをすることで、結果的にアンタッチャブルなシンボルのまま使われてしまう」
「人を眩惑できる属性は何一つ備えていないけどね」
「にもかかわらずこの社会に内属して生きるしかないけど、あるともないとも言葉では明示できないけど外部は存在している」
「現にいまここにあるものだ」
「だけどそれが真実の世界だとも言えない」
「うん。ホントのホントということは成り立たないけどさ」
「ただ、そのことに無自覚で無防備でノー天気である貧しさには気づいたほうがいい」
「なぜでしょう」
「なぜだろうね」
「成熟したほうがいいから?」
「成熟とは何かな」
「一ついえるのは、徹底的に個人がアトマイズされているということかな」
「されっぱなし」
「そしてそれを現実のすべてだと思い込ませて利用する輩がいるということだね」
「命令に従いやすい子供のままの状態に置いておいたほうが都合のいい連中がいる」
「確実にいる」
「そこは互換的だけどね」
「固定された関係ではなくて入れ替わり自由でもある」
「ただ、全体としてそのように作動しているシステムのメカニズムがある」
「そう。システムのパーツにされるバカバカしさがあるとして、そしてそういう位相を生きざるをえないのがリアル・ワールドの限界だとしても、別の位相では自由への希求がある」
「その希求が台無しにされているということか」
「そのことに気づかないのが子供ということだね」
「文化的伝統というはっきりした理由もないわけではない」
「そうした希求の受け皿はシステム内には用意されていない」
「補完的にはふんだんにある」
「形骸化した宗教空間や儀式ももろもろある」
「懐の深いシステムでないことは確かだ」

「感情の国か?」
「メディア的には感情の表出のほうが旨みがある」
「悪しき井戸端空間の拡大生産」
「煽れば煽るだけ黒字は増える」
「短期的にはね」
「長期的にはこの国の自滅に通じるかもしれない」
「ストッパーがないということかな」
「ストッパーやそれを制御可能にするものがない」
「感情以外の伝統的な人間関係のリソースがその機能を果たすあり方もある」
「どの国?」
「知らないけど、オトナがたくさんいる国」
「理屈優先ということ?」
「いや、感情にまかせちゃロクなことはないという認知がある」
「過去にさんざん痛い目に遭ってきて、こりごりだという歴史があるわけだ」
「無数の歴史的な惨劇の経験が骨身に沁みている」
「歴史があるだけじゃだめで、それがみんなに記憶されているということね」
「記憶されるための対話空間やメカニズムが社会に組み込まれている」
「だったらいいな」
「それがナショナルな共有財産として自覚されているというわけか」
「オトナたちの思考にはそれが刻印されている、ということだったらいいね」
「冷静に論理を立てながら、いい加減にしなさいといえるオトナがたくさんいる国ね」
「そう。当然、感情がないということじゃない。感情が劣ったものだというのでもない」
「むしろ、感情は伸びやかなものになるかもしれない」
「感情をゲームとして遊ぶ余裕も生まれる」
「そうした土俵が共有されればね」
「感情の表出競争だけが展開するような場所では、反対に感情は腐食していくでしょ」
「ただ、この国では別種のストッパーやコントローラーが働く」
「何でしょ」
「対抗的な集団感情」
「ある感情を抑えるために対置されるもう一つの感情というパターンね」
「にんげんだもの」
「同じにんげんだろ」
「キサマ、それでもにんげんか」
「ニッポンジンかぁという言い方もある」
「それに類するものはふんだんにある」
「いろいろと代入可能だ」
「場の空気によってにんげんの中味も自在に変化する」
「立場によっても自在に解釈変更が可能だ」
「いざとなれば国のために死ぬのがヤマト魂と言い出しかねない」
「悪いけどみんなのためにここは死んでくれという言い方は今もある」
「それがビューティフルという言葉の最終的な指示内容かもしれない」
「ことだまね」
「一丸となって」
