ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「現実論理」 20201003

2021-05-31 | Weblog

   ───緋村剣心(大友啓史監督『るろうに剣心』2012年)

    その方の言っていることは
    一度もオノレの手を汚したことがない者の
    甘っちょろい戯れ言でござる。
    剣は凶器、剣術は殺人術。
    どんなに奇麗ごとやお題目を口にしても、それが真実。

    けれども、拙者はそんな真実よりも
    カオル殿の言う甘っちょろい戯れ言のほうが好きでござる。


チカラとチカラ、存在と存在がせめぎあう関係
そうした位相を全否定することはできない
関係世界の構造が導く一つの必然といえる

競うこと、争うこと、戦うこと

この関係の位相を消去することはできない
理想、倫理、モラルによる制御はおよばない
それは関係世界の展開の核心をなす推進力でもある

勝つこと、優位に立つこと、きわだつこと

関係存在としての人間的生が関係的に展開するとき
めがけられる関係価値、核心をなす関係のエロスと言うこともできる

ただし、それは一つの核心的な位相であってもすべてではない
一つであり、人間的生の全域ではありえない

全域ではありえないものが全域であると了解され
絶対的な、最後の結審を仰ぐ位相として生きられるとき
世界は貧しさ、苛酷さ、惨劇、滅びの種を加算させていくことになる

この推進力には、いまだ正しく展開の居場所が定められていない
あるいはむしろ、のさばらせすぎていると言ったほうがいい

 

 

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「スナップショット」20210531

2021-05-31 | Weblog

 

 

いつもそうやっている
身についた形式、方法論がある

    *

世界をスキャンする
流動をせき止め
スナップに収める

切り取ってピンで留め
思い通り 望む姿のまま
理解のポッケに収める

デッサンタッチ、文体、記述形式

配置、配列、構図を確定し
存在、関係、意味をバインドする

    *

この世界記述の全体は先行的に抱かれた世界像
存在の基底をなす固有の価値審級に準じている

比喩的には、開放系か閉鎖系か
世界像を固定する方向と世界像の刷新の方向
おおきくは二つの方向に分岐する

    *

変化の契機は異なる形式との出会いにある
正確には、出会いを変化の契機にするかしないか

この分岐も抱かれた価値審級に左右される

 

 

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「二十歳」 20210221

2021-05-30 | Weblog

 

否定したい否定しつくしたいと願ったもの

自動化された言葉の応報
決めつけられるまえに決めつける
削られるまえに削りあう

どこにも行き着けない命のやりとり

自陣の加点と敵陣の減点をよろこび合う
全体収支が変化しない加点と減点のクソゲーム

なによりも供犠しあう心
仰ぎ見る心

差し押さえを喰らい
差し押さえを喰らわせる

見切り見切られる
筋書の決まった宴

人間讃歌と罵倒、友情と裏切り、信頼と軽蔑
地べたに釘づけにされたトンマの抱き合わせ

儀礼に従って手を振り、手を振られ
居場所を指定され、最後に
墓場へ安置されつづける心のかたち

どう生きればよいかわからない、そのことは変わらない
けれど、どう生きたらマズイかは明晰にわかる

そう考え、直観していた、二十歳

「堕ちる」ことの積極的意味を見出すには
「堕ちる-堕ちない」で動く現実が教えない〝視覚〟がいる

けれど、みずからの直観に頼りきった時代から決別しなければならない
直観を捨てるのではない、直観にカタチを与える仕事をはじめよ
手さぐり、みえない手がかりのまま、カオスを呼び込む
自動筆記法、オートマティズムの徹底的な励行

現実論理、確定記述──
「これが現実!」という生の全域を覆えないものが、
あたかも覆えるかのようにカンちがいしてデカいツラしてのさばっている

「人生はつくるものだ」

選ばれた芸術家、天才、特別な才能に頼るのはやめよう
頼ったすえに帰依することの愚かさが世界を貧しくする

「じぶんをバカだ、愚かだと思うのは根本的にまちがっている」

うぬぼれとはちがう、自己正当化ともちがう
やみくもな自己肯定とはちがうもっと本質的なことだ

ひとつひとつ、みずからのからだを通過させないかぎり
すべて天上に戴く言葉によって地上をおとしめることになる

人間の可能性を示す人たちの仕事は真摯にリスペクトすればいい
Caution!
天の頂きまで持ち上げて、みずからの生を価値下落させないように
なによりそれをツールとして他人の生を裁いて見下し、おとしめないように

