ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「リフレクション、2008」 20080219

2023-02-28 | Weblog

 

 

 


「この間、駅で落とした財布を拾って届けてくれた人がいた」
「ポリスに?」
「そう。自分にしたら大金が入っていた」
「お礼したの?」
「名なしの権兵衛さん」
「どんな気分?」」
「何か休戦地帯にいるような」
「ありがとうって?」
「うん。伝えようがないけど」
「雨上がりの虹ですか」
「匿名の善意にはちょっと痺れる」
「でもバトルは続いている?」
「バトルというほど恰好いいものじゃないね」
「もちろん戦意高揚の大義はないね」
「大義もクソもないローカル極まりない局地戦」
「敵はみえないし、いないかもしれない」
「前線も銃後もない」
「ただ目的の見えない行軍が続いている」
「ただしバブリーな充足感もないことはない」
「しかし全体としては不全感に浸潤されている?」
「バトルの継続だけが目的化している感じ」
「なぜかね」
「一元化されたサバイバルゲームに従っているように見える」
「攻めるも守るもくろがねの♪」
「差異生産へ向けたフォーマットが構造化していることは確か」
「社会的なものというより存在論的なものかな」
「両方でしょ」
「淘汰の果てに最後に残ったのが現在の形式ですか」
「ある意味で本来的なあり方に適っているのかも」
「歴史的変奏はあるにしてもね」
「本来的であることが幸せかどうかは別にしてね」
「うん。ニンゲンはいつもその変奏の中にある」
「そしてバトルゲームは全領域に及んでいる」
「いまやバトルが分けた日常と非日常の区分はない」
「フラット化ね。別の言い方をすればノッペラボー化」
「寝ても覚めてもゲーム空間にいる」
「少なくとも古式に則ったバトルの様式は滅んだ」
「ヤアヤア我こそはと名乗っている間に寝首を掻かれる」
「しかも恣意的なルール変更も可能になっている」
「補完的な絶えざるマニュアル更新もある」
「有象無象の状況論も日々生産される」
「ゲームのノウハウだけが前景化しているとも言える」
「ノウハウの習得は生存にとって必須になっている」
「誰がルールを書き換えているかはわからないけど」
「勝手にね」
「勝手なのか合意なのか」
「合意形成の範域は限定的でしょ」
「うん。そこに誰と誰が含まれるかが決定的」
「こぼれた連中はゲームに参加できない」
「範域確定の基準は既得権益的共同性に基づいている」
「正当な異議申し立てもそこに集中する」
「だけど気が付けば前提はいつも踏み固められている」
「前提を疑ったら一歩も進めないというね」
「疑えよ」
「だって世界は空っぽなんだもの」
「でもないぜ」
「そう断言してみたい?」
「あるいはね」
「大人になれよという言い方もある」
「つまり前提を疑うなということね」
「大人になれとガキが言う」

「しかし適応課題はいつも具体的」
「課題は山積みだけど自分で選んだものではない」
「時代が条件つきで据え膳を用意してくれる」
「カローラかレクサスか」
「それ以前に明日にも餓死するという苛酷な状況もある」
「そして適応と適応の齟齬や対立や抗争が常態化している」
「それが事業課題という形で個人にまで下りてくる」
「もちろん調停のメカニズムは働く」
「ただし調停は差異の解消を目指していない?」
「むしろ拡大へ向かっているかも」
「そうかな」
「現象的にはフラット化だけど、その推進力はアンチ・フラット化が担っている」
「アンチ・フラットが自らの予期を裏切って、全体としてフラット化を帰結する?」
「フラット化を目指してゲームに参入しているわけじゃない」
「見えざるガッドハンドは最初から存在しない」
「そしてゲームの最終的帰結はわからない」
「わからないけど、差異の生産へ向かうダイナミクスが、結果的にスーパーなフラット世界を用意していることは確かかも」
「そうね」
「一方では旧式の権威群が崩壊していくという側面もある」
「それは悪いことじゃないでしょ」
「悪いことじゃないけど、新たな権威や権益も生まれている」
「ただフラット化は疑えない?」
「疑えないけど、それが悪い方向に転ぶのかいい方向に転ぶのか」
「誰も全体を見通せないけどね」
「時代の用意した条件の中でどう振る舞うのか」
「自前で考えろということか」
「手掛かりがないのに?」
「そうだね。ただ変な希望は持つなということくらいかな」