「最後には敵も味方もなくなって、同一性が確認されればそれで安心というね」
「それがある種の究極の中和装置、融和装置として働く」
「この国ではそうした装置の活用法に長けた人間がタイジンと称されてきた」
「感情の誘導芸ね」
「腹芸師、裏芸師、寝技師」
「比較的コストが低くて済む手法かもしれない」
「言質が明示されるわけじゃないから、比較的責任も伴わない」
「つまり、以心伝心でお望みどおりの自発性が調達されるわけね」
「わかってるだろ、な、うん、いやぁ、じゃあ、という空気感染が起こる」
「それがこの国のオトナ世界の作法の一つでもあった」
「それでもだめなら、それでもオマエはニッポンジンか」
「恥を知れ、とか」
「罪を知れとはいわない」
「論理を積み上げるにはコストが掛かるし」
「あうんの呼吸的根回しの知恵はふんだんにある」
「それが一概に悪いともいえない面もある」
「ただ、少なくとも感情は忘れやすい」
「都合よく忘れることができる」
「忘れたということも忘れる」
「ナショナルな風土病だな」
「つまり、リセット機能が装備されている国ということか」
「一夜にして別に国になれる国でもある」
「そのことが、ポストモダンの最前線を疾走する国といわれている理由の一つでもあるかもしれない」
「スーパーフラットで、デジタル空間との相性は抜群ではある」
「感情はすっきりしたい方向に動きやすいね」
「すっきりしたい方向はサルでもわかる」
「かゆみと同じ」
「かゆいのはしかたがない」
「実感の論理ね」
「ワタシの実感をどうしてくれるのよ」
「知るか、とはいえない空間が出来上がる」
「誰かがかいてあげないといけない」
「かゆいワタシをどうしてくれるの」
「冷たく突き放すという作法には人気がない」
「情の国か」
「情の人というのは右でも左でも最大級の褒め言葉だ」
「情にもいろいろあるけどさ」
「結局、一度かくだけでいいんだから」
「誰かがかいてくれるだけで十分というところが面白い」
「それはオマエの実感だろ、という言い方もあるけどね」
「オマエのかゆいのはよぉくわかる。わかりすぎるほどわかる」
「だろ」
「うん。オレもかゆい」
「オマエっていいやつだな」
「かゆみを知らないヤツとはつきあえないな」
「そうだ、そうだ」
「どこがかいゆいんだ?」
「ここか、あそこか」
「いいねえ」
「でも、一晩たったらぜんぶ忘れてる」
「おまえ誰だっけ」
「感情補強的に理屈がこねくりまわされることも多い」
「議論の場ではそうしたことが永遠に反復される」
「だから資源が蓄積されない」
「オトナの知恵がね」
「つまり、成熟できない」
「やっぱり子供の国か」
「感情には論理よりも感染力があるのは確か」
「カタルシスもある」
「スッキリするという果実には抗えない」
「むき出しの感情には負ける」
「負けたらおしまいでしょ」
「感情がいったん励起すると、こちらの感情も励起される」
「しかたなくね」
「確かに揺さぶるものがある」
「共鳴装置的に波立ちが引き起こされる」
「場合によってはそれが増幅されて、国家レベルの感情のレゾナンスが起こる」
「ナショナルなお祭りか」
「一体感とか、壮大な共生感が生まれることもあるかもしれない」
「それで恍惚状態のまま全員が死んでしまえば万事めでたしめでたし」
「それは昔の話でしょ」
「どうかな」
「臨時ニュースを申し上げます」
「なに?」
「ニイタカヤマノボレ」
「マジ?」
「聞いてないよ、なんてこともゼロじゃない」
「限りなくゼロに近いけどね」
「それが何かわからないけど、後戻りできない地点に立たされているということはありうるね」
「この国のプランナーはいるわけか」
「日々活動していることは確か」
「それが海の外にいる連中である可能性もある」


コメント

2007 believing&unbelieving 12

2007-04-16 |  conversation
「どうでもいいということはなくて、逆にそれがシステム稼動の前提をつくっている」
