ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

2007 believing & unbelieving 17

2007-11-29 |  conversation
「かつて動かない場所は存在していた」
「何?」
「よりどころ、存在のヘソの緒のようなもの、信じるに足る何か、自明の風景やシンボリズムとか、あるいは立ちはだかる偉大な敵とか」
「それが存在していた?」
「ついでに言えば、遥かな見知らぬ世界もあった」
「こっち側と向こう側がワンセットであったわけね」
「そう」
「コインの裏表かもしれない」
「それでこの世もあの世もすっきりマッピングできた」
「同じ世界像をみんなが共有しているとみんなが信じることなく信じていた」
「そう。いい悪いかは別にしてね」
「さしあたり肯定的にみたら?」
「たとえば疎外という概念が成立するには、そういうものがないとはじまらない」
「前提が共有されるというね」
「揺るぎない世界観があれば、そこからのズレや歪みは即時的に認知される」
「誰にもわかるというか、察しつく」
「今流に言い換えるとドメインですか」
「アンチェンジブルなね。本来ありえないにしろ、アンチェンジブルなものがあると自明視されていた時代があったということは言える」
「アンチェンジブルでインビジブルなものね」
「誰もが信じているだろうと誰もが意識下深くで信じていた」
「すべての営みの起点のようなものかな」
「unchangeable domain。略して、UD」
「母なるハイパー・ドメイン」
「ほんとかね」
「それも振り返ってみると、という話だね」
「渦中じゃほとんど意識されない」
「巨大なリスクに直面しないと認識されない」
「ただ振り返ると失くしたものがみえてくることもある」
「それが小さくはノスタルジア・ブームになるのかな」
「馬鹿げているけど、バカにできる?」
「バカにはしない」
「気休めのサプリメントとも言える」
「能天気とも言える」
「逝きし時代のおもかげ」
「自分たちで葬ってきたものでもある」
「実感としては、知らなかった、気づかなかった、そんなつもりはなかった」
「そんなところかな」
「気がつけば足元から世界像が切り崩されていた」
「記憶の資源として活かせる?」
「古い世代の唖然、茫然、悔恨、哀惜が、どこまで現実的なアクションに結びつくのかな」