「おまえは信仰を望むのか?」
「NO!」

ひとりひとり、いちどきりの生を生きるものとして、
生を素通りしないで生きるには、はね返すべき壁が存在する

それはじぶんのなかにもある
最初の、最大の、そして最後の壁かもしれない

壁には〝人間の階梯〟を教示する言葉が刻まれている
この壁をいったんカオスにもどす

天も地もない 優も劣もない

だれも教えない、教えることのできない
ひとりひとりの固有の生を生きようと望むかぎり
侵してはならない、侵すことのできない〝孤独〟の位相があること

最も嫌ったこと、ニンゲンの道具的使用、確定記述

 

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「〝法 Recht〟の位相」20210530

2021-05-30 | Weblog

 

考えて決めることではない
だれかに教えてもらうことでもない

第一原理は恣意や企みの外にある

    *

一緒に泣く
泣かずにいられない
怒らずにはいられない

すべてはそこで教えられる
一人ではない、いっぱいいる
だからそこにだけ踏みとどまれない

けれど一緒に泣くしかない
一緒に怒るしかない
そうする以外に手はない

それがこの世の経験の本質をつくり
固有の生きる理由と動機が与えられる

そして、考えてみてくれ
一人一人、心を交わした存在と存在
相手と相手がいがみ合っていたらどうする
殺しあうはめになるとしたらどうする

どっちにつくかということではない
どっちにもつかない第三の位相を開くしかないだろ

それを開いて見せる以外ない

これは必然的に要請されることだ
だれかが決めることではない

ともに生きることを願うかぎり
惨劇を回避したいと望むかぎり
関係の原理がそうすることを求める

とりあえず個別はどうでもいい
個別と個別を貫いて広がる位相がある

原理的ななりゆきとして
新たな主題が生成する

個別具体にこだわれば別の個別具体が消える
そういう原理的な展開は回避できない

だからもう一つの原理が召喚される

個別を消すわけではない
個別を生かすためにすべての個別からいったん離脱する

代えのきかない生の展開がある
この展開形に別の展開スペースをあつらえる

泣くことも怒ることもない
血も涙もないスペースを開く

惨劇を回避するには
涙も怒りも知らない〝法〟の位相が要請される

個別と個別の経験が交わり、多重記述され
新たな〝世界の奥行き〟、関係可能が生成する

〝法〟がそれを触媒する

これは存在原理、関係原理と言えるだろ
そしてもう一つある

人間は変化する、新しいありうるへ向かう
新しい存在可能、関係可能へ向かう基底の意志がある

泣き切り、怒り切った経験の先にあるもの
生の核に触れた経験がそのことを教える

 

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「夏の光」20210529

2021-05-29 | Weblog

 

六月の柔らかな光につつまれ
小道の紫陽花は風に揺れ
靄に霞んだ盆地の向こうに
遠く点滅する白鷺の群がみえた

湿った午後の縁側でひとり
まどろみに溶けた瞳が
遠い山並みの稜線をなぞるように
黒い雲の船団が渡り鳥のように翔けて行くのを見ていた

滴がぽつりと地面を打って
ひんやりする風がからだをかすめ
瞳の奥に澄んだざわめきを滲ませる

川向うから新たな雨足が迫り
一陣の風が吹き渡り
午後の風景が震えはじめる

メジロの棲む森を雨が襲い
ざわざわと緑の影が揺れ
梢を鳴らし
川面に雨粒がはじけ
草の匂いが運ばれ
雨と土の匂いに混ざりあう

小さなまどろみが破られ
目を覚ました細胞たちが
雨の襲来に反応して
羽音のような風景のエロスに共振する

スモモの実が雨に濡れ
竹の葉がこすれあい
牛の啼く声が聴こえ
蛙の合唱がはじまり
水溜まりにはアメンボが遊び

雨粒に打たれて水面は膨れ上がり
草むらからは日向のぬくもりが逃げていく

雨に圧されて風景全体が揺れはじめ
まなざしを襲う光と風と
ざわめきのすべてが音階となって
隠された楽譜を鳴らした

     *

黒い雲と白鷺が去ったあと
少しだけ倦んだ縁側に
可愛らしいあくびがひとつふたつ

雨に洗われ、濡れた風景の肩を抱くように
雲を払った空がきらめき
新しい季節の腕が伸びていた

 

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「展開形」20210529

2021-05-29 | Weblog

 

すべての震源──なぜか心が動く

由来を問うことに意味はない
一切の作動の震源の裏側に回りこむことはできない

そのつど起爆して生成する
生きる理由、動機

「ある」は「ありうる」をたずさえ
たずさえることで「ある」を構成している

記述を確定した自己の横には未記述の自己がいる

準備はつねになされている
新たな記述へ向けて用意を整えた状態、readiness

生きることのエロスと不安
ふたつは一つに織りあわされ
すべての時制は参集し混じりあう

かつて-いま-これから

予期は走り、世界は開かれ
「ある」はほどかれ、結びなおされ
新たな「ある」を編み上げる

この位相、この作動は自律的に動ていく

おのれとおのれの視線が照らす世界
すべては関係を主題として

おのれを、世界を書き換え、
再編集する展開形

新たな「ありうる」へ向かう
それが「ある」を構成している

 