「乗り遅れたくはない」
「一人だけちがうのは心許ない」
「同一性を仮構することで、そこにセルフ・ナビゲートするわけね」
「統合原理としては大事だ」
「まさに部族意識」
「槍も弓矢もペニスサックもトーテムもないけど、それに代わるデバイスは全員が装備している」
「電波と光がつなぐポストモダン的部族社会」
「例外なく誰もが同じ欲望や感情を抱くだろうという前提でシステムが回転している」
「生産システムはそれを想定するところから立ち上がる」
「市場的コミュニケーションはそれをアテにしている」
「同一性といっても曖昧だけどね」
「曖昧だからフレキシブルに応用できる」
「根拠なく、コレだよ!という言い方を流通させることもできる」
「主体の中味が空洞化していればなおさら強度が増す」
「同一性というヴィジョンに乗っかって異同が強調される」
「物神的プロダクツ群がそこに重なって、トライブ全体を誘導するという神話的空間が成立しているわけか」
「しかしシステムの更新スピードは迅速だから、置いてきぼりにされる恐怖も小さくない」
「そうした帰属不安が日々の精励に拍車をかける」
「付いて行くだけで息も絶え絶えだ」
「一方では出し抜きたいという野心もある」
「希望の原理ね」
「かくしてエネルギー総体は一元的な回路へと整流される」
「一元化されているかのようにね」
「かのように」
「かのように消費への発情が喚起される」
「周囲には眩惑の大伽藍が聳える」
「総体としての運行は、まずまず順調に推移するかのように安堵されている面もある」
「しかし遠点から眺めれば、欲望や感情は設計され規格化されている」
「ただし設計の主体はいない?」
「特定できる設計主体のオリジンはない。メンバー全員が運用主体でありシステム因子になっている」
「当然それは市場と連結されている」
「商標登録された物神群へと欲望が導かれる」
「職業的にみれば、誘導される存在が誘導する役割も担っている」
「股裂き状態だな」
「どっちに重心がかかるかは、局面次第で変化する」
「スイッチを切り換えて、複数の人格を使い分けなくてはならない」
「だから、生き方としては解離的であることを強いられる」
「それが一般的な適応課題になっているわけだ」
「スイッチの切り換えが利かないときに症状化が起こる」
「昔から考えればそれが正常だったかもしれない」
「昔がどうあろうと適応しなくては生きられない」
「個体の推進力となっているのが嫉妬や羨望」
「嫉妬?」
「消費上のプチな差異が生存のプライドとインセンティブを成している」
「その落差を誇大に演出することが消費誘導の常套手段になっている」
「差異の認知がジェラシーを分泌する」
「生活の必要を超えるジェラシーのダイナミズムね」
「それが自動運動している」
「彼岸には幸いなるものが宿るかのようにして市場が君臨している」
「ただ日常の振舞いとしてはプチな差異が大問題になる」
「プチだけど実存上の生き死にがかかっていたりするわけか」
「ある意味で、六十年前のギブ・ミー・チョコレートの延長だ」
「内なる欠乏と豊穣なる外部」
「そこに位置のエネルギーが生まれて、トライブ全体を方向づけてきた」
「かつて光輝くモデルは遥か海の向こうにあった」
「舶来の物神たちが次々と降臨した」
「そうした舶来のモノやスタイルが生の新たな価値として次々現われることで、集合的なエネルギーを誘導したわけか」
「未来へ駆動する貧困や欠如の意識、劣位の感情」
「充足へ向かうことそのものが幸せ感と結びついていた」
「そうした基本回路はいまも同じだ」
「南蛮渡来モノにイチコロという心性は変っていない」
「民族的な活力の源泉でもある」
「そう仕組まれたのかな」
「本当に魅力的なものにみえた」
「ある種の自然性と結びついてもいた」
「文明化作用?」
「それが自動化していたので、ガバナンス上の戦略は単純だった」
「そこを目指せば確実に暮らしはよくなるという実感があった」
「大枠では感情的な安全は保たれていた」
