ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

【危機】:

2011-02-27 | photo
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2010 エージェントのゆくえ9

2011-02-21 | Weblog
     *9

「文脈形成や文脈把握の困難が極まると、世界の複雑性がダイレクトに個人を襲います」
「カオスが立ち現われる?」
「カオスあるいは了解不可能な世界の複雑性と肌を接することになります」
「何が起こるのですか?」
「自明性が破れます」
「当たり前のことが当たり前でなくなる?」
「突然、モニタリングが空転しはじめます」
「世界に安心して身を寄せることができなくなる」
「そうです」
「つまり、ここは何処ということですね」
「意味論的編集機構の作動には、一定のコスモロジーと結びついた座標が必要です」
「例えばサッカー選手にとってのピッチのようなものでしょうか?」
「はい。背景が書き換えられるとポジションが失われます」
「ピッチが消えたらプレーヤーはどこに向かって走ればいいかわからなくなる」
「システム存続の前提が壊れる恐れがあります」
「運動の組織も遷移も不可能になる」
「意味論的展開がいったん停止を余儀なくされます」
「それは不幸なことでしょうか?」
「単に記述のルール変更の転換点と捉えることもできます」
「しかし世界の複雑性に直面することになれば、当然ながら防衛機制が働く」
「既知の地平にとどまりたいという衝迫が襲うのはごく自然な成り行きです」
「一つのあり方としてオブセッシブになる」
「はい。不安や恐怖といった情動のアラームが速やかに作動します」
「新たな展開を切り開くにどうすればいいのでしょう?」
「限界値はありますが、システムには可塑性が備わっています」
「ということは、新たな背景や座標軸を見出す契機と捉えるべきだと?」
「もともと生命システムとは環境世界に創発するものです」
「そのものとみることができますね」
「そうです」
「カオス的環境のなかに自己創発するものとしての自覚」
「ええ。創発は環境の要素群に条件づけられていますが、創発の着地点は最終解ではありません」
「次々に変化していく可能性が残されている。それが可塑性だと」
「帰還すべき原郷があると同時に、いつもすでに新たなホームランドへ向かう途上にあります」
「それが進化といわれるものでしょうか?」
「進化への力動はつねに作動状態にあると考えることができます」
「いまこの瞬間においても?」
「ただ進化のベクトルは過去の全履歴を引き連れてもいます」
「ということは?」
「求心性と遠心性がせめぎあうなかから新たな企投が生まれます」
「つまり、現在にはすべての過去が畳み込まれ、未来も先取りされている?」
「そうした文脈の輻輳において創発のダイナミクスが生成します」
「いわゆるポジティブシンキングですか?」
「恣意性や決断性に重きを置く必要はありません」
「そう考えると気が楽になりますが…」

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2010 エージェントのゆくえ8

2011-02-17 | Weblog
「感性的な停滞とはどんなことでしょう?」
「センシング機能の阻害といいかえることができます」
「阻害されるとどうなります?」
「環境全体へのオープンネスが損なわれます」
「自閉的になるのですね」
「ええ。その結果、相互反照的な情報サイクルの回らなくなります」
「端的には入力が不足するということですね」
「はい。その影響はシステム全体に及びます」
「なぜそうしたことが起こるのでしょうか?」
「データ評価機能上の錯視、特定データの過剰評価あるいはシカトがあります」
「それはモニタリングの失敗と云えますか?」
「モニタリングの機能不全が招く編集機能の偏向です」
「しかしデータ受容は選択的であることは不可避です」
「不可避ですが、流動性を保持するためにオープンネスが担保される必要があります」
「情報の出入りにシステムは開かれていないといけない?」
「そうです。いわば情報梗塞が生じることで、全体のダイナミクスが失われます」
「血栓ができて血管が詰まる状態ですか?」
「はい」
「それはなぜでしょうか?」
「一種のオブセッションです。その結果、情報受容において排他性が高まります」
「強迫神経症的在り方が、感性的な停滞に結びつくわけですか?」
「感性的な停滞、麻痺、不感症。ひいては環境遮断、情報梗塞による内圧上昇に至ります」
「どんな理由から、そうした状況が生じるのでしょう?」
「情報受容の偏りは意味論的な歪みに由来します」
「意味論的な歪み?」
「はい。アルゴリズムの偏向やズレとも云えます」
「まちがった編集ルールの適用が起こるということですか?」
「いいかえると頭でっかちの状態です」
「背景には何があるのでしょうか?」
「世界を縮約してハンディに所有したいという欲望にかかわります」
「世界の単純化?」
「ええ。例えば真理概念の突出とそれに対する執着です」
「悪しきプラトン主義、真理主義でしょうか?」
「単純なビジョンを使って認知コストを低く抑えたいという動機がみえます」
「単なるわがままですか?」
「わがままであることは誰も避けられません」
「わがままが過ぎる?」
「抑制動機が十分に利かない状態です」
「傲岸、不遜、自我肥大、誇大妄想」
「別の云い方をすれば、環境世界の複雑さに対する怯え、フォビアとも云えます」
「世界の複雑さ?」


