北朝鮮追加制裁見送り 米、首脳会談へ配慮
昨日5月28日の日経新聞朝刊に、「米朝攻防-焦点を聞く」の第一話として、ブッシュ政権下で東アジア・太平洋担当の国務次官補を務めたクリストファー・ヒル氏へのインタヴュー記事が掲載されておりました。氏は、「段階的な非核化」が現実的とする自身の見解を語っておりますが、些か無責任ではないかと思うのです。
同氏は、2005年9月に開催された第4回六か国協議において北朝鮮の核兵器放棄を盛り込んだ共同声明案の取りまとめ役として評価されています。同共同声明では、(1)朝鮮半島の南北による検証可能な非核化、(2)米朝国交正常化、並びに、日朝国交正常化、(3)対北エネルギー支援、(4)朝鮮半島の恒久的平和体制の構築、(5)上記事項の段階的実施、(6)第6回六か国協議の開催時期が謳われています。
ところが、米朝国交正常化までのプロセスを‘工程表’に加えた「段階的な非核化」案は、それ以前において既に北朝鮮側から提案されておりした。また、事実を見れば、上記の共同声明案を作成して提案したのは中国であり、アメリカ側が譲歩したことで成立したと言っても過言ではないのです。六か国協議は、その後、秘かに核・ミサイル開発を継続させた北朝鮮がアメリカの制裁強化を理由に離脱することで事実上の‘散会’となりましたが、ヒル氏曰く、この失敗の原因は、徹底した検証が不可能であったことにあるそうです。つまり、今般の危機も、IAEAによる核放棄の検証作業さえ完璧に実行できさえすれば、CVIDの要件を満たす「完全な非核化」よりも「段階的な非核化」の方が現実的であると主張しているのです。
そもそも、2005年当時における北朝鮮に対する認識の甘さが今日の事態を招いているのですから、ヒル氏の見解には首を傾げざるを得ません。仮に、この時、CVIDの要求をアメリカが貫いていれば、おそらく、同共同声明は成立していなかったことでしょう。そして、この時のアメリカの安易な対北、否、対中妥協こそ、北朝鮮の背信的、かつ、違法な核・ミサイル開発を許したとも言えるのです。上述したように、同氏は、今般の危機の打開策としてIAEAによる確実な検証の実行を提案しておりますが(これを実現するには、北朝鮮は、全域を対象とした無条件査察と核放棄の確認を受け入れる必要がある…)、この作業の完了こそCVIDに基づく「完全な非核化」に他ならず、同検証が未達成の段階で北朝鮮に見返りを与えることは、北朝鮮に猶予期間を与えた過去の失敗の繰り返しとなります。ヒル氏が検証作業未完の状態での対北経済支援の実施を勧めているならば、それは、事実上の北朝鮮核保有容認論となりかねないのです。
「段階的な非核化」案とは中国案への回帰の薦めであり、同記事には“中国との対話重要“と銘打ってあるように、ヒル氏は、親中派の立場にあるのでしょう。そして、同氏に限らず、「段階的な非核化」を認めるよう主張する諸国や論者は、その結果に対して責任を負おうとしないという意味において、無責任であるように思えます(この点は、イラン核合意も同様…)。仮に、将来的に北朝鮮が核・ミサイル開発を再開し、その脅威が以前にも増した場合には、この方法を是認した者にも連帯責任が生じるはずです。つまり、同方式を支持する以上、自らが軍事制裁の役割を買って出てでも強制的に北朝鮮に合意を遵守させる覚悟が必要となるはずなのです。こうした覚悟なくして安易に譲歩した結果が今日の危機であるのですから、北朝鮮の核放棄という政策目標の達成ではなく、逃げ道を残した合意の成立を‘成果’と錯覚した妥協には、今度こそ、終止符を打つべきではないかと思うのです。
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昨日5月28日の日経新聞朝刊に、「米朝攻防-焦点を聞く」の第一話として、ブッシュ政権下で東アジア・太平洋担当の国務次官補を務めたクリストファー・ヒル氏へのインタヴュー記事が掲載されておりました。氏は、「段階的な非核化」が現実的とする自身の見解を語っておりますが、些か無責任ではないかと思うのです。
同氏は、2005年9月に開催された第4回六か国協議において北朝鮮の核兵器放棄を盛り込んだ共同声明案の取りまとめ役として評価されています。同共同声明では、(1)朝鮮半島の南北による検証可能な非核化、(2)米朝国交正常化、並びに、日朝国交正常化、(3)対北エネルギー支援、(4)朝鮮半島の恒久的平和体制の構築、(5)上記事項の段階的実施、(6)第6回六か国協議の開催時期が謳われています。
ところが、米朝国交正常化までのプロセスを‘工程表’に加えた「段階的な非核化」案は、それ以前において既に北朝鮮側から提案されておりした。また、事実を見れば、上記の共同声明案を作成して提案したのは中国であり、アメリカ側が譲歩したことで成立したと言っても過言ではないのです。六か国協議は、その後、秘かに核・ミサイル開発を継続させた北朝鮮がアメリカの制裁強化を理由に離脱することで事実上の‘散会’となりましたが、ヒル氏曰く、この失敗の原因は、徹底した検証が不可能であったことにあるそうです。つまり、今般の危機も、IAEAによる核放棄の検証作業さえ完璧に実行できさえすれば、CVIDの要件を満たす「完全な非核化」よりも「段階的な非核化」の方が現実的であると主張しているのです。
