心は押されている
うちがわに押すものがいる
つよく押されながら
視覚はゆらぎ
一歩が定まらない
押されながら
めがけるかたちが見えない
手をのばし すがりながら
迷い 無力に染まったことばたち
それでいい
手にかけたことばくじかれ
砕かれて飛び散っていく
なんどでも砕かれ飛び散ればいい
ことばを砕くちからのみなもと
おまえのうちがわにそれはある
かなしみ、いらだち、怒りが走る
どんなことばとも
どんな行為とも接続できない
ためらい おそれ 迷い
たいせつなものを守ることができない
いたわりねぎらいはげますことば
それをみつける方法がわからない
すれちがい 遠ざかり
はかなく消えていく
さがすことが生きることなのか
ずっとさがしている
どこか遠い場所 ここじゃないどこか
鮮やかにつなげることばはどこか
さがさなくていい
接続すべき場所はここにしかない
できることはただ一つ
まなざしが向かう方角を変更する
外にさがして見つけることはできない
外に見つかるものはすでに死んでいる
いまここを離脱すれば
ことばは接続をとかれて死んでいく
刻んでおくべき原理がある
絶望は希望に先行することができない
子は母を産むことができない
世界を照らしだす光源はこちらにある
母として 希望として
はじまりの地平はすでに開かれている
どんな神秘も倨傲も奇跡もいらない
すべてはいまここに ただ一つ
おまえが生きる地平からはじまるだけだ
心の波立ち ゆらぎのなかに
世界は現象している
あらゆることはここに顕現する
すべてを映す水面のきらめきがある
ここに向かうまなざしをキープする
ノイズを払い 作為を払って
まっすぐに光の通る道を開けておこう
この視線が失われるとき
おれたちは〝外の光〟に蝕まれていく
世界に照らされるのではない
照らす光はこちらにある
母であるもの 希望であるものとして
ここからけっして離れず
いまここを豊かに耕す以外ない
死んだことば 砕け散ったことばを集めて
よみがえらせられる場所はここだけにある
大事なことがある
どんな世界の姿を確定する命題に出会っても
いつも新たな記述のスペースを開いておくこと
はじまりの地平を与え与えあう作法において