万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

キメラ化する世界が暴く欺瞞-共産主義と新自由主義の一体化

2016年03月21日 10時06分02秒 | 国際政治
米ホテル、キューバ進出=革命以来
 キューバとの国交回復を受けて、早くもアメリカの大手ホテルチェーンのスターウッド・ホテルズ&リゾーツ・ワールドワイドは、政府の承認を得たとしてキューバへの進出を発表しました。キューバもまた、中国と同様、政治分野では共産主義体制を維持する一方で、経済分野においては自由化路線に舵を切ったようです。

 中国やキューバの行動は、二つの政治思想の欺瞞を露わにしています。その一つは、勿論、共産主義です。共産主義の理想とは、平等な労働者による統治権力の独占であり、共産主義体制では、労働者が経済を全面的にコントロールするが故に、不平等や搾取はあり得ないはずでした。しかしながら、今日の共産主義国家は、改革開放路線を選択したことで、共産党員が特権階級化したソ連邦を遥かに凌ぐ富の集中が起きています。富の源泉とは、即ち、政府高官による市場の経済的利権の独占にあるのですから。この現状を見れば、誰もが、共産主義を支持するのは馬鹿らしくなるはずです。

 その一方で、新自由主義の源泉とされるリベラリズムもまた、共産主義国家の経済的躍進によって、その理想を打ち砕かれています。「経済発展は、民主化を促し、そして普遍的価値の共有をもたらす」とするリベラリズムの直線的な移行経路は、共産主義一党独裁国にあっては、経済が発展すればずる程に、何としても利権独占状態を維持したい政治の側の強い抵抗によってその道が閉ざされてしまうことを、全く予期しなかったからです。この結果、経済のグローバル化は、共産主義国家の支配者層のみを潤し、国民弾圧の温床ともなる政治的独裁を支えるのみならず、その悪しき体質をも裏口から海外へと”輸出”することにもなりました。昨今、非共産主義諸国にも蔓延してきた政府による政治腐敗を伴う中国寄りの政策や”プロ市民”による共産主義活動はその典型とも言えます。

 この理想とは真逆とも言える展開は、これらの思想の理論に重大な誤りが含まれていたからなのでしょう。それとも、陰謀論が主張するように、最初から共産主義と新自由主義は裏で手を結んでいる”仲間”であり、”人類家畜化”のために、左右に分かれて巧妙に人類を追い込できたのでしょうか(経済自由主義は保守派とも結合…)。

 キューバへの進出を決定したスターウッド・ホテルズ&リゾーツ・ワールドワイドは、先日、マリオット・インターナショナルからの買収案を白紙に戻しましたが、その理由は、中国金融大手・安邦保険集団が率いる企業連合から巨額の買収提案を受けたからなそうです。”赤い龍”は、アメリカ企業をも飲み込む勢いです。今日、共産主義と新自由主義のキメラに支配される世界が忍び寄っているとしますと、人類は、大いに警戒しなければならないと思うのです。

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