「世界をフレーミングできるUDがあって、日々の生活はその上に乗っかるわけね」
「けれど、それは信じるという意思的なものじゃない」
「揺るぎない環境世界という前意識的な信頼かな」
「しかし単独ではキープできない」
「歴史的共同的な蓄積を背景に、それと意識することなく社会が前提にして回る何かね」
「一種のオペレーティング・システムでもある」
「UDがOSを保証していた」
「でもかつてのUDはすべて消える方向で動いてきたわけか」
「正確には何かに代替されてきた?」
「正確にはUDの劇的な変化があった」
「どういうこと?」
「定点的なUDは解体されて、一斉に地面が液状化し始めた」
「よくわからない」
「すべてを霧散させる大嵐の時代が始まった」
「液状化、流動化、脱コード化の嵐?」
「理由もあったでしょ」
「UDはそれ故の生存の安定もあったけど、同時に桎梏でもあったからね」
「新規の文脈から、桎梏という否定面が攻撃対象になった」
「既存のUDが邪魔になるシステムが駆動し始めた」
「時代的必然でもあったわけね」
「それがどう帰結したか」
「UDは瓦解して、ニンゲンは人間じゃなくなった」
「人間以前に?」
「それがポストモダン」
「人間という概念は歴史的産物でやがて消えると予言されてもいた」
「UDは底が抜けたということかな」
「生活の実感としてはアトマイゼーション」
「簡単に言ったら?」
「環境世界を統覚する文脈が多様化して、ランダムに並存し出した」
「唯一と信じられていたUDが分解して、OSの乱立状況が生まれたわけか」
「つまり、OSの規格がアナーキー化した」
「でも無政府主義的世界にもハイパー・ドメインはあるでしょ」
「ないと社会は動かないからね」
「どこがちがうのかな?」
「チェンジブル!」
「そういうことか」
「いつでもどこでも文脈次第で自在にチェンジブルであることが、システム的矜持になった」
「いまの言葉に直せば、要するに統合失調症ね」
「かつての正常と異常が入れ替わったわけか」
「それで?」
「changeable domain。略して、CD」
「変幻するドメイン」
「恣意的でご都合主義的にもチェンジブル」
「しかもビジブル?」
「建前としてはそう言明される」
「オペレーションもガバナンスも明示されて、自己発見的に次のステージに移行し続ける」
「変態する昆虫の変態じゃないけど、メタモルフォーシスが常態化した」
「OSには自己更新プログラムがセットされている」
「問題なのは交換キーを何がどんな動機で何のために押し続けているか」
「でもそれだけじゃ説明できないでしょ?」
「犯人を捜してもしょうがないけど」
「そう。本当のヘソの緒はどこにあるのか」
「決済システムと物神崇拝」
「マーケット?」
「それ以上は遡行できないか」
「うん」
「審級的には神々の位相にあるかもよ」
「あの世がなければね」
「実際にないのだからね」
「それがスーパーフラットか」
「ウルトラフラットで安定した平面もない」
「つまり、CDは四次元的領域でうごめいている」
「わけがわからん」
「いまここにある神」
「幻想としての現実であり、現実としての幻想でもある」
「時代の推進力はいつもそこに宿るわけでしょ」
「いまも変わらない」
「単に否定的でも、単に肯定的でもナンセンスになる」
「しかし現象については語ることができる」
「どこまで迫れるかは別にしてね」
「でもCDの託宣は曖昧さを残さない」
「ただ、決済する」
「要するに神としてのCDは、すべての構成要素にマーケットプライスを刻印する」
「たとえば個人的記憶や世代的記憶も汎市場的CPUによって、速やかにデータに置換される」
「それがどんな意味をもつのか」
「資源化される」
「マーケットの?」
「そう。商業ベース以外も含めてマーケットのドメインは巨大だから」
「そこでUDはどうなったのかな」
「UDは極めてローカルな、あるいは極私的でプチな形態でしかない存在できない」
「それじゃUDとは言えない」
「その資格はなくなる」

「一方で、自己資源発見的に増殖しながらマーケットは世界を呑み込み続けている」
「使えるか使えないか、黙っててもエージェント群がまとめてマーケット換算してくれる」
「そしてマーケットも変幻する」
「不変なのは自己増殖というシステムの属性だけ」
「自分から商売を畳むということはありそうもない」
「商売を畳む時はこの惑星が滅ぶ時」
「個人のCPUじゃ追い付けない」
「たとえばそういう言い方自体が、システムにとって生産的な言い方にもなる」
「システム帰属的かつシステム適応的」
「あらゆる言説がシステムのエージェントとして生きる世界!」
「生かされる」
「誰もがイノセントではありえない」
「デタッチメントもアタッチメントのバリエーションになる」
「異論も反論も正論も、オブジェクションもアグリーメントも等しくシステム翼賛的」
「それこそデモクラティックの理想じゃない?」
「異論反論正論なんでもござれ」
「ただしシステムの存続そのものを疑っちゃいけない」
「主体はシステムと共犯的にしか生きられないということね」
「共犯的というより、主と奴という関係にある」

「しかもシステムは定点になりえない」
「変幻するものに上にわが家は建てられない」
「もう定点をもつことへの幻想は捨てろということか」
「人間の歴史の終焉」
「ジャン、ジャン」
「定点をもつことは決断の問題じゃないからね」
「そうでもないでしょ」
「どうかな」
「根をもつことは主体の意思的なものに依存しない?」
「それは定点の定義によるね」
「根っ子、定点、ボトム、底板、ホーム、帰る場所、母なる大地」
「曖昧な言葉だけど、」

