ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

おじさんに贈る  20091227

2010-02-25 | Weblog

十二月の月明かりの夜空は冷たく透きとおり、
今夜は途切れのないクリスタルだったから、
心はどんな感情も結ぶことができなかった。

刹那を刻みつづける情動の発火が先行して、
時制のコマンドは壊れ、数えきれない昼と夜が入り混じり、
呼ぶ声も応える声もどれが自分かわからなかった。

いつかあなたといた空があり、今夜もあなたといた。
もうすぐ消えようとしている灯を照らすように、
病室の外の月はこんなにも綺麗に輝いていた。

光が触れた情景が永遠に保たれるものなら、
空の彼方のどこか、遥かに遠ざかりながら、
あなたと僕はいつまでも同じ場所にいるのでしょうか。

真夏の太陽の下で、冷たい清流を泳ぎ回り、
焼けた岩肌に腹ばいになりながら、
川瀬に潜ったあなたの姿を追っていた。

あなたは隆々の腕っぷしを見せつけるように、
並んで泳ぐ二匹の鮎を一刺しにした銛を突き上げ、
こぼれるような笑顔を投げて寄こした。

青空を映した水面には白い雲が流れ、
澄み切った光と風のなかで少年の心は満たされ、
水辺には夢と区別されない黄金の時間が流れていた。

横たわったベッドでか細く息をつぎながら、
その意味を受け取る力なきものに対して、
振り絞るようにわずかにあなたは手を握り返した。

帰る場所も留まる場所も、送る場所も、
誰も教えてくれないさびしい時代のシグナルが、
月の光が包むこの街に巨大な不在を告げていた。

病室を出てから上流の懐かしい土地へ向かった。
真夜中の時間、そこにも待ち受けてくれる人たちがいた。

ヘッドライトが照らす暗闇の川べりの道を、
影が走り、風が渡り、木々がそよぎ、
月明かりの夜空が無明の現在に溶け合っていた。

永遠の遠ざかりの臨界に萌すものがあるのでしょうか。
心なるものの応えなき応答のいとなみにおいて、
冴えわたった月の輝きが何かに召喚を促していました。
コメント

「アフォードされる私」

2010-02-16 | photo
*「包囲光配列と見えの変化」&「知覚システム(環境知覚と自己知覚の相補性)」
コメント

「経験のパルス」&「侵入」

2010-02-14 | photo
コメント

「トゥクマンの月」(参)

2010-02-07 | 参照
(www.youtube.com/watch?v=2I1v8KatMf4)
コメント