「フラットといっても情報や資源のわずかな偏差や誤差の中に個人は生きている」
「小さなプライドや矜持の拠りどころもそこにある」
「手に入る資源は限定付きだけど、それが死命を決したりする」
「実際には、数十億人がそれぞれ思考も行動もバラバラのステージを生きているはずでしょ」
「近代的な社会ではそこに個人がいることになっていた」
「インディヴィデュアル」
「バラバラだけど自発的な参入によって共同性が支えられるというね」
「フラット化がどんなに進展しても最後の最後にはそれが残る?」
「尊厳という言葉で語られてきたものね」
「だけど個人は息絶え絶えで喘いでいる」
「多重人格的にTPOに応じて切り刻まれて生きている」
「機能分化したゲーム盤上では代替可能な駒でもある」
「相対化の嵐に晒されるわけね」
「うん。個としての生存が足許から揺らいで解体の危機にある」
「目元パッチリ輪郭クッキリの個人というものが本当に存在できるかどうかは怪しいけどね」
「もちろん居るわけがない」
「けど居ることになっていた」
「それを結節点にして近代的思考が回ってきたのは事実」
「だからいまさら虚構だったと言って告発してもしょうがない」
「そう。依然として有効なツールでもあるからね」
「一方じゃ、相対化は強力な敵を討つための方法でもあった」
「それは確か。封建独裁家父長的な敵たちを討つ道具でもあった」
「別の権威を対置するのじゃなくて?」
「うん。対置するだけなら何もしないのと同じ」
「相対化の行き着く果てに、ことごとく虚構ということだけはわかった」
「まさしく時代はやっとここまでやって来た」
「あとは、めいめいの御計らいで勝手にやってよ」
「動物として?」

「残念ながらいわゆる動物じゃないらしい」
「脳ミソはあぶくのように回転する」
「動物以上人間未満とか」
「同じニンゲン、みなさん兄弟ということは一面としてある」
「もちろん同一性が幻想されるから、差異の認知や調停や誤差の修正も企画される」
「ただ本質的に言えば、個体に流れる時間をすべて同期することはできない」
「もちろん。だけど同期できるかのような思い込みは未だに生きられている」
「それがないと社会の首が回らない」
「虚構にしろ、同じ船に乗っているという前提はある」
「そこから価値の偏差をめぐる表出や活動が駆動する」
「差異の探索や拡大が日々の目標として据えられる」
「そして差異の発見や創出や取引や流通や僭称が、時代意識を焦点化していく」
「差異は即時的に領土化されて、新たな差異増産への旅へ向かう」
「それはマーケットを軸とした全体の専権事項ね」
「この運動は文明にとって何を蓄積するのかな?」
「厖大なアーカイブス」
「それが極限的には一般意思の形成とかに行き着く?」
「わからない。良くなるとも悪くなるとも、視点の取り方次第で何とでも言えるからね」
「文明化作用というか、文明の自意識次第?」
「ニンゲン全体の欲望に聞いてみるしかない」
「子供たちの将来といった問題を持ち出してみるとか?」
「それが個体の生存にとってナンボのものかということもある」
「実存にとっては一回性しかない」
「サロン的なコミュニケーションではおいしいネタかもしれないけどね」
「自分を超えたものに価値を見出せるなら別だけど、そうした大義や超越性にはバッテンを付ける方向に文明はアクセルを踏んできたということね」
「古代に回帰したいという一部アナクロ族もいるけど、結局、無駄な抵抗」
「脱魔術化には抗えない」
「魔術が生きられる位相も確実にあるけどさ」
「スーパーネイチャーとか」
「というより、魔術的全体領域がまずあって、例外的に文明的営みがなされる位相があると考えたほうが生産的かもしれない」
「どんな現象もその根をほじくれば、そういう領域が露出することは確かだね」
「ただゲームに一喜一憂している間は忘れることができる」
「ずっと忘れていられれば問題ない?」
「忘れないほうがいいかも」
「なぜ?」
「故郷は遠きにありて思うべし」
「どういうことかな?」
「故郷があったほうが豊かに生きられるかもしれないでしょ」