「意識的努力によって叶ったと思えたときに、それがそれでなくなるような何か」
「前意識的なものだから、意識にとっては不在?」
「でもない」
「そうかな」
「それについて語るとき、それはもはやそれではないものになっている」
「意識化されたとき変質するということでしょ」
「定義からすれば?」
「うん」
「少なくともそれはありえないという気分だけは自明になりつつある」
「それがあると断言することに伴う違和感について、誰もが敏感になっているかもね」
「うそ臭さ」
「何が残るのかな」
「評価対象としては、機能的有効性だけが残る」
「システムのメンテナンスと発展にとっていかに貢献的か否か」
「維持点検、生産性の上昇をめぐっては、きっちり数値化される」
「各モジュールの部門別機能別性能評価も出せる」

「システムの正統性および正当性の源泉が、決済システムにあるの?」
「言ってしまえば、そうかもしれない」
「結局、個人単独では定点をもちえない?」
「そもそも共同的なものだから単独じゃ支えられない」
「ただ定点をもつと生き難さが強烈に昂進する」
「いまやね」
「よほど鈍感でないかぎり」
「どんどん無限分割される力学が働いている」
「アトマイゼーションの無限亢進」
「その嵐の中にいるニンゲンと世界」
「アトム化されて、その一つ一つが査定され、機能的な有効性を宣告される」
「そして現実に機能的適材適所的にレイアウトされていく」
「キミはあっち、アンタはそっち。ここじゃなくて向こうの端っこね、とか」
「あるいは廃棄処分される」
「願わくは少しでも有利なポジションに立ちたい」
「有利なポジションに立つことが喫緊の大目標になりうるね」
「ポジションの優位性は、附属する権益量の大小で分類される」
「あらゆるポジションには、適応課題も明示的に張り付いている」
「ひっくるめて言えば、全体最適化の運動だけしかない」
「最適化の目標も日々更新される」
「しかも最適化の最終のゴールが何かは誰もわからない」
「何のためにというね」
「何のためだろう」
「世界の究極の平和?」
「ありえないでしょ」
「愛の実現でもない」
「究極の快適ライフ」
「誰と誰のためか?」
「すでにハイレベルで実現している連中もいる」
「そのためには戦争も手段として排除しない」
「ということもある」
「継続し拡大する必要もある」
「直接の被害が自分に及ばない範囲でという限定はまだある」
「最大の資源で究極のプライスゾーンだからね」
「その意味では、大いに恣意性がマーケットには加担している」
「コストは甚大だ」
「債務を担う対象も決められている」
「ただしゴールは見えない」
「決して共有はされない」
「ゴールも要らない」
「そのあたりから仕切り直そうか」
「うん」
コメント

