───緋村剣心(大友啓史監督『るろうに剣心』2012年)
その方の言っていることは
一度もオノレの手を汚したことがない者の
甘っちょろい戯れ言でござる。
剣は凶器、剣術は殺人術。
どんなに奇麗ごとやお題目を口にしても、それが真実。
けれども、拙者はそんな真実よりも
カオル殿の言う甘っちょろい戯れ言のほうが好きでござる。
チカラとチカラ、存在と存在がせめぎあう関係
そうした位相を全否定することはできない
関係世界の構造が導く一つの必然といえる
競うこと、争うこと、戦うこと
この関係の位相を消去することはできない
理想、倫理、モラルによる制御はおよばない
それは関係世界の展開の核心をなす推進力でもある
勝つこと、優位に立つこと、きわだつこと
関係存在としての人間的生が関係的に展開するとき
めがけられる関係価値、核心をなす関係のエロスと言うこともできる
ただし、それは一つの核心的な位相であってもすべてではない
一つであり、人間的生の全域ではありえない
全域ではありえないものが全域であると了解され
絶対的な、最後の結審を仰ぐ位相として生きられるとき
世界は貧しさ、苛酷さ、惨劇、滅びの種を加算させていくことになる
この推進力には、いまだ正しく展開の居場所が定められていない
あるいはむしろ、のさばらせすぎていると言ったほうがいい