「だけどゲームが動き出すとき、すでにゲームへの信が成り立っている」
「前提はつねにすでに生きられている」
「これで行こうということですべてが始まっている」
「前提が前意識化されることでゲームは円滑に流れていくわけか」
「もちろん、反省的意識が生まれることもあれば無意識の不気味な湧出もあるけど」
「だけど、時代的承認を受けたゲームのリアリティは圧倒的」
「つまり、前提のインストールがあって、そこではじめてバトルゲームが開始されている」
「どこまでも根は同じ穴のムジナ同士」
「同じゲーム盤に乗っているから敵も敵として存在できる」
「前提を共有する者たちということね」
「同じムジナだから近親としての愛憎も際どいものになる」
「そこにリビドー的エネルギーの源泉がある」
「権力への意思とか」
「ということは、ニンゲンはニンゲンにとってのエネルギーの源泉になっている?」
「相互強化か相互弱体化か、弱肉強食の淘汰ゲームかわからないけど、生のバトルの基軸は血族的関係をめぐっている」
「たとえば同じプラットフォームに乗っかっているから殺戮も起こる」
「さしあたり、他者より不幸せじゃないことが幸福であるとか」
「比較級の幸いと比較級の不幸せ」
「絶対級はありえない?」
「もちろん死にさえ直結した限界状況はある」
「ただゲームは比較級のロジックで展開する」
「そこで打ち立てられた価値階梯が位置のエネルギーを生むわけか」
「相互依存、共依存の関係においてね」
「このダイナミクスの上で富や禍福の配分をめぐるバトルゲームが持続している」
「差異生産が位置のエネルギーを再生産する」
「位置エネルギーが差異生産の源泉をつくる」
「そしてゲームの帰結はすべてゲームへと還流する」
「循環している」
「閉鎖系なら熱的な死へ向かということになるけど」
「第二法則ですか」
「だけど今のところ終わりそうもない」
「外部的なエネルギーの注入があるのかもしれない」
「普遍経済学ですか」

