万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

蚊帳の外の新興国はG8の合意に従う?

2009年09月26日 15時44分39秒 | 国際政治
鳩山首相「G8なくすべきではない」 日本の埋没を懸念(朝日新聞) - goo ニュース
 現在起きている国際経済の歪みの一因が、中国やインドといった新興国の輸出攻勢にあることを考えますと、当事国を加えた会合、つまり、G20の方が解決能力が高いという主張には一理あります。ところが、鳩山首相は、政治主導を根拠として、G8体制の維持を訴えているようなのです。

 もちろん、鳩山首相が、G8におけるアジア唯一のメンバーとしての日本国の特別の地位を是非とも守りたい、というならば、首相による国益を重視しての発言とも理解できます(首相のアジア重視の姿勢とはいささか矛盾しておりますが・・・)。中国もまた、同様の理由で、日本国の安保理の常任理事国入りを反対しております。しかしながら、その一方で、G8の枠組みで合意されたことを、すんなりと新興国が受け入れるとは思えないのです。今回のG20の会合でさえ、発表された声明には中国の元安政策の是正を求める文言はなく、如何に、新興国を合意に引き込むことが難しいかを示しています。中国もインドも参加しないG8ともなりますと、当事者が出席しない”欠席裁判”のようになりますので、なおさらのことになると予測されるのです。

 「温暖化ガス25%削減」の発言からも、鳩山首相は、コンセンサス重視の政治家ではないことが伺えます。当事者の意見や合意の形成に関心を払わず、むしろ、トップ・ダウン式の政治をめざしているようなのです。しかしながら、グローバル化と多極化が同時進行する状況下にあっては、原則を守りつつも、複雑に絡む利害を調整する機能は不可欠です。鳩山首相の政治姿勢は、何か、ちぐはぐなように思えてならないのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 温暖化ガス25%削減―民間も... | トップ | 小学生から法学を―責任の自覚 »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2009-09-26 17:55:56
 元安はアメリカの希望でもあるので、中国だけを非難するのは、片手落ちですよ。
 中国のような高成長国には、海外から投資が行われるのです。その時、ドルを元に交換します。すると、中国政府には、ドルが溜まって行くのです。この滞留したドルの存在が、米国債の順調な消化を助けているのです。
 円の時と違って、元には、元高にせよという強い圧力がかからないのは、このせいです。
 何だか、アメリカと中国は運命共同体みたいになっているのです。
返信する
Unknownさん (kuranishi masako)
2009-09-26 20:50:49
 コメントをいただきまして、ありがとうざいました。
 Unkownさんのおっしゃっている状況は、最近、変化してきているのではないでしょうか。何故ならば、米中の危うい”相互依存関係”は、永遠に続けることができないからです。G20での内需拡大の大合唱もその表れなのではないでしょうか。
返信する
Unknown (Unknown)
2009-09-27 05:01:01
 プラザ協定のようなことが、もう一度、起こります。ゆっくりと、ドル安にすることによって、アメリカの製造業を復活させるのです。おそらく、環境産業。金融では、多数の人を雇用できないから。
 すると、資源は、すべてドル建てでは、高くなるから、藤井大臣の円高容認は、国益に適っているわけです。日本は外需は大きくないので。さらに、円安で、輸出産業を助けても、トリクルダウンはしないことが、わかっていますから。
 で、中国はどうするのかです。資源高は中国にも、打撃を与えるので、いずれ、元高を容認するのではないですか?
返信する
Unknownさん (kuranishi masako)
2009-09-27 08:52:02
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 何れにしても、大局として、アメリカの貿易赤字と中国の貿易黒字の双方が減少し、貿易の不均衡が是正されることは望ましいと思います。ただし、日本国は外需依存度が高くないとおっしゃられておりますが、それは、そうとも言えないように思います。もし、事実そうであるならば、欧米市場の消費減退によって、日本経済は、これ程の影響は受けないはずです。また、アメリカの環境を柱とした製造業の復活は急激にはできませんので、現状では、円安が、中韓など、政府が為替操作を行っている諸国との競争上、マイナスに作用していることも確かなのです。
返信する
外需依存度 (Unknown)
2009-09-27 10:10:40
ジェトロの表を貼っておきます。

>>単位 億ドル (億ドル未満は切り捨て)
国別外需依存度 日本 アメリカ イギリス ドイツ 中国 韓国 シンガポール
GDP 43,664 131,947 23,954 28,943 26,447 8,874 1,319
輸出 6,472 10,366 4,486 11,210 9,689 3,254 2,715
輸入 5,792 18,539 5,556 9,176 7,914 3,093 2,384
貿易(輸出+輸入) 12,264 28,905 10,042 20,386 17,603 6,347 5,099
輸出対GDP比率 14.8% 7.9% 18.7% 38.7% 36.6% 36.7% 205.8%
貿易対GDP比率 28.1% 21.9% 41.9% 70.4% 66.6% 71.5% 386.6%
純輸出対GDP比率 1.6% -6.2% -4.5% 7.0% 6.7% 1.8% 25.1%
情報ソース JETRO(日本貿易振興機構)<<
 表が表示できていませんが、一番前の数字が日本のものです。以下、順番に。

 日本は、アメリカ、イギリスと共に、外需依存度は低いのです。輸出の対GDP比は14.8%でアメリカの次に低いのです。

 日本は、自公政権の下で、内需振興策が採られていないので、内需が沈んでいたところに、外需の落ち込みが来たので、深刻になったのです。

返信する
Unknownさん (kuranishi masako)
2009-09-27 13:23:31
 コメントおよびデータをいただきまして、ありがとうございました。
 アメリカとイギリスと我が国を比較しますと、決定的に違う点があります。それは、我が国のみが輸出>輸入なのです。しかも、米英には、天然資源や資源への豊富なアクセスがありますが、我が国の経済には、この点において弱点があります。つまり、資源を輸入し、付加価値の高い製品を製造して輸出することで、日本経済が成り立っていることを考えますと、内需拡大政策での景気回復には限界があるのではないでしょうか。
返信する
Unknown (Unknown)
2009-09-27 15:02:43
 あのう、貿易黒字で食べていると言うつもりですか?
 実は、貿易黒字より、資本収支の黒字のほうが大きいのですが。
 それなら、投資によって食べているともいえます。
返信する
Unknownさん (kuranishi masako)
2009-09-27 22:13:49
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 いただきましたデータの数字は、貿易収支のようです。米英が貿易収支が赤字でも繁栄を続けていた理由は、資本収支が黒字であったからとも言われております・・・。
 ところで、Unknownさんは、日本国が、輸出産業なくして経済的な繁栄を維持できるとお考えなのでしょうか。自国製品よりも安価な製品は新興国から輸入されますので、日本国の産業は競争力を失い、雇用不安も起きかねないと思うのです。
返信する

国際政治」カテゴリの最新記事