最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

瀬戸際の資本主義

2020年04月27日 15時01分48秒 | 新聞コラム
北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
4月20日掲載のタイトルは「瀬戸際の資本主義」。



 航空機という高速で大量の輸送手段が普及していなければ、新型コロナウイルスは中国・武漢の風土病として留まり、これほど早くに世界各地へは広がらなかったはずだ。
 日本では新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査の抑制が問題とされてきた。日本感染症学会は重症者の命を守ることを最優先とするため、軽症者には検査を推奨せず自宅待機を促した。しかし、検査数を絞ることで、自宅待機中に容態が急変し亡くなる事例も発生。さらに検査数の抑制は市中感染を見逃して、院内感染を招いてきた。
 医療崩壊を防ぐポイントは厳しい外出制限と徹底した検査・隔離にあるとWHO事務局長上級顧問の渋谷健司医師は指摘する。渋谷さんなど3人の医師が国内のPCR検査態勢充実を求める提言書を発表した。内容は検査の適用は一般の医療機関の医師の判断に任せる、検査を新たな場所で実施、発熱外来の新設、軽症者はホテルなどで治療の4項目で、この提言には医師600人以上が賛同している。
 世界の感染者は200万人を超えた。日本と欧米は資本主義のありようが問われている。感染者を規制することなく飛行機に乗せた中国の指導者たいは、意外とも言えるような現在の欧米諸国の状況に自信を取り戻しているのかもしれない。瀬戸際の資本主義を守るためには個人の強い覚悟と国の大きな支援が必要不可欠だ。(メディカルはこだて発行人・編集人)

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「糖尿病」の名称を付けた道南初のクリニックが開院

2020年04月27日 12時27分37秒 | メディカルはこだて
第73号のトピックスニュースは「4月20日市内港町の函館港町ビル3階に「糖尿病」の名称を付けた道南初のクリニックが開院」。

4月20日市内港町1丁目の函館港町ビル3階に「たかさわ糖尿病内科クリニック」が開院する。院長の高澤宏文医師は糖尿病の専門医で、現在は函館新都市病院(原口浩一院長)の内科医として糖尿病を中心に治療を担当してきた。新しく開院するクリニックは、道南初の「糖尿病」の名称を付けた糖尿病及び生活習慣病の専門医療機関として誕生する。
高澤院長は常に白衣を着ない。それは「医者は上から目線ではだめ」という理由からだ。「患者さんの気持ちに少しでも近づくためにも白衣は必要ありません」。診察中に90秒間は患者に話をさせるのも高澤流だ。
「糖尿病治療の第一歩は患者さんの本当の生活を知ること。家で飼っている犬の名前や漁師であれば船の名前など、患者さんの略歴などのプロファイルはすべて記憶しています。まずは話をよく聞くこと。それで患者さんは心を開いてくれます。患者さんに気づいてもらうことも重要で、僕は患者さんの鏡にもなっています」。仕事の悩みや上司の愚痴など診察室は人生相談の場でもある。「病気を診るのではなく、患者さんを1人の人間として診ています」。


「病気を診るのではなく、患者さんを1人の
人間として診ています」と話す高澤宏文院長。

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モチベーション向上のため、仕事中も笑顔を絶やさない

2020年04月27日 12時26分32秒 | メディカルはこだて
第73号のトピックスニュースは「モチベーション向上のため、仕事中も笑顔を絶やさない」。

国病院機構函館病院(加藤元嗣院長)の経営企画室長として、昨年4月1日に就任したのが国立病院機構弘前病院から転勤してきた本田ヒトミさんだ。青森市生まれの本田さんは地元の高校を卒業後、青森県庁の臨時職員などを務め、国家公務員の試験に合格、国立病院機構に入職した。
国立病院機構の職員は転勤が多いが、本田さんも例外ではない。青森県内を中心に宮城県や岩手県の8カ所の勤務地を経験。9番目の転勤先は初めて津軽海峡を超えた函館病院となった。経営企画室長としての本田さんの仕事は「病院経営における増患対策(患者を増やす)で、市民向けの講演会の企画を立てることや新聞・雑誌等の媒体を用いた対外的なPR活動も担当しています。また、病院の経営分析のほか医療情報管理部の副室長として診療情報管理士、システムエンジニア、ドクターズクラーク(医師事務作業補助者)のまとめ役としてアドバイスを行ったり、病院全体の診療情報管理も担当しています」。
本田さんはいつも笑顔が印象的だ。「仕事中も笑顔を絶やさないように心がけています。それは学生時代からで、笑顔でいるとモチベーションが上がるというのが一番の理由です」。