2007 believing & unbelieving 16

2007-11-20 |  conversation
「届いている?」
「うん」
「状況は?」
「いろんなものが侵入してくる」
「どこも同じかな」
「ものすごい勢いでね」
「あちこちで混線してるけど、ただ全体は回っている」
「吹きさらしとも言える」
「素通りしている」
「誰もが例外なくお互いさまだけどね」
「現実は速やかに希釈される」
「へえ、そんなこともあるんだって」
「たぶん」
「はい、次どうぞ」
「ありふれた風景になっている」
「感情や思考が一ヵ所で持続しない」
「もはや定点が存在しない」
「感情も思考もダウンサイズして、速やかに移動を繰り返さないと流動性に堪えられない」
「環境適応か」
「環境もワープしつづけている」
「次の展開が行列を作って待っている」
「じゃあ先を急ぐんでバイバイというね」
「おっと時間だ」
「ちょっと待てよとも言えない」
「こっちはこっちで忙しい」
「お互いがお互いに先んじてバイバイする光景」
「お互い素通りするだけ」
「でも行き着く未来はどこにもない」
「ほんとはね」
「いまのここ以外に」
「でもいまここは存在しない」
「そんな感じかな」
「結局、カスだけが残る?」
「カスカスのリアリティ」
「残りかすも素早くクリーンアップされる」
「そして次の展開が始まっている」
「カスだとしても、カスじゃないものがなければカスはカスではなくなる」
「カスカスでぜんぶが目糞鼻糞」
「ただ、カスだと言えるだけの世代的な体験の残照はあるのかも」
「まあね」
「カスカスだから次のカードを引き続ける」
「世代的なニーズもあるわけか」
「カスゆえの能天気さや朗らかさもある」
「消費ゲームのノリとシンクロしている」
「そうかな」
「疲れ切っているとか」
「総じて明るさが支配するハッピーハッピーの世界もある」
「消費機械、労働機械としての適応が駆動している」
「いまや進化のダイナモがそこにあるのかもね」
「思考や感情はフル回転で回っている」
「テーマは限定付きだ」
「向かう方角も先験的に決まっている」
「無理やりというのでもない」
「自発的というわけでもない」
「中心はどこにもない」
「不在の中心をめぐる忖度が持続している」
「じつは忖度対象の実体はどこにもない」
「数値、データ、ランキング、動向、トレンド」
「それらを見積もる評価エージェント群もいる」
「エージェント群の巨大な雲はあるけど、どれもが断片にすぎない」
「その巨大な雲そのものが、幻想上の忖度対象にちがいない」
「信じられないけど、現実はそれで動いている」
「ひとつひとつは陳腐なガジェットにすぎない」
「高級なスーツで武装したカスだらけ」
「このバカばかしさは何だろうか」
「突っつけば底なしの曖昧さがあるだけ」
「曖昧さが未決の現在を駆り立てる」
「未決という動力装置」
「そこに有象無象のプロダクツが侵入してくる」
「ソフトもハードも、佃煮にできるようなアイテム群の数」
「一種の穴埋めシステムだ」
「穴を掘って埋めるという作業が無限循環する」
「新規プロダクトの生産は、新規の穴掘りとイコールだ」
「シジフォス神話の最新バージョン」
「プロダクツもプロダクツの不在も絶えず消費されフィードバックされて循環する」
「日夜、新たなアウトプットへの衝迫がこの世全体を覆っている」
「そして個々の精励の集積が支えている巨大なシステムの運動がある」
「それだけはリアルなのかな」
「その外に出られない、つまりどこにも行けない?」
「そうね」
「遠くへ行きたいという人類の夢を何かが代替している」
「エージェントが埋め尽くした世界に、虚ろな住人だけがいる」
「個は消えたか、そもそも最初から存在しなかった」
「とも言えるかな」
「類としての不易のアイデンティティ」
「人生いろいろのように見えて、どこにも分岐しない」
「例外はなさそうだな」
「どう生きるかが、次に何を消費するかとイコールにもなっている」
「手塩にかけたプロダクツはない」
「古典的な言い方だね」
「レイバーからの疎外」
「今でもそういう位相は生きられている」
「決定的にちがうのは特定の階層だけがそうではない点ね」
「猫も杓子も、総員がプレーヤー」
「貢献対象はゲームの存続そのものになっている」
「ゲームセットは死以外ない」
「ゲームを観照する暇も場所もない」
「異界は消えたし」
「いまや錦を飾るべき田舎もどこにもないし」
「褒めてくれる爺チャン婆チャンはもういないし」
「よくがんばったねえというね」
「いまや田舎の爺さん婆さんも同じゲームに参加している」
「盆と暮れの大移動は形だけのアリバイか」
「まさに習慣の法則」
「爺さんも婆さんは田舎から出たいと思っているのかな」
「死ぬまで若さを求めながら」
「若さを強制されながら」
「あるいはヘルパーさんのお世話になっている」
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2007-11-17 | photo
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2007-11-13 | photo
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