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「summary」20210528

2021-05-28 | Weblog

 

はじめからソレ以外は求めてはいない
ソレ以外は本当は関心がない

正‐誤、真‐偽、善‐悪、美‐醜

白と黒、明と暗、おりこうさんとおばかさん
思考を埋めるセット販売のようなものさ

どんなスーパーでもこの図式に従っている
マーケティングの鉄板フォーマット
一番つまらないクリシェに埋まった世界

望ましい人格、正しいふるまい、
対局に置かれるワル、そんなことじゃない

よそ行きのことばはいくらでも吐ける
求めに応じて腐るほど吐き出してきた

おれたちの生にかすりもしない
日常を回す罪のない言葉の群れ

わかりやすくお手軽安心だけれど
わかりやすさの外にある

その片鱗がみえた
妄想が降りてきた
だからこだわったのさ

考えたことじゃない
そういう感覚に包まれたということ
それだけのことだ

けれど見殺しにはしない
殺せは本当に大事なものが死ぬ

水をやり光を注ぐべきものがある

大事に育てるためになすべき務めがある
だれの問題でもない
おれ自身の問題、ただそれだけのことだ

 

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「配慮と切断」20210527

2021-05-28 | Weblog

 

 

   ──マイケル・ポランニー『知と存在』土屋恵一郎訳

   心-身問題は、外的対象たとえば猫を観察する人の経験と、
   その人が猫を見る時の身体のメカニズムを観察する神経生理学者との間の相違から生ずる。
   その違いは次の事実から起こるのである。
   身体の内部で人間は、光によって感覚器官のうちに喚起された身体の反応による
   「~から」の知識をもち、この「~から from-knowledge」の知識は、猫の視覚像を作るために、
   これらの反応を統合して関係性をもった意味へとまとめあげる。
   ところが、この反応を外側から見ている神経生理学者は、
   こうした猫の視覚像に統合されない「~で at-knowledge」の知識を持つだけである。……
   精神は身体のメカニズムの意味である。
   しかしその意味は身体メカニズムだけに焦点をあわせてみるときに失われてしまうのである。


おれたちはこのふたつの視線を携えて生きている

相互に生きる意志を配慮しあう存在として
相互に機能的価値に換算しあう存在として

ふたつの視線が合流し交わる地点に
おれたちの生きる地平があり

生きることの矛盾や齟齬や軋轢、困難があり
そして新たな意味や価値が生成する理由がある

ふたつの視線はさまざまな派生態として
それぞれに方法化した世界記述の形式として確立している

それぞれにはそれぞれの存在の理由と根拠、そして効用があり
光と影、正と負の二面性をもつ

文学、哲学、数学、化学、医学、物理学、経済学、人類学、音楽、社会学、エトセトラ

しかし忘れないでおこう

おれたちがみずからの生の本質を展開したいと望むかぎり
派生態が教える視線から逆算してみずからの生を規定するのではなく
みずからの視線からさまざまな派生態を捉え返す視線を必要とする

すべての派生態にその意味と価値を与える存在
それはおれたち一人一人の始原のまなざし以外には存在しない

 

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「世界記述」20210527

2021-05-27 | Weblog

                                                                                                     Janis Joplin - Kozmic Blues [HQ] Lyrics - YouTube

                                                                                                    Janis Joplin - Piece of Heart [Lyrics] HQ - YouTube

 

感情は走りやすく
理解は行きすぎやすく
記述は確定に向かいやすい

はやり、うごき回り
急ぎすぎる心に休止符を打ち込む

「これが世界」という記述の確定へ向かう心に
新たな記述のスペースをあつらえる

すべてそこで迎え入れ聴き尽くす

自分を愚かだと思わないほうがいい
自分を賢明だと思うのと同じくらい、まずい

筆をうごかすだけでいい
思いつくままに
切断処理を廃棄する、それを格率として

多重の記述から新たな記述は必ず立ち上がる

新たな記述が芽吹く地平を枯らさないように
日々、水をやり、光をあてる

すべては〝よい絵〟へ向かうために

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「光の呼吸」

2021-05-26 | Weblog

 

  You live in your description of reality. 
                       
