万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日朝平壌宣言は既に消滅している

2013年08月31日 15時43分43秒 | 国際政治
米特使の訪朝中止=北朝鮮が受け入れ拒否(時事通信) - goo ニュース
 昨日、日本国政府は、北朝鮮への制裁を強化すべく、二名の在日朝鮮人に対して資産凍結に関する措置をとったとのニュースが報じられました。その際、菅官房長官は、日朝平壌宣言に触れておられましたが、この宣言、既に消滅していると思うのです。

 日朝平壌宣言の全文を読んでみますと、この宣言が、2002年という時期であったからこそ、然したる反発を受けずに公表されたことがよく分かります。(1)この宣言には、まず、”日本側が過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大な損害と苦痛を与えたとする歴史事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した”とする一文があります。この認識、”村山談話”を下敷きにしており、朝鮮半島の統治の実態が明らかになった現在では、日本国内におけるこうした自虐的な歴史観は崩壊しております。(2)また、当宣言では、韓国との間で締結された日韓請求権協定と同様に、双方の国並びに国民レベルの請求権を相互に放棄するとともに、日本側が、有償無償の経済支援を実施するとしています。日韓基本関係条約では、韓国を唯一の合法的な政府であることが確認されていますので、当条約との整合性も欠いています(経済支援の二重払い…しかも、長銀救済に1兆数千億が既に国費から投入…)。(3)その一方で、両国とも、国際法を遵守し、相互の安全を脅かす行動をとらないことが確認されていますが、北朝鮮は、その後、核保有を宣言したり、核・ミサイル実験を繰り返しました。条約違反は終了の正当な根拠となりますが、況してや日朝平壌宣言は宣言に過ぎないのですから、北朝鮮側が合意に違反した限り、当宣言は、当然に、消滅したと見なされるべきです。日朝平壌宣言に際しては、拉致被害者の帰国が実現したため、この宣言に対して批判的な世論は起きませんでしたが、今になって考えても見ますと、あまりに北朝鮮側にとって有利な内容であり、北朝鮮側の策略に嵌ってしまった感があります。国際犯罪の常習国に身代金を払い、経済的に支援するようなものなのですから。

 北朝鮮側の違反行為を理由に、日朝平壌宣言を合法的に反故にできることは、日本国にとりましては幸運なことです。また、たとえ百歩譲って、当宣言が有効であり、その内容を踏襲する形で基本条約が締結されたとしても、日本国内の激しい世論の反発を受けて、国会で批准することはできないことでしょう。制裁強化の意味も込めて、日本国政府は、公式に日朝平壌宣言が消滅しているとする立場を表明すべきではないかと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2013-08-31 23:08:44
こんばんは。拉致議連や一部の保守系を除いてマスコミ・政・官は「生きてるか死んでるかわからない拉致被害者の事より日朝国交正常化するべき」との見解で一致しています。
マスコミは平壌支局開設が目標ですし、平壌支局長・特派員が実績となれば将来の取締役も夢ではありませんので。
本音は「韓流もあきられ、視聴率を稼ぐコンテンツも無いし北朝鮮からニュースやマスゲームを中継すれば視聴率も戻るだろう」
政・官の方は金剛山再開発事業を始め、脆弱な北朝鮮のインフラ整備にヒュンダイ財閥あたりと組めば、政治献金も増えるし、東アジアの平和と安定に寄与した政治家として名をのこせるし・・
実際のところは、この程度の認識です。
憲法改正で維新との協力と云われてますが、肝心の維新内部では橋下氏に近い松浪健太氏などは太陽系の議員を引きずり下ろす事を画策中です。
維新の議員でも旧たち日系の議員は比例です。
衆議院は自ら離党出来ません。
維新の協力と言っても橋下氏は「日本は侵掠をし植民地支配をしてアジア諸国に迷惑をかけた」という歴史観です。
橋下氏の支持者は「日教組や組合に切り込んだ、マスコミ批判をしている、慰安婦発言は正しい」等、その場その場の一コマを都合良くつなぎあわせ保守だと言ってるだけで、カジノ特区構想は韓国・中国人の誘致と不法残留者を増加させるだけの愚策ですし、伊丹空港跡の外国人特区構想は、大阪に治外法権の租界を作るだけです。
そもそもの問題として平壌宣言に署名した事が大間違いです。
予備交渉の段階で、田中均氏は数度の会談内容の記録を残していません。
小泉訪朝の為に、どのような会談が行われたのか全てが明らかにされていないまま出された宣言です。
田中均氏は「帰国した拉致被害者を北朝鮮に返すべきだ」と主張していましたし、国家の約束だからと田中均氏を支持する政治家や政党もありましたね。
外務省で「拉致被害者は北朝鮮に返すべきではない」と強硬に主張されたのが現事務次官の斎木氏です。
優先順位としては機密情報保護法の成立が先でしょう
維新を切り離さない限り情報は北朝鮮に筒抜けです。
アントニオ猪木氏を擁立する理由は北朝鮮関係以外に考えられず、猪木氏の発言を党として正式に否定もしていません。
韓国と近い議員にも要注意です。韓国と協力しているつもりで情報は北朝鮮に筒抜けになっています。
拉致問題が北朝鮮による侵掠であり、情報戦争である事に気づかず朝鮮学校・朝鮮高校無償化等と言ってる時点で外交や国際関係を全く理解していない事は明らかです。
拉致議連と保守系議員は国民に情報を開示し国民の協力を得なければ拉致問題の早期解決は難しいでしょう。


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ねむ太さま (kuranishi masako)
2013-09-01 07:54:14
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 国民の多くは、拉致事件や核・ミサイル開発問題の解決を望んでいますが、日朝友好や日朝国交正常化に対しては、否定的なのではないでしょうか。この二つが、あたかも一対のように扱われていることが、そもそもの間違いではないかと思うのです。暴力団が引き起こした事件が解決されたとしても、誰も、暴力団と”友好関係”を結ぼうとはしないものです。むしろ、この暴力団が解体されることを願っているはずです。日本国の政治家は、この点、認識が甘く、”国交正常化利権”を目論んでいるのか、日本国民の意向を無視しています。維新の会も、北朝鮮や韓国…との繋がりが明るみになればなるほど、支持率は低下してゆくのではないでしょうか。少なくとも、田中均氏の問題もあり、日朝会談の交渉ににおける内容が不明な点も多々あるのですから、日朝平壌宣言は消滅したと見なし、日本国政府は、仕切り直しをすべきと思うのです。
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