「いわば秩序の大船に乗っていたわけだ」
「少なくとも感情を素朴に発露できる場所は確保されていた」
「ある時代まではね」
「例えば、故郷は辛うじて故郷としてあった」
「仲間もいたし、向こう三軒両隣もあったし、県人会というものさえあった」
「しかし後知恵でいえば、そうした圏域を破壊するように事態は進んだ」
「一方では、システムの負荷をマージナルな領域に集中させる営みもあった」
「ただ、巨大な生産と消費のメカニズムは十全に機能していた」
「海の向こうからは、邪神的な対抗イデオロギーもやってきたけどね」
「上空飛行的に屈折した自意識をぶちまけるゲームも展開した」
「海の向こうの対抗的世界の脅威があったし、逆にそれを憧れる一派もいた」
「結果として、ライトとレフトの対抗は内部的洗練に貢献した?」
「それが内部的な手当てを動機づけもした」
「どっちが得か」
「ニンゲンの生が享受できる幸せ感の相対的な総量比較という問題なのかな」
「決着はついたでしょ」
「しかし、内部的な問題がそれで免除されるわけではない」
「ただ、ライトもレフトも据え膳には多くありつきたいし、自分よりありつく奴には腹が立つ」
「そこは共通していた」
「タダじゃないけどね」
「そのためには大いなる苦痛も甘受して働くべし」
「そこも共通していた」
「ほかに何もないだろ」
「あるとも言い返せない」
「結局そこに収れんしたわけか」
「実力勝負で行こうということになったわけね」
「だったら文句ないでしょうという言い方には一定の説得力があった」
「ところがそれだけじゃなかった」
「初期値の格差や実力以外の要素も少なからず絡んでいた」
「しかし、同じゲームを同じ条件でプレイしていることになっている」
「ピッチの上空を見上げれば、消費への発情を促す極彩色の風景が聳えている」
「ゲットすべき果実がゲームのエロスを吊り支えているわけだ」
「社会全体を覆う市場の記号的プレゼンテーションがそれを担っている」
「文明化作用が生み出した万国共通のファンタジーがある」
「もういい加減食傷しているということもあるけど」
「でも身体的には自動的に覚醒が促される」
「オートマチックな官能的リアクションがある」
「しかし同時に、個人が個別に風景を描き出す能力は失われていく」
「個体を無力化するメカニズムね」
「脳ミソの機能も含めて、システム全体が代替してくれている」
「主体に成り代わって」
「そこに強力な誘引が働く構図があるわけね」
「同時にビジネスへの発情もある」
「独立した個体としては無力だが、パーツ的にはスキルフルで有能さが上昇している」
「ただビジネスは二次的なもので、あくまでもコンシューマーとしての階層を登りつめたいということが先にある」
「自意識的にはね」
「自意識としては独立していても、社会的にはパーツとして振る舞う以外ない」
「市場のプレゼンテーションは圧倒的だ」
「生活的には据え膳の中からチョイスするしかない」
「結局、誰もが同じ風景、同じ幻想を見ていて、誰もが眩惑されるということ?」
「誰もがそう感じるだろうと誰もが思っている」
「そして主体はますますバーチャル化していく」
「エネルギーはデジタル変換されて、フィジカル的には虚構化の度合いが増していく」
「デジタル情報は絶えずフィードバックされて、さらに身体をデジタルに分割していく」
「そして主体はジャマなものになる?」
「アイドリング状態で、最終的には市場とつながるその場の空気が思考や感情の方角を決める」
「主体の委譲」
「それが文明化作用が究極に求めるものなのかな」
「委譲先は曖昧だけどね」
「この国の特殊性もある」
「何かな」
「場の空気を読むことは共通していても、最後まで主体が浮上しない」
「誰かが決めるのを待っているということ?」
「ひたすら待ちつづける」
「謙虚で奥ゆかしくて、ある意味で自己滅却の悟りの境地だ」
「自分だけならいいけど、他者にもそれを要求する」
「主体を行使するニンゲンがいれば、そいつは間違ったヤツにみえる」
