万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中ロ協調-ロシアはベトナムを見捨てるのか?

2014年05月20日 17時03分52秒 | アジア
中露きょうから軍事演習 両首脳視察、蜜月アピール(産経新聞) - goo ニュース
 中国が、南シナ海をめぐる対立を機にベトナムに対して恐喝まがいの武力行使を示唆する中、ロシアのプーチン大統領は上海を訪問し、中ロ協調をアピールしております。尖閣諸島周辺海域の東シナ海でも共同軍事演習も実施するそうですが、中国の軍事的台頭を前に、アジアは、第二次世界大戦後、最大の危機を迎えつつあります。

 南シナ海での石油採掘めぐる対立が先鋭化する以前においては、中国は、ASEANの反中連合化を予防するためにか、ベトナムに対しては比較的友好的な態度で接してきました。しかしながら、この場に及んでは対中方針も一変し、今では、ベトナムは、中国に対して一歩も引かない強行姿勢を示しています。こうした中国の度重なる軍事的な威嚇を背景に、5月10日に開催されたASEAN首脳会議では、加盟国間で温度差はあるものの、対中批判を軸とした結束の強化が図られましたのです。フィリピンとの共闘を含むさらなる対中結束が視野に入るところですが、ベトナムは、軍事面においてはロシアと密接な関係にあることがネックとして指摘されてきました。ところが、危機にあるベトナムを無視するかのように、ロシアのプーチン大統領は中国を訪問しているのです。ロシア大統領の中国訪問は、ベトナムに対するメッセージでもあるのかもしれません。中国が、軍事力でベトナムの屈服させた場合、ロシアはそれを黙認するという…。それとも、プーチン大統領は、習主席に対して、ベトナムへの軍事的威嚇を止めるように牽制したのでしょうか。

 暴力を信奉する国が弱小国を護るはずもなく、ロシアもまたベトナムを見捨て、軍事大国に成長した中国を協力相手として選択した公算は高いのではないかと思うのです。欧米諸国と対立を深めているウクライナ情勢を考慮すれば、中国との協力優先はあり得ることです。その一方で、日本国政府のみならず、アメリカ政府もまた中国を批判し、ベトナムに対する支持を表明しております。中国の脅威を背景に、ベトナム戦争以来の東南アジアの構図が大きく転換する可能性もあるのではないでしょうか。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2014-05-20 22:17:51
こんばんは。ロシアが最も危惧する事。
一億数千万の中国人がシベリアへ入り込む事です。
旧満州と接する所に住んでいるロシア人の数は千葉県の人口と殆ど変わりません。
そこに一億数千万の中国人が住み着けば、シベリアは合法的に乗っ取られてしまいます。
ロシアとしては、我が国の資本によるシベリア開発を期待しています。
シベリアを開発するとなれば、住宅やインフラの整備などの雇用が出てきてロシア人の労働者が移住する事で人口による侵略は防ぐことが出来ます。
プーチン大統領の中国訪問は、それだけでも十分な圧力になると思われます。
中国が破綻したり崩壊する事になれば難民が大挙して押し寄せるのは、陸続きで比較的近いロシアです。
インドやヴェトナムが簡単に中国人難民を受け入れるとは思えません。
華僑を見れば判りますが、どこの国に行っても自分達だけで集まり中華街を作り景観を無視してまで中国の文化に固執しようとします。
これは、中国だけに言えることではなく特亜の人間は概して権利は要求するけれども責任は果たそうとしない傾向が強いのです。
その為に、どこの国に行っても厄介者扱いしかされません。
中国人は子供の時から鍋と鋏の使い方を教えると言います。
どこに行ってもコックや仕立屋・理髪等、少ない資金でも独立して食べて行ける方法を身につけさせるのです。
それで財をなした者の集まりが華僑です。
他国の文化を尊重せず、他国でも自分勝手に振る舞う。
そのような連中が難民となって大量に押し寄せ、世界中に散らばる華僑から大量の資金が流れ込めば、政治献金や賄賂という形で政治家さえも動かすことができるのです。
現在の欧米の中国に対して大甘な姿勢を見ればわかるとおりです。
我が国もロシアとは領土問題を抱えています。
此のような状況下で引退したとはいえ政権の中枢にいた人間が次々に中国を訪れ中国に阿るような言動を繰り返しているようではロシアも我が国に対して疑念を抱かざるを得ないでしょう。
米国もシリア問題やウクライナ問題で弱体化をさらけ出し、国連も機能不全に陥っています。
中国はヴェトナムやフィリピンと対立しながらタイやミヤンマーなどに対して首脳会談などの懐柔策を取る一方で恫喝に近い事もしています。
この為にASEAN諸国と中国の対立は激化していますが、ヴェトナムとインドを除いては中国製の武器を導入していますので戦力は中国に見透かされる格好になっています。
ウクライナ問題で米国とロシアは対立関係にあり、米国の弱腰もあって中国が好き勝手に振る舞う事を許す事になってしまっているのです。
ロシアとしては大量の中国人のシベリア進出に釘を刺す事と天然ガスの販売先の開拓、海軍力を中国に見せつけ海洋進出に対する牽制の狙いもあると思われます。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2014-05-21 07:57:43
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 中国の野心が明らかとなったのですから、他のASEAN諸国もまた、中国からの武器輸入を見直すのではないでしょうか。中国製の武器を使用し、中国に戦力を見透かされるようでは、安全保障体制を構築することは不可能となるのですから。また、中国が、最新鋭の武器をASEAN諸国に売却しているとも思えません。武器の購入ルートを含めて、やはり、ASEANは、転換期を迎えているように思えるのです。少なくとも、中国の拡張主義を抑えるには、周辺諸国が団結するしか道はないのではないでしょうか。
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