「最初から平等じゃ駄目なのか」
「平等が現実になれば差異への志向が全面展開し始める」
「そうかな」
「例外的に自足した現状維持の文明とか文化もあるかもしれないけどね」
「しかしそこでは神サマの実在が信じられていて、それが全体を吊り支えている」
「余剰や欠損や矛盾や軋轢をすべてまとめて引き受けてくれるアマテラス神格」
「うん。ヤクザなニンゲンの魂をなだめるものが要るかもね」
「肥沃で穏やかな自然の恵みも大事だ」
「結局、絶対的な均衡状態じゃ生きられないように出来ているわけか」
「最初から力も資源も動機も偏在している」
「スタートラインがぜんぶちがう」
「危機意識の注入もある」
「感情的な煽りもある」
「情報の偏差も巨大だ」
「そうした時代的歴史的資源配置の総がかりが差異創出のバトルゲームを展開している」
「バトルの起源を問えば、最初に同一性の認知があることになるね」
「そう。差異生産の意味も価値もすべて共同的な認知に支えられている」
「単独では意味も価値の無効化することになる」
「海や山に向かってオレは凄いだろと単独で叫んでもオレがいるだけ」
「一方では、差異生産の過剰を回避すべく、融和や和平という幻想も生きている」
「その幻想がないと差異化にストップが掛からない。つまり破局が予感される?」
「同一性という前提が壊れたらゲームオーバーになることが薄々気付かれてもいる」
「ただ幻想は永遠に先送りされる」
「うん。先送りされることで幻想は幻想として機能する」
「そこにさらに位置のエネルギーが生まれて循環が加速する」
「ゲームは複雑でますます複雑さの度合いを高めている」
「本質的には単純だけどルールや技術マニュアルは複雑化している」
「掛け金は生あるいは死?」
「それが商品やサービス群に代替されている」
「生の拡張と死の回避か」
「その意味付けや価値付けを他者の存在が媒介する」
「生産力や消費力の差異の認知は他者がいないと成立しない」
「オレにはできる」
「オマエにはできない」
「しかしオマエがいないと、できるオレの存在証明も壊れる」
「富や価値に近いほどポイントが高いという中間査定が下される」
「富にもいろいろあるけど」
「有形無形すべてひっくるめてね」
「本当は目糞鼻糞だけど、中間決算では雲泥の差も出る」
「それだけかな」
「ゲームを支えるのが正当性とか正統性」
「ルールの逸脱や侵犯をしないということ?」
「メタレベルもある」
「共同体の大義とか、人類愛とか、神々への貢献とか?」
「何らかの普遍的な希望の原理を見出したいという願望もある」
「ゲーム漬けじゃあ息が詰まる」
「有限な人間同士だけじゃ普遍を構成できないし」
「そうね」
「やはり何のためのゲームなのかと究極的な問いも間歇的に訪れる」
「いろんな幻想が呼び出されるわけだ」
「ケレド目ニ見エヌコノ商品ニハ、人間ノ血ガ通ッテイマス」
「そう言いたい向きもある」
「人間ノ未来ヘノ切ナイ望ミガコメラレテイマス」
「一つの主観的あり方は示される」
「愛情ヲコメルコトハデキマス、生命ヲフキコムコトハデキマス」
「あるいは妄想ね」
「バトル空間で有効な言葉とは思えないね」
「バトルのリアリズムと兵隊の主観との乖離が、惨劇を準備したり拡大させたりもする」
「集めた金がどこかで地雷に化けるかもしれいない」
「集められた切ないお金が、どこかでドカンドカンとバクハツしているかもしれない」

「しかし、兵隊さんたちは密かにイノセントであると自ら信じていたいわけか」
「正統性や正当性。あるいは普遍的平和や豊かさといったものへの貢献ね」
「しかし正義や善意は惑星を一周すると悪夢を生産している可能性もある」
「リンク先の帰結は思惑の埒外にある」
「飢餓、エイズ、絶対的貧困、環境破壊。偽計や偽装、賄賂、脅迫、収奪、拷問、暗殺、テロ、ホロコースト、戦争、エスニッククレンジング」
「見通せないリンケージが張り巡らされた世界」
「自分のゲームがどこにつながっているか見渡せない」
「まったく」
「一昔の世界観からすれば、SF的現実が広がっている」
「生と死の取引をめぐって、電子マネーが惑星全体を光速で回転している」
「相場の駆け引き、ダンピングや吊り上げの工作合戦」
「ゲームのせめぎあいが逼迫すれば、競合は滅びたほうがいいともなる」
「感情的にはね」
「けど殲滅したら商売相手もマーケットも滅びるから、滅びない程度に生存は確保されなければならない」
「自らの優位性を保持したまま絶対的な平和が訪れれば素晴らしい」
「その過程ではある程度の犠牲も止むを得ない」
「首切りも首吊りもある」
「現実的には生死を賭したテロの応酬が展開することになる」
「マーケットをめぐるプチなテロリズムの応酬」
「たぶん」
「そのつもりがなくてもね」
「ただ兵隊さんは攻撃精神だけでは士気は揚がらない」
「当然、希望の原理もある」
「融和や平和実現への幻想も機能する」
「幸せになりたいと誰もが思っていると誰もが思っている」
「少なくとも仲間に向かっては幸あれと言っておきたい」
「仲間の範囲が大問題だけどね」
「しかし差異の階梯は一様ではない」
「複雑系」
「いきなり最適解を求めるのは不可能」
「もつれた利害の糸は解き難い、停戦合意は不可能。和平は永遠に訪れない」
「やはり足許を見る以外ない?」
「見えなくても見るしかないね」
「結局、希望することも絶望することも許されない?」
「絶望はいいんじゃないか。でも絶望できないでしょ」
「うん。プチでローカルで退屈な局地戦でとりあえず最善を尽くすことしかない?」
「ただ、時代のフロントラインはあるかも」