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2010 エージェントのゆくえ7

2011-02-12 | Weblog
「例えば一日の生活のなかで入力される情報量は膨大です」
「映像のビット数だけでもパソコンなら一日でパンクしそうな量ですね」
「しかし人間の脳がパンクすることはありません」
「なぜでしょうか?」
「一つにはハードディスクの容量の大きさです」
「はい」
「1000億のニューロンがネットワークを形成しているといわれます」
「いくら使っても摩耗することはないと聞いたことがあります」
「接合部であるシナプスの数は100兆を超えます」
「しかし入力情報すべてを等価に扱うわけにはいかない」
「当然そうです」
「だから大容量だけではダメですね」
「ランダムで偶発的な入力データは、選択や刈り込みや順位づけや階層化が必要です」
「交通整理ですね」
「ええ」
「それが意味論的フィルタリング?」
「その前提に、セルフと非セルフの境界設定があります」
「というと?」
「同じことですが、自己関与性によってデータの有意味性が変化するということです」
「自己関与性の強度がデータと環境を分節している」
「ええ。自己関与性も動的に遷移しますが、一方で過去から未来へ走る一貫したセルフ像が必要です」
「セルフの物語でしょうか」
「変化のなかにも遷移がトレースされつづける必要があります」
「同時に環境も変化します」
「まさしく。そこは相互反照的です」
「どういうことでしょう」
「入力によりセルフ像が確証され、出力が新たな環境像を告げるという循環があります」
「それが自動処理的に進行している」
「いわば質料を秩序づける形相的な機能と、質料が条件づける形相的機能という相互性の進行です」
「形相とは何でしょう?」
「情報を選択的にシステム上に記述するための形式です」
「そうした展開が自己生成的に展開するということになりますね?」
「はい」
「そこにtacit knowingという機制が働くわけですか?」
「正確にはその背景をつくっているものです」
「いわば基底的なルーティンワークですか?」
「記述形式はつねに一定ではありません。位相が変わることがあります」
「相転移?」
「いいかえると情報群の編成を変化させる新たな文脈の発見ということになります」
「創発とも云いますね」
「そこにtacit knowingといわれる作動があります」
「いつも起こるわけではありませんね」
「ええ」
「ところで理性とか悟性とか、人間の意識一般の役割はどうなりますか?」
「同伴者といえます」
「同伴の役割とは?」
「最大の役割は、ひとまず生命システムがよりよく生きるための条件を整えることと云えます」
「ではその条件とはどんなものでしょう?」
「内発的な生命活動の展開を促す歓喜やエロスの享受です」
「まったくわかりません」
「理性は生命システムに先回りしてナビゲートすることはできません」
「あくまでも同伴を許されるだけですか?」
「副次的産物であり、派生物と云えます」
「つまり主従関係は最初から決まっていると?」
「先行者に対して、よりよきサポーターであることが最大の仕事です」
「ということは?」
「全体の作動を祝福し、励まし、歓喜し、肯定すること以外にありません」
「いささか文学的ですね」
「端的にいえば、感性的な発火を停滞させないことです」
「というと、前のトータリティというものに関係しますか?」
「まさしく。意味論的展開には全円性が重要です」
「応援団に徹する以外ない?」
「理性や悟性は事後的に展開を追うことしかできません」
「生命的営みの最前線にはいない?」
「意識一般は事後的に全体の作動の帰結を告げられるだけです」
「あくまでもフォロワーということですか?」
「意識一般にとってシステムの作動はつねに先行的です」
「では、マイナス面はどうですか?」
「倒錯的なボス面ということでしょうか」
「倒錯?」
「我こそ世界とか。我が世界を解釈し、再構成するとか」
「なるほど」
「あるいは理に余るものはすべて捨象するということも起こります」
「いい気になって威張るなと…」
「サポーターがピッチになだれ込めばゲームはおしまいです」

