万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ワクチン接種年齢拡大はワクチン警戒派を増やす?

2021年06月08日 12時45分27秒 | 日本政治

 先日、6月6日より、京都府の伊根町にあって12歳以上の児童や生徒にも接種対象を広げ、実際に高校生も接種したとする報道がありました。同報道は年齢の接種拡大の動きをアピールする形で報じられたのですが、翌日になると、伊根町の接種コールセンターに電話が殺到したそうです。どのような内容の電話なのかと申しますと、応援とは程遠く、’子供へのワクチン接種はやめるべき’といった苦情の電話であったそうです。

 

 3回線あるコールセンターの電話はパンクしたために30分後には停止したそうですが、その日に寄せられた苦情件数が97件とされます。終日、コールセンターの電話が通じていればその数はさらに増したことでしょう。苦情に関する報道も、「人殺し」や「殺すぞ」といった脅迫まがいの悪質なものもあったとして、どちらかと申しますとワクチン反対の声に批判的なのですが、それでも、同報道は、ワクチン接種に対して国民の反応が歓迎一色ではない現実を示していると言えましょう。

 

 治験中の遺伝子ワクチンである今般のワクチンに対する主たる懸念は、中長期的な健康被害のリスクが不明な点にあります。一方、即時的な副反応については若い世代ほど強いとする報告がありますので、リスク・ゼロではなく積極的に推奨はできないものの、新型コロナウイル感染症にあって重症化率も死亡率も高い高齢世代にあってメリットが一定の認められるワクチンと言えましょう(この点、各年齢層を含む医療従事者の方々が最もつらい立場にあるかもしれない…)。このため、高齢者を対象とした接種に際しましてはそれ程国民からの強い反対の声が上がるということはなかったのかもしれません(当事者意識が薄い…)。しかしながら、今般、10代を含めて65歳以下の一般の人々へと接種対象を広げるとなりますと、国民のワクチン接種に対する感情も変化してゆく可能性もあるように思えます。

 

 何故ならば、ワクチン接種に対してメリットよりもデメリットを感じる人々が増えるからです。この傾向は、年齢が下がるに比例して強まるかもしれません。大規模接種会場の設置ではワクチン接種率がそれ程には上がらないと見た政府は、目下、他の接種ルートの開拓に奔走しています。職場や学校などが主たるターゲットなのですが、ネット上の記事やコメントなどを読みますと、組織内における暗黙の同調圧力を懸念する声に溢れています。本人としては接種時の副反応のみならず、将来的な健康被害をも考慮して接種を見送りたいにもかかわらず、上部や周囲から組織的な圧力がかかって打たざるを得ない状況に追い込まれてしまいかねないというのです。

 

 職場のみならず、今月後半からは大学を会場とした集団接種も開始される予定であり、接種対象は大学生にも広がっています。関連性は確認されていないものの、日本国内におけるワクチン接種後の死亡例には20代の方も含まれていますし、アメリカやイスラエルではファイザー製ワクチンと青年層の心筋炎との関連性が指摘されています。その一方で、若者層の新型コロナウイルス感染症による死亡率は0%ですので、ワクチン接種によるリスクの方がメリットよりも上回ると言わざるを得ないのです。将来的にはどのような健康被害が発生するのか分からないのですから、次世代を生み育てる若者層へのワクチン接種は、他の世代よりも慎重であるべきことは当然のことと言えましょう。

 

 政府を司令塔とする接種を促す同調圧力も、接種対象者の拡大と共に職場や大学、そして、高校や中学校など社会全体へと広がり、全国民を圧迫しようとするのでしょうが、この圧力に対して、国民は、どのように対応するのでしょうか。ワクチン接種派の人々は、元より反対ではないのですから、むしろ勝ち馬に乗った気分で同調圧力を加える側となる人も少なくないのかもしれません。そこで注目されるのは、サイレント・マジョリティーとなるワクチン警戒派の人々の対応です。

 

 第一に注目されるのは、組織の責任者の判断です。同調圧力とは、主として上部からの圧力とされるのですが、この’上部’の人々は、自らもワクチン接種を望んでいるのでしょうか。国民の多数がワクチン・リスクに既に気が付いているにもかかわらず、これらの人々が全くマイナス情報を持たないとは考えられません。このことから、仮に、組織の上部がリスクに気が付き、ワクチン警戒派に転じた場合には、ワクチン接種に対して否定的となると共に、組織内の同調圧力を取り除こうとするかもしれません。もっとも、このケースは、’上部’が独自に判断できる状況にある必要があり、’上部の上部’としての政府、あるいは、何らかの組織の要請や指令を受けている場合には、’上部’もまた、他の人々同様に’隠れワクチン警戒派’の立場とならざるを得なくなります。因みに、不可解なことに、官公庁にあって職場接種が始まったというお話は聞きませんし、政治家の多くもワクチンを率先して打とうとはしていません(加藤官房長官も河野新型コロナウイルスワクチン接種担当大臣も自らは接種するつもりはないとも…)。

 

 第二に想定されますのは、ワクチン接種の対象となったワクチン警戒派による接種拒絶です。上部や周囲からの同調圧力が如何に強まろうとも、自らの決断を貫くというものです。この展開ですと、ワクチン警戒派は肩身の狭い思いをする、あるいは、公然と差別を受けるリスクもあるのですが、現実にはワクチン警戒派がサイレント・マジョリティーから普通の多数派となりますと、形勢が逆転する可能性もあります。ワクチン・リスクは誰もが否定できない医科学的にも歴然とした事実ですので、自ずとワクチン警戒派の主張が多くの人々の理解を得ることとなり、ワクチン接種が少数派に留まることとなりましょう(この状態では、「ワクチン・パスポート」は多数者排除という作用が生じ、逆効果となりかねない…)。

 

 そして第三に若年層の接種において予測されますのが、親御さん達による大反対です。冒頭で述べました伊根町における苦情殺到は、十代の子供が接種したことによるものです。この事例からしますと、大学をはじめ高等学校や中学校、さらには、それ以下の年代の子供たちが接種するとなりますと、将来における健康被害を案じる親御さんたちは、必死になって子供たちの未来と命を護ろうとすることでしょう。因みに、真偽は不明なのですが、ワクチン・ビジネスの総元締めとも目されているビル・ゲイツ氏は、自らの子供たちにはワクチンを打たせないそうです。そして、大学生であれば、学生が自らが情報を集めて判断し、接種を見送ることもあり得ましょう。

 

 以上に述べてきましたように、ワクチン接種は、対象年齢が拡大するほどに、国民からの警戒や抵抗も強くなることも予測されます。国民の判断により、政府の思惑とは逆の方向に向かう可能性も否定はできないように思えるのです。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« オリンピックとワクチン接種... | トップ | 陰謀を陰謀論の世界から引き... »
最新の画像もっと見る

日本政治」カテゴリの最新記事