                           *

「何だろ?」
「いつの時代も生きられている最前線がある」
「?」
「意識の水面」
「現前意識?」
「うん。等しく生きられている始原の始発点」
「現象学的視線が示す原理かな」
「信も不信もすべてがそこに生成し展開している」
「そして意識と意識が出会って世界(客観)が生まれる?」
「うん。生まれたものが第一の現実として生きられている」
「この構造というか、からくり、原理ね」

 

 

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「静かなとき」 20220227

2023-02-27 | Weblog

 

 

 

 わたしたちは夜の時に語りあった
 わたしたちは語り合ふことで感じたいと願ってゐた
 わたしたちが伴ってきた
 不幸やそれが重なりあって形成してゐるしずかなときを!

       ──吉本隆明「日時計篇」上巻・281

      *

超えないほうがいい
どこにも表示されない
ボーダーラインがある

だれもがとか
みんながとか

いわないほうがいい
触れると消えていくもの

ひとり ひとり こわれやすく
たしかめることのできない
静かに生きられている固有時がある

そう思ったほうがいい
踏み入ってはならない地平がある

そして、もう一つ
覚えておいたほうがいい

よそよそしさ
なれなれしさ
礼節、親しみ
もてなし、配慮
わかること
わからないこと

おとずれる表象のすべて
どれにも似ていない

かたちがほどかれ
時のあわいに誂えられる

逸脱でも侵犯でもない
すべての境界が溶けてゆく

超えることが許された関係のときがある


(あとから振り返って泣かないように)

 

 

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「記述の作法」 20230226

2023-02-26 | Weblog

 

 

 

日常のふるまい、感性、思考、関係態度が分岐する
世界記述(世界認識)のふたつの作法がある


有神論的──

記述の絶対解(虚数解)を先行的に定め、演繹的に世界の姿を査定し、
裁断し、当為と命令(must be)によって埋めていく。

無神論的──

最適解(実数解)をそのつど帰納的に産出しながら、試し、鍛え上げるように、
世界の可能態(can be)を探索するように記述を更新していく。

 

自己強化的と自己更新的、あるいは
閉鎖系と開放系ともいいかえることができる

 

 

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「暴力 Gewalt」20230225

2023-02-25 | 参照

 

 

 

──中井久夫『徴候・記憶・外傷』311・312

行動というものには「一にして全」という性格がある。……
いったん双方の剣が抜き放たれると別のモードに移る。

DVにおいても、暴力は脳/精神の低い水準で統一感を取り戻してくれる。
この統一感は、しかし、その時かぎりであり、
それも始まりの時にもっとも高く、次第に減る。戦争の高揚感は一カ月で消える。
暴力は、終えた後に自己評価向上がない。
真の満足がないものである。したがって暴力は嗜癖化する。

 

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「連結点」20230224

2023-02-24 | Weblog

 

 

 

どんな感情も凍てつかせる
吹きさらしの生の位相がある

身をゆだねると世界は枯れていく

そのことを知ることではじめて
生きる理由が明らかになる

そうではなく生きていたい

そうではなく生きられるように
土を起こし、堆肥を混ぜ、種を蒔き、水を引く

光を注ぐべき地平が失われないように

なんどでも、みずからに
言い聞かせておくことがある

 

