万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

独裁国家の体制崩壊の条件-政治思想と情報の自由化

2014年12月23日 16時04分10秒 | 国際経済
北朝鮮でネット接続不能=サイバー攻撃の可能性も―米監視会社(時事通信) - goo ニュース
 サイバー攻撃の実行犯として断定された北朝鮮。今度は、国内でネットが遮断されるという事態が発生していると報じられております。

 先日の記事でも触れたのですが、中国では、改革開放路線を選択したことで経済分野では自由化が進展しながら、政治分野においては、逆に弾圧と独裁傾向が強まるという現象が起きております。理論的には、経済的な豊かさが個人の権利意識を高め、民主化への道を歩むことになるはずなのですが、現実は反対の方向に向かっております。経済成長による利権の巨大化が、逆に、共産党の権力に対する独占欲を強めたことも一因なのですが、政治に対する考え方や政治関連の情報に対する統制や遮断が、主たる原因なのではないかと推測されます。東欧革命も、アラブの春も、経済的開放が引き起こしたわけではありません。人とは、これまでと違った考え方に出会った時、およそ3つの反応を示すものです。第1の反応とは、吟味もせずに頭から拒絶するものであり、反射的な拒絶反応です。これとは逆に、新たな考え方を無条件に受け入れるのが、第2の全面的な受容反応です。第3の反応とは、新しい考え方を精査し、倫理観や価値観などに照らして善い部分は受け入れ、悪い部分は取り入れないとする取捨選択であり、部分的な受容反応として理解できます。一般的な国家では、政府も国民も第3の反応が主流なのですが、中国といった独裁国家の政府は、政治的な考え方に対しては第1の方針を貫いており、閉鎖の状態では、政治的な分野における変化は期待できません。しかも、外部からの思想や情報の流入を厳しく統制することで、国民に対しても第3の作業を行う自由も許していないのですから、自由化、民主化、並びに、分権化のハードルはさらに高くなります。経済分野における開放だけでは、体制転換には力不足なのです。独裁国家を体制崩壊に導くためには、国民が妨害を受けることなく情報にアクセスし、政治について自由に語り合える状況こそ必要とされています。

 今日、留学や観光旅行などで、中国人が海外に出国する機会は飛躍的に増加しましたが、海外での見聞や経験は、中国人の考え方を変えてゆくのでしょうか。大多数の人々が、常識的に考えて善性を見出した価値や考え方は、自然に受容されるものなのです。そして、強権によって情報統制しなければ維持できない体制とは、”価値間競争”、あるいは、”体制間競争”において、既に敗北を認めたようなものなのではないかと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2014-12-23 19:51:23
こんばんは。共産主義については、羊飼いと牧場をイメージするのが良いのかもしれません。
共産党という牧場主がいて共産主義という塀の中にいるのが国民、秘密警察という羊飼いが管理する社会。
塀の外の自由な広い世界を知っているものは粛清し、塀の中が世界の全てだと教えこむ。
広くて自由な世界を知る者は党の人間だけ。
その中から、善良そうな羊を選び世界に送り出し工作員として内側から体制を壊しながら牧場を拡大してゆく。
国民には閉ざされた共産主義という世界だけを教育し、党は羊の生み出した富を独占する。
東欧から始まった東側諸国・ソ連の崩壊は、共産主義という牧場で一部の人間だけが享受できた特権が、自由主義世界では一般の国民も手にできる・・共産主義の欺瞞に気づいた人々が真実を求めたからでは無いでしょうか。
支那は共産主義と言うよりも、歴史的に見れば世界は支那の皇帝の持ち物であり、シルクロードを通って来る商人が支那の皇帝に拝謁に訪れ、西洋の物産を持ってくる・・支那の皇帝からすれば朝貢物だったのです。
シルクロードを通って来る商人は支那の皇帝に対する朝貢使というのが支那の感覚です。
世界は支那の皇帝のものだから、誰がどこに行こうとお構いなし・・・
中国人の教育は、子供に鋏と包丁の使い方を仕込むことでした。
散髪屋・仕立屋・料理人・・・大きな資本がなくても、狭い場所でもすぐに商売が始められる。
そうして外国に出掛け商売で成功した者が、同じ中国人に出資をし商売を始めさせ・・こうして出来上がったのが華僑のネットワークです。
中華思想は共産主義と違い放置主義に近いものです。
支那の皇帝が世界の中心であり、膝元に住むものは税を徴収される・・
中華社会では資本主義と共産主義の対立はなく、儲けたければ好きなだけ儲ければいいのであり、極貧の中で死んでゆく者が居たとしても同情はしない。
此の違いが共産主義と中華思想の大きな相違点なのです。
東側の体制が崩壊しても中国だが生き残ったのは、この相違点があるからです。
華僑は資本主義の典型であり、中共も共産主義を標榜しながらも現実には中共幹部の独占的な資本主義体制。
だからこそ、中国では70年代(日中国交回復がなされた後は我が国のテレビ番組が放送され、人民は素朴に日本の芸能人に憧れ日本に行きたいと願ったのです)
反日教育が出て来たのは天安門事件以降であり、天安門事件で国際的に孤立化していた中国を、天皇陛下御訪中で国際的な孤立から救ったのですが、人民の怒りが中共に向かう事を恐れ、反日教育が始まったのです。
中国が民主化運動を暴力で潰す理由は、富の独占と易姓革命で滅んだ歴代王朝の末路を知っているからでしょう。
もしも民主化してしまえば、中共の不正蓄財や不正行為までも徹底的に糾弾され、中共幹部が蓄えた莫大な財産を巡って奪い合いが始まる・・
組織犯罪集団が分前を巡って血で血を洗う抗争を繰り広げる。
これと同じことです。
このようなマフィア体質を改めない限りは中国は民主化出来ないという事です。
中国を民主化するならば、幾つかの小国に分割し中共幹部が持っている莫大な資産は国際的な機関の管理下に置き、遅れているインフラの整備や民度を高める為の教育に使われなければなりません。
ちなみに「陸海空及び、その他の戦力は、これを保持しない」・・これを忠実に守っているのは中国ですよ。
人民解放軍は、中国国軍ではなく、中共の私兵ですから。
中国という国家は軍隊を保持していない・・・これも中華のパラドックスの一つです。
最近気になっているのが、我が国は、何時から吟味もせず無条件に外国のやり方を取り入れようとするようになったのでしょう・・それも数十年遅れで、外国では結論が出ている事でさえ無条件に取り入れようとする・・
この部分は反省するべきでしょう。

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ねむ太さま (kuranishi masako)
2014-12-23 21:40:02
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 時々、共産革命のモデルは、中国ではなかったのか、と疑うことがあります。中国では、遠くは黄巾の乱から近くは太平天国の乱まで、宗教集団が反乱勢力として王朝を揺るがしております。そして、歴代王朝もまた、官僚主義的な中央集権国家という特徴からしますと、どこか、共産国家と似通っております。中国が、ソ連邦のように崩壊しなかったのは、その歴史的な親和性にあるのかもしれません。そうであるからこそ、近代思想や法輪功に対して、自らを脅かすものとして神経を尖らせているのでしょう。しかしながら、この永遠のループから、そろそろ、中国は脱するべきなのではないでしょうか。前近代的な思考は、中国のみならず、全世界にとりましても迷惑この上なく、人類発展の阻害要因でもあります。
 ところで、最近の日本国は、おっしゃる通り、かつてのように慎重な取捨選択をせず、外国で失敗した政策を後追いをするという愚を犯しております。中国とは逆の意味で、我が国もまた問題を抱えているようです…。
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