ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「抗エントロピーの機制」

2007-12-09 | 参照
(武田修三郎『エントロピーからの発想』1983年)より

生物というエントロピー減少系で保有されているエントロピーの法則に抗する情報は、この系が、発現時のまま、DNA分子の化学構造上のちがいとして、うけつがれてゆくものと、ニューロン接合をとおしてうけつがれてゆくものとにわけることができる。私は、前者を遺伝による継続とよび、本能と呼ぶ。そして、後者のものをすべて文化による継続とよび、知性と定義するのである。
すなわち、文化あるいは知性とは、脳によるエントロピーの法則に抗するうえで、役立ったものをさす。もちろん時々の脳内にできる接合状態のなかには、この条件にあてはまらないものが多い。また、これらに裏づけられない行動も多い。だが、ここでは、これら疑似接合、あるいは疑似文化は除外する。受精によりDNA分子中にできた疑似情報や、またそれにもとづく疑似形質の種類は無数にある。しかし、それらの存在は、いずれも早急に淘汰されるだけに、重複しなかったのである。

遺伝子の系では、新たな「力」が働き、それまでの均衡がくずれれば、生体を調整し、ふたたび均衡にゆきつこうとする。進化をとげるのである。人間の系においても、同様な関係はみられる。なにかの関係で、この系に新たな「力」が働き、それまでの均衡がくずれれば、新たな均衡にゆきつくまで、各種調整がおこなわれる。
ただし、今回のこの調整は、生体についておこなうわけではなく、人工空間についてである。そして生体の遺伝子コンピュータの助けをかりることはまれである。エントロピーの法則に抗する「答え」さがしは遺伝子コンピュータがやるのではなく、その補助機能だった脳がおこなう。これを体外進化(exosomatic evolution)とよび、遺伝子コンピュータが行う進化を区別する。
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