先日、女子プロレスラーであり、「テラスハウス」という番組の出演者もであった木村花さんが自ら命を絶ったと報じられております。番組で放映された態度を不快と感じた視聴者からSNSにて大量の誹謗中傷の投稿が寄せられたため、木村さんはいたく傷つき、その心痛に耐えられなかったと伝わります。まことに痛ましい出来事であり、政治サイドでは、これを機にSNSにおける中傷を規制する法律の制定に向けて準備が進められているそうです。
木村さんの死は悼むべきことなのですが、SNSの法規制にまで事態が拡大するともなりますと、言論の自由にも抵触しかねませんので、ここは慎重に考えてみる必要があるように思えます。何故ならば、プロフェッショナルな芸能界の人々と不特定多数の視聴者との関係は、社会一般の個々人間の関係とは異なっているからです。
芸能界の人々は、番組への出演や興行によって生計を立てているプロの職業人です。木村さんもまた多くの人々にショーに足を運んでもらい、「テラスハウス」の視聴者を含め、たくさんのファンに支えられて女子プロレスラーとして活躍してきたことでしょう。こうした職業では、芸能人と視聴者との関係は1対多となり、前者は後者なくして職業として成り立たないのです。このため、通常は知名度が高いほどに出演料や回数などにおいてプラスに働くのですが、何らかのトラブルが発生しますと、視聴者からのリアクションは、当事者となる芸能人一人に向けて一斉に襲い掛かることとなります。
また、報道によりますと、木村さんは‘ヒール役’、すなわち、‘悪役’であり、自分自身とは異なる役回りを演じていたそうです。この点は、俳優さんや女優さんも同じなのですが、台本がある場合には、キャスティングされた役に成りきってそれを忠実に演じることこそ‘プロ’ということになります。‘悪役’のイメージが広く定着していたとすれば、木村さんが、視聴者からバッシングを受けやすい下地があったことは想像に難くありません。
しかも、芸能人には、公私の区別が曖昧なところがあります。一般の職業であるならば、職場を離れれば自らの私的空間に戻ることができます。ところが、芸能人の場合には、しばしばスキャンダルが報じられて世間を騒がせるように、法的な意味では‘公人’ではないのも拘わらず、私生活にまでが人々の関心の的となり、公に報道されることが少なくないのです。また、逆に、芸能人その人の人格や個性、あるいは、才能を以ってファンとなる人もおります(もっとも、真に‘素’であるのかは分からないのですが…)。この側面にも、他の職業との違いを見出せるのであり、木村さんは常時ストレスにさらされ、精神的に追い詰められやすい状況に置かれていたとも推測されるのです。
そして、木村さんのケースでは、「テラスハウス」というテレビ番組の内容が、上記の諸点をさらに悪化させる方向に作用させたようにも思われます。「テラスハウス」とは、‘台本なし’を看板として、シェアハウスで暮らす若者たちの日常生活を公開するという内容であったのですから(実際には、番組の編集者による演出や指導が加えられているらしい…)。これでは、プロとしての‘悪役’と木村さん個人の人格とが融合してしまい、前者としての行動が後者の命を奪ってしまうという悲劇を招いてしまった、といっても過言ではありません。すなわち、このような番組では、視聴者は、木村さんの悪役としての虚偽の‘性格’を、木村さん自身の生来の性格として認識し、木村さん自身を批判・非難することになるのです。
このように考えますと、芸能人と視聴者との間の関係において発生した特別なケースであり、この事件を一般化してSNS規制にまで踏み込むことは過剰対応のように思えます。再発を防止する方法があるとすれば、それは、むしろ、芸能界、あるいは、メディアと視聴者との関係を双方ともによく理解し、でき得る限り芸能人の公私を分けると共に、双方とも責任の所在や批判すべき対象を慎重に見極める必要があるとも言えましょう(もっとも、芸能人の側にも私生活の公開を職業上の活動の一部とする向きもあるし、個人としての発言もあり得る…)。
木村さんも、職業として割り切れば自ら命を絶つこともなかったことでしょうし、視聴者も本気で憤慨し、誹謗中傷を浴びせることもなかったことでしょう。そして、「テラスハウス」が‘ドラマ’の一種であるならば、視聴者からの批判や苦情は、出演者ではなく番組を作成したテレビ局が全面的に引き受けるべきであったかもしれません。何れにしましても、こうした問題に対しては、国民一般を対象とした法規制の強化という方法は適さないように思えるのです。
言論の自由もちゃんとした中産階級でなければ達成できない。家を所有し、会社が倒産しても解雇されても、それなりに食べていける階級でなければできない話だ。
木の芽時には頭がおかしくなる人が多いものだ。宝塚のボーガン男みたいに。女子プロレスラーを死に追い込んだのはボーガン男みたいな連中だろう。木の芽時で狂っているのだから、それなりの罰則が必要。