                         ──Gregory Bateson 


すべてはいまここに
いまここの出来事として
世界の姿はしたためられ

光も影もひとしく
すべての時制を引き連れ
うちなる水面に現象している

したため照らすのは
この世にただひとつの光源

この一人称を見失わないように

すべてを照らす光が動く
ピックアップするまえに
ことばを配置するまえに
世界をしたため火を灯す

水面に走る波紋が教える
求めるもの求めないもの
ここにこうして呼ばれる
かつて・いま・これから
すべての構成はただ一つ
いま・ここに動いている
輪郭のない光源が告げる

この一人称を失わないように

 

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「〝いまここ〟の手段化」20210525

2021-05-25 | 参照

                                                            Linkin Park - Numb (Fingerstyle Guitar) - YouTube

 

    ──見田宗介『現代社会はどこに向かうのか』2018

 「未来にある目的のための現在の手段化という時間の回路は、
 他者との交歓とか自然との交感から来る現在の生のリアリティを漂白するが、
 この空虚は未来の「成功」によって十分に補うことができるので、
 空虚感に悩まされることはない。
 世界の中で、アメリカや西・北ヨーロッパや日本のような高度産業社会において、
 生存のための物質的な基本条件の確保という、
 第Ⅱ局面の課題が、歴史上初めて達成されてしまうと、
 この自明の目的のための現在の生の手段化という回路が、
 初めて根拠のないものとなる。……
 この「近代」の最終のステージとしての「現代」の特質は、
 人びとが未来を失ったということにあった」

 

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「多重記述」20210525

2021-05-25 | Weblog

                                            Santana - Soul Sacrifice 1969 Woodstock live concierto HQ - YouTube

 


  Nothing is new, they say, under the sun
  But then again my soul feels a change
  It feels so new
  Life is an open vision of the highest bliss
  Because of you, life is new
  Because of you, life is new

       ──Carlos Santana「Life Is Anew」
         (Track3 on Borboletta,1974)

 

自然の文法が示す生の原理は厳格であり
たえがたい酷薄でもある

そう世界を記述する心の文法があって

たえがたい酷薄を乗りこえるように
唇が向かう先に顕現する第三の領域があり

そのことを知る心と心が出会い
透明な合意が結ばれ
セッションの位相が開かれる

自然の文法が知らない創発の契機をしのばせ
存在を交換し かさねあわせ 混ぜあわせる 

なぜそうするのかはすでに決している

そうしてはじめて出会うことができる
どんな目的や功利にも回収されない
それじたいが目的となる未生のエロスがある

 

 

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「ワタナベへ」20210524

2021-05-24 | Weblog

                                                                                                                       John Coltrane Quartet  - My Favorite Things - YouTube

 

どこにいるかわからない
どんな状況かも知りえない

あれから時間は経った

けれど同じ響きを聴いているバカがいる
教えてもらった音はいまも鳴っている

いまもあの場所は鮮明だ
ノスタルジーではない
そんな男じゃないことは知っているはずさ

この響き、ビートにつながるものを示したい
正確に言おう、決して裏切らないかたちで

いま使えるものを示したい

そう思いながら
いまここに生きている

 

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「遠心的 centrifugal」20210524

2021-05-24 | Weblog

                                                    Miles Davis - Burn - YouTube

 

求心的なちからによって存在がさらわれていく感覚が走る

このときはじめてそうではない内的作動
みずからの存在を駆動する遠心性のちからに気づくことがある

ちがう、湧き上がる異和

この感覚は見過ごされることもある
求心力がつよく、圧倒的であるほど感覚はかき消されていく

引力圏はある中心によって構成されている──
そこには確立された意味、価値の本体がある

いいかえると世界像の確定項を中心として構成された引力圏
その中心に吸い寄せられ、存在の収束、完結へ向かうような浮遊感

展開の余地なく、まるごと求心力に呑み込まれていく

ふざけるな

この感覚が走るとき
おれたちはみずからの生の力動に出会っている

 

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「情動生起」20210523

2021-05-23 | Weblog

 

情動の衝迫性が思考を奪うほどの強度をもつとき
(おそらく原理的に)それを吐き尽くす以外に
情動の求心的な引力圏から離脱する方法は存在しない

倫理、モラル、良識、ゲバルト処理
強引な抑圧は内的な破壊を導くことになる

思いのたけ、泣きたいだけ、怒りたいだけ
みずからを消尽するように
最後の一滴まで絞り尽くすように吐き出す

吐き出し切ったあと、はじめて別の作動の契機が生まれる

情動が教えることも知ることもない
情動が指定するフレームの外
生にとって「未記述の位相」に出会う条件が生まれる

情動と直列したまま事態が進行するとき
多くは関係の惨劇として、まれに創発的交歓として
劇的な関係刷新の出来事として現象する

この展開を関係破壊的ではない平和的展開の方向へ
〝吐き出し〟の条件を満たしながら
なんらかの関係的方法が見出すことができるか否か

可能性としては存在する

 

 

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