(松本健一『日本の失敗』98年東洋経済新報社)より
さて、満州事変が勃発したとき、ジャーナリズムはこの昭和六年=一九三一年を語呂合わせで「いくさのはじめ」とよび、盛んに好戦気分をあおった(昭和九、十、十一年になると、一九三四、五、六、をもじって「いくさのしごろ」などとはやしたてた)。
戦後になるとだれも口をぬぐってしまったが、ジャーナリズムが満州事変を「いくさのはじめ」といって好戦気分をあおったとき、これを咎めだてるものはほとんどいなかった。唯一、大本教の出口王仁三郎のみが、何で日本人が西暦などで語呂合わせをするのか、皇紀(天皇紀元)でいえばいいじゃないかと、昭和六年=皇紀二五九一年を「じごくのはじめ」と語呂合わせでよんだだけである。