「転勤先の各地域で知り合った多くの人たちが
自分の財産です」と話す本田ヒトミさん。

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障害を持つ人の職業生活による自立を図るサポート

2020年04月27日 12時25分07秒 | メディカルはこだて
第73号のトピックスニュースは「障害を持つ人の職業生活による自立を図るサポート」。

知的や身体、精神、および発達障害等を持っている人が職業生活による自立を図ることを目的に、一人ひとりに合ったプランを一緒に考え、就労に関する相談を受けながら継続したサポートを行っているのが、道南しょうがい者就業・生活支援センター「すてっぷ」(函館市石川町)だ。
 すてっぷは「おしまコロニー」と呼ばれてきた社会福祉法人侑愛会(北斗市追分)によって、平成15年に開設された。侑愛会の出発点は昭和28年に誕生した七重浜保育園(現七重浜こども園)。創設者で前理事長の大場茂俊さんが園長室で発達の遅れのある子の個別指導を通じ、その子の成長を考えて児童施設を作った。児童は成長し、成人施設や高齢者施設、就労後にはグループホームとして発展。さらに地域展開として、福祉就労施設や早期療育施設、相談機関につながっていて、現在では80以上の施設を運営している。
ジョブコーチ支援事業からスタートした「すてっぷ」は平成17年に厚労省と道から「障害者就労・生活支援センター」の事業委託を受けた。すてっぷの業務の特徴は障害の種類を問わず、どのような障害でも相談を受けること。そして本人や家族、企業の双方からの相談を受けていることにある。すてっぷ課長で主任就業支援員の小笠原一郎さんは「本人への支援は就労に役立つ情報提供、職場見学や体験実習をしたり、面接の練習などの就職準備支援。就職後も現場に慣れるための調整等の定着支援や働くことに伴う生活面の支援を行っています」と話す。


道南しょうがい者就業・生活支援センター「すてっぷ」で、
就労に関する相談を受けている小笠原一郎さん。

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病院薬剤師に聞くポリファーマシーとフォーミュラリー

2020年04月27日 07時29分29秒 | メディカルはこだて
第73号の特集は「病院薬剤師に聞くポリファーマシーとフォーミュラリー」。

高齢者は高血圧や糖尿病など、複数の慢性疾患が併発し、その病状は加齢とともに重症化する傾向にあることから服用する薬が多くなる。このような多剤服用患者のうち有害事象がすでに起こっていたり、起きやすい状態となっていることを「ポリファーマーシー」(多剤併用)と呼んでいる。
また、調剤医療費を抑えるための取り組みとして注目されているのが「フォーミュラリー」だ。フォーミュラリーとは医療機関において医学的妥当性や経済性などを踏まえて作成する医薬品の使用方針を意味するものとして用いられている。
ポリファーマーシーの取り組みを開始したり、フォーミュラリーを導入する病院は増加傾向にある。病院薬剤師を取材した。


国立病院機構函館病院(加藤元嗣院長)では入院患者の持参薬を用い多剤併用の状況について調査を行った。調査を担当した薬剤部製剤主任の鈴木秀峰さんに話を聞いた。鈴木さんは「不適切な服用による薬剤治療機会の喪失や特に高齢者における有害事象の発現の要因としてポリファーマシーが社会的問題となっていますが、この問題のあるポリファーマシーに医療者、特に薬剤師が介入し改善していくことが求められています」と話す。そこで同病院ではポリファーマシーへ積極的に介入するため、入院患者の処方薬剤の使用状況について調査を行った。 ポリファーマシーの患者は79人で、使用薬剤数中央値は8剤だった。処方施設数の平均は1・6施設。41・4%の患者が複数施設からの処方を受けていて、施設数が増えるのに従い使用薬剤平均値・ポリファーマシー率とも増加する傾向にあった。お薬手帳の使用による使用薬剤数の減少とポリファ
ーマシー率の改善はみられなかった。お薬手帳の持参率は68・1%。全国平均の使用率97・1%に比べ低かった。