 

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「展開本質」 20230224

2023-02-24 | Weblog

 

 

 

歩行──不均衡状態の連続的修正と展開

A man walking is never in balance 
but always correcting for imbalance.(Bateson)

実存──自己記述と世界記述の連続的二重作動と展開

You live in your description of reality.(Bateson)

      *

実存と歩行──
ふたつは直喩で結ぶことができる

共通本質──〝自明性の破れ〟を作動因とする
矛盾、対立、ノイズ、ランダムネスとの遭遇と資源化

展開に立ちはだかるように現われるものひとつひとつ
すべてを作動の〝糧〟へと位相変換して展開する創発性

このことを端的に示すことば──
Creative thoght must always contain a randam component.(Bateson)

ゆらぎ、惑い、つねに記述の確定を許さないように変化する
自明性に埋まり完結することを拒むように
未踏の展開域へ、世界とみずからを、その関係を描き直し進ませる

共通の主題を取り出すことができる──
世界との関係、その編み替え可能性(ありうる)の保持

(関係世界における相互的承認において)

展開本質の洞察から導かれた理念のことばがある、「自由」
展開本質を脅かす一切を排除する理念のことばがある、「人権」

 

 

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「痛み」20230223

2023-02-23 | Weblog

 

 

 

激痛──制御不能な暴走する身体

このとき、意識とからだは二極に分裂して
からだは対峙すべき〝他者〟として現われる

外に開いた視線は向きを変え、世界は遠景へ去り
意識のフォーカスは不可避的に内なる他者へ向かう

耐えがたい一撃によって定常性を保つ統覚が壊れ
そして、世界の姿かたちが変形していく

                      *

歯の痛みはどんなに苦しくても
隣の人間は笑っていたりする
小さな日常のバカ話のように、いじり、いじられる
他人事であればじぶんもそうしている

当事者であるときそんな余裕は吹き飛ぶ

わかるわけねえのに、やさしいふりするんじゃねえ
そうつぶやきたくなる、そんなブラックな気分がある

身体的、心理的、さまざまな痛みがあるとしても
痛みが指定する〝心の状態〟はどれも似ているかもしれない

からだと対峙することがすべてになるほどの疼痛、激痛
「痛みが消えるなら世界が滅びたっていい」
どす黒い感情がどんどん高まってくる、そんなことがある

情動優位の状況のなかで、平常心、健全さ、まともさ
理性の陣地は縮小して確保することが困難になる

激しい痛みが間欠的に訪れ、それがルーティーン化する
すると、そんな心的な陣地の配置がだんだんと定常化していく

いつのまにか、自己も世界も完全に変形している

そしてもとのかたちに戻れなくなる
そんなことがことがある気がする

「だから?」

平時の気分(そんなものがあるとして)
それを大事にしておかないとおかしなことになる

世界の姿かたちが歪んだまま放置され
平時と戦時が入り混じって〝正気〟が見失われる
そんなことが少なからず起こる、起こってきたと思う

 

 

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「絵を描く」 20211202

2023-02-22 | Weblog

 

 


ことばが追いつめ規定する正誤、真偽、善悪、美醜の先行を許さない
ことばの使用と切り離された思考が動ている場所がある
そして、それを知ることばは礼節に満ちているように思う

