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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

イスラエル・ハマス戦争におけるイスラエルの狙いとは

2023年11月23日 17時03分33秒 | 国際政治
 イスラエル・ハマス戦争の真の目的は、どこにあるのでしょうか。同戦争の展開を具に観察しますと、イスラエル側の計画性が疑われてもいた仕方がないようにも思えてきます。何故ならば、シオニストが掲げる大イスラエル主義にとりましては、今般のハマスによる奇襲は、またとない千載一遇のチャンスともなったからです。そして、イスラエルは、戦争が違法化された時代にあって残された不公平な無制限報復の許容、並びに、戦争激化要因としてのイデオロギー・思想・宗教等の価値観や世界観をめぐる対立があってこそ、自らの計画を実現するチャンスとし得るのです。

 ネタニヤフ首相に代表されるシオニストの理想とは、カナン、すなわち、パレスチナ国の全域を含むパレスチナ地域一帯をイスラエルに併合することなのでしょう。そのためには、パレスチナ国を世界地図から消し去らなければならないのですが、イスラエルは、軍事力の行使こそ、この目的を実現する手段として見出したのでしょう。幸か不幸か、イスラエルは、建国と同時に4度に亘る中東戦争を戦うこととなり、軍事力増強の根拠は確保されています(密かに核兵器も開発・保有することに・・・)。

また、中東諸国との敵対関係のみならず、PLO、さらには、ハマスをはじめとした反イスラエルを掲げるテロ組織との長期に亘る戦いも、イスラエルがハイテク兵器などの先端的軍事テクノロジーを開発する口実を与えたとも言えましょう。言い換えますと、イスラエルは、戦争やテロが横行し、中東情勢が不安定な状況のままである方が、強大な軍事力をもって自らの存在を保障するのみならず、パレスチナ一帯の併合という目的にも好都合であったのでしょう。この側面は、紛争を抱える国ほど軍事力が強大化し、結果として周辺国との軍事力格差が広がりますので、いざ、戦争ともなれば、平和な環境にあった国ほど不利な状況に陥るという現代国際社会の由々しき問題でもあります。

 しかも、テロとの闘いにあっては、そもそもテロリストには領域や国民が存在しませんので、この主体殲滅型の戦争の側面はさらに強まります。イスラエルが宣言しているように、‘ハマスに対しては壊滅あるのみ’ということになりかねないのです。同組織との闘いは、長期間に及ぶと共にその目指すべき最終目的は、ハマスという存在そのものをこの世から消し去ることとなるのです。

 そして、ハマスが事実上のガザ地区の統治権、否、主権を握っていたことは、イスラエルにとりましては、同地区を併合する環境が整ったことを意味します。何故ならば、自らが被害国となり、かつ、ハマスを事実上の‘国家’と見なす対ハマス戦争に持ち込むことができれば(ハマスを‘国家’に仕立てあげる・・・)、正当防衛権の名の下で同地区全域を強大な軍事力で併合するチャンスを得ることとなるからです(ガザ地区の住民は、ジェノサイドか追放・・・)。イスラエル・ハマス戦争には、主権あるいは統治権の最終的な掌握を目的とする無制限報復戦争という条件が揃っているのです。

 以上の見方からしますと、ハマスの行動はイスラエルにチャンスを与えているようにしか見えません(目下、報道されているハマスによる人質の解放も、イスラエルのために逃げ道を造っているようにも見える・・・)。そして、イスラエル、並びに、その背後に潜むユダヤ系世界権力の行動は、今日の国際社会における戦争というものの問題点を浮き彫りにしていると思うのです。

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