今年は、昨年に引き続きマスメディアの世論誘導や情報の信頼性が人々の主要な関心事となりそうです。本日も、新年早々、海の向こうから、トランプ米大統領が選挙結果を改竄するよう要求したとする驚くべきニュースが飛び込んできました。何故、‘驚くべき’なのかと申しますと、これまで、不正選挙を糾弾されてきたのは、バイデン米民主党陣営であったからです。果たしてこの情報、信じることができるのでしょうか。
少なくとも昨年の暮れの時点では、バイデン陣営は追い詰められた状況にありました。マスメディアの大多数が、バイデン氏の次期大統領就任を既定路線として報じながらも、実際には、米民主党側は、トランプ陣営から不正選挙の動かぬ証拠を突き付けられていたからです。つまり、不正選挙疑惑の有無よりも、人々の関心は、トランプ大統領が強硬措置を以ってしても今般のアメリカ大統領選挙を無効とするのか、それとも、バイデン陣営がその全世界に張り巡らされている組織力を以って狡猾に‘逃げ切るのか’、という、不正行為の存在を前提としたエンディングの問題に移っていたとも言えましょう。ところが、ワシントン・ポスト紙が報じたとされる今般の記事は、最終盤に至ってこの構図を180度ひっくり返してしまっているのです。不正を糾弾されているのは、不正を追及してきたはずのトランプ大統領の方なのですから。
同記事は、トランプ大統領と南部ジョージア州のラフェンスパーガー州務長官との間の会話の録音記録の一部をリークしたものです。この中で‘改竄要求’として問題視されているのは、トランプ大統領が「あなたが(票を)再集計したと言えばいい」、並びに、「私は(バイデン次期大統領の得票を上回るための)1万1780票を見つけたいだけだ」という部分です(共同通信の記事)。そして、これらの発言を以って、‘事実上、票数の改ざんを求めたと受け止められる恐れがある’と結論付けられているのです。
比較的短い記事ですし、問題の部分も会話の一部を切り取ったものですので前後の文脈もはっきりせず、これだけの情報で真偽を判断するのは至難の業です。しかしながら、僅かな情報を手掛かりとして推測してみますと、この報道、トランプ大統領が‘改竄要求’したとして報じるほどの‘確実性’があるわけではなさそうです。そもそも、同記事では‘恐れがある’と表現されており、ワシントン・ポスト紙によるトランプ大統領の発言の‘解釈’に過ぎないからです。
トランプ陣営が不正追及側である点を考慮しますと、上記の発言は、必ずしもワシントン・ポスト紙の解釈に限定されるわけではありません。ロイター社が報じる記事によれば、「ジョージア州の住民や米国民は怒っている。再集計したと言うのは何ら悪いことではない。私が望むのは1万1780票を見つけることだ」と述べたとされており、共同通信社の表現とは若干異なるのですが、不正選挙を前提とすれば、同大統領の発言は、‘再集計という形で正しい票数を公表せよ’と要請しているとも解されるからです。もしかしますと、仮にトランプ大統領が‘再集計’を提案したとしますと、将来に亘って不正選挙という前代未聞の罪と汚名を背負うこととなる米民主党側に対するトランプ大統領の‘温情’でさえあったのかもしれないのです。
何れにしましても、2021年は、アメリカ大統領選挙の不正疑惑から端を発した情報操作や世論誘導の問題が表面化することにより、パブリックな情報発信者としての政府やメディアの在り方が根底から問われる年ともなりそうです。そしてそれは、権力と支配、IT・AIを含むデジタル化の問題、国民国家体系とグローバリズム、さらには、自由や民主主義の危機といった様々な問題にも密接に結びついているからこそ(地球温暖化問題も…)、全人類が心して取り組むべき最重要課題なのではないかと思うのです。