国立病院機構函館病院薬剤部製剤主任の鈴木秀峰さん。
同病院には8人の薬剤師が在籍している。


40兆円を突破した医療費は高齢化を背景に2040年度まで増加し続けると予想されている。膨張する医療費とどう向き合うのか。医療費を見直す取り組みが欠かせないが、調剤医療費を抑えるための取り組みとして注目されているのが「フォーミュラリー」だ。フォーミュラリーとは医療機関において医学的妥当性や経済性などを踏まえて作成する医薬品の使用方針を意味するものとして用いられている。市立函館病院(森下清文院長)は昨年、院内フォーミュラリーを作成し、医薬品に関する院内の使用推奨基準を設けて実施している。同病院薬局薬局長の長浜谷耕司さんは「フォーミュラリーは院内における標準薬物治療を推進するために作成しました。フォーミュラリーを推進することによって、重症例や難治症例に対しての有効や新薬を使用できる環境を維持するため、既存治療の費用対効果を重視することに繋がるものです」と話す。


市立函館病院薬局薬局長の長浜谷耕司さん。
同病院には26人の薬剤師が在籍している。


患者が入院する際の薬剤師による持参薬のチェックは後発医薬品の使用促進等により、その重要性は高くなっている。函館五稜郭病院(中田智明病院長)薬剤科長で精神科専門薬剤師の佐野知子さんは「患者さんが入院予約で来院した際、手術や出血を伴う検査で入院する場合には、安全に手術や検査が行われるよう抗血小板薬、抗凝固薬服用の有無を確認し、休薬指導を行っています」と話す。
同病院では昨年9月から院外処方箋に臨床検査値とがん化学療法レジメン名(薬剤の投与量、投与時間、投与方法、投与順、投与日などが時系列的に記載されたもの)の印字を行っている。処方箋の左半分は従来の処方箋で、右半分が薬の副作用確認や薬の量を調整する際に必要な検査値などが記されている。2010年に岐阜大学医学部附属病院が外来処方箋に検査値を印字して以来、全国の病院で院外処方箋への検査値の記載やレジメン名の記載する取り組みが進められ、薬物療法の適正化・安全性が向上するとの報告が多数されているが、道南圏では実施している病院がなかった。


函館五稜郭病院薬剤科長の佐野知子さん。
「保険薬局への検査値情報提供で、有効で安全な薬物療法を提供します」。


函館新都市病院(原口浩一院長)の薬剤科科長で医薬品情報管理室室長の紺野昌洋さんは「高齢者は内臓疾患以外にも整形外科領域の疾患、さらには不眠症なども併発しているケースが多いです」と話す。
 「入院する際には薬剤師が持参薬を確認しています。複数の疾患に対しては、それぞれの診療科の担当医師が個別に治療方針を決定していることから、相加的に薬剤が増えるケースが多いことはわかっていました。そこで入院患者の服用薬剤数を調べることにしました」。調査は2014年10月から15年9月までの1年間。「調査の対象者は1282人になりました。その結果、定期的に6剤以上を服用している、いわゆるポリファーマシー(多剤併用)状態にある患者さんは約57%にも上ることが明らかになりました。平均剤数は6・6種類です。ポリファーマシーは併用薬剤数がいくつ以上であればという明確な定義はありませんが、一般には4〜6剤以上を示す場合が多いです」。


函館新都市病院薬剤科科長の紺野昌洋さん。
「患者さんの自宅での服薬(治療)の実態を知ることが大切です」。


函館渡辺病院(三上昭廣理事長)の薬剤部は患者への適切で安全な薬物療法の遂行を目的に、調剤業務では電子カルテ内処方支援や調剤監査システムを用いた調剤、がん化学療法および中心静脈栄養に用いる注射薬の無菌調製などを実施。病棟業務(薬剤師の病棟担当制)を通して、医師や看護師、作業療法士、理学療法士、栄養士、精神保健福祉士、社会福祉
士など様々な職種とのカンファレンスに参加し、連携を強化して退院支援も活発に行っている。薬剤部長の原田雅史さんは「ポリファーマシー(多剤併用)については、一般科と精神科では患者さんの状況は異なっています」と話す。
「一般科の高齢の患者さんはいくつもの疾患を同時に罹患するケースが多いことから、複数の医療機関・診療科を掛け持ちで受診し、その結果としてポリファーマシーになることが少なくありません。薬剤が多くなると、飲み忘れがあ
ったり、薬物有害事象発生の頻度も高くなります。入院時の持参薬は薬剤師がすべて確認していますが、6剤以上を服用していてポリファーマシー状態にある患者さんはいます。多剤服用によって有害事象が懸念される場合には、主治医と相談して薬の種類を減らすこともあります」。


函館渡辺病院薬剤部長の原田雅史さん。
同病院には14人の薬剤師が在籍している。

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