     *

絵の仕上がり具合をみずからモニターして、
構図、タッチ、色、全体のバランス、モチーフのつかみ方そのものについて、
なんらかの調整をほどこすフリースペースがある。心の中にね。
おそらくここに絵を描くことの歓び(エロス)の中心がある。
「生きることもって?」
そう言いたいところかな。
「スペースね」
空間的なスペースではなく、心的スペース。ことばのしばりをほどく空域がある。
「でも決めごとと直列したまま生きる、それが日常の定常状態かな」
そんな余裕はないと言いたい?
「絵を描くのとはちがうでしょ」
直列を外してスペースを開くことはできる。小学生もそうして絵を描いている。
「絵描きのつもりになって?」
うん。自分だけの絵、イメージ、表現を探索するスペースがある。
「それを使えって?」
このスペースは人間の心にセットされている。たっぷり使おう。
「よくわからん」
たとえば目の前に完成途中の絵がある、それをどうもてなすか。
そこにどう筆を入れるか。この作業スペースはつねにスタンバイしてる。
そこにだけに許された創発の位相、生のエロスが沸き立つ場所があると思う。
「現実や状況がそれを許さない」
現実や状況に規定されて生きることは避けられない。だから絵を描く。
「絵を描く、音楽を聴く、芸術を享受する、とか?」
うん。おそらく、この空域が自由と呼ばれるものの本質に該当する。
「そうかな」
この空域が脅かされ枯渇するるとき、世界は荒廃の道に入る。そう思わないか。

 

 

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「世界視線」 20230221

2023-02-21 | Weblog

 

 

射抜くように飛び交っている
射抜かれるからだと心

あちこちで血しぶきが上がる

矢じりが突き刺さったまま
血だらけで街を歩いている

射抜き射抜かれる
射抜かれ射抜き返す

手当てされざる負傷者の群れ
射手であり瀕死者である相互性

おそれ、おびえ、警戒、脅し、威嚇
攻撃と防衛のアマルガムがつくる世界秩序

(滅びの種を宿した関係構造)

射抜かれるまえに射抜け?
そうではないやり方がある

視線を生む獰猛さは抹消できない
ゲノムに刻印された太古のコードは書き換えられない

だからコードの用法を変換する

獰猛な視線の方角を変える
獰猛なエネルギーの対象を変更する

どうやって?

結論だけいえばこうなる
この世界をまるごと射抜く対象とする

 

 

 

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「世界記述(知)──欲望関心相関性」20230221

2023-02-21 | 参照

 

 

 You live in your description of reality. (GB)
                

──ヘーゲル(廣松・加藤編訳『ヘーゲル・セレクション』)

知が変化するときには実は対象それ自身も意識にとって変化する。
というのは、現存した知は本質的にいって対象についての一つの知だったのであり、
対象は当の知に本質的に属していた以上、知[の変化]とともに
対象も別の対象に成るからである。

こうして、さきには意識にとって即自[自体存在]であったものが即自ではないということ、
より正確に言えば、それは当の意識にとってのみ即自であったにすぎないということ、
このことに意識が気付くようになる。

このような次第で、意識が自分の知が対象に照応していないということを
対象に即して見出す際には、対象それ自身も持続しない。
つまり、或る尺度で測られるはずのものが検査に合格しない場合には、
検査のこの尺度が変化するのである。
検査は、単に知の検査であるのみでなく、当の尺度の検査でもあるわけである。

 

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「ゲバルトの本質」 20230220

2023-02-20 | Weblog

 

 


  幼い時、教師に「お前はかくかくの理由でこうしたのだ」と
  決めつけられた時から、この裂け目感覚は始まっている。……
 「成人言語水準への強制的なひっぱりあげ」……

     ──中井久夫「踏み越えについて」『徴候・記憶・外傷』
   
       *

最終解──経験に先立ってめがけるべき解を立てる
すると思考の展開ルートは一本道として確定される

この構図において、どれほど高く舞い上がっても
思考は行き止まりの限界点をもつことになる

天上に鎮座した価値と意味の極相、最終解の諸形態
理想、理念、ロマン、真理、神、正義、善、全体、エトセトラ

地上の存在を値踏みし、査定し、ランキングする
思考とふるまいを制御する絶対化したレファレンス群

(蓋をされる展開本質)

アプリオリに構築され前提された世界認識の玉座
あらゆる経験に先行する生の意味の供給源(歴史的には神)

この玉座の周縁に生成する有象無象のゲバルト成分

思考、ふるまい、態度、すべてを監視対象として
正当化された権威と強制力が蓄積されてスタンバイしていく

 

