万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

遺伝子ワクチン動物実験の不可思議

2021年08月12日 11時22分00秒 | 国際政治

 先立って、河野太郎ワクチン接種推進担当相は、遺伝子ワクチンに関する様々なリスク情報に対してそれを全て否定する’デマ宣言’を行いました。否定されデマ情報の中には、「ワクチン接種された実験用のネズミが2年で全て死んだ」並びに、「ワクチン接種された実験用のネコが全て死亡した」というものがあります。これらの情報に対して、河野担当相は、「実験用のネズミの寿命がそもそも2年程度ですから、ワクチンを接種した人間が100年で全て死んだといっているのに等しいことになります」「ヒトに関する研究の前段階としての動物実験でネコは一般的に使われません」と切り返しています。

 

 また、最近では、小金井市の公式サイトに掲載されたQ&Aにあっても、「Q:ワクチン接種したネズミが2年で死んだと聞きました」という質問に対して「A:ネズミの寿命は2年です。」と回答されていたとして、その‘ばっさり’ぶりが報じられていました。同報道は、ワクチン接種推進の立場から書かれたものであり、一刀両断の回答を評価しての報道であったのですが、この‘デマ’とされる情報をめぐる質疑応答から、事実の一端が垣間見えるように思えるのです。

 

 河野担当相であれ、小金井市であれ、2年以内における全動物の死亡という情報に対して、それを否定するものです。前者は、ネズミの平均寿命、並びに、実験用の猫の不使用を以って否定し、後者は、ネズミの平均寿命のみによる反論です。使用された動物の種類については、マウス実験が最も一般的なのでしょうが、神経生理、神経学の実験などでは猫も使われることもあるそうですので、反論の根拠としては脆弱なのですが、少なくとも、否定側の両者、並びに、リスク情報を主張する側のどちらもが、ヒトに対して実用化する以前に’動物実験は行われた’ことを前提としております。

 

 しかしながら、新型コロナウイルスがパンデミック化し、中国の上海公衆衛生臨床センターによって全ゲノム配列が世界に向けて公開されたのは、2020年1月11日のことです(翌日、何故か、同センターは閉鎖に…)。この時点から、各国の製薬会社が新型コロナウイルス・ワクチンの開発を開始したことになりますので、実際に、ヒトに使用されるまでの期間は1年ほどしかありません。となりますと、少なくとも新型コロナウイルス・ワクチンについては、たとえ動物実験を行ったとしても、2年とされるネズミの一生にも満たない1年足らずの短期間であったこととなりましょう。

 

 リスク情報を’デマ’と断言する人々は、’新型コロナウイルス感染症の出現から1年しか経過していないのに、2年に及ぶ動物実験の結果を言い出すこと自体がデマの証拠’として、同情報を嘲笑していますが、実のところ、恐ろしいことに、このファクトチェックを意味する質疑応答は、むしろ、十分な動物実験が行われずして遺伝子ワクチンが実用化されてしまった実態を暴いているとも言えましょう(仮に、長期的な動物実験が行われていたとすれば、ワクチンを製造する製薬各社は、同ウイルスの出現を予め知っていたことにもなる…)。もっとも、’デマ’とされた情報の元となったのは、新型コロナウイルス・ワクチンそのものというよりも、mRNAワクチンという先端技術に関する動物実験であったのかもしれません(真偽は確認できないのですが、同情報は、米軍で生物兵器の研究に従事していた経験のあるリー・メリット博士が行ったSARS用のmRNAワクチン実験の結果に基づくとされており、使用されたフェレットや猫といった動物はADEの発生により全て死亡したという…)。

 

何れにしましても、新型コロナウイルス・ワクチンについては、発生からワクチンの実用化に至るまでの時間から見ましても十分な動物実験を経ていないのは確かなことであり、’治験中でない’と言い切る方がおかしいと言わざるを得ないのです。日本国政府を初め各国政府とも、長期的な視点から国民の命と健康を護るためにも、遺伝子ワクチンにつきましてはその未知のリスクをより重く見るべきではないかと思うのです。

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