「場の空気が濁るような気がするのかもしれない」
「場の汚れに関しては敏感さが増している」
「ナショナルな分別の公準か」
「しかし分別全開のつもりが、実態としては主体の壊死が進行している」
「壊死しても何かが代入される」
「デジタル空間には思考や感情のモデルが氾濫している」
「自意識としては死んでいない」
「死んでいるけど死んでいない」
「死んでいないけど死んでいる」
「ある時点まではナショナルな達成目標が燦然と輝いていたから、それはそれで機能したわけだ」
「しかし、その有効期限はずっと以前に尽きた」
「図式的にみれば、信頼に足る不動の集合的価値の結節点が想定できていた時代はあったよね」
「実存的な揺りかごか」
「そう。オラが村、お天道様、ご先祖様、故郷の四季、トトロが棲んでいる鎮守の森のような結節点が信じられていた時代までは一枚岩的な安定感はあった」
「明らかに今とはちがう」
「自分は俗塵にまみれていても、この世あの世を含めた善きもののシンボルが一緒になってうごめく魑魅魍魎の世界」
「見事にクリーンアップされてしまった」
「その意味で、かつては人の生活は二重底になっていたたわけだ」
「そうだと思う。一方の世界が最悪最低でも、片方において救いを求めることができる何かがあると信じることなく信じられていた」
「実際は無理でも、そういう幻想が生きられていたということか」
「でも終わったわけね」
「スーパーフラット化した」
「そうしたものの残照を引きずる世代も退場しつつある」
「ある時代までは何もかもがうまく運んでいた、ようにみえた」
「うまく行かない場合には、戻る場所が想定されることなく想定されていた」
「単純にいえば、実存の基盤は揺るぎないかのような社会が続いていた」
「近代化の大嵐の中でも、避難場所はあったわけだ」
「紆余曲折があるとしてもね」
「磐石だったから、いろいろ勝手なことも言えたし、勝手な振舞いもあった」
「しかし、無意識的に信じられていた磐石なものが、実は磐石じゃなかったことに皆が気づかざるをえない時代が訪れてしまった」
「精励のはてのアウトプットが想定外のものだった」
「それだけじゃなくて、いつのまにかスーパーフラットなシステムの自動化した流れに抗えない地点に立ってしまった」
「システムに貢献する以外に何もできないという地点?」
「いわばテロも損壊を与えることも不可能」
「代替案が出せなければね」
「出せないでしょ」
「思惑とは無関連に、すべての営みはシステムへの貢献へと連結されていく」
「そのことの意味を審議する暇もなく、時代の進行は加速していた」
「いつの間にかまったく別の世界を生きていたわけか」
「愕然とする余裕もなく課題が次々と与えられていて、息も絶え絶えの状態というのが現状」
「個人の信念のありようはいかようにもあり得るけど、ただ最後の決済のプログラムは一元化されている」
「決済プログラムは内面にも転写されている」
「査定は厳格で酷薄だけど、うまくやれば果実が手に入る」
「要は能力や努力の勝負」
「勝てば官軍。負けるのはしかたがない」
「それが結果として、この時代の一般意思を形成している」
「自分もステークホルダーの一員という形で時代全体に串刺しにされている」
「自分のオリジナルな欲望や感情が見当たらない」
「探そうとすればね」
「探す以前に豪華絢爛たる据え膳が並んでいる」
「自分で探してもタカが知れているし」
「決然と働く以外にない」
「乗り遅れたらおおごとだ」
「そういうオチですか」
「それ以外の物語が朽ち果てているように見える」
「ノスタルジーブームは?」
「気持ちは分かるけど、はっきり言えばデタラメ」
「自分たちが捨てたり、破壊してきたものでしかない。しかもその営為は現在も続いている」
「スクリーンを観て涙する当のニンゲンが、現在もつづく破壊の当事者だったりする」
「それより何より、映像に描かれた世界が本当に幸せな世界だったかも疑わしい」
「でも気持ちはわかるということもある」