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2010 エージェントのゆくえ6

2011-02-07 | Weblog
「意味とは何でしょう?」
「編集作業上の規則のようなものと考えることができます」
「アルゴリズム?」
「ええ。編集をナビゲートする一群のルール、あるいは制御のためのシンボルとも云えます」
「それが意味なのですか?」
「少し回り道しましょう」
「はい」
「生命とは静的な状態のことではなく、いわば途切れなき編集活動です」
「何を編集するのでしょう?」
「生存にまつわるすべてですが、多くはモジュール化されています」
「一種の自動処理ですか?」
「例えば免疫システムがあります。この防衛機構の編成と作動を意味論的なものが制御しています」
「身体レベルではどうですか?」
「人間は地球の重力場のなかにいますが、この環境への適応課題はとりあえず解決済みです」
「いわば無意識にやり遂げている?」
「通常、運動や体勢保持のための筋肉や骨格といった身体組織の編成は既知のプログラム内に収まります」
「あらためて学習するまでもない?」
「ただスポーツなどの特殊なコンテキストに入る場合、新たな制御規則が必要です」
「そのための意味論的な再編集が行われる?」
「準備作業としてエクササイズがあります」
「編集作業には自由度があるということですね?」
「はい。要素的にみれば学習項目は厖大ですが、身体システムは高度な適応ポテンシャルを示します」
「ただ生きているだけでもそれは継続している?」
「環境との対話は死ぬまで継続されます」
「そのつど意味が立ち上がるのですか?」
「そのとおりです」
「意味は環境から訪れるのでしょうか?」
「環境そのものではなく、人間の対象志向性と相関的に意味が立ち上がります」
「もう少し簡単に」
「一言で、環境と一種の同期を図るための関係式が必要ということです」
「それが意味論的展開ですか?」
「意味論に基づく編集です」
「アルゴリズムの更新ですね」
「つまり、一回的編集が間断なく連続していくことが生命的営みとも云えます」
「人間に限らない?」
「サルやイルカやタンポポやアメーバにも等しく意味は立ちあがります」
「環境にはほかの人間も含まれますね」
「ほかの人間との関係もそうです」
「編集項目としては?」
「知覚が捉えるものすべて。さらに、過去・未来の時制も現在に加担しています」
「どういうことでしょう?」
「運動を組織するためには、必然的に〝かつて・いまここ・その先〟という時空の構造が要請されます」
「運動を組み立てるにはマップが必要ということですね」
「ええ。カント的な思考の枠組みを決めるカテゴリーです」
「あくまでも仮想的なものですね」
「その意味で世界像はつねに確信や信念の構造に支えられたものです」
「そうした前提や基底が用意されないとシステムは起動できない?」
「はい。自己に関しても環境に関しても時空の厚みがなければ編集作業が成立しません」
「それは客観的なものではないと?」
「主体的な関与性においてはじめて浮上します」
「そうした諸々の総合としての現在がある?」
「そうです」
「というと意識的にはムリですね?」
「意味論的展開を意識的にすべてカバーすることは不可能です」

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2010 エージェントのゆくえ 5

2011-02-02 | Weblog
「差異創出のメカニズムが生命的な推進力を生みます」
「環境との接続関係、現実態と可能態、そしてモニタリングですか?」
「いいかえると認知する働きです」
「それは単に物理的な接続ではなく、超越的なものを含んだものですね」
「はい。力学系だけでは説明しきないものです」
「そこに差異創出のシステム的作動がある」
「認知はつねに差異に向かいます。いわば情報のハンティングとも云えます」
「つまり、認知作用がなければ差異も差異として出現しない?」
「ええ。主体的な構成力が作用しています」
「そこに意味論的なものがあるわけですね」
「差異創出と連動しながら意味論的メカニズムが働いています」
「意味論的解釈&展開マシンですか?」
「それがシステム全体を包摂していきます」
「編集的とも云えますね」
「まさに。認知作用により、変化の可能性が審議され、それが現在にフィードされる循環があります」
「それが生命的サイクルとして展開しつづける」
「はい」
「考えてみれば当たり前のことかもしれません」
「ええ。しかし作動の全貌はブラックボックスです」
「現象としては非線形的な展開ですね」
「日々相転移が起こっているとも云えます」
「創発とも云えますか?」
「はい」
「tacit knowing」
「そこにトータリティが関係しています」
「あくまでも機能的なトータリティですか?」
「各コンポーネントには自由度があります」
「ではシステムごとに独自の構成がある?」
「厳密には確認不能ですが、そうだと考えられます」
「その際、超越的なるものの機能は?」
「森羅万象のWHYとHOWとWHATに答えるサムシング、でしょうか」
「属性としては?」
「コズミックなマザーシップかもしれません」
「菩薩ですか?」
「救済という概念に係わるものです」
「裁定ということではありませんか?」
「どちらかといえば、それは二義的です」
「包摂性が先にくる?」
「第一には救済への希求があります」
「なぜでしょう?」
「それなしでは救われない現実があるということだと思います」
「どんな現実でしょうか?血塗られた苛酷な現実ですか?」
「必ずしも苛酷な日常だけではありません」
「事件性は少ない?」
「事件が引き金になりえますが、その基底には生存そのもののゆらぎがあります」
「根源的な不安や恐れがあるということですか?」
「なぜ在るかというより、在ること自体がミステリーだということです」
「生存そのものが要請するファントムですか?」
「聖性の概念とも係わります」
「システムの全体機能についてはどうですか?」
「自己組織化へ向けて創発しつづける未完の全体性ということになります」
「そこに意味論的な展開があるわけですか?」
「まさしく」
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