そもそも、2005年当時における北朝鮮に対する認識の甘さが今日の事態を招いているのですから、ヒル氏の見解には首を傾げざるを得ません。仮に、この時、CVIDの要求をアメリカが貫いていれば、おそらく、同共同声明は成立していなかったことでしょう。そして、この時のアメリカの安易な対北、否、対中妥協こそ、北朝鮮の背信的、かつ、違法な核・ミサイル開発を許したとも言えるのです。上述したように、同氏は、今般の危機の打開策としてIAEAによる確実な検証の実行を提案しておりますが(これを実現するには、北朝鮮は、全域を対象とした無条件査察と核放棄の確認を受け入れる必要がある…)、この作業の完了こそCVIDに基づく「完全な非核化」に他ならず、同検証が未達成の段階で北朝鮮に見返りを与えることは、北朝鮮に猶予期間を与えた過去の失敗の繰り返しとなります。ヒル氏が検証作業未完の状態での対北経済支援の実施を勧めているならば、それは、事実上の北朝鮮核保有容認論となりかねないのです。
「段階的な非核化」案とは中国案への回帰の薦めであり、同記事には“中国との対話重要“と銘打ってあるように、ヒル氏は、親中派の立場にあるのでしょう。そして、同氏に限らず、「段階的な非核化」を認めるよう主張する諸国や論者は、その結果に対して責任を負おうとしないという意味において、無責任であるように思えます(この点は、イラン核合意も同様…)。仮に、将来的に北朝鮮が核・ミサイル開発を再開し、その脅威が以前にも増した場合には、この方法を是認した者にも連帯責任が生じるはずです。つまり、同方式を支持する以上、自らが軍事制裁の役割を買って出てでも強制的に北朝鮮に合意を遵守させる覚悟が必要となるはずなのです。こうした覚悟なくして安易に譲歩した結果が今日の危機であるのですから、北朝鮮の核放棄という政策目標の達成ではなく、逃げ道を残した合意の成立を‘成果’と錯覚した妥協には、今度こそ、終止符を打つべきではないかと思うのです。
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いつもご指導ありがとうございます。
私は、ヒル氏は六カ国協議の瓦解の責任を自らに帰し、すぐにでも贖罪すべきだと考えます。
現在の国際法秩序の崩壊と極東の安寧の脅威の原因の一端は、猟官運動に功を焦ったヒル氏にあると言っても過言ではないと思います。
そして、今回の危機で北の段階的核放棄が失敗した場合、世界は確実にカタストロフィに向かうと読んだ方が正解で、この場合はもはや誰も責任の取り様がありません。
今は直ちに対北交渉の「過去を清算し」最善の選択肢を国際社会が採るべきと考えます。
今後ともご指導のほどよろしくお願いします。
ヒル氏の見解には、多くの人々が唖然とさせられたものと思います。米朝首脳会談の行方は、国際秩序、即ち、人類の運命にも深くかかわることとなりますので、今度ばかりは、アメリカも、国家の威信にかけて過去の失敗を繰り返してはならないのではないでしょうか。トランプ大統領もこの点に関しては、よく理解しているのではないかと思います。
その際は世界中の国や報道機関及び軍縮関係のNGOを同行させることを許可する。なお、その状況のリアルタイム放送を飲む。(アメリカに北朝鮮の妨害により核放棄を邪魔されたから攻撃するという理由を与えない意味で北朝鮮にも利益がある。)
完全な放棄を前提とした段階的放棄という前提は曲げない。その履行拒否や妨害は武力行使されても仕方ないと北朝鮮が認める。(妨害された時点でアメリカの開戦理由を世界中が是認する意味でアメリカに利益がある。)
それくらいの条件を飲まなくては、核放棄を段階的には認められません。
北朝鮮全域を対象とした米軍による破棄作業の妨害なき実施、及び、妨害時の軍事制裁という条件であれば、段階的核放棄もあり得ないことではないようにも思えるのですが、問題となりますのは、その間、制裁解除で息を吹き返した北朝鮮が、米国本土まで届くICBMと核弾頭を密かに保有してしまうことではないかと思います。”時間稼ぎ”の可能性がある限り、やはり、「段階的非核化」を認めるのは危ういのではないでしょうか…。
完了時点での、部分的制裁の解除と全土査察と大量破壊兵器の撤去及び破壊(北朝鮮に確実に一ヶ月で得られる果実は与える。果実を与えることで暴発する理由を封じる。)
完了後の制裁の完全解除。
定期的査察。
アメリカ認定の顕在脅威の排除と隠されたものの排除とを分けるならば、可能性はある。
北朝鮮は簡単には発見できないような場所に、核兵器や核関連の資材等を隠しているとする説があります。北朝鮮という国は信頼性がありませんので、自己申告を信じるのは危険ではないかと考えております。また、そもそも、何故、北朝鮮は、「段階的非核化」にここまで拘るのでしょうか。その心理を分析しますに、おそらく、それが、核の温存を意味しているからなのでしょう。となりますと、この方式を認めることは、アメリカにとりましては、外交的敗北となりますので、やはり、慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。
査察はアメリカの気のすむまでやって、問題があれば罰するという感じです。
アメリカが北朝鮮全土の調査権限を持ち、IAEA等の立会いの下で、北朝鮮が隠し持つことがないよう、徹底的な核破壊を実施する、というのであれば、アメリカ側も納得するかもしれないと思います。