「結果としては、溜まったモヤモヤを放出してスッキリするだけで終わる」
「それは娯楽のもつ大事な意味だけどね」
「別に文句はない」
「あるでしょ」
「余興的なプチな物語はいくらあってもかまわないけど、最後には物語は一元化されて唯一のリアルがつくられていく」
「そこをめがけてあらゆる営為が動員され、一人残らず完璧に組織化されていけば問題ない」
「幸せの回路があたかもそこにだけあるかのように?」
「そうではないと言い張れる強力なベースはどこを捜しても見つからない」
「異端として生き抜くためには覚悟と力量がいる」
「それだけでは足りないでしょ」
「異端という概念が成り立つかどうかも疑わしい」
「新たな戦線を作ろうにも手持ちの資源もロジスティクスもない」
「自分だけはちがうという物語も全体の一部として随伴している」
「それがバッファーとして機能しつつ、結果的にシステムの回転ロスをカバーする」
「システムの歯車でありながら、その自覚を持たないで済むということか」
「じつはそこにも市場の食指はちゃっかりと伸びている」
「アンチでありながら、最終的にはシステムの守備範囲を広げることに貢献していく」
「新しい言葉の用法、新しいコミュニケーションの作法は、随時回収され加工されてシステムの機能拡大のためにリサイクルされる」
「生産性に犠牲を強いない方向で、サステナブルである道も模索されている」
「ロハス?」
「システム強化の典型の一つ」
「メディアも騒いでくれる」
「ある意味、カルチャー一般がシステムの補完物としても機能することは疑えない」
「いわば幻想の解放区、文化的特区というわけか」
「幻想だからダメというわけでもない」
「自立した存在をめざしていただければそれはそれでいい」
「もちろん。しかし、多くはシステム運用にとって使える資源として加工されプールされる」
「そうでなければ焼却処分される」
「自家発電のための素材群も歴史的に蓄積され、増強されていく」
「あれもあるこれもあるという実力誇示か」
「それだけじゃないけどね」
「承認つきの巨大なテキストの貯水池から欲望や感情が学習される」
「自家発電のしくみは今も昔も同じだ」
「ただ、いまや外部は想定されない」
「かつてあったかもしれない外部は消えて、トトロの森も観光名所化して、逃げ込み寺も生臭坊主だけになって、参照対象はアーカイブスとしてすべてフォルダーに入っている」
「代替物の一層の充実も図られる」
「欲望や思考や感情はそこから個体に転写される」
「しかも一回だけではなくて、転写は持続的に行われる」
「転写オプションは多彩に見えて、じつは同じコードに従っている」
「転写マシンとしての悲哀や息苦しさが世の中を覆っているね」
「でもないかもよ」
「嬉々として転写に励んでいる層も少なくない」
「学習の喜びはどんな環境にもあり得る」
「市場社会的な遺伝と進化のメカニズムが働いているわけだ」
「異種勾配を繰り返しながら、全体の恒常性は保全強化される」
「それがいい方向に向かえばいい」
「いい方向の中味が見えればいいけど、それは不明だ」
「あるいは総体として沈没する運命にある」
「だから、めでたしめでたしとは誰も思っていない」
「もちろん」
「ただ、大沈没するにしても何時かはわからない。少なくとも数年先ではない」
「食い逃げするヤツも出てくる?」
「規模はわからないけど、それは不可避」
「個体の寿命が尽きるまでという時間限定のゲームとしてすべてを考えれば、後は野となれ山となれという発想が出てきてもおかしくはない」
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秋とギャルソン

2007-04-07 | photo
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秋の桜

2007-04-07 | photo
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