 

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「信の構造」 20230219

2023-02-19 | Weblog

 

 

 


  「理解」はついに「信」におよばない。    
    (中井久夫『看護のための精神医学』)


固定観念──心に宿るウイルス、寄生体(中井久夫)

しかしそれを一つの病いの症状として捉えるには前提がある
第一に、症状と対比される先行的な一種の健常のイメージがなければならない
つまり、寄生体との共生関係を脱したすえに獲得されるよりよき生のいとなみ

このイメージの生成と了解を前提としてはじめて
なんらかの〝治癒〟のプロセスへ向かう意志が生まれる

ある生のかたち(共生関係)を解体して別のかたちへ向かう意志
この意志は理解(知)が届かない基底の「信」にささえられて生成する

そして「信」の変化は、本質的に、どんな外部の知による介入も及ばない
おそらく実存の内側で生きられる以外ない体験としてのみ現象する

 

 

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「Art」 20230218

2023-02-18 | Weblog

 

 

 

用材として構成されるシニフィアンの諸形式
音、ことば、かたち、色、線、リズム、旋律

この一回的構成に導かれて連続的な〝発火〟が現象する
ソレにただ遅れてついて行くことしかできない

理由は汲み尽くせない
しかし疑いようのない発火を生きている

仮象のイデアにリンクしている
(疑問の余地ないリアリティ)

リンクした心がみずからに告げる
かたちを与えることができない感情があることを

ことばで囲み、かたちを与えることで失われてしまう
経験の息の根を止めてしまうことになることを

 

 

 

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「結晶作用」 20211018

2023-02-17 | Weblog

                                                                      Keith Jarrett # Sun Bear Concerts (1976) Osaka # part 1 - YouTube

 

 

 

まなざしが交わり起爆する
どんなことばもかけ引きもない

予備動作はいつのまにか完了している

考えるまでもないホットライン
ふたりだけの回路が開かれる

ロマン、感性、思考、肉体、経験、欲望
すべて織り合わされた多元方程式

根源的な解法がただ一つの〝解〟を告げる

砂糖は一瞬に溶けて全項が連結し
世界は相転移して中心に配置される

ノイズと乱流に満ちた地平は臨界点を超え
世界との引きかえも厭わない結晶作用が現象する

 

 

 

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「否定性──改善要求」 20230216

2023-02-16 | Weblog

 

 

 

 ある日、風がとても強くて空を飛ぶことができないので、
〝空気がなくなってしまえばいい〟と愚かなカラスは考えました。


「強い風が吹くとき、鳥は空を飛ぶことができません」
「うん」
「風が吹くのは空気があるからだ。空気がなければいいのにな、と愚かなカラスは考えます」
「ヘンな奴だね」
「ヘンなのはニンゲンも負けていません。ほかの人間さえいなければ、自由なのにと考えたりします」
「好きなことできるでしょ」
「そう思うでしょ。だけどちがいます」
「どうして」
「自由でありたいと願う感情は、ほかの人たちといることから生まれます」
「そうかな」
「もしほかの人たちがいなければ、自由を求める感情は生まれません」
「どうして?」
「本当は一緒にいたいから」
「イヤなのに一緒にいたいって?」
「イヤっていうのは、ちがうように一緒にいたいということの言い換えだと思います」
「どんなふうに?」
「風が強すぎるとカラスは空を飛べない」
「?」
「ただ風が止んでほしいだけなのに、愚かな心がそう言わせるのだと思います」
「ほんとにバカだな」
「ぼくたちの心にもカラスが住んでいます」
「そうかな」
「心はときどき暴走します。あるいは、しばしば、頻繁に」
「カラスもニンゲンも?」
「そんな心が集まって戦争を始めたりします」
「どうしたらいいの」
「風が強い日は羽を休めてのんびりしましょう」
「あわてないで?」
「はい。天気のよい日のために、したいこと、できることをいろいろ想像しながらね」

 

 

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